幼馴染がVTuber始めたら友人Aちゃんと呼ばれるようになった件   作:すばう

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前編、加筆修正いたしました。
皆様のご感想、ご指摘、ご意見、誠にありがとうございます。


幼馴染がオフコラボする事になりまして(後編)

「はーい始まりました!もぎたてフレッシュ、桃江梓でーす!」

 

コメント はじまた!

コメント モモアズー!

コメント 淫乱じゃない方のピンクー!

コメント こんももー!

 

「そのピンクネタまだ引っ張んの!?ピンクだけでいいじゃん!」

 

何はともあれ、特に今の所は何も無く無事に配信が開始できた。

私はスタッフさんやマネージャーさんと同じ場所で、みんなの初オフコラボを見守っていた。

 

あの後マネージャーさんに会い、会ったそうそう泣きつかれ呪詛のごとくお礼を言われた。

お礼を言われて恐怖を感じるのは、後にも先にも今回だけだろう……。

 

その後別の部屋に連れていかれて、色々話した。

まあ出るわ出るわ、小夜のやらかしエピソード……。

でも小夜も悪気があってやった訳じゃない、むしろ善意で動いてから回っちゃった感じだった。

 

例えば、機材の搬入。

自ら手伝うと言い、気合い十分なのだが、やる気が空回りするのかぶつけてしまったり落としかけたりして大変だったとか。

 

でも本人は大丈夫だと言って、何かしら動こうとしては失敗、失敗しては気合い入れて失敗しないようにと負の連鎖なのだ。

 

誰かの為に何かをしようとするが、慣れてない為か周りが見えなくなり、それでこの有様と言った感じだ。

 

確かに、本人に悪気はないし、率先して頑張ろうとしてるもんだから、怒るに怒れないんだろうなあ…。

 

例えば対人関係。

ほとんど私としか絡まないもんだから、人のパーソナルスペースの測り方が分からないのだろう。

小夜のパーソナルスペースは狭い。いつも例えてるように、人懐っこい犬のように、それはもうコロコロと懐く。

 

だが如何せん、一般の女性に比べ小夜は大きいのだ、モデルも真っ青な高身長。

更にはあの無尽蔵な体力にフィジカル……時折抱きつかれる時なんかは、私相手でまだ加減してるからあれで助かってるが、あのパワーや体力で小夜に振り回されたら(物理ではない)身がもたない。

 

それでよく同期、先輩方、スタッフさんやマネージャーさんが振り回されているらしい。

まだ出来たばかりの事務所で人も少なく、どうしても全員を見るのは難しい。

 

小夜に至っては1人じゃ足りないからだろう…トラブルメーカーの名はダテじゃない……。

 

「はい、こんちゃっす!アイゼン・クルーガーだぜ!いえーい、皆みってるー?」

 

コメント 百合に挟まる間男

コメント 解釈違いです

コメント 帰って、どうぞ

コメント 炎アイゼン炎

 

「相変わらず俺への当たり強い!?てか燃やすなよ!」

「あーあ、またアイゼン君が炎上(物理)したわね、もう炎上系VTuberってなのれば?」

「お前にも飛び火させて焼きピーチにしてやろうかおい」

「さ、次行くわよ〜」

「なんか言えよ!?」

「はーい!!こんリン☆鈴科リンだヨ!」

「ごきげんよう、アザミ・ロータスよ、今日はよろしく、皆さん」

「うふふ、こんにちはぁ、冬式雪女よ〜、貴方の熱で、私を溶かして♪」

「こんこんコーン!キルヒ・ルーンだコンっ!」

 

梓さんとアイゼンさんのやり取り?漫才?をぶった斬るかのように、他の4人も各々自己紹介していく。

はー、しっかし…小夜のVTuber活動をリアルで見るのはちょっと新鮮…。

 

本当に楽しいんだろうなぁ。

てか、キルヒさんのオンオフ凄いな……。

 

「さて、まず今日は、ぶっちゃけ話とかもろもろ出来たらなと思い、事前にリスナーからマシュマロを募集してました!」

「どうせ俺への当たりが強いんだろ??ん??」

「アイゼンは燃えやすいから仕方ないコン、こんな美少女に囲まれてハーレム築いてたら仕方ないコンね!」

「び…しょう、じょ……?」

「あら〜、お姉さん、き・れ・い?うふふ」

「雪女さん…貴女雪女なんでしょ、それは別の妖怪よ」

 

コメント アイゼン屋上

コメント アイゼン君また燃えちゃったね

コメント 雪女さんそれ口裂け女や

コメント 妖術使いさん可愛いだろ!いい加減にしろ!

 

「魔女じゃい!!」

「でも狐と言ったら妖術だよネ!」

「はいはいマシュマロ大盛りよ〜」

 

カチカチと、みんなの2D絵の横にばばんとマシュマロが貼り出される。

リスナーから送られてきたマシュマロをどんどん捌いていく梓さんは、中々に進行上手だった。

 

「3期生の皆さんこんにちは!個人的な質問ですみません、オフコラボではありますが、名誉3期生のAちゃんは来るのでしょうか?気になりすぎて夜しか眠れません!いや寝てるじゃん」

「あー…この質問なぁ…ぶっちゃけ言っていいのか?」

 

コメント お、なんだなんだ?

コメント 流石にただの一般人の話題出しすぎて怒られたか?

コメント あくまでリンちゃんの幼馴染なんだもんな、話題に出してはいいだろうが、踏み込みすぎたのかも

コメント 2次スタ運営も、まさか所属Vの幼馴染が人気出るとは思わんやろ

 

それもそうだ、何で幼馴染の私が人気出るんだ。もっと別のVTuber推せ推せ。

ほら、鈴科リンなんかおすすめだ、是非見てあげて欲しい。

チャンネル登録もちゃんとするのよ。

 

ふと、全員の視線がマネージャーさんと私にむく。

おや、話してもいいかってことかな……?

 

「どうします…?」

「Aちゃんさんが良いなら、私達は問題ないです。Aちゃんさんがいい気がしないのなら、今後取り締まっていきますけど」

「いえ…今の所実害ありませんし…小夜もたのしそうにしてるので、気にしてません」

 

お互い同意の上、って事で。

マネージャーさんがOKサインを出し、小夜を除いた5人が顔を見合わせる。

 

「しっかし、リンにはビックリしたなぁ?あーんな可愛い幼馴染居たなんてな!」

「本当ね、配信前に会った時びっくりしたわよ?」

「Aちゃん…可愛い、是非とも仲良くしたい」

「リンちゃんの保護者ってイメージだったからぁ、大人な女の子を想像してたけどぉ…うふふ」

「アザミの性癖にもろぶっ刺さってて、Aちゃん警戒してて草コン」

 

コメント え、会ったのか!?

コメント 草コン

コメント めちゃくちゃ気になる!気になりすぎて、杉になったわね…きだけに

コメント 一般男性は料理してて、どうぞ↑

コメント さっぶ

コメント √3点

 

「え、え、え?い、いきなり何なのサ!」

「まさかオフコラボまで連れて来るなんて〜、流石に私達も予想外だったわよ?」

 

梓さんの発言に、元々速かったコメント欄がさらに加速していく。

そこにAちゃん居るのか。授業参観かな?娘の授業を見る親の心境で見てそう。Aちゃん人気すぎて草。ちくわ大明神。

 

などなど、物凄い反応が流れていった。…まて、誰だ今のは。

 

「だ、だってぇ!マネージャーさんに連れてきてって言われたんだもん!」

「という訳で、リスナーには悪ぃけど、俺たちAちゃんさんに会っちまったぜ、はっはっは!」

 

コメント 煽りよる

コメント めちゃくちゃ気になるんだが!

コメント アイゼン君屋上

コメント 久々にキレちまったよ、屋上行こうやァ

 

「自ら燃えに行くアイゼン…お前の事は、たぶん、まぁ…うん、忘れないコン」

「いやそれ忘れるやつぅ!?」

「アイゼン君…?知らない子ねぇ〜」

 

流石同期、という事もあるのか、本当に凄く楽しそうだ。私以外の誰かと話したり、じゃれあったり、笑ったりしてる小夜の姿を見て、心底安心した。

 

うん、安心、したのだ…それと同時に、何処か小夜を遠くへ感じてしまう。

VTuberという活動で、どんどん有名になっていく。これから同期じゃないVTuber共、絡んでいくんだろうし、忙しくもなるだろう。

 

そうなったら、果たしてそこに、私の入る余地はあるのだろうか……。

なんて、そんな事を考えていた時だった。

 

「あ、飲み物なくなっちゃった」

「まだあっちに予備の飲み物があった筈よぉ?」

「あ、じゃあ私が取って来るヨ!」

「「「「「えっ」」」」」

「よいしょっ」

 

そう言って立ち上がり、駆け出そうとした瞬間だった。

小夜が駆け出す先にはコードが伸びており、ガッツリパソコンに繋がっているものだった。

今の小夜には絶対見えていない、十数年間付き合っていた幼馴染の勘が告げていた。

 

えらいこっちゃと……。

間違いなく足を引っ掛けてパソコンが吹っ飛んでいく未来しかない……。

そして私は思わず叫んでしまった。

 

「リン!!ステイ!!」

「ワウ!?はい!!」

 

ぴん!っと体が駆け出す前で止まり、小夜の体が硬直する。

ほ……良かった…大事にならなくて良かった…。

 

……はえ、何ですかこの視線…?

あ……そう言えば今、生配信…もしや私の声が入ってしまった…か?

 

コメント 今の声は???

コメント マネージャーさんか?

コメント にしては、若いというか、幼すぎじゃないか?

コメント めちゃくちゃ可愛い声

コメント 先輩かな?

コメント でも聞いたことない声だったぞ

 

「あ、あははは!あ、新しいマネージャーさんかな!もうリン、ちゃんと下も見なさい、周りにコードあるでしょ?」

「あ、あぁ…そうだぞリン、危うくコードに引っ掛けて大惨事になる所だったぞ!」

「び、びっくりしたぁ…Aちゃんありがとう!」

「誤魔化してたの気づけコン!?」

「あ、あらあらぁ……」

 

チラッとマネージャーさんやスタッフさんを見ると、申し訳なさそうな表情で頭下げられた。

あ、あー……ま、まぁ、うん…声が知られた位いっか!

 

パソコンは守れた、小夜の怪我も回避出来た、万々歳である。

 

コメント リンちゃんバラしてて草

コメント やっぱりAちゃんか!

コメント 切り抜き決定した瞬間である

コメント これで一般人ってま???

コメント 声でわかる、絶対美少女

コメント 声ソムリエ助かる

 

コメント欄はもうお祭り騒ぎだ。

いや、一言発しただけでそんな騒ぐことかな!?

 

この事態にめちゃくちゃびびっている自分がいる…いや、恐ろしすぎでしょ本当に……。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

後日談と言うか、今回のオチ。

あれからしばらくコメント欄は止まることを知らず、落ち着きを取り戻すのに数分以上費やした。

 

何故か瞬間視聴者数をぶっちぎってしまい、またTwitterや動画サイトに友人Aと言う名が駆け巡ったのだった。

 

「いやぁ…すっかり有名ですなぁあーちゃん」

「誰のせいよ誰の…ってか、あんたはもう少し周りを見なさい」

「ごめんなさーい…」

 

配信が終わり、皆さんに謝ったが、満場一致で小夜の不注意って事で何も言われなかった。

むしろ逆に謝られてしまい、こちらがテンパってしまったくらいだった。

 

「あんたあんなに周り見えなくなるタイプだった?」

「えっとね…今まであーちゃんと遊んでたからね?あーちゃん、私の手伝いとか要らず何でも出来るから、せっかく出来た新しい場所で、誰かの為に頑張ろーって思ってやると……その……」

「やる気がから回ってる証拠。いい心がけだけど、出来ないことは無理にしないの」

「う……はい……」

 

そう言ってしゅんと落ち込み、項垂れてしまう。

……は、いけない…とうとう幻覚が……。

 

今、叱られて犬耳がたれて落ち込んでる小夜の姿に見えたわ…いけないいけない……。

 

「じゃ…空回りしないよう練習しましょっか」

「練習……?」

「そ…簡単なことから始めましょ?……私、ゲームで素材集めしたいんだけど…誰か手伝ってくれないかしらね…ちら、ちら」

「あ……はい!はいはい!私手伝う!手伝うよっ」

「ん、じゃあ、お願いね」

「うん!」

 

小夜が今の環境に頑張って馴染もうとした結果、だと私は思っている。

慣れないことを慣れないままやるから問題なんだろう。

 

だったら、少しずつ慣れさせて上げればいい。

最初は機材の使い方すら四苦八苦していたのに、今では十全につかいこなせる。

 

じゃあ小夜に出来ない道理はない。

何たってこの子は、VTuber鈴科リンなんだから。




最終回ではない、まだ続くのじゃよ。

誤字報告、ありがとうございます。めちゃくちゃ助かってますっ。

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