幼馴染がVTuber始めたら友人Aちゃんと呼ばれるようになった件 作:すばう
「あーちゃんあーちゃんっ」
「なーによ……あ、こら……のしかかるな、重い……」
小夜のベッドにうつ伏せになりながらソシャゲを周回していたら、背中に小夜がのしかかってくる。
重い……重い……。
さっきまで配信してたくせに本当に体力お化けね、この子は……。
「ほら、配信終わったんだし、早くシャワー浴びてきなさいよ」
「配信中ずっとソシャゲ周回してたあーちゃんを構いたいっ」
「ほうほう、例えば?」
「こうするっ」
そう言ってわしゃわしゃと頭を撫でてくる。
ちょ……力強、は、禿げる、禿げる……。
「ちょ……力強い……ストップ、ストップ……」
「あ、ごめんっ」
「毛根死滅したらあんたの髪の毛引きちぎってやるわよ」
「ひえ……」
全く……。
とりあえず小夜を背中から下ろし、ベッドに座り直してスマホの電源を落とす。
まあ、確かに配信中は一言も発さずにベッドで寝転がってただけだったから、暇していたといえば暇していたわけだけど……。
「てか、どうして今日泊まってけって言ったのかしら?」
「んー、何となく? 明日休日だしいいかなーって!」
「まあそうね。あんたがVTuber始めてから泊まらなくなったし、こう言うのもたまにはいいわね」
「えへへーっ」
ぽふっと、小夜が頭を膝に乗せて横になる。
こう言うのも久々ね……小夜の髪に指を絡め、徐々に頭を触ってなで上げる。
ほーんと、いつまで経っても甘えん坊ね……。
「んん……ちょ……あんま頭動かされると擽ったいじゃないの」
「あーちゃんの太ももはぷにぷにで気持ちいいねっ」
「それは私の太ももがムチムチと言いたいのか??」
「あ、あ! 待って、まって! グリグリ痛い! 痛い!」
「勝手に頭乗せといてよく言うわ……」
グリグリと頭を指圧するのやめ、また普通に撫でてやる。
小夜は嬉しそうな声を上げながら撫でられていく。
てか本当にでかいわよねこいつ……どうやったらこんなに背が伸びるのかしら…。
腕は、そこまで太い訳でもないのに力強いし……医者に見せて精密検査したら何かわからないかしらね……。
「んん……あーちゃん、擽ったいよっ」
「黙って腕ぷにぷにされてなさい、幼馴染ほっといて配信してた罰よ」
「やっぱ気にしてるじゃん!?」
「気にはしてないわよ、えぇ、全然気になんかしてないわ」
「きゃーっ、あーちゃん待って待ってっ、あはははっ」
お腹もわしゃわしゃと撫で回してみる。
はっはっは、ほれほれ、ここがええのんやろ??
やっぱりこいつ前世は犬では?
「もーっやったな!」
「んな!? ちょっ、何すんのよぉ…っ」
小夜に押し倒されてしまった。
やぁ……でかいでかい、何かでかい塊が揺れてやがる……横からひっぱたいてやろうかな…。ぎりぃ……。
「ふっふーん……形勢逆転っ」
「いや、逆転も何も、あんたに力で適う訳ないじゃない……」
「あーちゃん力弱いもんねっ」
「うっさい馬鹿力。ひゃ……ちょ、何よっ」
小夜が喉元を指先でくすぐってくる。
なぁにがヨシヨシだっ、私ゃ猫か!
じたばたと暴れ回るが、簡単に小夜に抑え込まれてしまう。
「はぁ…はぁ……一体何がしたいのよ…?」
「視聴者さんにね、あーちゃんは猫みたいだねって言われて確かめてるっ」
「はぁ…??私は人間よ…離れなさい」
「んーでも間違いじゃないような気が…あーちゃんって気づいたらするりと居なくなるし、構いすぎると離れるし、かと言って構わなさすぎると自分から近づいてくるから、合ってるような」
「それ言ったらあんたは犬みたいよね?私みたら一目散に駆け寄ってきたり、飛びかかってきたり、尻尾振っちゃったりして」
人のこと言えないわよねぇ?
普段言ってこなかったけど、この際だし言ってしまった私は、悪くないわよねぇ??
「そうなったらあーちゃんは私の飼い主??」
「……あながち間違いではないのが何とも言えないわね……」
今までの事を省みると、だいたい飼い主ムーブ決めていたような気がしないでもない。
まあ、ずっと前から保護者してたわけだし、今更よねえ……。
小夜をどかして立ち上がる。
さて、寝る準備でもしようかしらね……。
「私そろそろ寝たいから、早くシャワー浴びちゃいなさい、ね?」
「うー……休みなんだからまだあーちゃんと遊びたいぃ…」
「私はあんたと違って体力ないのよ、知らなかった?」
「私の耐久に着いてこれるあーちゃんが体力無い訳が無いっ」
「エナドリキメてるから出来る芸当なのよ」
エナドリは徹夜したい時に飲むとキまるわよ。
特に小夜の耐久配信の時に飲むエナドリはやばいわね……もう決まりまくって目がギンギンに冴えるわ。
「やだやだやーだぁっ、遊ぶんだーいっ!」
「駄々こねるんじゃないの。毎日遊んでるじゃない」
「徹夜でゲームしようよぉっ」
「格ゲーでもする??」
「あ…え、遠慮しておきます……」
即死コン叩き込んで終わらせまくったら、小夜にトラウマを植え付けてしまったのは言うまでもない……。
それ以来小夜は格ゲーだけは私とやってくれなくなった。
いいサンドバt…練習相手だったのに、残念ねぇ……。
「レースゲームしたい!近々2次STARS内で大会あるんだよね〜、練習したいっ」
「そう言えば告知してたわね…しょうがない、付き合ったげるわ」
「わーい!さっすがあーちゃんっ」
「んむ…一々引っ付くんじゃない…暑苦しいでしょ」
「最近暑くなってきたもんね〜」
「そう思うんなら離れなさい……」
やれやれ…てか本当に暑いわね…。
そろそろ衣替えの季節かしらねえ……。
何てぼけーっと考えていたら、小夜のスマホの着信が鳴った。
こんな時間に鳴るとなると、VTuber関係の人からかしら?
小夜が私から離れて通話に出る。
通話に出てすぐ……。
「え!?う、嘘!?」
「どうしたのよ?」
小夜が素っ頓狂な声をあげた瞬間、パソコンを操作しだした。
画面を切り替えれば、さっきまで配信していた画面が現れ、コメントが流れていた。
「……あ……Aちゃん……」
「んー?なぁに配信の時の呼び方してんのよ」
「あ、あの、あの……大変申し上げにくいのですが……」
「…………??」
「…………配信、切れてませんでした……っ」
「…………は????」
切れて……なかった……??
え……じゃ、じゃあ……い、今までのやり取り、全部配信されて、いた……??
「ば、ちょ…何してんのよ!?わ、私、あんたの名前呼んでないわよね!?」
「た、たたた、多分呼んでない!と、思う…」
「とりあえず配信切りなさい、早くっ」
「ら、ラジャー……!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コメント か み か い
コメント は??こんな距離感近い幼なじみおりゅ??
コメント てぇてぇの過剰摂取
コメント リンエーてぇてぇが過ぎる
アザミ・ロータス ギリィ…ッ
コメント 本物ww
コメント 最近やらかし癖改善してきたと聴いたが、まさかAちゃんが泊まりに来た時にやらかすとはww
あぁ……やっぱり切り抜かれてしまった……。
切り抜き動画のコメントがお祭り騒ぎだ……。
「……何か弁明はあるかしら……?」
「い、いやぁ…配信切り忘れはVTuberの登竜門と言いますか……こ、今回はそこまで酷い物でもなかったし、えーっと……」
「んんんー……???」
「……はい……ごめんなさい……以後気をつけます、です……」
とりあえずアーカイブを確認し、互いに本名出てないのが分かり事なきを得た。
そのままアーカイブは非公開にしたんだが、切り抜き師の仕事がめちゃくちゃ早かった。
切り忘れ事件から2時間足らずで動画としてアップされてしまい、切り忘れの一部始終がたれ流されてしまった……。
とりあえず小夜は事務所から流石にお叱りを受けて、すっかりしょげてしまった。
まだAちゃんだったから良かった、という訳ではないが…これが全然知らない人だったらまずかった、との事だ。
確かに、一般人ではあるが、視聴者には何故か認知されているから、まだましであっただろう。
「次からはちゃんと切り忘れないように確認しなさい、ね?」
「うー……はぁい……ごめんなさい……」
「まあ、こうなったら仕方ないわよ……。私の名前も出てないし、声は……ガッツリ入っちゃったけど、前にも不可抗力で入ってしまった事あるし、気にしてないわ」
「面目ない……」
リンと小夜のキャラに差がなく、ほぼほぼ素だったことが幸を為した。
あまりにかけ離れたキャラだったら、もしかしたら色々荒れた可能性があったかもしれない。
ま、それはif、もしもの話だ……。
結果論ではあるが、炎上したとかそんな事はなく、何故か受けがよかった、みたいだ。
どうやら、配信切り忘れはVTuberだと時たまあるらしく、あまり酷いものではない限りはみんな楽しんで見ている、との事。
「あーちゃんの声が……ガッツリみんなに知れ渡ってしまった……」
「もう気にしてないわよ」
「何か、私が嫌なのーっ」
「バレた元凶が小夜って分かってる???」
「土下座も辞さないですすみません……」
全く……。
まあ、事務所の人からガッツリ叱られた訳だし、これくらいで許してあげようか。
この後めちゃくちゃ小夜を慰めた。
翌日。
「………………」
Twitterを眺めていたら、めちゃくちゃ私のファンアートが、2次STARSの皆さんのリツイートで流れてくるようになった…。
……いや、声だけでここまで普通描けるもんなの???こっっわ……。