北から西にかけてを山に囲まれ郊外を出てしばらく南に行くと海が見える地方都市・國見市。その住宅街に建つ一件の大きな日本屋敷の居間では現在朝に似つかわしくない賑やかさで溢れていた。
「おい小太郎!てめぇ俺のだし巻き盗るんじゃねぇ!」
「いや〜唐三が最後まで残してるから嫌いなのかな〜って思って親切心でたべただけだよ〜ん」
「美味しいから最後に食おうと思って残してたんだバカ!」
「ありゃりゃそりゃ悪かったなー。それじゃあ唐三には僕のおひたしあげるよー」
「おめぇだし巻きとおひたしで釣り合うと思うなよ!?てめぇ鮭を寄越しやがれ!!」
「わ〜ん雪美おねーちゃん唐三が僕の鮭を盗ろうするよ〜」
「あらあら」
「おーい2人とも朝飯くらい静かに食え。」
朝食を盗った盗られたで大騒ぎする小柄な小豆洗いの少年、小太郎と唐傘お化けの
「やっぱり雪美さんのだし巻きうめぇなぁ。出汁が噛む度に溢れてくるわ」
「ふふっ。母直伝の合わせ出汁ですからね。いつも喜んで頂けて嬉しいです」
刀真は隣で褒められて嬉しそうに(他の人はほとんど変化が分からないくらい)薄く笑む雪美を横目にしつつだし巻き玉子に舌鼓を打っていると突如自身のお尻に痛みがはしり思わず「イテッ!」っと声がでる。
「あ!雪美ちゃん!ご飯お代わり!」
「おいクソ河童。飯食ってんだからケツ蹴んな毎朝言ってるだろうが」
そう言って自身の尻を蹴った犯人、河童の
「足の当たる所にケツ置いてる奴が悪い」
「は?てめぇの頭の皿叩き割ってやろうか?」
「おん?やれるもんならやってみな。てめぇこそ尻子玉抜いてやろうか?アァん?」
お互いにガンを飛ばしながら威嚇しあう。
それを「またいつものですか…ご飯の後にしてくださいねお二人とも」とため息をつきながら雪美はご飯をよそって杏二郎に手渡す。
それを「ありがとな雪美ちゃん!刀真。お前のせいで雪美ちゃんが困っとるじゃろが。後で覚えとけよ」と言いながら杏二郎は受け取って自分の席に戻っていく。
それをガン無視して刀真は残りの朝食を味わって食べ、食べ終え後に「ごちそうさまでした」と手を合わせそれに雪美が「お粗末さまでした」と返す。
食べ終えた食器を台所に片付け、茶の入った湯呑みを持って縁側に出ていく。
庭では鎌鼬の
「ん〜今日も良い1日になりそうだな」
これが御剣家の日常である。
だし巻きは私の好みです。行きつけの居酒屋に出てくるだし巻きが噛んだ瞬間に甘くて旨い出汁が溢れてきて大好きです。