香と鈴が出かけた日の翌日。
仁は自身の部屋の中で仕事用の準備をしながら考え事をしていた。
「…鬼導隊と鬼殺隊、さらには鬼斬り…か。」
それは早朝に帰ってきた佐吉と灯純、それとその話を聞いて思い出した香が朝ご飯の際にもたらした情報だ。
「鬼導隊一番隊隊長の白陽がこの世界にいるのか…」
佐吉、灯純の話では、白陽と黒陰が生きてこの世界にいるという。それは400年前の姿で、最終決戦の時の力よりも強い力を持っていたという。
「だまり。」
「あぁん?」
「白陽が俺たちの前に現れたらどうする?」
「ぶっ潰すにきまっとろうが。」
「だよな。」
そういい、仁は佐吉から渡された紙を見た。
「この紙にはだまりの母体となった顔の無い鬼が封じられている、か…」
「そういえばさっきそう言ってたな。」
「今は使えないらしいがな…それより問題は鬼殺隊と鬼斬りか。」
鬼殺隊。政府非公認の鬼を狩る組織。鬼導隊はもともといた世界もいたものだから何とかなるが、鬼殺隊は何をしてくるかわからない、というのが仁の考えだ。そして鬼斬り。こちらも鬼殺隊同様何をしてくるかわからない。
「…どちらも情報が少ないな。まずは情報を集めるところからか。」
「情報を集めるといってもどうするのだ?」
「買い物に来たお客にでも聞いてみよう。幸い、ここは昔から鬼門が出る場所だったらしいからな。鬼狩りの情報なんかは聞けるだろう。」
「そうか…」
仁は黒の着物を着て、部屋の外へと出た。
「仁よ、今宵は何体狩るのだ?」
「気が早い。まぁ、3体狩れればいいだろう。」
「そうか。」
そんな話をしていると、いつの間にか店表についていた。
「あ、来た。お店、開こう?」
「あぁ。分かった。」
香と仁が開店準備を始めた。
「昨日、誰か来た?」
「いや、そこまでは来なかったな。昨日気をつけろと言われた人も来なかった。」
「そう…」
お客を迎える準備が終わると楽、花、鈴、涼の四人が店表に出てきた。
「今日は客来んのかね…」
「最近来てたがどうだかな…」
「ごめんください。」
「あ、いらっしゃいませ…」
仁がそう言いつつ振り向くと、そこには前回着物等を買っていった小柄な女性がいた。
「少し、話を聞きたいのですが。」
「「…」」
「一度ここで買い物しましたよね。覚えてますか?」
「…はい。」
香が硬直から戻り、応対を始めた。
「鬼殺隊の剣士様…胡蝶しのぶ様でしたよね?」
その言葉が発せられた途端、屋敷内の空気が少し変わった。
「はい。胡蝶しのぶです。このお店は…子供6人だけで?」
「まぁ、基本的には、ですが。たまに手伝ってくれる人とかいますが。」
「そうですか…」
女性は少し考えたような顔をしてから、口を開いた。
「昨日の早朝、ですか。この街に鬼が現れました。」
「そう…ですか。」
「空間を操り、その空間を閉じ。その中で誘い込んだ人間を殺す、そんな鬼です。」
「…」
「私はその鬼を倒すことの指示を受けました。現場についてみれば、民間人の方がその鬼と戦っていました。」
「はぁ…」
「本来あれは鬼殺隊でもかなり上位の階級でなければ苦戦する代物。それを、民間人の方…いえ、呉服屋の当主である貴女が、倒しました。」
「…人違いでは?」
「そうでしょうか。刀を振るい、見たこともない技を使う、謎の黒髪の剣士。先日突如現れたあなた達が一番怪しいと思われますが?」
「この町には鬼斬り様、というのがいるのをご存じですか?夜な夜な鬼を狩る方のことです。その方も刀を使うとのことですが。」
「…ですが、私はあの場を近い場所で見ていましたが、容姿といい何といい、貴女に似すぎています。」
「人違いです。第一、私はその時屋敷にいました。」
香のこれは完全に嘘である。ご存じだろうが、その時丁度鬼と戦っていた。
「…すみませんが、こちらは営業時間には限りがありますので、お買い物でないならばお引き取り願えませんか。」
「…また後日、日を改めます。」
「はて、何度来たところで話すことは変わりませんが。」
「…貴女は、なぜ鬼を狩るのです?死ぬかもしれませんのに。」
「質問の意図が分かりかねます。第一私は鬼を狩ってはいません。」
「…そうですか。最後に質問、よろしいですか?」
「何でしょう?」
女性は香に目を合わせた。
「貴女が私から感じたという血の匂い。あれは何ですか?」
「…答える理由がありますか?」
「教えてくださいませんか?」
女性の言葉に香はため息をついた。
「お断りします。」
「…そうですか。ですがこれだけは教えてください。今、私から血の匂いはしますか?」
「?えぇ。」
「……そうですか。」
「「「「「「??」」」」」」
女性はそのまま店を後にしようとした。
「お待ちください。」
香が呼び止め、女性が振り向いた。
「何でしょう?」
「これをお持ちください。」
そう言って香が差し出したのは小さな剣だった。そこから紐が伸び、札が付いている。
「これは?」
「お守りのようなものです。」
「…何故?」
「お聞きしますが、何故貴女様は鬼と戦うのです?」
「…」
女性は答えずに店を出た。
「…無解答、ね。…まぁ、なんとなくわかってたけど。」
そう呟き、軽くため息をついた。
side 胡蝶しのぶ
「…さて、この剣はどうしましょうか。」
先程あの少女に渡された剣。謎すぎるが、鬼のような気配はなかったので、捨てずにいた。
「…にしても、あの子。本当に知らないように見えた。知ってると思うのだけど。」
路地の中、背中を壁に預けて言葉を漏らしていた。
「…鬼斬り様、ね。…調べてみる価値はあるかもしれませんね。その前に、あの子のいる屋敷、本当に彼女が夜に外に出ていないのか見張っておくとしましょう。」
そう呟き、私は下宿として借りている場所に向かった。
───夜。結論から言うと、本当に誰かが屋敷から外に出た様子はなかった。
しのぶさん達が気がついてないだけで本当は香達は外に出てます。ヒントは鬼神族。
真面目に最近ネタ尽きてきたのです(ギリギリの繋ぎで何とか組んでる)
あ、凶報っていうのは鬼導隊、鬼殺隊、鬼斬りが存在するっていう情報のことです。