刀神   作:SIーZUー

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事件パートですが作者はおバカなので推理物のような事件や推理はたいしてかけません。
なので見る人によってはとてもチープな物に見えるかもしれませんが御容赦を。


2話:舞い込む事件

時は過ぎて十一時頃。庭で杏二郎を運動がてらに(先程の仕返しを含めて)はっ倒し、早朝に打った刀の白鞘(鍔もなく塗料も塗らないままの木材の鞘)を鞘作り用の作業場で作っていた。

本来刀の鞘とは鍛冶師ではなく鞘を専門に作る鞘師が作るが刀真は鞘も自ら制作している。

これは代々御剣家の習わしであり、最後まで自分の手で仕上げ刀として世に送り出すという誇りである。

 

朴木(ほうぼく)を刀の形に合わせて切り出し、二枚合わせになるよう二つに分割。内側をノミで刀の形に合うよう微調整を繰り返しながらくり抜いていく。

 

「刀真さん。少しよろしいでしょうか?」

 

そこへ雪美が声を掛けてきた。基本的に雪美は作業中はこちらへ話しかける事は少なく、こういう時は急を要する事が多い。

そういう事もあり1度作業を止め雪美の用件を済ませることにした。

 

「どうしたんだい雪美さん?」

「実は賢吾さんがいらしてて」

「げ、賢吾さんだって?はぁ…面倒くさそうだなぁ」

 

名前を聞いた瞬間あからさまに面倒くさそうな顔をする刀真。それを見て雪美も苦い笑いをしつつ目で「どういたしますか?」と聞いてくる。

 

「げ、とは何だげ、とは。人を疫病神みたいに言うんじゃねぇ坊主」

 

居留守を使うよう言おうとした時、雪美の背後から低い男性の声が届く。

雪美の肩越しに見やるとスーツの上からコートを羽織った白髪混じりの中年の男が不敵な笑みを浮かべつつ「よっ」と手を挙げていた。

 

「実際俺からしたら疫病神みたいなモンっすよ。賢吾さん。俺ん家来る度に毎度事件引っさげ来るじゃないっすか」

「だっはっはっ!良いじゃねぇかそんだけお前さんの腕を見込んでんだよ俺は」

 

そう言って男。瓶鳴 賢吾(かめなり けんご)は豪快に笑いながら刀真の文句を受け流す。

賢吾は國見市警察署に勤務する刑事であり刀真とはそれなりに深い付き合いのある男である。

というのも刀真の腕を見込み、警察では解決できない超常事件の解決を御剣家に来訪する度に引っさげて来るのだ。

 

「毎回言ってるけど俺は鍛冶師であって便利屋じゃないんだがね?」

「まぁまぁそう固いこと言うなよ」

「はぁ…仕方ない。とりあえず話は聞くよ。雪美さん。悪いけどお茶頼んでも良いかい?いつもの客間で話聞くからさ」

「はい、わかりました」

 

◇◇◇

 

「正体不明の連続殺人事件ねぇ」

 

雪美が持ってきた茶を啜りつつ賢吾が話した事件は今テレビで連日放送されている連続殺人事件についてだった。

國見市の北部にある國見山で連日遺体が発見されどれもが頭部と内蔵を食い荒らされており現場はひどく血塗れだったらしい。

捜査によると事件が起きたと思われる日には深夜に被害者の物と思われる悲鳴が聞こえたとの情報があり、深夜の他殺と予想されている。

悲鳴が聞こえた場所はどれも遺体発見現場から離れており尚且つその場で殺したと考えるには現場に血痕などが明らかに少なく、遺体は必ず山に遺棄されている事から犯人は被害者を誘拐した後國見山で殺害したと警視庁は考えていた。

しかし國見山周辺の目撃情報や監視カメラをいくら調べても山に入る不審な人物、もしくは車両は見られなかったそうであり、現場から採取されたDNAも被害者以外に一致する物は無かった。

しかし不審な痕跡も見つかっており、遺体現場には焼けた片輪だけのタイヤ痕のような痕が見つかったらしい。しかしこれも何の痕なのかは分かっていないらしい。

 

「遺体の状況からに他殺である事は間違いないんだが如何せんどうやってそこまで被害者を運んだかも分からないうえに、犯人の目的も分からなくてな。性別や年齢もバラバラで被害者に共通するような接点もなくて警視庁はお手上げ状態だ」

 

賢吾は真剣な眼差しで湯呑みに入ったお茶を睨む。その顔は己の無力さが歯痒いと無言のまま伝わる。

 

「なぁ坊主。この事件の解決、任されてくれねぇか?このままじゃ被害者が増え続けるし街の人達も安心できねぇ。…なによりこの事件を迷宮入りさせちまったら被害者があまりにも報われねぇんだ」

 

刀真は暫し腕を組んで思案する。恐らくこの事件は刀真や雪美達のような物の領分だ。このまま捜査していても事件は解決できないだろうし、何よりも捜査している賢吾達も事件に巻き込まれるかもしれない。

隣で一緒に話を聞いていた雪美の顔を見ると雪美も同じような考えなのだろう。目線で「どうしますか?」と聞いてくる。

 

「頼む刀真!街の平和の為だ!」

 

賢吾がテーブルに手を付いて頭を下げる。賢吾も本気なのだろう。

 

「…はぁ、分かったよ。俺も調べてみるよ」

 

溜息をつきながら刀真は仕方ないといったように引き受ける。

それを聞いた賢吾は「本当か!?」と顔を上げる。

 

「実際放置するには危ないしな。だったら俺がやるしかないだろう」

「流石坊主だぜ!頼りになるわい!」

「た・だ・し!今回はあくまで賢吾さんからの依頼として受けるからな。ちゃんと代金は頂くぞ」

 

「分かってる分かってる!いつも通りだろ?ちゃんと経費も落ちるから安心しとけって!」と賢吾は朗らかに笑う。

毎度思うがしっかりと経費で落ちるあたり上からも刀真は認識されているのだなと刀真は思ってしまう。

 

「ところで賢吾さん。他になんか情報は無いのかい?どんな些細な事でも良いからさ」

「ん?そうだなぁ…」

 

刀真からの質問に賢吾は顎に手を当て頭から情報を引き出していく。

暫く考えて賢吾はふと何か思い出した。

 

「そういえばそうだな。5日前の深夜に被害者の悲鳴が聞こえたという少年がいたんだがな?なんでもそん時望遠鏡で天体観測しようとしたらしいんだがその時空に國見山の方へ飛んで行く赤い光を見たらしいんだ」

「空に赤い光…か。賢吾さん、その少年に話を聞く事はできますか?」

「そうだなぁ。少し待ってくれ親御さんに話を伺えないか連絡してみる」

 

そう言って賢吾は部屋から出て携帯で連絡をしに行く。暫くして部屋に戻ってきた賢吾によるとちょうど今家に居るらしいから大丈夫との事だった。

 

◇◇◇

 

少年によるとその日は誕生日に買ってもらった自分の天体望遠鏡で天体観測をしようとしていた。

望遠鏡を覗いてると突如女性の悲鳴が聞こえ、周りを確認したが遠くからだったらしく悲鳴の主は確認できなかったらしい。

不思議に思ったが気の所為だったかと思い天体観測を続けようとしたが國見山に向かって飛ぶ赤い光が空に見え、慌てて望遠鏡で見ようとしたが覗き込んだ時には既に見えなくなったとの事。

しかし少年には不審に思った点があったらしく、聞いてみると「最初は流れ星かと思ったが流れ星にしては遅かったし軌道も真っ直ぐでは無かった」との事。

 

「悲鳴の後に空に見えた赤い光か…これが事件の鍵か」

「やはり妖怪が事件の犯人なのか坊主?」

「…断定はできないがその可能性は高いと思う。恐らくその赤い光ってのが妖怪なんどと思うが…それが何の妖怪なのかはまだ分からない」

 

顎に手を当て刀真は思案しながら信号を待っている。いくつかの候補は思いつくがまだこれだけでは何の妖怪かは絞れない。

 

「むぅ…もう少しなんかヒントが見つかれば絞れそうなんだが…」

「そうは言ってもねぇ。他になんかヒントになる物は何があるかねぇ」

 

俯きながら「はぁ…」どちらからともなく溜息が出る。

俯いてても仕方ないと顔を上げる刀真の視界に車道を走る車が映る。

 

その時ある事を思い出し刀真の頭に犯人像が結びつく。

 

「あー!!」

「うわっ!なんだいきなり叫び出して!?」

「あ、ワリィワリィ賢吾さん。犯人が分かったんだよ犯人が」

「何?本当か!?」

 

驚いて刀真の服の襟を掴みかかってくる賢吾を「本当だよ」と刀真は襟から腕を離させる。

 

「あぁスマンスマン。…で?犯人の正体は何なんだ?」

「そいつはな——」

 

 




犯人の正体は次回へ。
そして次回はバトルパートです。

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