最近登校時間が遅くなってしまい申し訳ないです…
錦糸綺糸屋、昼。香の部屋内。
そこには白猫と黒猫に見守られながら眠る香の姿があった。
───朝。
仁は今日の店の準備をするために一ノ蔵に向かっていた。
(…あれから香は帰ってないようだが…いったいどこに行ったんだ?)
仁が考えていたのは錦糸屋の当主である香のこと。昨日の暗い時間帯に一人にした後、彼女が錦糸綺糸屋に帰ってきた足跡は見当たらなかったからだ。
(…一体どこでなにをしてるんだ、全く…鈴が心配してるぞ…)
彼女の恋人である鈴が心配していることを考えつつ、一ノ蔵の鍵を開けた。
「楽、灯り。」
「おう」
後ろからついてきていた楽に灯りを求めると、一ノ蔵内部が照らされた。
「…ん?なんだ、これ…」
仁が蔵の中に落ちている赤い布にかかった何かに気がついた。
「…なんだ……っ!?」
「なぁっ!?」
仁が布をはがすと、仁と楽が驚きの表情を浮かべた。
「こ、香!?なんでこんなところにいるんだ!?」
そこにいたのは香。帰ってきた痕跡の無かったはずの、香だった。
「気…失ってんのか?」
「…死んではないみたいだ。なら気を失ってるんだろう。」
「そうか…ともかく、鈴と涼に伝えてきたほうがいいよな。」
「あぁ…頼む…あと香の父親も頼む。」
「分かった」
楽が一ノ蔵から出て、屋敷内に駆けていった。残された仁が、ふと香の着物を見ると、何か鋭利なもので複数回斬られたような跡があった。
「これは……一体…?」
その後しばらくすると、鈴と灯純が屋敷から出てきて、灯純が香を担いで屋敷内に連れて行った。斬想鬼については鈴が屋敷内へと持って行った。
───そして今に至る。
香が寝ている部屋の中に、一つの人影が入ってきた。鈴だ。
「若女将……まだ起きないんですね…」
既に仁達に見つかってから3時間は経過している。ほぼ一時間おきに来ているというのに未だ香が起きる気配はない。
「…早く…起きてください…───…」
香の額に手拭いを乗せ、呪文を唱えてから退室した。
その場にいるのは白猫と黒猫。そして、眠った香とりんねのみである。
そうして暫く経ったころ。
「…ぅ」
香から小さな声が聞こえた。それに白猫が反応し、香の体の上に乗る。
「うぅ…」
香が体を起こす。それと同時に香の額から手拭いが落ちる。
「…?これは…」
「お目覚めですか?」
白猫の方から声が聞こえる。
「その声は…ツルさん?」
「えぇ。意識ははっきりしておりますか?」
「は、はい…」
「では、鈴を呼んできますね。すごく心配されてましたから。」
白猫が口を開けると、そこから霊体の鬼が飛び出し、屋敷を飛んで行った。
「…幽鬼、か…」
「にゃ~」
「みりかと…あと…?」
「この子は佐吉からクロという名をもらっていますよ。」
黒猫が話し、口から霊体の鬼───幽鬼が現れた。
「あなたは?」
「“ユキ”、と言います。」
「ユキさんですか…」
そんな話をしていると、部屋の外から走る音が聞こえた。
「若女将っ…!」
「あ…鈴…」
「…っ…よかった…!」
鈴が若女将に抱き着いた。
「っ!?び、びっくりしたぁ…」
「よかった…!」
「…私はお暇させていただきますね。」
ユキと名乗った幽鬼は黒猫の中へと戻り、白猫とともに部屋を退室した。
「…ごめんね…心配かけて…」
「心配…しました…私を置いて…どこかに行ってしまうのかと…」
「…ごめん」
香が鈴の背をさすり、落ち着かせていた。
「…あっ」
鈴が気がついたような声を発し、香から離れた。
「はわわ…///」
恥ずかしいことをしていたのに気がついたのであろう、顔を赤くしていた。
「そ、そういえば若女将…」
「な、何?」
「昨夜はどこに行ってたんですか?」
「昨夜…あぁ…」
香は少し考えるような顔をした。
「ちょっと、強い敵と戦ったんだよね。相手に加減されてたからなんとかなったけど、されてなかったら、って考えるとね…」
香の言葉に鈴が顔を青くした。
「ここに若女将はいなかった…?」
「…不安に思わせること言いたくはないけど、そうなる。」
「そんな…」
その場に沈黙が下りた。
「…そうだ、りんね。」
「…なによ」
「今日、私の体動けると思う?」
「…無理ね。あいつに与えられた傷が多すぎるわ。私の力も少し足りないから今日一日は安静にしてなさい。」
「…分かった。」
りんねは言い切ると、香の影に溶け込んだ。
「…お腹…減ったかも…」
「…朝ご飯、食べます?」
「あ、うん…」
「待っててください、今持ってきます…」
鈴が退室し、台所の方へと駆けていった。
「…よ。どうだ、気分は?」
「お父様…」
入れ替わるように灯純が現れる。
「…お前、鬼と戦ったんだって?」
「あ…うん…」
「どんな奴だった?」
「…人間に近かったけど六つ目で…あと…刀を使ってた。」
「ほぉ…」
灯純は少し悩むような表情をした。
「そう言えばお父様。」
「ん?」
「“月の呼吸”、って知ってる?」
「月の呼吸?」
「敵が使ってた技っぽいやつの名前なんだけど…」
「…いや、知らねぇな。もっと情報集めた方がいいか。」
「お願いしてもいい?」
「分かってる。それはそれとして香、あの術の構築は終わってるのか?」
「あ~…」
灯純の言葉に香が言葉を濁した。
「構築は終わってない…なんとなく理論とかはできてるんだけど。」
「そうか…いつごろできる?」
「多分あと1ヵ月はかからないはず。」
「…そうか。俺たちはお前の術式構築を手伝うことはできないからな…」
「あはは…魔法なんて、お父様たちは知らないもんね…」
魔法。香が使う謎の術。灯純たちはこれに対する理解ができていない。
「魔法の理論は何となく理解できるんだがな…術式の施行、術式の改変なんざ俺達にゃできん。っつうかよくやろうと思うよな…」
「あはは…」
香の笑い声が乾いていた。
「まぁ私は慣れてるし。どこを変えていいのか、どこを変えちゃダメなのか理解できてるから。」
「俺にゃ全く分からん…」
「まぁこれに関しては慣れだから。」
「すげぇのかおかしいのか…」
灯純が頭を抱えた。その時、ちょうど鈴が顔を出した。
「持ってきました…」
「あ、ありがと…」
「…じゃ、俺は失礼しますよっと…」
そう言って灯純は姿を消した。
「若女将、一人で食べれます?」
「あ、うん…」
「じゃあ…どうぞ…」
鈴が差し出したお椀を持ち、一口食べる。
「…味がない、ってことはまだ治ってないのね…」
「そうね…」
「…ん、おいしい。いつもありがと、鈴。」
「い、いえ…」
香が食べていると、部屋の戸を叩く音が聞こえた。
「はーい」
「香…すまん、俺だ。ちょっといいか?」
「仁…?どうぞ~」
香が答え、仁が部屋の中に入ってきた。
「あ…食事中だったか…」
「大丈夫。で、何か用?」
「あ…っと…」
仁は鈴に目線を向けた。
「…私、席外しておきますね?…聞かれたくないみたいなので。」
「あ、うん…」
「すまん、助かる…」
「いえいえ…」
そう言って鈴が部屋の外へと出た。
「…それで、用事は?」
「…香。頼みがある。」
「…何?」
「俺を…鍛えてくれないか。」
その言葉を聞いて香の目線が鋭くなった。
「…理由を聞いても?」
「…強く、なりたいんだ。もう、誰も…失わないために。」
「…」
「お前が見せたあの武器の使い方。あんな使い方ができるなんて俺は知らなかった。」
「…」
「俺は、しばらく戦っているというのに知らないことが多すぎる。似た武器を使う者として香に鍛えてもらいたい。」
「…そうですか。」
香は仁から視線を外し、近くにあった斬想鬼に触れた。
「…辛くなるかもしれませんよ?」
「かまわない。もとよりそれは承知の上だ。」
「…分かりました。」
香はそう言ってから軽くため息をついた。
「では、明日の夕方、お店を閉めてから。その後2時間ほど、私から教えましょう。」
「…助かる。」
「…ですが、私が教えたとしても。その技を本当に身に着けられるかはあなた次第ですよ。」
「…分かった。」
それを聞いた後、香が何かに気がついたような顔をした。
「…あ。敬語戻ってた。」
「確かにな…それが素なのか?」
「分かんない。」
その後、香の部屋には何度か人が来て、違う人が来るたびに前にいた人が退室するという形になっていた。
はい、仁強化フラグ的なのが立ちました。多分今炭治郎さん達は藤の家にいるんじゃないですかね?骨折治癒とかで。
次回は教導回かな…
ではでは。