仁達が香から離れている間。香の方はというと。
『……いやだ……もう……いやだよ……』
香の声ではない、誰かの心の声を聴いていた。
『……あなたは…?』
『いやだ……いやだ……』
香は問いかけたが回答は得られなかった。それどころか青色の閃光が強くなった。
(……やっぱり…この雷はこの子の拒絶反応。…この刀には、意思が宿ってる。それも、かなり強力な。)
『やだ……もういやだ……』
(道理で、他の人に触ることができないわけだよ。心意は確かに圧倒的な力で捻じ伏せることはできるけど……それはまだ軽い部類の心意の話。この心意はすごく強い。力も何もなければ弾かれる……この子が認めなければ、反発を起こさずに触ることはできない“拒絶の心意”。厄介なタイプ…だけど。)
香は思考を回しながら心意の出力を上げた。
『お願い!!話を聞いて!!』
『やだ………やだ……』
刀からの心意の出力が上がる。
『ねぇ!お願い!!私の話を聞いてほしいの!!』
『いや……私に………関わらないで……』
刀からの声と共に心意の出力が上がっていく。香の胴体に青色の閃光が触れ始め、香の表情が疑問気なものに変化した。
(……これって
そんな思考を回した直後、香の身体から周囲に花びらが出現し始めた。雷を放つ刀と花が触れ合った途端、変化が起きる。
『……!?やめて……やめてよ…!!』
香の頭にその声が流れたかと思うと、瞬時に香の身体が火に包まれた。
(
『…お願い!!私の話を聞いてほしいの!!』
『……誰?』
そこで、初めて声の主が反応を見せた。
『…わたしは…』
『お願い……私にかかわらないで……』
『…』
『私と関わると……不幸になっちゃうから…』
『え…?』
香の思考が戸惑いを見せた。
『……お願い。貴女の話を聞かせて。』
『え……私の?』
『どうして、貴女はこの刀に宿ったの?どうして、私を……ううん、作り手以外の全員を拒絶するの?』
『……』
香の問いかけに刀が黙り込んだ。
『…私は』
刀の声が微かにした。
『…私は……もう、私のせいで人が死ぬのを見たくない……』
『…え?』
『……私が日輪刀として作られて。それが剣士に渡されて。剣士と鬼が戦って……』
『……』
『私が弾かれて折られそうになった時…私を使った剣士達は…ううん、私が見たことのある剣士達は…みんな私を庇って死んでいく……私はただの道具なのに……』
『……』
『最後には私も折られるけど……またすぐに私は日輪刀として作られる……作られて、殺されて、折られて、作られて、殺されて、おられて………もう何年も何年も、同じことを繰り返してきた……』
『………』
『私は鬼を許さない……だけど……もう…いやなの……』
香は刀の言葉を静かに聞いていた。
『私は……もう……目の前で人間が死ぬのを……見たくないの…っ!!』
(……そっか。)
『お願い……もう放っておいてよ!!』
(強い悲しみの心意。長い時間積み重なった悲しみがこの刀に宿る魂を埋め尽くしている…でもこんな刀の魂、普通に作って込められる代物じゃない。)
香は思考を回したまま問いかけた。
『ねぇ……貴女の想いが、今までここまで明らかに可視化できるような形で出ることってあった?』
『……ない』
『……そっか。』
(ということは……玉藻さんが作ったからこの刀は意思が宿った。異世界の住人であった玉藻さんが作ったという世界を歪める変化が、この事象を引き起こしたと考えた方がいい。……この子が、安らかにいられるために……私ができることは……)
『……お願いだから…放っておいて…!』
(私は……)
『お願い……』
その声の後、一瞬火が消えたかと思うと、今度は水の球体の中に閉じ込められた。
「若女将!!」
『……ごめん、鈴。でも…私は大丈夫。』
香が叫んだ鈴の方をちらりと見てそう思考を飛ばした。
『……貴女にも大切な人がいるんでしょ!?なんで……なんで離さないのっ!!』
『…確かに鈴は大切だよ。でも……私はこれくらいじゃ死なない。私はあらゆる属性を極めし者。属性への対応くらい、簡単にできる!!』
『っ……』
『それに……私にはまだ力が必要なの。……私は……まだ弱いから。私は大丈夫でも、大切な人を守れないと意味がない。』
『………私は…』
『あなたは……守りたい人とかいなかった?』
『皆大切……鬼殺隊のみんなが……でも……もう…私の目の前で死ぬのを見たくない………』
『……なら!!』
香が流す声を大きくした。
『私は……私が救うことのできる人は救う!!例え死にかけていても!!例え鬼の呪いに侵されていても!!それが私の手の届く範囲なら誰だって救う!!』
『……無茶だよ』
『無茶じゃない!!』
香は刀の言葉を瞬時に否定した。
『無茶じゃない!!ここに“私”という存在がいること!!これはいくつもの偶然が重なった奇跡なの!!私の手が……私の力が及ぶのなら!!私は誰だって救ってみせる!!』
『……』
『だから……お願い……私を……信じて…!』
刀はしばらく無言だった。
『……本当に?』
『…?』
『本当に……誰でも…救ってくれるの?』
『……そこに、私の力が介入することができるのなら。』
刀はまた黙った。
『……なら……私からも…お願い。私の記憶を取り戻して……』
『…え?』
『私……刀の魂になる前は別の何かだった気がするの……お願い……今の私の力はまだまだなの。私の記憶が戻れば……多分。私はもっと力を発揮できるようになる。』
『……分かった。…あなた、名前はある?』
『……名前は……刀になってからは“
『…未来、か。うん。いい名前、かな。私は……香。』
『香……よろしく。』
『うん。よろしくね。』
そんな思考が交わされると香を包んでいた水が消え去った。
とすっ
そんな音と共に香の身体が倒れた。
「ちょっ、香!?」
「わ、若女将!?」
りんねと鈴が慌てた様子で近づき、鈴が脈を診た。
「脈は正常ですね……」
「傷も開いてないわ。…ともかく、融合しておくわね。」
(…この二体の鬼は……この世界の鬼じゃない。……この鬼たちは大丈夫かな。)
刀……未来という名を名乗った刀の魂はそう思ったという。
香は日輪刀を入手しました。ただしまだ色変えは済んでおりません。
香の秘密を話す時期はいつがいいですか?
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無限列車直後
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遊郭前
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刀鍛冶の里前
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刀鍛冶の里直後