幼馴染がVTuber始めたら友人Aちゃんと呼ばれるようになった件 作:すばう
頂きましたご意見、ご指摘に関しましては、都度加筆修正しております。
見切り発車ではじめた作品とはいえここまで読んで下さった皆様に感謝を……。
みんな、VTuberをすこれっ。
「うへへ…オフコラボ〜、オフコラボ〜…っ」
「相当楽しみにしてるわね」
「当然だよ!同期の人達とは事務所で数える程度にしか会えてないし、ここで更に仲良くならなきゃっ」
VTuberと言うネットの繋がりではあるが、そこそこ仲がいいのは悪いことではないだろう。
小夜が私以外の友達が出来たのは、大変喜ばしい限りである。
小夜はとにかく元気がありまくりなのだ。その為よく人を振り回しがち(物理ではない)だから、小夜についていける人は少ない。
私は小夜みたいに物理的な体力はないが、長年付き合ってきた慣れがあるから、対処法を心得ているだけで着いていってる訳ではない。
むしろズルズルと引きずられてる感さえある。小さい子が犬の散歩してたら引きずられそうになる時あるじゃない?あれの酷い版よ、もう引きずりの刑の如くよ。
「あ、マネージャーさんから電話だ」
「あら…じゃ、私ちょっと部屋から出とくわ」
パタリと、読んでいた小説を閉じてすたすたと小夜の部屋から出ていく。
流石に業務連絡を私が聞く訳にはいかないし、ちょっとだけ喉乾いたから、何か飲み物頂こう。
小夜ん家にほぼ毎日いるもんだから、私の飲み物やコップ、食器、果てにはパジャマまで置いてある始末だ。
普通の友達、と言う定義はよく分かっていないが、これが行きすぎな事は分かっている。
多分普通は友達の家に自分専用の食器やらパジャマやらは置いているわけがないのだろう。
……って、何を考えてるんだ私は、センチメンタルって柄じゃないだろ。
全く…何か引っ掛かってもやもやすんのよね…。
…………あ…、そっか……小夜が私以外で仲良い子が出来たから、ちょっと嫉妬してるのか。
なるほどなるほど…いやそんなキャラじゃないだろ私。
小夜は親友、幼馴染、それ以上でも以下でもない。私は小夜を見守っていられるだけで良いの。
馬鹿らしい考えを払拭するために、棚にあるコップを取り出して水を1杯頂く。
「……ふぅ、馬鹿ね私は。あの子が私を置いてくわけないじゃない、考えすぎよ」
そう、何も変わらない。まだ私達は高校生。先はまだ長いのだ。
よし、よし……うん、部屋に戻りましょ。
そろそろ話が終わってる頃でしょう。
「あ、あーちゃんお帰り」
「はいはい…あら、まだ終わってなかったの?もう少し出とく?」
「あ、いや…うーん……マネージャーさん、本当に言わなきゃだめですかぁ…?うー…あい…分かりました…」
「よく分からないけど、また出とくわよ」
「待って!あー、んーと…」
「……あによ?」
「……お、オフコラボなんだけどね…あーちゃんも来て欲しいって!」
「……………………………………」
「うっっわ、めちゃくちゃ嫌そうな顔。初めてゲーム配信した時の二割増だよ大丈夫??」
当たり前だよなぁ???
え、前から思ってたが、2次STARSのスタッフは考えなしか?考えなしなんだな?よし分かったキレ散らかしてやる。
「あ、マネージャーさんが代わって欲しいって」
「嫌な予感しかないんだけど…」
差し出された小夜のスマホを恐る恐る受け取り、そっと耳にスマホを当てる。
あー……まああらかた予想付くけどさぁ……。
「はい、代わりました。小夜の友達ですが」
『突然代わってもらい恐縮です、私、小夜…VTuber鈴科リン含め3期生のマネージャーをやってるものです』
「あ、はぁ…初めまして…」
『助けてくださいぃAちゃん様ぁぁぁ!!』
「うわうるさ……っ!?」(キーン)
「私のスマホゥゥゥゥ!?」
いきなり大声で叫ぶ奴があるか!?
びっくりし過ぎて小夜のスマホ落としちゃったじゃない…あー、怒らない怒らない、私が悪かったから。
……いや、マネージャーが悪いよなぁ??
「…何を助けろって言うんですか?」
『小夜さんですよぉ!!私やスタッフじゃもう手に負えないんです!(エグッ、エグッ)』
「ぅゎ……」
『ガチでドン引きしましたね今!?こちとら真剣なんですよぉ!』
「まあ……小夜の事ですから、また何かやらかしたんですか……?」
『過去に色々ありまして……今回のオフコラボ、小夜さんを含め6人、密室、数時間、何も起きないはずが無いじゃないですか…』
あー……小夜含めあのメンツ濃いからなあ…。小夜がトラブルメーカーなのは今に始まったことじゃないが、流石に1箇所にあのメンツ集まったら、1人じゃ見切れないわね…。
てかあんた、過去に何したの??聞いた話だと、デビュー配信の時部屋間違えて先輩の配信に突入したり(本人談)、機材を誤って壊しかけたり(本人談)、自由奔放すぎて配信中って事忘れて何処か行ったり(配信見てた)、同期との初コラボの時は爆睡して遅刻したし(私が起こしに行った)、コラボしたらしたで1時間マイクミュートに気づかなかったり(私に通話かけてきたから教えた)、耐久配信したら30時間オーバーするし(寝落ちて配信止めてやった)。
あげたらキリないのに、これ以上何やったんだ……。
『小夜さんが悪い子ではないのは分かってるんです、だからこちらも注意しか出来なくて…』
「心中お察しします…ですが私は関係者とは言い難いので、流石に…」
『そこを!そこを何とかぁ!!』
「な、泣かないで下さいよ!?」
「あーちゃん…諦めよ☆あいだ!?」
あんたがやらかしたから私に依頼来てるって分かってる???
腹が立ったからグーで殴っといた。こんな私を誰が責められようか。
「はー…分かりました…私はあくまで保護者役としていれば良いんですね?」
『はい!はい!!小夜さんを見ていただけるだけで良いんです!一日スタッフとしてバイト代も払わせていただきますので!』
「はぁ…分かりました…甚だ不本意ですが、今回は受けます」
『ありがとうございます!!ありがとうございます!!』
「いえ…あの、良い大人が私みたいな子供に簡単にへりくだらないで下さい、駄目ですよ。マネージャーさんは支える立場なんですから」
「わ…私の心配も…」
お腹を押さえながらふらふらと立ち上がる小夜を無視して、とりあえずマネージャーさんを元気づける。
おいこらマネージャー、今小声でママって言ったろ?
やめて、高校生をママって呼ばないで、事案発生するから、やばいから。
「あー……オフコラボか…」
「やったぜあーちゃんっ、いだぁ!?」
マネージャーさんとの通話を終えて打ちひしがれる。
こいつ歩く災害だから、多少のトラブルはと思ったが、まさか人1人をあそこまで追い詰めるとは…小夜、恐ろしい子……。
とりあえず腹が立ったから小夜のお尻を思いきり叩いてやった。
ちったぁ反省しなさい。
そんなこんなで、私もオフコラボに行かなければいけないことになった。小夜の保護者として……。
なんで私、嫉妬なんかしてたんだ????
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あーちゃんこっちこっちっ」
「ちょ、こら…!引っ張るな…力強っ」(ズリズリズリ…)
それから数日後、予定通り私は小夜のオフコラボに引きずられていった。
朝から憂鬱通り越して鬱よ鬱。
私が緊張する必要は何処にもないが、胃が痛くなってきた。
とりあえず私はいつも通りいればいいのだ。小夜の親友兼保護者として。
私の役目はそれだけだから、大丈夫大丈夫……大丈夫、だよな…??
「はー…それなりにちゃんとした事務所ね」
「所属してる人の前で言うセリフじゃないよね!?」
「VTuberに中の人なんかいないって聞いたけど…あれ、じゃあ小夜は一体…?はっ…」
「パンドラの匣開いちゃったんだよね〜みたいな顔しないで?中に人はちゃんといるからっ」
流行りで人気が出たのは割と最近なわけだし、もしかしたらマンションの一室かもとは思ってたが、意外や意外、普通にビルの中が事務所だそうな。
「さ、行こ行こ!」
「はいはい……」
ズリズリズリとまた引きずられながら事務所に入っていく。気分はドナドナだ。
「おっはようございまーす!!小夜でーす!」
なんの躊躇もなくドアを勢いよく開けて入っていく。
ここまでずっと手を繋がれ引っ張られた状態なんでそろそろ手を離していただければありがたいんだが…。
手を離そうとすると逆に強く握り返して離さないもんだから、こいつの手汗がすんごいの何の。
さすがに人前じゃ恥ずかしいから、ハナシテ…ハナシテ…。
中に入れば、結構な人がバタバタと準備をしたりしていた。
その中で、5人組が集まって何やら話し合っていた。
小夜の声で一斉にこちらを向く。
「リンおっそい、また遅刻したかと思ったわよ?」
「いや、俺らが早かっただけで今日は普通にセーフだぞ!?」
「あら、リンが普通に来るなんて…明日は雨降りそうね」
「あらあら〜…珍しい事もありますねぇ」
「りり……リンが…誰か連れてきてる…」
1人男性が混じってるってことは、あの人たちが同期かな…?
1人私を見た瞬間、ささっと女性の後ろに隠れたけど、人見知りだろうか?
「何、あんた誘拐でもしてきた?」
「誘拐じゃないよアズちゃん!」
「妹連れてきて社会見学でもさせに来たかあ?」
「い、妹でもないよアイゼンくん!Aちゃんだよ!」
「「「「「は??」」」」」
何言ってんだこいつって表情になってるぞ…。
いや、私も逆の立場ならこうなる自信ありまくりだけど…。
とりあえず手を離してくんないかしら、小夜の手汗でなんかねっちょりしてて落ち着かない…。
「えっと、初めまして。友人Aちゃんです、よろしくお願いします」
「え、うそ、ガチ?いや、ちっさっ」
「リンがデカイから余計にそう感じるわね…」
「おいおいリン…流石にオフコラボに引き連れてくんのはなあ…」
「ま、マネージャーさんに連れてきてって頼まれたんだもんっ!」
ぷんぷんと、頬を膨らませながらすね始める小夜。
それにしても、5人の視線が痛い…。
み、見るな、みるなー!!
「………………」
「可愛い…飴、要る?」
「え…あ、ありがとう、ございます…?」
なんか知らないけど、上品そうな方に飴をもらってしまった…。
とりあえず後で食べよう。
「Aちゃんごめんね?多分マネージャーが面倒見る余裕なくて呼んだんでしょ?」
「あ、はい…えっと……」
「あぁ、ごめんごめん…んん…こんモモ!もぎたてフレッシュ、桃江梓です!…で、分かるかな?」
「あぁ、貴女が…」
凄い変わりように面食らってしまう。言っちゃ悪いだろうけど、何処にでもいそうな普通の声から、一気にアニメとかでよく聞くキャラ声になったのだ……これが、VTuber……ごくり。
とりあえず各々私がなぜ連れてこられたのか理解したようで、何故か謝られてしまった。
いや、悪いのはうちの小夜な訳でして…はい。
「さて、自己紹介しますか。リアルネームより、VTuber名のがわかりやすいでしょ。私はさっき言ったから、他の子お願いね」
「俺はアイゼン・クルーガー!よろしくAちゃんさんっ……何か配信外で名乗るの恥ずかしいなこれ」
「アザミ・ロータス…よろしくね、Aちゃん。飴、もう一個上げる」
「あらあら〜、冬式雪女よ〜。うふふ、よろしくねぇ」
「…………き、キルヒ・ルーン……」
ふむふむ……顔と名前一致できるだろうか…そもそも今後絡む予定はあるのかこれ??
あ、考えるのやめとこう……フラグたちそうだから怖い…。
てか、アザミさん何でそんなに飴くれるんですか…?
あと、なんか私を見る目がちょっと怖いと言うか…息がだんだん荒くなってきている様な……。
「ご丁寧にどうもありがとうございます、友人AことAちゃんと申します。いつも小夜がご迷惑おかけしてすみません」
「いやいやいや!Aちゃんさんが謝る必要ないぜ!?な?な!」
アイゼンさんがあわあわと慌てて周りに同意を求める。
いや、何か謝る流れかなと思ったんだけど。
ってか、小夜、手を離して?いつまで握ってるの?
「あ、今更ですが…リンのこと本名で呼んでますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ?私達も本名は知ってるから。ただ、VTuber名の方が、コラボした時ポロッと言わないで済むかなってね」
「なるほど…分かりました。」
「Aちゃん可愛い…」
「うぇ……あ、あの、近いです……」
「いくらアザミちゃんでも、Aちゃんあげないよ!がるるるる……」
小夜に手を引っ張られ、そのまますっぽりと抱き締められてしまう。
そしてとうの小夜は犬みたい唸り声をあげて威嚇し出す。
いや、前々から犬みたいだなとは思ってはいたけど、そこまで犬みたいになるとは予想してなかったわ……。
「あらあら、本当にこれで付き合ってないのかしら〜」
「リン、私もAちゃん抱き締めたい…ふぅ、ふぅ…」
「アザミ、あんたの性癖は分かるけど、流石にリンの親友に手を出すのはやめなさい…」
「ヒェ……」
え、怖……アザミさん怖っ。
何であんな綺麗な人なのに、目が血走ってるんだ…めちゃくちゃ怖い…。
あと性癖ってなんだ!?
一体どんな性癖持ちなんだよ!さ、さすがにお近付きにはなりたくないかなあ…あの、飴で買収しようったってそうは行きませんよ……??
「………………」
「…………?」
「っ……!」
雪女さんの後ろに隠れてる人…えっと、キルヒさんか。
キルヒさんが私をチラチラ見て、目が合えば雪女さんの後ろにまた隠れてしまった。
コメントで見かけたことはあったが、何かイメージと違ったな。いわゆるネット弁慶ってやつかな?
こうして私は、ついに3期生全員と顔合わせしてしまったのだった…。
知ってるか?まだオフコラボ前なんだぜ……?
へ、へへへ……あぁ…。
長くなったので前後編にしました。
待っててね
あ、あと日刊ランキング乗りました、ありがとうございます!
追記
Aちゃんとマネージャーとのやり取り1部追加
3期生の自己紹介のくだり修正致しました。