幼馴染がVTuber始めたら友人Aちゃんと呼ばれるようになった件 作:すばう
「ねえあーちゃんっ」
「あによぉ……」
課題を終わらせ、このジメッとした中ぐだぁっとしながら小夜のベッドでソシャゲ周回を行っている。
あ、また角だ。
「何か私のお母さんがあーちゃんの立ち絵作りたいって言ってるんだけどさ〜」
「は〜、あんたのお母さんがね〜………………お母さん……???」
ボケっとしながら聴いてたから、聞き流しかけた。
何故小夜のお母さんが私の立ち絵を作りたいなんて話になってんだ……。
「あ、お母さんってあれだよっ、リンちゃんの絵を描いてる絵師さんねっ」
「あ、そうなの…びっくりしたぁ……でも何でお母さん?」
「VTuberのキャラを生み出してくれたからお母さんってみんな呼んでるのっ」
「なーるほどぉ…それで何故私の立ち絵なのか」
「今後2人で配信する時に使って欲しいって」
「いやしないが???」
一体全体どうしてそうなった?
確かに声とかガッツリ割れてるし、何かもうどーにでもなれって感じではあるが……。
自ら率先して小夜とコラボしたいかと聞かれれば、いやぁ…ってなる。
曲がりなりにも大人気VTuberに片足突っ込んでる奴の配信なんて、胃が口からまろびでるわ……。
「事務所はAちゃんが良いならOKって言ってたよ?ネチケットも問題ないって」
「そらあんた…当たり前でしょうに。このご時世何かあったらたまったもんじゃないわ……」
信頼してくれるのは嬉しいが…別段VTuberは見ている方が楽しいので、配信を一緒にしたいとは、なぁ……。
「やろーよやろーよぉ、最近だとリアルの家族とかとコラボしてるVTuberもいるよー?」
「え、そーなの……?んー……」
それは意外な切り返しだった。
リアルの家族と一緒にコラボって、一体何するのかしら……。
雑談?いや……でも、うーん……。
とか何とか考え込んでいたら、小夜が抱きついて引っ付いてくる。
ちょ……重い、暑い……。
「やーろーよぉっ」
「…………ま、考えておくわ」
「本当!?」
「例えば、チャンネル登録者100万とか行ったらかしら」
「条件が厳しい!?」
「興味が無い幼馴染をコラボに呼び出すんだもの、それ相応の条件が必要じゃない?」
「もう少し、もう少し下げていただけませぬかあーちゃん様…っ」
「やっ」
「そこを何とかっ」
「やーよっ」
ぷいっとそっぽ向いて拒否してやる。
小夜は相も変わらず、捨てられた大型犬のような表情をしている。
正直、どうしてそこまで私とのコラボに固執するのだろうか。
今の小夜なら、コラボしたい人など引く手数多だと思うけどなあ。
例えば、他事務所のVTuber。
度々リンのリツイートややり取りを目にするが、そう言ったお誘いがある事を知っている。
何故か私も一緒でOKみたいな誘い方をされているが……。
「こら、お腹に顔埋めない、くすぐったいでしょ」
「ふがふがふがふがっ」
「そのまま喋るな、んん…ちょっと待ちなさい、こらっ」
バタバタと暴れてみるが、顔をお腹から離す気配が一向にない。
数分くらい暴れてみたが、こっちの体力が消し飛んだので降参した。
はー…どうしたものか…動けないし小夜は離れないし…ジメジメで汗かいてるから、離れて欲しい。
「はぁ……さーよ」
「ふがふがぁ…?」
「あんまし我儘言わないの、私が興味無いのは分かってるでしょ?」
「ふがぁ……」
「どうしてそこまで誘うのよ?」
「ぷは…最初はね、私の幼馴染がちょー可愛いって知ってもらいたくて話題に出したかったの。それで、話題を出していくうちにね?あーちゃんとやれたらなって、今ここにあーちゃんがいたら、何て答えてくれたんだろって…そう考えたらさ、ワクワクしちゃって」
「お、おう……」
「何か面白い事をしようなんて考えなくていいよ。それは全部、VTuber鈴科リンの役目。私はただ、
そう言った小夜の目は、いつの間にか私の知らない目をしていた。
いつも私に着いて回り、時に引っ張り引き摺ってく、私の知っている小夜の目じゃなかった。
VTuber、鈴科リンとしての、やりたい事を見つけた、そう言った目をしていた。
…………………………。
「ふがっ、な、何をひゅるのっ」
「小夜の癖に生意気、このアホ、駄犬、馬鹿犬」
「わぷぷぷぷぷぷっ」
小夜のほっぺをむにむにしたり引っ張ったりする。
なぁにが大好きな私とのコラボよ。
ばーかばーか、小夜のばーか。
「立ち絵の件は、まあいいわ。コラボするしないは置いといて、描いて頂けるのなら、断るのも失礼に当たるかもしれないし」
「はなひへぇ……」
「あら、何を言ってるか分からないわねぇ??」
「ひゃーっ」
ぐしゃぐしゃと、小夜の長ったらしい髪の毛を撫で回してやる。
やれやれ…小夜にはどうしても甘くなってしまう…いや、甘いと言うか、チョロいと言うか……。
あんな話を聞いてしまったら、もう断りにくくなるじゃないの。
まあ、断るのだけど……。
あんたが私の事大好きなのは、ずっとずっと前から知ってんのよ。
「ま…コラボしたいなら、もっと小夜の頑張ってる姿、私に見せて?」
「ん…頑張るっ!」
「よし…気が向いたら、その時は一緒にしましょ」
「えへ…やったぁ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『って話をこの前してネ!その経緯で、Aちゃんに立ち絵の許可を頂いて、今回のAちゃん立ち絵公開配信が決まったんダ☆』
コメント どうしてAちゃんはそんなにてぇてぇ作製するん??
コメント Aちゃんはてぇてぇ作製職人だった……?
コメント Aちゃんに罵られたい
コメント 立ち絵の作製経緯だけで何故こんなにもてぇてぇんだ…
あのやり取りから数週間後。
無事に私の立ち絵が完成したらしく、リンの配信でお披露目となった。
何故か立ち絵が作られるようになった経緯を話し始め、あの日やり取りした内容を赤裸々に話されてしまった。
ヤメテ…ヤメテ…。
『私が頑張れば、Aちゃんがコラボしてくれるって言質取れたので、これからどんどん配信していくかラ、みんなよろしくネ☆』
コメント 当たり前だよなぁ??
コメント リンちゃんのしたい事がAちゃんとのコラボなら、全力で支援するのがファンの務め
コメント ↑とか言いながら、Aちゃんとのコラボをわしらも望んでるからだろ
コメント リンちゃんにもAちゃんにも無理して欲しくないからな!
『みんなありがとう!さて、お待ちかねのAちゃんの立ち絵公開だよ〜っ、はいっ、じゃーん!』
リンの横に、ぱっと絵が表示される。
髪型は私と同じ、肩に掛かるか掛からないかくらいに伸ばされたヘアスタイル。
黒髪で、服は、ちょっと大人っぽい黒色の服を着ており、身長は……うん、何か小さい。
そして何故か猫耳ついてるんだが、何で???
『Aちゃんの容姿とかをお母さんに事細かに伝えたら、すっっっごく可愛いAちゃんの立ち絵が出来たヨ!お母さんありがとう!』
コメント かっっわ
コメント あの声とこの立ち絵は、ぴったりやな
カナメユウ あの時のリンは、オタク特有の早口で話していたわ……
コメント リンちゃんマッマww
コメント Aちゃんガチ勢だから仕方ないなww
あの子はなんて事を…………。
しかし…複雑だ。我が立ち絵でなければもう普通に可愛いと声に出していただろう。
ただ、如何せんこれがネットでの私の立ち絵となると、何か途端に恥ずかしくなってしまう。
『Aちゃんって黒猫みたいだから、猫耳つけてもらったらピッタリだったんだ!』
コメント リンちゃんの犬耳マダー?
コメント リンちゃんと絡んでる時、猫耳ピコピコしてそう
コメント スカートに黒タイツとか、リンちゃんまっま分かってる
コメント やっぱAちゃんはちっちゃいんやな
コメント そらアザミちゃんに目をつけられてるからな
アザミ・ロータス 言い値で買うわ
思いのほか、コメントは反響でいっぱいだった。
よかった、何か色々言われないで。
幼馴染に立ち絵???っとか言われなくて本当に良かったよ……。
コメント アザミちゃんwww
コメント これは是非とも動いてる姿がみたいな
カナメユウ 来るべきコラボのため、2Dも作成中です!
コメント 仕事が早いww
コメント カナメさん休んで、休んで…
ぼーっと、画面に写った自分の立ち絵を見る。
もしコラボするとなったら、これが私になるのか……。
何だか不思議な気分だ。
別に、楽しみとは思わないが……まぁ、うん……。
とりあえずこの視聴者数の前でも緊張しないように、何か始めようかしら……。
なんて、柄にもないことを考えてしまったのは、きっと小夜にあてられたからだ、きっとそうに違いないのだ。