鬼ヲ狩ル者達之交差【休載中】   作:Luly

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第五十七話、時間は1915/10/24です。原作と違い、善逸さんも炭治郎さん達と同時スタートとなります。理由はりんねのおかげで発見が早く、蜘蛛化がそこまで進んでない状態で簡易治療されたからですね。
本当はもっと書こうとは思っていたんですけど、量が多くなりそうだったのでここで区切りました。


第伍拾漆話 機能回復訓練と治療

 

その日。仁、香、雫鞠、凛音、花、鈴、咲、奏、妹紅、美月、流華の十一人は蝶屋敷の前にいた。

 

「はぁ……」

 

香が深めのため息をついた。

 

「元気出してください、若女将。」

 

「うん…」

 

香が落ち込んでいる理由。それは香の持つとあるアイテムに関係がある。

 

「…まさか、前回来た時に転移陣を敷き忘れて転移結晶が動かないとか……何してんの私……」

 

「珍しいわね、香がそんな失敗をするなんて。」

 

「そうなんだ…」

 

そう呟いたのは妹紅。

 

「それでも、私はちょっと面白い体験ができたから良かったと思うな。」

 

「確かに、そうだね。」

 

そう美月と流華が慰めた。

 

「そう…?でもあれ、私の魔力と心意喰らってくし、一緒にいる人に恐怖を抱かせやすいからあまり使いたくないんだよね…」

 

「ちょっと怖かったけど楽しかった~」

 

ちなみに香がやったことというのは風を集めて足場とし、その足場に乗った状態で上空を飛ぶ、というものである。足場の原材料が不可視である風なため、透明な足場。つまり高所恐怖症には地獄となるのだ。

 

「…香さんと仁さん、ですか?それから……確か鈴さん、花さん、妹紅さん、流華さん、美月さん、咲さん、奏さん。」

 

「…?あ、アオイさん」

 

香達が話しているとアオイが出迎えに来ていた。

 

「お待ちしておりました。…それと、そこのお二人は…」

 

「あ、だまりさんとりんねです。」

 

「…は?」

 

アオイが硬直した。

 

「…香。いきなり伝えても困惑するだけじゃない?」

 

「う~ん…とりあえず、後で説明しますから案内してくれませんか?」

 

「は、はい…それではこちらへ…」

 

アオイを先頭として美月、流華、妹紅、凛音、雫鞠、咲、奏が入っていったとき、香が突然後ろを振り返った。

 

「……?」

 

「どうした?」

 

香の前を歩いており、周囲の気配察知も扱えるようになった仁が立ち止まった香を怪訝に思い振り返った。

 

「………気のせい?」

 

「…なんか、前にもそんなこと言ってたよな。何かあったのか?」

 

香はその言葉に少し悩んでから口を開いた。

 

「…信じてもらえるか分からないし、仁が理解できるどうかも分からないけど……今一瞬、何かが歪んだ気がしたの。」

 

「何か?…って、なんだ?」

 

「…恐らくは、空間。」

 

「空間……空間を操る鬼、か?だが、今は日が出ているんだ。鬼が出る確率は…かなり低いだろ?」

 

香はその仁の言葉に頷いた。

 

「空間を操る鬼か、もしくは、夜属性の属性付与攻撃。」

 

「…夜……あり得るのは夜天の呼吸、か。だが夜属性っていうのは…」

 

「扱える人は少ないはず。」

 

「…そうか。…分からんな。……ん?」

 

仁が何かを思い出したような表情になった。香が首を傾げると仁は口を開いた。

 

「…太陽の呼吸、壱の型…香、太陽の呼吸の壱の型がどんな技かわかるか?」

 

「壱の型…天刃雨のこと?…あぁ、なるほど。」

 

香は先日読んで覚えた技を思い出して納得した。

 

「なるほど、あれは()()()()()()()()()()ね。そういった点では似てる、か…」

 

「…とりあえず入らないか?」

 

「ん、そうだね。」

 

そう言って蝶屋敷の中に入る香と仁だったが、香は思考を回し続けていた。

 

(……仁には言わなかったけど……一つ、懐かしいような気配を感じた。でも、あいつらがいるわけない。この世界に、あいつらが、存在するわけ…ない。)

 

香はその気配を感じた場所、つまり背後を最後に一瞬だけ見てからそのまま歩き続けた。

 

「…なぁ、香。花達ってどこ行ったんだ?」

 

「…聞いてみよっか。」

 

花達とはぐれた香達はその場で立ち止まり、香が鈴に精神通話を繋げた。

 

『鈴、聞こえる?』

 

『若女将?どこにいるんですか?』

 

『私は仁と入口の近くにいるけど…鈴は今どこに?』

 

『私達は道場の方にいます。ただ、さきほど流華さんがしのぶさんにどこかへ連れていかれました。』

 

『道場、ね。分かった。すぐ合流するね。』

 

『待ってます。』

 

香はその言葉を聞いてから精神通話を切った。

 

「鈴達は道場の方に行ったみたい。以前来た時に大体の構造は覚えておいたから行こうか。」

 

そう言って仁と香は歩き始めた。

 

 

───場面は変わって流華の方へ

 

 

流華はというと、しのぶに連れられてとある部屋の前に来ていた。

 

「…私が、どうかしましたか」

 

「あなた自身には何も問題はないのですけど、少し気になったことが。」

 

「…」

 

しのぶが部屋の扉を叩くと、中から微かに音が聞こえた。

 

「入るよ、姉さん。」

 

そう言ってしのぶは部屋の扉を開けて中に入った。しのぶが手招きするため、流華も少し警戒しながら中に入る。

 

「具合は、どう?」

 

しのぶが声をかけた方には壁に寄り掛かる女性の姿があった。女性は何も言わずに手元にあった紙と筆を手にとって何か書き始めた。

 

「……あの?」

 

流華が声を発そうとしていた時に女性が書いていた紙を流華たちの方へ向けた。

 

“今日は少しいい方かな。暖かい日だったら外に出たいけど。”

 

「姉さん、今はもうその時期じゃないって知ってるでしょ?」

 

その言葉に女性は頷いた。そして、視線を流華に向け、少し悩んでから紙に文字を書き、こちらに向けた。

 

“その子は?…どこかで会ったことのある気もするけど。”

 

「紹介するね。最近鬼殺隊に入った子の知り合いで……」

 

「…廻花 流華、です。」

 

女性は少し笑ってから文字を書いてこちらに向けた。

 

“元鬼殺隊花柱の胡蝶 カナエです。ごめんね、こんな時間がかかる方法で。”

 

「い、いえ…」

 

「……四年前、ですか。姉さんはとある鬼に襲われまして。その時に声を失ったのです。」

 

「声を…ですか?」

 

「はい。より具体的には肺の一部と声帯に異常を起こされ、声を発するどころか呼吸することも困難になってしまったのです。以来、姉さんはこの部屋でほぼ動かない生活を送っています。」

 

「…そう、なのですか…」

 

「……変なことをお聞きしますが、姉さんと私、どちらかにどこかでお会いしたことはありませんか?」

 

「え…」

 

唐突な質問に流華が硬直した。

 

「流華さん、貴女は鬼狩り様と呼ばれる存在です。…実は四年前のあの日、私もその場に駆けつけたのですが、鬼から姉さんを守るのが精いっぱいで何もできなかったのです。その中を、とある女性の方が…いえ、厳密には女の子が助けてくれたのです。」

 

「……容姿は…」

 

「水色の着物を着た方でした。丁度、今の流華さんと同じような。」

 

「……桜色の、太刀でしたか?」

 

「え…」

 

「桜色の太刀で、相手となった鬼は氷を操り。日が昇り鬼が去った後に一人の女の子を守ろうとしている女の子の足を氷漬けにしていた氷を破壊した記憶はありますが。」

 

「「…っ!」」

 

流華の言葉にしのぶ、カナエ両方から息をのむ音が聞こえた。

 

「…ということは、やはり。貴女は、あの時助けてくれた女の子なのですね。」

 

「確信はありませんが…恐らくは。」

 

流華がそう言ったとき、何かをコンコンと叩く音が聞こえた。流華がそちらに目を向けるとカナエが紙を向けていた。

 

“ありがとう。私達を助けてくれて。貴女が来ていなければ、多分、私はもうここにはいなかった。もしかしたら、しのぶも。”

 

「…私からもお礼を言わせてください。あの日、姉さんを助けてくれて、ありがとうございます。そのおかげで今がありますから。」

 

「いえ……私は特に何もしてませんよ……今、私がここにいても何ができるというわけではありませんし…………そういえば、氷でしたっけ。」

 

流華が思い出したように呟いた。

 

「…氷。もし、四年たった今でも凍てついていて声が出せない、正常な呼吸ができないだけなのなら……」

 

「流華さん?」

 

「……あの。もしかしたら……もしかしたら、ですけど。」

 

カナエが首を傾げた。

 

「……カナエさんの声が、戻る方法があるかもしれません。」

 

流華のその言葉にしのぶとカナエが驚きの表情を見せた。

 

 

 

───場面は戻って道場に

 

 

 

「それでは、ご説明させていただきます。まずあちら、寝たきりで硬くなった体をあの子たちがほぐします。」

 

アオイが三人の少女がいる布団の方を示してそう言った。

 

「それから反射訓練。湯飲みの中には薬湯が入っています。お互いに薬湯をかけ合うのですが、湯呑を持ち上げる前に相手から湯飲みを抑えられた場合は湯呑を動かせません。」

 

一人の少女がいる机の方を示してそう言った。

 

「最後は全身訓練です。端的に言えば鬼ごっこですね。私アオイとあちらのカナヲがお相手です。」

 

最後は自分を示して言った。

 

「……すみません、ひとついいですか?」

 

「?何かわからないことでも?」

 

「…いえ…」

 

香は少し悩みながら口を開いた。

 

「……炭治郎さん、伊之助さん、善逸さんはともかく……これ、私達参加する必要あります?」

 

そう。この反射訓練の対象者には香、仁、咲、奏、そして鈴と花まで含まれているのである。ちなみに、咲と奏に関しては柊と暁の方から“蝶屋敷で行われる訓練に参加させてほしい”とのことを伝える文面を日継で送ったからなのだが。

 

「さぁ…私も分かりませんが…あ、錦糸綺糸屋の方々は対象となった全員が終えない限り蝶屋敷から帰さないとのことです。」

 

「「「「「「……え!?」」」」」」

 

「我慢してくださいね。」

 

「…どうしてこうなった」

 

香がそう呟き、仁がため息をついた。

 

「それでは柔軟から…」

 

面倒なのでもう結果から言ってしまおう。

 

 

 

まず柔軟。

 

香=楽々完全突破

 

仁=少し痛がりつつも完全突破

 

咲=痛がり続け完全には突破できず

 

奏=痛がり続け完全には突破できず

 

花=痛がりつつ完全突破

 

鈴=楽に完全突破

 

……ちなみに香に関してはこの柔軟に関しても化け物扱いされたという。(理由:柔らかくしようと思ったら既に相当柔らかく、痛みすらまったく感じずに背面反り最大、前面倒し最大、180度開脚などなど出来てしまっていたため。香曰く“これに関しては完全に能力とかじゃなくて生まれた時からの柔らかさなんだよね……”とのこと。)

 

 

次に反射訓練(アオイ版)。

 

香=楽々突破

 

仁=ぎりぎり突破

 

咲=突破できず(後に柊から追加訓練を言い渡された模様)

 

奏=突破できず(後に暁から追加訓練を言い渡された模様)

 

花=突破

 

鈴=突破

 

 

さらに反射訓練(カナヲ版)。

 

香=楽々突破

 

仁=突破できず

 

咲=突破できず

 

奏=突破できず

 

花=ぎりぎり突破

 

鈴=突破できず

 

 

最後に全身運動(アオイ版)。

 

香=楽々突破

 

仁=ぎりぎり突破

 

咲=突破できず

 

奏=突破できず

 

花=突破できず

 

鈴=突破できず

 

 

さらに全身運動(カナヲ版)

 

香=惜しいところまで行ったが体力切れで突破できず

 

仁=突破できず

 

咲=突破できず

 

奏=突破できず

 

花=突破できず

 

鈴=突破できず

 

 

 

以上となっている。

 

「……あの、香さんって化け物ですか?」

 

「失礼ですね、と言いたいところですけど化け物クラスなのは認めますよ…でもこれでも人間なんですよ?」

 

「………」

 

「これでも本調子じゃないのですけどね…」

 

「本調子じゃ……なかったのかよ……」

 

仁が息を切らせながら言った。その言葉に香は首を傾げた。

 

「一応今も神霊妖魔術、属性その他諸々使えば本調子レベルにすることはできるけど……属性とか使うのは結構ズルいし。」

 

「……ということは、あれは香の素の身体能力ってことか?」

 

「心意で速度強化はそこまで負荷がかからない程度にしてたから完全に素の身体能力ってわけじゃないね。」

 

「…ちなみに、本調子とはいったいどのような?」

 

「んと……流石に今は本調子ではないのでなんともいえませんが……カナヲさんを軽く捕まえられますね」

 

その言葉にアオイ、炭治郎、善逸、伊之助が硬直していた。ちなみに、炭治郎たちは原作同様の結果だった模様。

 

「…すみません、錦糸 香さんいますか?」

 

沈黙を破ったのは女性の声。香がそちらを向くと柱の影から覗いているしのぶの姿があった。

 

「…どうしました?」

 

「すみません、香さんと……それと、藤原妹紅さん。私についてきてくれませんか?」

 

「「??」」

 

香はアオイに視線を向けると、早く行ってください、というような行動をされた。

 

「…何か、用ですか?」

 

「用件はあとで話します。」

 

「…」=『凛音、私がいない間鈴たちのことをよろしくね?』

 

『了解したわ。』

 

香は少し警戒しながら凛音に精神通話で指示をして、しのぶについていった。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

無言で歩き続け、暫くすると扉のあいた部屋が見えてきた。その中には流華の姿が見える。

 

「…中へ。」

 

「…失礼します」

 

「し、失礼します…」

 

香は警戒を強めたまま、妹紅は少し緊張した様子で部屋の中に入った。

 

「……この方は?」

 

「“胡蝶 カナエ”さん…というらしいです。」

 

部屋の中には女性がおり、香の問いに対して流華が答えた。

 

「…私達を呼んだ理由は、なんですか。」

 

香がカナエにそう聞くと紙に文字を書いて香に向けた。

 

“もしかしたら、貴女達なら私を治せるかもしれないって流華ちゃんが言うから。しのぶにお願いして、連れてきてもらいました。”

 

香が流華の方を見ると、怯えたように身体を小さくした。

 

「…怒ってないですよ?…それにしても…治す、ですか。」

 

香はカナエに近づき、カナエの胸のあたりで耳を澄ませた。

 

「……呼吸がおかしい。恐らく呼吸困難状態。それから…声も出てないことからその辺にも異常あり……すみません、女性にこんなこと頼むのもあれですけど…」

 

その言葉にカナエは首を傾げた。香はカナエをまっすぐに見つめた。

 

「…一度、カナエさんの身体を全部調べさせてください。頭から足の先、指の先、内臓の奥深くまで総て。」

 

その言葉にカナエは瞬きしただけだった。

 

「そんなことが、可能なのですか?」

 

しのぶは信じられない、とでもいうかのような表情で香に聞いた。

 

「出来ます。それに、今のカナエさんを何が蝕んでいるのか知らなければ、こちらも対処はできませんから。」

 

香がそう言うと、しのぶはため息をついて香の背後を見た。その時、香は後ろから軽くつつかれ、振り向いた。

 

“お願いします”

 

少し震えた字で書かれたその紙を、香の方に向けていた。

 

「…分かりました。では、力を抜いてください。」

 

その言葉でカナエの身体から力が抜けた。

 

「…始めます。…解析開始」

 

そう言った途端、香がカナエに触れている二つの場所……胸の中心ぐらいの場所(ツボとして“膻中(だんちゅう)”と呼ばれる場所、具体的には“左右の乳頭を結んだ中心点上で、第4肋骨と第5肋骨の間”)と下腹部当たりの場所(丹田(たんでん)と呼ばれる場所)から白色の光が走った。

 

「……香さん?」

 

「話しかけないでくれませんか、集中が途切れる」

 

「…」

 

その言葉の強さにしのぶは何も言えなくなった。

 

「………解析終了」

 

暫くして香がそう呟くと、香が二つの場所から手を離した。

 

「…なるほど。肺と声帯が特殊な氷で封じられてるのね。それから筋肉の方にかなりの負荷がかかってた。主にかかってた部位は腕、手、脚……これは…」

 

「恐らく全集中の呼吸の…常中のせいかと。」

 

「…常中、か。」

 

「…それで、治せそうですか?」

 

しのぶの言葉に香は悩んだ。

 

「……氷の方は一応方法があります。筋肉の方は…方法がなくはないのですけど、少し気になる点が…」

 

「なんです?」

 

香はその質問に一瞬目を泳がせてから告げた。

 

「……しのぶさん、しのぶさんのことも調べさせてくれませんか。」

 

「……一体、どうしてです?」

 

「…少し、気になることが。」

 

「……いいでしょう。」

 

香は許可を受けてしのぶを解析した。解析が終わった後、香は信じられない、というような目でしのぶを見つめていた。

 

「…しのぶさん」

 

「なんでしょう」

 

「……いえ。何でもありません」

 

「…そうですか。それで、何かわかりましたか?」

 

その言葉に香は頷いた。

 

「私も理由は分かっていませんが……カナエさんの方に、僅かながら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「属性…ですか。では、姉さんは、貴女のような技を使えるようになると?」

 

「恐らくは、ですが。ただ、それがあまりにも細い。回線の太さは即ち操ることのできる属性量になります。鍛えれば属性量を増やすこともできますが……」

 

そこで香はカナエを見た。

 

「…カナエさん。もしも、もう一度立ち上がり戦うことができるならば。その選択権が貴女に委ねられていたら。貴女は、戦うことを望みますか?」

 

その言葉にカナエは頷いた。

 

「…たとえそれが、貴女が今まで使っていた力でなくとも?」

 

その言葉に少し迷った後に頷いた。

 

「……しのぶさん。鬼殺隊でのカナエさんという方は、どういう人だったのです?」

 

「私が柱になる前の柱でした。花柱……花の呼吸を使う柱。それが姉さんです。」

 

「…そうですか。…カナエさん、貴女のその状態が治り、また以前のように暮らせると言ったら、どうしますか?」

 

カナエは暫くの間文字を書き、書き終えたところで香に見せた。

 

“お願いします。この話し方は、しのぶたちにも迷惑をかけちゃうから。もし、私の声が戻るのなら喜んで。例え私が戦えなくたっていい。だって私はもう既に引退した身。今更戻ったからっていって私が万全の状態で戦えるかは分からない。私が戦えなくてもいい……ただ、私は鬼殺隊のみんなの心の癒しになりたい。この状態じゃ、歩くことも難しいから。”

 

「…そうですか。しのぶさんも、いいですか?」

 

「…えぇ。それが姉さんの望みなら。」

 

しのぶがそう言うと、机をたたく音がした。

 

“ありがとう、しのぶ。それじゃあ、お願いします。香さん。”

 

「…香でいいですよ。私よりカナエさんの方が年上でしょう。」

 

それを聞いてカナエが首を傾げた。それから紙に文字を書いて香に見せた。

 

“失礼かもしれないけど、香さんって今いくつなの?”

 

「もうすぐ十四。」

 

そう答えるとカナエが驚いた表情をした。そして紙に文字を書き香に見せた。

 

“そっか。それでも、お願いします。香さん。”

 

「香でいいですって。それと敬語もいりません。私は本当は……」

 

そこまで呟いて、ハッとしたようになってから首を振った。

 

「…何でもありません。それでは治療しますね。力を抜いてください。」

 

その言葉にカナエは頷き、香はカナエの体の上に乗り、両手をカナエの鎖骨のあたりに置いた。

 

「……属性:炎……展開、“異能を溶解する炎”……出力、出力先にて巡回開始……巡回維持、異常地点捜索開始……」

 

香が呟いていると、香の両手が炎に包まれた。

 

「!?姉さん!?香さん、何…を……」

 

しのぶの声がしぼんでいった。それは、炎で燃えているはずなのに、カナエの服や髪、肌が()()()()()()()()からだ。

 

「─────」

 

カナエが音がでない声を発した。ただの口の形。ただそれだけで、香は何を言いたいのか理解した。

 

「…特定。溶解開始」

 

カナエは気持ちよさそうに目を閉じていた。

 

「…綺麗、ですね」

 

「妹紅、あんなことできる?」

 

「無理…どんな術組めばいいのあれ……」

 

流華と妹紅が話していることが気になったしのぶは聞いてみることにした。

 

「あれは何かの術なのですか?」

 

「…恐らくは、鬼の力……血鬼術、でしたっけ。それを炎で溶かしているんだと思います。その、()()()()()()()()()()()で。」

 

「そんなことが……」

 

「もちろん、制御は難しいはずです。それを、簡単に操る香さんは、本当に…規格外なのでしょう。」

 

流華がそう言ったとき、香の手の炎が消えた。

 

「…これで大丈夫ですよ。もう声は発せるはずです。」

 

「…ほ…とう?」

 

その、香のいる方向から発せられた声。それは紛れもなく、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あ…」

 

「姉さん…?」

 

「し…ぶ?」

 

「……姉さんっ!!」

 

しのぶは人が見ているのも気にせずにカナエに抱き着いた。ちなみにカナエの上に乗っていた香はそれに気がついて瞬時に避けていた。

 

「姉さん……よかった…!!」

 

「ご…ん…ぇ。し…ぶ…」

 

「姉さん……声……」

 

「…恐らく、四年という長い時間、凍結されたままであった弊害でしょうね。声帯と肺が正常に動き出していないのです。時間が経てば戻るでしょうけど…」

 

香は少し悩んでから言った。

 

「……そうですね。最低でも5日。その期間は安静にしてください。下手に大声を出したり運動したりすると予測しない事態になることがあります。」

 

香のこの言葉を聞いて、しのぶは改めて香がかなりの規格外だと認識した。

 

「…それでは、私はこれで失礼しますね。道場の方に戻っています。」

 

香がそう言って妹紅と流華を連れて部屋の外に出ようとしたときである。

 

「ま…て…こ…ちゃ…」

 

微かなカナエの声。その声に香が立ち止まった。

 

「あ…がと……こ……おん……かな……」

 

「無理しない方がいいですよ。何か言いたいのでしたらまた今度聞きますから。カナエさん、貴女は今は体を休めることを第一に考えてください。…幸い、私達はしばらくここにいることになるでしょうから。」

 

そう言って香は部屋の外に出た。

 

(…それにしても)

 

香はしのぶの身体を解析していた時に気がついたものに考えを回していた。

 

(成分は藤…毒。それがしのぶさんの身体を回ってる。…一応、手はあるけど。でも多分、これをカナエさんには知られたくないんだろうな…)

 

そう思いながらもう一つ、思考を回す。

 

(…あの毒。血の匂い……それも“憎悪の気配”がした。恐らく、あれを用意している理由は……)

 

香は一つの可能性を導きながら歩いていた。

 




はい、ということでカナエさん復活です。ただまぁ、4年も声出せてなかったなら声がうまく出せないのも仕方ないと思います。ちなみに肺の氷も溶かしたので全集中の呼吸も使えます。
で、機能回復訓練……香に関してはほとんどやる意味がないです。ちなみに常中は使ってないです。心意だけであそこまで行ってます。そして香、あれで自分の能力にリミッターかけてる状態なんですよね……仁も魔強化始まってますけどまだ香には追いつけません。
あ、それと。もしかしたら香がどんな立場の存在なのか気になっている人もいるかと思いますから言っておきますと……はっきり言いますと、香は“転生者”ではありません。これだけははっきり言っておきます。ソードアート・オンラインとか、属性とか、魔法とか色々変なものを知っていますが断じて“転生者”ではありません。ここのタグに転生関係がないのはそれが理由です。
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