「方法はいつもと同じ。私はりんねが憑いている状態、仁は力の制限がされていない状態。…ひとまず、一本目。やろうか。」
「あぁ…軽く頼む。……と言いたいところだが、いいのか?今回はいつもの武器じゃないぞ?」
「問題ないよ。」
「…そうか」
「気張れよ、仁」
「分かっている。」
香はだまりが声を発したのを見て何かを思いついた表情になった。
「…あ、そうだ。融合第二段階で戦ってみて?」
「え?あ、あぁ……」
言われるがままに仁はだまりと同化する。それを初めて見た者達はざわついた。
「…これでいいのか?」
「うん。さ、やるよ」
二人は間合いを詰め、一歩踏み込めば剣が当たる位置についた。
「「…」」
「始め」
「「っ!」」
楽の小さなつぶやき。それが香と仁を動かした。
「火炎一閃・
先に技を放ったのは仁。赤い炎を纏った一閃が香に向かう。香はそれを見つめていた。
「火属性系統、火炎一閃の強化第三段階。…う~ん、そうだな“桜花放出”」
香がそう呟くと、香の身体から桜の花びらが現れ始めた。
「“咲け”」
仁の炎の量を上回る花びらの量。それがきれいに整列して香と仁の間に構築された。
「元々、花属性は火属性と相性は悪い。だけど、数の暴力で何とかなるよ。」
「いつも打ち消されるのはそれが理由か……!」
「そう。まぁ、今回は薄めだから多少弱まる程度だと思うけど…」
香がそう言った直後、花の壁が焼き切れた。
「まぁこれくらいだとは思ってた。…だから、次の一手は用意してあるよ。“氷結放出”」
「なっ……別属性の放出!?」
仁が驚いた通り、香の身体から放出されているのは氷。花から氷への瞬時変換。
「“構築せよ”」
「氷の壁か…なら……“火炎放出”、“ヴォーパル・ストライク”!!」
「…あ、それは賢い」
仁は火炎放出で剣に炎を纏ってからヴォーパル・ストライクを放った。つまり仁が狙ったのは、炎を乗せた重い突進での一点突破、だ。
「なら私の一手は……“ヴォーパル・ストライク ver.Reverse thrust”!!」
刀を逆手に持ち、体の後ろから前へではなく前から後ろへと剣を突くことで本来の方向とは逆側へと“ヴォーパル・ストライク”を放つ。まさに
「なっ……そんな技あったのか!?」
「あったけど教えてない…これ結構難しいから。剣技連携“ヴォーパル・ストライク”」
香は突進してきた直後の仁にヴォーパル・ストライクを打ち込んだ。
「っとぁ!?」
「油断禁物…ってね。“ホリゾンタル・スクエア”」
香は周囲を切り払い、黒い何かを断ち切った。
「むぅ…気がつかれたか。」
「あれくらいなら、ですけど。あともっと硬質化鍛えた方がいいと思いますよ?だまりさん。」
「む…」
「気配遮断と硬化強化。まぁまだ同時発動は難しいと思いますからじきに教えますよ」
「むぅ……」
「それから仁は攻撃強化。心意使ってないから攻撃が軽すぎる。」
「……忘れてた」
「……」
香は頭を押さえた。
「心意での強化はまだ忘れちゃダメ。まだ仁の心意強度は高くないから一気に放出して強い一撃を放っても心意残量が残るようにしないと。」
「…わかった……」
「じゃ、とりあえず心意を一気にぶつけてみて。今の状態を見るから。」
「あぁ……だまり、黄泉、すまないが補助を頼めるか。」
「任せておけ、仁。」
仁の持つ刀が少し光った気がした。
『……未来。黄泉さんって心意の出力補助とかできるの?』
『心意……ってまず何?』
『意志の力。』
『…それ、私もできる。』
『そうなんだ…』
そんな思念会話を交わしたのち、香は鏡写と同じ構えを取った。
「…おぉぉぉっ!!」
(!?)
その心意の濃さに、香が驚きの表情を浮かべた。
「……ぁぁっ!!」
香に対して紫色の光線が放たれた。
「…へぇ…!」
香は笑みを浮かべて、左足を体の後ろに、つっかえ棒のようにした。
「…“リフレクション・ミラー”ッッッ!!」
技名宣言。その後、
「は?」/「は?」
仁とだまりが同時に声を出した。恐らく、受けられるとは思っていても跳ね返されるとは思っていなかったのだろう。
「…まったく。心意を組み合わせているとはいえ一度の出力が大きいね…」
剣を鏡写の時の構えにしたまま香が口を開いた。
「仁の火属性を纏わせた心意。だまりさんの闇属性を纏わせた心意。そして黄泉さんの氷属性を纏わせた心意。それらを組み合わせ、一つの砲撃として撃ち出す、か…なかなかいい方法じゃない?でもって、こんな方法私はまだ教えてないけど。」
「…何か…悪かったか?」
「別に…他人と協力して何かを作り上げるのはかなり楽。今の仁は瞬間的な心意の出力がまだ低めだからこれからもこういうのに頼るかもしれないね。」
「そうか…」
「言っておくけど、一人で心意を練り上げて撃ち出すより、複数人で練り上げた心意をまとめて撃ち出す方が難易度は高い。そのあたりは黄泉さんの補助もあったんだと思うけど…でも、これ初めてやったんじゃない?それで不完全だったとはいえ私の反射を貫くのはすごいと思う。」
「…え?」
香が構えを解くと、確かに香の服の一部が破れていた。
「“リフレクション・ミラー”……私が持つ反射技の一つ。本来は鏡を使うことで成る技。確かにこの技は私も使えるけど、それでも今は本来の技の力の1/10くらいしか出せない。さらに不完全で1/20程度しか出せなくてもそれでも仁単体の心意を反射するには十分なはずだし、それをしないでも私がずっと展開している防護で十分なはず…だった。」
そう言って香は服の破れたあたり───肩の方を見た。
「でも、そうじゃなかった。3つの心意の合わせ技。流石に私もびっくりしたよ?そして、その心意の出力の大きさ。あそこまで大きかったら、今の私の防護だけじゃ受け切れない。だから私は“反射”という盾を取った。でも、反射も完全じゃなくて、反射の効果が切れたほんの数瞬だけ、私は被弾した。大半を跳ね返して、受け切れたのはよかったけど、問題は私の防護を一瞬でも貫いたってこと。…私もいまのままじゃだめだね。いつか仁に完全に抜かれる。」
香は空を見た。
「……本当に、人の意思の力っていうのは強いよ。それが紡ぎ紡がれ、やがて強大な力となる。…ここにいる鬼殺隊の人たちだってそう。人を喰らう鬼のいるこの世界で、人がまだ生きていて、そして鬼を倒そうとしている。…強大な力である鬼に。今、この世界では強大な人の力が紡がれ続けているんだと思うな…」
香の表情は、どこか過去の記憶を振り返っているような表情だった。
「…さてと。未来、りんね、ちょっと手伝って?使う属性は指定するから。」
『あ、うん…』
「分かったわ。」
香は仁に向き直ってから心意を練り始めた。
「見てて。これはあなたの到達点になるかもしれない場所。心意の練り上げと属性利用の合わせ技。」
香が手を上げるとそこに大きな球体が現れた。何かが、渦巻いているようだ。
「私が扱える総ての属性。そしてりんねの影、未来の雷。私が注いだ属性はほんの少しづつだけど、それでもかなりの威力になる。」
「なんだ…あれ!?」
「防いでね?これを防ぐ方法は、もう教えてあるんだから。」
香がそう言うと、大きな球体が香の手元を離れた。
「……宣言。“イマジネート・レイン”」
香がそう宣言すると、手元を離れた球体から大量の光線が仁へと向かって降り注いだ。
「……だまり!!」
「おぉ!!」
「“スピニング・シールド”!!」/「“呪力相殺針”!!」
仁はソードスキルで弾き、だまりは呪力を針型に硬質化して香の技を相殺し始めた。それを見た香が小さく頷いた。
「…停止。」
その呟きと共に光線がその場で止まった。まるで、時間が止まったように。
「…?」
「収束」
その呟きの後に起こったのは、時間の巻き戻しに見えた。宣言前よりは小さくなった球体に、光線が集まっているのだ。
『鈴、お父様、涼、奏!防御結界準備!』
「「「「え…」」」」
『早く!』
香の思考音声での指示で香と仁を中心に透明な壁が張られた。
「おい……香?それまさか……」
「…受けてみて?」
「いや無理だろ!?」
その球体は確かに最初の時よりは小さいのだが、それでもかなりの大きさを誇っていた。
「非殺傷にはしてあるから気絶だけで済むと思うけど。受け切れるなら受けてみて。」
「……分かった。すまない、黄泉、だまり。力を貸してくれ。」
「…おぉ。」
仁の刀が小さく光った。
(……さてと、どんな方法で対抗してくるのかな…っと)
「宣言。“フラグメント・バスター”」
その宣言に反応し、大きな球体から太い光線が一直線に放たれた。
「………ここに再現するはあの鏡!!」
仁は光線を前にそう叫んだ。
「“リフレクション・ミラー”ッッッッッッ!!」
(見よう見まねで“リフレクション・ミラー”を…っ!?)
反射された砲撃は香に一直線に向かった。
(まずっ…!展開が間に合わない!!)
香は何とか心意の防護を発動させるが、発動が遅かったために脆く、そのまま破壊されて砲撃に直撃した。
……はい、ということで今回は香さんに負けてもらいました。まだ模擬戦の中で、そこまで全力を出していない状況下ですけどね。それでもやはり初めて見せた自分の技を再現されるというのは予想外だったのでしょう。
次の話はちょっとしたシリアス回?みたいな感じになっているかと。かなりの間出てこなかったあの人が出てきます。と言ってもメインキャラではないのですけどね。ヒントは“外”。
それでは、感想その他お待ちしております。感想とかありますと私も少しはやる気出ますので。そして終わらない柱合会議。確認したら柱合会議に10話以上使ってます…
香の秘密を話す時期はいつがいいですか?
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無限列車直後
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遊郭前
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刀鍛冶の里前
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刀鍛冶の里直後