それと今回の時間は1915/10/22です。柱合会議が19日なので3日後ですね…
「ん~……」
香達が蝶屋敷に行ってから数日後の昼。香は自室に籠って和紙に向かいあっていた。
「……違う。もっと、別の組み方があるはず。」
指で複雑な記号や文字を書いては消し、書いては消しを繰り返し、何かを完成させようとしていた。
「……違う。…そういえば」
香が和紙から手を離し、立ち上がって一冊の本を手に取った。そんな時に香の部屋の扉を叩く音がした。
「はぁい」
「若女将…私です」
「鈴?どうぞ?」
そう言うと鈴が鍋をもって香の部屋に入ってきた。
「若女将、少し休憩入れませんか?」
「え…あ、もうお昼なの?」
「はい…お昼ご飯は持ってきたので。」
「あ~…ありがと。」
香は手に持っていた本を和紙の近くに置き、鈴と向き合った。
「…難しいですか?やっぱり…」
「うん…いただきます」
「いただきます」
二人は手を合わせて食べ始めた。
「…若女将、若女将が悩んでいるもの見せてくれませんか?」
「ん?別にいいけど…」
香は和紙を取って鈴に渡した。
「その和紙自体にはあまり意味がないから汚しても大丈夫だからね?」
「あ、はい…」
鈴は香から和紙を受け取ると、そこに書いてある模様を一つ一つ確認し始めた。
「……香さん、これは…鬼神族のを?」
「うん。鬼神族の妖術を基礎に組んでるんだけど…実は私、鬼神族の妖術ってまだそこまで慣れてないんだよね。」
「…なるほど…確かにこれでは……」
鈴はそう呟いて立ち上がり、香の部屋にある棚を見た。棚には10冊ほどの本が置いてある。
「香さん、魔法関係の本ってどれですか?」
「ん~?…待って、これ食べてからにしよ?」
「あ、はい…」
鈴は座って食べるのを再開した。
「…そういえば、私しばらく錦糸屋の店頭出てないけど大丈夫かな?」
「あ…そういえば涼さんの話では以前来たあのお客さんが来たのだとか…」
「以前来た?」
「あの……出張した…」
「…あぁ」
それを聞いて香が少し遠い目になった。
「……うん、また今度行かないとね。私としてはあまり行きたくないけど。」
「あら、私はまた行ってみたいわね?」
「りんね…私の想いとか考えてよ……」
「…ごめんなさい。香は鈴一筋だったわね。」
「…」
「…でも、どうするのよ?今、あそこには結界のせいで行けないでしょう?」
そう。確かに、あの門は錦糸屋に繋がっていた。だが、錦糸屋の敷地外に出ることがほぼできなくなっていたのである。これは綺糸屋勢も同じようで、綺糸屋の敷地外に出ることはできなくなっていたそうだ。香が錦糸屋を調べたところ、強力な認識阻害・行動制限結界が張ってありさらに
「それは知ってる。だから、ちょっとした理由があって暫くの間出張販売は出来ませんって言ってもらってある。もしも、出来る方法があったなら、その時は出張販売することにはなってるけど。」
「そう……その時行く人はどうするの?」
「とりあえず私は確実にいかないとだから…とりあえず私と涼、時間が合えば奏も頼めるかな…」
「私は行ってはいけないのですか?」
「…う~ん」
鈴の質問に香が悩んだ。
「…私としては、あまり行ってほしくはないかな。」
「…そう、ですか…」
そんな話をしたままご飯を食べ終わると、香の部屋の窓を2回叩く音がした。
「うん?あ、夜張」
「ホ~」
器用に窓を開け、部屋の中に入ってきたのは香の鎹梟───
「夜張、お仕事ご苦労様。これ、食べる?」
「ホウ♪」
香が差し出したクッキーを嬉しそうに食べ始めた。香は夜張が落とした手紙を開封し、中を読み始めた。
「…やっぱり…ね。」
「若女将、何か分かったのです?」
「ん。これ見た方が速いよ。」
香は鈴に手紙を渡した。その内容はこうである。
ふむ。よく“第二の始まりの呼吸”という言葉を聞いていたね。そう、香と仁が適性を示した“虹の呼吸”は第二の始まりと言われる呼吸だ。それは、この呼吸から派生した呼吸が存在する、もしくは存在していたということを示す。鬼殺隊の方で調べた限りだが、現時点で分かっている派生呼吸は十八つ。
まず始まりの呼吸たる“虹の呼吸”。別名で七色の呼吸とも呼ばれているけれど。
次に派生呼吸だが、先に紹介する九呼吸はあわせて“
日、閃光を操る“
月、闇黒を操る“
火、燃焼を操る“
水、水流を操る“
木、風刃を操る“
金、岩石を操る“
土、雷撃を操る“
星、運命を操る“
虚、虚無を操る“
残りの九呼吸は虹の呼吸と同じように別名が存在する。
氷、凍結を操る“
生、希望を操る“
死、絶望を操る“
魂、輪廻を操る“
夜、空間を操る“
昼、時間を操る“
夢、幻想を操る“
花、演舞を操る“
これら十八の派生呼吸を合わせて“属性の呼吸”と呼び、十九呼吸を“呼の呼吸”、または“神秘の呼吸”と呼ぶ。
属性の呼吸、とは書いたけれど、魂や夜、昼、夢、生、死なんていう属性が存在するのかな?良ければ教えてくれると助かる。
あぁ、それと。香の梟に持たせた本はこちらで発見できた属性の呼吸のことが書かれている指南書だ。七曜双極の呼吸と雪の呼吸、華の呼吸しか見つからなかったが、香達なら役立てることができるんじゃないかな?
追記:仁が遭遇したという太陽の呼吸の使い手。その太陽の呼吸は本物だろう。しかし虹の呼吸の作り手の記述によればこの世界の住人には属性は既に失われたとのことだが……ひとまず、その使い手に関してはこちらでも調べておくことにしよう。
その手紙の通り、夜張の持ってきた籠の中には12冊の本が入っていた。“太陽の呼吸指南書”、“太陰の呼吸指南書”、“晴天の呼吸指南書”、“雨天の呼吸指南書”、“疾風の呼吸指南書”、“曇天の呼吸指南書”、“轟雷の呼吸指南書”、“恒星の呼吸指南書”、“空虚の呼吸指南書”、“降雪の呼吸指南書”、“華舞の呼吸指南書”…そして、“七色の呼吸製作記録”。
「…?製作記録?なんでこんなものが…」
香が製作記録を持ち上げると鈴が本を見て呟いた。
「その本……他のと比べてかなり古びていませんか?」
「…言われてみれば確かに。…ん?何か書いてある?」
香は本の表紙に顔を近づけた。
「─たし─な──は───に─か。お──さ───れ────駄目、汚れすぎてて読めない。でも、これ女の子の字だ。」
「女性ではなくて女の子、ですか?」
香は鈴の問いに頷いた。
「たぶんこれ、全部ひらがな。で、一番最初に書いてあったのって多分“わたし”で、結構ぐにゃぐにゃだから…多分、これを書いた時の年齢は低いと思う。」
「そうですか……」
「…とりあえず、手紙書いちゃうから鈴は……」
香はそう言いながら立ち上がり、棚から1冊の本を抜き出した。
「これ、読んでて?魔法関係の本だから。」
「あ、お借りします…」
香は鈴に本を渡して和紙と筆、墨を用意して書き始めた。
調査ありがとうございます。
属性の呼吸…ですか。確かに属性を基礎とした名称ですね。
それと、耀哉さんの気にしていた6つの属性ですが…お答えしますね、生、死、夢、魂、昼、夜という属性は一応名前としては存在します。ですが、これらは性質が難しいのです。大体は別の既存属性に組み込まれる属性ですね。
まず、生という属性ですが、“生誕”、“希望”、“治癒”といった正の側面を扱う属性です。これは心意に近い属性なのですが基本的に属性としては“聖”という属性で分類されます。
次に死という属性はその反対。“死亡”、“絶望”、“負傷”などといった負の側面を扱う属性です。こちらも心意に近い属性なのですが、“影”という属性に分類されることが多いですね。
夢という属性はそのままです。“夢”、“幻”、“望み”。言ってしまえば私達の望みを体現したような属性です。これは“想”、並びに“幻”という属性に分類できます。
魂という属性は“管理”、“輪廻”、“干渉”。つまり何かを操る属性なのです。世界の理に強く関係がある属性で、これに関しては絶技と同じようなタイプの属性に分類されてしまいます。属性に表すならば“変化不能属性”、これが一番近いでしょうか。
昼という属性は“昼”、“男性”…そして“時間”。世界の理に関係がある、“光”と“聖”に分類されやすい属性です。
最後に、夜という属性はその反対。“夜”、“女性”…そして“空間”。こちらも世界の理に関係がある属性で、“闇”と“影”に分類されることが多いです。
……付け加えますと、“
それからこちらから一つ報告です。虹の呼吸ですが、技の記憶を読んでみたところ一番最初に使われたのは解析できていない零の型。時期は新暦、西暦で一二八八年頃、つまりは六百年以上前となります。さらにこの記憶からこの虹の呼吸の基礎となった物を感知しました。ですが、詳細までは掴めてないのです。まるで、意図的にその情報を封じたかのように、こちらからの干渉ができません。もしかしたら、虹の呼吸を使って呼吸への理解を深めることで分かるかもしれませんが。実はそういう技がいくつか存在してまして、それを列記しますと…
零の型
拾壱の型
弐拾壱の型
極の型
この四つです。指南書に書いてあったのは零の型、極の型、それから壱から伍拾玖までの計六十一型ですが、技そのものを調べたところ、まだいくつかの型が隠されているように感じました。属性の呼吸の指南書たちと共に送ってくださいました製作記録の方にあるかもしれませんが、こちらでも色々調べてみようと思います。
追伸:夜張に私と鈴が作ったものですがクッキーを持たせました。ご家族や隊員の方達とどうぞ。一応動物でも食べられるような特殊な加工はしてあるので誰でも食べられます。ちなみに夜張には夜張用のを持たせています。中身は同じものです。…あと、あまり夜張に無理させないでくださいね?夜張は女の子なんですから。
そう書いて香は筆を置き、机の隅に置いてあった少し大きめの箱を夜張の持つ籠の中に入れた。
「ホウ?」
「夜張、この籠に入ったものは耀哉さん達に。貴女にはこっちね。」
そう言って香は夜張の首から紐の付いた小さめの袋をかけた。次いで手紙を差し出す。
「耀哉さんのところまでお願いできる?」
「ホウ!」
「ありがと」
夜張は手紙を受け取ると、開いていた窓から元気に飛び立っていった。
「……それにしても」
「どうしました?」
香が空を見ながらつぶやくと鈴が疑問気に聞いてきた。
「うん?…いや、魂、夢、星廻、虚廻、昼、夜、生、死…この辺の属性、久しぶりに聞いたなぁ、って……」
「はぁ……そうなのですか?」
「…鈴には全部教えてあるから分かると思うけど…ね。」
「魂、夢、星廻、虚廻、昼、夜、生、死……なるほど、そういう……
香はその言葉に頷いた。
「
「そ。さ、術の作成しようか。」
「それでしたら、これではどうですか?」
鈴が和紙を差し出してきた。
「ええっと……目的の効果は起こるけど時間制限付き……いつもと同じだ。」
「…いつも思っていましたけど、香さんのその能力便利ですよね…」
「へ?」
「その…術を動かさないでどんな術かを知る能力です。」
「あぁ……」
香はそう呟きつつ和紙を鈴に返してから立ち上がり、棚から3冊の本、机の上から1冊の本を持ってきた。
「それね…私の絶技の副産物みたいなものだからね。」
「そうなのですか?」
「うん。そもそも私の絶技は他人の技の情報を鏡に写して解析して私が使えるようにするものだから。私が使わないようにする、即時破棄の状態にすれば解析効果だけが残るんだよ。…まぁ、解析特化の術を使った方が楽なんだけど。」
魔力とか少ない時はそこまで使えないからね~…と呟きながら近くにあった石と羊皮紙を手に取った。石は二つの輪が重なっているような形をしていた。
「…それは?」
「これ?これは…仁用の魔道具。だまりさんと仁を分離・融合させるための術式が刻み込んであるの。調べたら佐吉さんが使ってたのと違うものになってるみたいだから。これはもう完成してる。」
「なるほど…そちらの紙は?」
「これは鈴と花さん用、かな?鬼としての力のみをだまりさんやりんねに喰わせるためのもの。ほら、あの時の再現。」
「…あぁ…なるほど。色々作っていたのですね。」
鈴は錦糸屋事件終息直前、りんねに不老不死の力を喰われたことを思い出しながらつぶやいた。
「…まぁ、まだ使えるようなものじゃないけど。もう少し最適化は進めないと。もしかしたら、鈴達にも血鬼術はあるかもだし。」
「そうですか…」
「…さて…と。」
香はそう呟いて石と羊皮紙を机に置いた。
『……仁、鈴、聞こえる?』
その思念を送った直後、香の目の前で鈴がピクッと反応を示した。
『…あぁ、仁。思念会話の方法は自分が今思っていることを相手の方に流すイメージだよ?』
『………こうか?あ、お客様いらっしゃいませ…』
香の脳内に仁の声が響く。それに香が苦笑した。
『うん、少しずつでいいから慣れてね?あと、ちゃんと制御しないと自分が思ってること全部こっちに伝わっちゃうから。』
『…あぁ…あ、お買い上げありがとうございました、またのお越しをお待ちしております。』
その仁の声が聞こえたのか鈴が苦笑した。
『これ、難しいですよね……』
『鈴、まだその感覚慣れない?』
『もう半年近くやってますけどまだちょっと慣れないですね…というか若女将はよくこれに慣れられますね。』
『分割思考とか使うと少しは楽だよ?私の部屋にいる鈴ならわかるけど、分割思考使えば“精神通話”と実際の作業を並行してできるから。まぁ実際、ここからさらに精神空間内模擬戦闘とか肉声発声とか…まぁいろいろできるけど。』
『…は……はは…』
仁の声が乾いていた。
『今、仁は精神通話用の魔道具で補助してるけど、それはあくまで補助。慣れたら外してもらうからね?慣れた後は逆に補助が邪魔になっちゃうから。』
『……どういうことだ?』
『…いま、仁の思考ってどうなってる?魔道具に魔力を回して、それから思考を流すイメージでしょ?』
『…あぁ…』
『最適化はいまさっき終わったみたいだけど、気づいてる?私達会話関係に関係しないものは自動的に除外されてるの。』
『あ、言われてみれば確かにそうですね。接客中の声が聞こえなくなってます。』
『…そうなのか?俺にはよくわからん。』
香は和紙を見つめた後、和紙に書いてある記号の一部を消した。
『まぁ、自分が何を発したかは後々分かるようになるはずだからいいとして…確かにその魔道具は双方向通信で使えてるんだけど……接続できる双方向回路が2本しかないの。1本は今使ってるメイン回路。もう1本はサブ回路。どっちもクラスタ回路───ええっと、1対多の一斉送信、一斉受信に対応できるタイプだから今私が用意した精神通話サーバーに魔道具を介して仁が接続してこうやって話せてるんだけど。実際処理能力が低いんだよ、その魔道具。いくら1対多用のクラスタ回路を使っているとはいえ、その魔道具だと同時接続は全部で5人が限界。6人が同時接続したら魔道具のシステムがダウンする。それは今の除外システムに大きいリソースを割いてるからなんだけど…理解、出来る?』
『無理です』/『…無理だな』
『だよね』
香は分かっていた、みたいな思念を飛ばした。
『まぁ理解できるかどうかは置いておいて、その除外システムはとてつもなく重く、しかも魔道具が処理できるのは1つの思考だけ。複数人に同時に別の思考を送りたいときとかにはその魔道具が足枷になるの。それと私達の魔道具を使わない精神通話とは送信時間、受信時間に時間差もあるからね。』
『時間差…ですか?』
『うん。一度システムが流したい言葉を検査してから再度流すから…そうだね、時間にして0.5秒から10秒。それくらいは時間差があるよ。』
『…そうなのか』
『多分、仁の方だと私達の言葉が少し遅れて聞こえてるんじゃないかな』
『…あぁ、少し遅れて聞こえる』
『私と鈴、これでも時間差無いように話してるんだよ?でも、ほぼ無遅延で送受信できるのは私達みたいに何も介さずに精神通話を使うか…まぁ、とある道具を使うかの二択。その道具に関しては今は渡せないから我慢してね。』
『…そうか…』
(流石にアレは渡せないんだよね……私の力が弱まっている現状じゃ作れる代物じゃないし。)
香はそんなことを思いながら先程と模様を変えた陣を見た。
「…違う。鈴、そっちの神術関係の本取ってくれる?」
「へ?は、はい…」
香は鈴から本を受け取ると本を開いて読み始めた。
『…あ、そうだ。仁、風属性の鍛錬はどんな感じ?』
『…風か。そこまでうまく行ってないな…』
『まぁ、慣れですよ。私も水属性以外に風、火、土、雷、氷の自然六素は使えるので…』
『…自然六素って全部使えた方がいいのか?』
『そうだね…自然六素は使えた方がいいよ。でも、難しければ火水風土の四大属性でもいいかな。それでも、一番使えた方がいいのは風だね。』
『…風?』
『そ。風属性が使えると空を自由に飛べるようになるから。』
結構ぶっ飛んだことを言い始めた。
『…どういうことだ?』/「…若女将、これはどうです?」
『そのままの意味。風属性が使えると自分を風で持ち上げることで空を飛ぶことができるようになるの。まぁ完全な飛行は結構難しいから最初は浮くことから始めないと。』=「ん~?……近い、んだけどもうちょっと。恒常変化にしないとだから……待った、これちょっと借りるね」
香は鈴から渡された和紙に書かれた陣の記号を見つめていた。
『…そんなことが可能だったのか』/「鈴、ここの呪は…?」
『魔法に飛行用の魔法はあるんだけど…仁の魔力量だと足りないんだよね。』/「それは……これですね」
『…だから属性に?』/「ありがと」
『本来は属性の方が難しいんだよ?本来属性は魔法の応用みたいなものだし。でも何故か属性への適性がかなり高いらしいから…一応火と風を教えてみてるだけ。でもって今魔力増強鍛錬もしてるでしょ?』
『…あぁ。おかげで体が重い。』
『仕方ないよ、もともと少ない魔力に負荷かけてるし。魔力量5,000になったころかな、本格的な魔法鍛錬は。詠唱関係は特に魔力喰らってくから。』
『…そうなのか』
『そ。私がよく使ってる詠唱…鈴から聞いた限りだとあの日にりんねから少し説明されたみたいだけど、spell actから始まる詠唱はそこまで魔力を消費しなくなってる。まぁそういう風にカスタマイズしたからなんだけど。まぁそのへんの話はまた今度。結構複雑だから。』
『…あぁ…覚えることが多くて結構大変だな』
『多分仁、結構戦闘関係の才能あるよ?よくわかんないけど。…そういえば、お父様から聞いてるけど刀系統の具現化は安定したの?』
刀系統───太刀、両手刀、片手刀、短刀の四種類のことだ。
『…あぁ。太刀と短刀が少しだけ不安だが、大体は安定した。だがこれで終わるわけじゃないんだろう?』
『当然。剣以外に槍、槌、斧、鎌、飛び道具…覚えることはまだまだあるよ。』
『…多すぎないか』
その言葉に香が苦笑した。
『それね…それは斬想鬼と斬糸……それと仁の可能性が大きすぎるせいなんだよね。どれが一番いいかは置いておいてとりあえず全部教えておかないといけないかなって。教える方も大変なんだよ?』
『…すまない。教えてくれるのには感謝する。…なるほど、香が常時複数の武器のイメージを構築したままという意味が何となく分かった。』
『まぁ知ってると思うけど、武器に属性付与もできるから
風切武器。風属性を宿す武器たちの名称である。
『…早めに慣れることにする』
『ん…じゃあ、精神通話切るね。』
『…あぁ』
そう言って香は仁と鈴との接続を切った。
「…あ、呼吸に関すること言い忘れてた」
「…若女将ってたまに抜けてるところありますよね」
「う……あ、そうだ、鈴。」
香が鈴を呼ぶと鈴が本から顔を上げた。
「どうしました?」
「…もし、私に何かあったら…その時は、仁の鍛錬…お願いね?」
鈴はその言葉を聞いて香をじっと見つめた。
「……わかりました。でも、私なんかでいいのですか?」
「…いまは、鈴しかいないの。それに、鈴には私のほぼ全てを教え込んでるし。」
「…そうですか。分かりました。」
「ごめんね。…私も、そう簡単に倒れるつもりはないけど……でも、ね…」
香が少し震え始めたのに気がついた鈴は香に近づき、背後から抱き着いた。
「…大丈夫です。必ず、私が引き継ぎます。…香が、戻ってくるその日まで。」
「……うん。ありがとう。…大好き。」
「私もです。」
「…あの、そういうのは私のいないところでやってくれないかしら。見ていてイラっとするのよ。」
「「っ!?///」」
りんねの言葉で鈴と香は一瞬で離れた。
「香。」
「なに?」
「…私が見ているところで、死ぬなんて許さないわよ。もちろん、鈴もよ。」
りんねの言葉に鈴と香は頷いた。
「私は死なないよ。…でも、私は…」
「先日の、あの人の言葉ですね?」
「うん。…できるなら、それが起こる前に何か手は打っておかないといけないから。」
「…分かっています。香さんは、そういう人です。」
「うん…ありがと。」
その言葉を最後に香と鈴は和紙に向かって色々と書き込んだり消したりを繰り返していた。
───時間は流れて日没直前。
「出来た!!」
香の部屋から、その香の声が屋敷中に響いた。
ちなみに香はすでに虹の呼吸の動きを覚えています。帰ってきた当日に指南書を読んで解析できたものはすでに使えるようになっています。
それから仁は帰ってきた後に精神通話と風属性の扱い、他の刀系統の鍛錬を開始。柱合会議から3日ほど経過していますが蝶屋敷の方ではまだ機能回復訓練が始まっていません。