とはいえ五十九話です。今回も長めといえば長めですかね…5000字程度ですが。“謎の夢”はまだ続きます。多分あと2回は続くんじゃないでしょうか?
あ、後書きの方は原作のネタバレ注意です
いつの日かの夜。虹架は森の外に出て街中を歩いていた。
「……」
辺りを見渡して警戒しながら進む。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「悲鳴」
虹架はその場で強く跳躍し、悲鳴の聞こえた方へと滑空した。
「…鬼が三体。人間は一人、争い中…」
悲鳴の発生源についた虹架は状況を分析した。
「スーーーーー…」
縁壱に見せた技の時の呼気音を発する。そのまま建物の陰から出て襲われている人間に近づいた。
「だ、誰か!!お助ぇ!!」
「げっへっへ…誰も助けになんざこねぇに決まってんだろうがよ!」
「お前はここで俺に喰われるんだからな!!」
「ひぃぃぃ!!」
完全に怯えた様子の男性、というか少年。虹架は白い靄から刀を作り出した。
「大丈夫だよ」
ごく小さいその呟きはだれにも聞かれず。
「スーーーーー…」
刀から緑色の葉が現れ始める。
「“
呟きと共に虹架が刀を振るうと、葉が鬼達の首を貫いた。
「な…ん?」
「“
虹架がそう呟くと、三体の鬼の首がずり落ちた。
「な…」
「“
虹架が炎を纏って空間を抉った。それにより、鬼の体、頭もろとも消滅した。
「…」
虹架は刀を消し、纏っていた属性を消して人間の方を向いた。
「大丈夫?」
「!?あ、貴女様は…!?」
「名乗れるような名前はないけど…通りすがりの鬼を狩る者、かな。」
「そ、そうですか……助けていただき、ありがとうございます。」
頭を下げるその少年に虹架は首を横に振った。
「私は私のできることをしただけ。夜はあまり出歩かない方がいいよ?」
「は、はい………あの。」
「?」
「どうやったら、強くなれますか…」
虹架はその言葉に悩む声を上げた。
「そうだね…力という点では武を極めるとか色々あると思うよ?でも、どうして?」
「…私は…護りたい人がいるんです。ですが私は弱く……とても誰かを護れるような人間ではありません。どうしたら…愛する人を、鬼から護れるようになりますか」
その言葉を聞いて虹架は少年の目を見つめた。
「……もしも…」
「?」
「もしも、覚悟があるのなら。鬼殺隊の門をたたいてみたらどうかな?」
「鬼殺隊…ですか?」
「そう。鬼を狩る者達の集まり。」
「…分かりました。ありがとうございます。俺は、“
「そう。水面くん…頑張ってね。」
「はい!」
虹架の言葉を聞いた水面という少年は走って去っていった。
「…さてと。」
虹架はその後もう一度属性を纏い、夜の町を徘徊した。結果、特に何もなく森に帰ってきた。
「……そこまで異常なし、と。奴はそこまで愚かでもないはずだからこんなことじゃ尻尾は出さないか…」
活動拠点まで着いた虹架はその場に腰を下ろし、梟と鴉に餌をやっていた。
「…今日は町まで出てお茶の葉でも買いに行こうかな…そろそろ尽きてくる頃合いだし。」
そう呟いた虹架は近くにあった筆と大きめの本を手に取った。
「…虹の呼吸、か。…そうだな……悩んでたけど“七色の呼吸”。それがいいかもしれない。でも、呼びにくいからこれは別名かな。」
虹架は本の表紙に“七色の呼吸”と書き記した。
「……お父さん…」
本を見つめながら虹架はそう呟いた。
「カァ~!」
「ホ~!」
「ん…あ、ごめん…」
虹架の意識が戻ると既に時間がかなり経っていたようで、太陽が昇っていた。
キィィィィン……
虹架の脳裏には高い音が響いていた。
「共鳴音…」
虹架は高い音の鳴る方へと歩いていく。しばらく歩くと、二つの人影が見えた。
「…こんにちは、縁壱くん。」
「あぁ…虹架殿。ご無沙汰しております。」
「そんな、最後に会ってから1週間くらいしか経ってないよ?」
二つの人影のうち、一つは縁壱だった。縁壱と虹架が初めて会ったあの日から、既に1ヵ月が経過していた。
「…そちらの人は?」
虹架がもう一人の方を見て聞くと、その人間───その男性は薄く笑った。
「君が“鬼縫 虹架”君かな?」
「はぁ…そうだけど」
「私は“
その言葉に虹架が反応した。
「…鬼殺隊。ということは、私を倒しに?」
「まだそうは言ってないだろう?それに私は刀を振ることができない。ここにいる隊士は君の友人の縁壱だけだ。」
「…そう。」
虹架は身体の向きを変えた。
「ついてきて」
「行きましょう、お館様」
「あぁ…」
とそう言ったところで虹架は立ち止った。
「あ…そうだ。ごめん、ちょっと買ってきたいものとかあるから…この子についていって?」
そう言って虹架の周囲から緑色に光る何かが現れた。
「…これは?」
「“
虹架がそう伝えると、緑色に光る“導虫”というものが森の道を示した。
「この子には“導き手”の力が備わってる。この子についていけば迷うことはないよ。」
「そうですか…虹架殿は?」
「お茶の葉買ってくる」
そう言って虹架は森を抜け、町に入った。
「いらっしゃい…あ、
「こんにちは。お茶の葉ありますか?」
「あ、はい!菜々花さんがお好きな西の方のお茶の葉、入荷してますよ!」
「やった!いつもありがとうございます!」
「いえいえ…」
虹架はそのお茶の葉の包みを10つほど手に取り、会計をしに行った。
「…いつもですけど、菜々花さんって西のお茶の葉、好きですよね。」
「ふぇ?あぁ、このお茶の葉、何だか懐かしい気がするんです。」
「そうなんですか……あ。そうだ。良かったら今度、一緒にお団子屋さんに行きませんか?」
「お団子屋さん?近くにありましたっけ?」
「最近この辺にできたんですよ!そこのお団子が美味しいって評判で。まだ食べてないんですけど良かったら。」
「えっと……それではまたいつか時間が合えば一緒に行きましょうか。」
「はい、ぜひ!」
「…では、また今度。いつもありがとうございます、“
「またのお越しをお待ちしております!」
虹架はその声を背に店を後にした。
「…“
虹架は町を出てそう呟くと、
「…こっちだね」
虹架が森の奥へと歩いていくと、虹架の活動拠点にたどり着いた。既に、縁壱と雄哉はそこに到着しており、あたりを見渡していた。
「こんにちは。あんまり見渡しても何もないよ?」
「っ!?」
縁壱がいきなりした声に驚き、腰の刀に手を置いた。それをみた虹架はクスリと笑い、縁壱達の前に姿を現した。
「縁壱くん、私だよ。」
「…虹架殿…いつの間に?」
「ついさっき。町からここまで跳んできた。」
「…?」
縁壱は訳が分からないというような表情をした。
「私の技の一つ。空間と空間を繋げられるの。」
「は、はぁ…」
「まぁ、そんなことはいいとして。」
虹架は雄哉に目を向けた。次いで拠点内にあった切り株を手で示した。
「…よければどうぞ?」
「…いいのかい?」
「縁壱くんが信用している人なら信じたい、というのが私の願いですが。それに、縁壱くんも明確な私の敵をここに連れては来ないでしょ?」
「え、えぇ…」
「ならば、遠慮なく。」
雄哉はその示された切り株に腰かけた。虹架はそれに呆気にとられたような表情をしていた。
「…随分と簡単に信用なさるようで。」
「私も君と同じだ。縁壱が信用している君を信じたい。」
「…そうですか。縁壱くんはそこ座っていいよ」
虹架がもう一つあった切り株を示すと、縁壱がそこに腰かけた。
「…それで、今回は一体どのようなご用件ですか?わざわざ鬼殺隊の長殿がここに出向くなど。」
「…君のことは、縁壱からの報告を受けてからしばらく監視させてもらったよ。」
「…そうですか。」
「これは私の独断でやったことだし、縁壱は何も知らなかった。だから彼を責めないでおくれ。」
「…」
虹架は無言で先程買った茶葉を使って三人分の茶を淹れた。
「…粗茶ですが。毒などありません。」
「いただこう。」
「…よくもまぁ、何も疑わずに。」
虹架が呆れたように頭を押さえた。その様子を、拠点の中にいた鴉と梟が見ていた。
「それで、用件は?」
「単刀直入に言うよ。…鬼縫 虹架。鬼殺隊に、入らないかい?」
「………………はぁ?」
虹架は間を置いてから訳が分からないというような声を出した。
「何故、“鬼”を“鬼を狩る組織”に誘うのです?」
「君の姿が、鬼狩りそのものだからだよ。」
「…?」
「3日前までの君の行動は把握しているよ。昼はこの森で時間を潰し、夜は鬼殺隊の子達が来たらそれの迎撃、来なければ森の外に出て鬼を狩る。決して人を喰ってはいなかった。」
「…」
「例え昼でも、鬼殺隊の子達が来たときは殺さずに外に返していたね。恐らく、君の噂で剣技が強いがだれも死んだことはない、というのは全て刃を潰した刃物で倒しているのかと思ったのだけど、君が出す謎の刀で相手を倒すと傷がつかないようだ。」
「……」
「ならば君は傷を無効化する力がある。それは気になるが、決して人を殺そうとはしなかった。君の傷をつける対象は全て鬼だったんだ。同族であるはずの、ね。」
その言葉に虹架がピクリと反応した。
「…私をあいつらと一緒にしないで」
「ふむ…同族嫌悪か何かは知らないが、君は鬼達を毛嫌いしているようだ。」
「少し、違う。」
「ふむ?」
虹架は雄哉を見つめた。
「私は別に鬼達を嫌っているわけじゃない。私が本当に嫌っているのは鬼の首領…あなたの祖先、鬼舞辻無惨。」
「…ふむ。」
「鬼達に対しては可哀想としか思ってない。だから私は静かに首を落とす。」
「…その前に。君は何故、鬼舞辻無惨が私の祖だとわかったのかな?」
その問いに虹架は手を見つめた。
「…血」
「血?」
「私の中に残っている鬼舞辻無惨の血の断片。それがあなたの血と合致した。」
「…どういうことだい?」
「ここに来る前、森の中で怪我したでしょ」
「…」
「左腕の真ん中程。そこに怪我があるはず。」
そう言われた雄哉は左腕を見せた。確かに、真ん中程に傷がある。
「何故、分かったんだい?」
「縁壱くんには話したけれど、この森は迷いの結界で覆われている。その結界は森全体を私の支配領域とするようなもの。森の中で起こったことは分かる。とはいえ、森の中にいないとわからないけど。」
「…ふむ。」
「あなたの血の情報と、奴の血の情報が合致した。ただそれだけ。」
そう言って虹架は茶を啜った。
「……その腕、出して」
「?あぁ…」
虹架は差し出された雄哉の左腕の傷の上に手をかざした。
「…スーーーーー………スーーーーー…」
呼気音を二回繰り返し、いつの間にか手に持っていた
「「!?」」
「スーーーーー………スーーーーー…」
呼気音をさらに二回繰り返し、雄哉の腕から小刀を引き抜くと、そこには
「な……」
「今のは…!?」
「“
虹架はそう短く言い、小刀を消した。
「なるほど…今のが君の…縁壱から聞いていた、“虹の呼吸”だね?」
その言葉に虹架は頷いた。
「虹架。君のその力、どうか鬼殺隊に貸してはくれないだろうか?いつの日か、鬼舞辻無惨を倒すために。…どうか。」
頭を下げながら言われた言葉に、その言葉に虹架は少し戸惑いながら口を開いた。
「…私の力が誰かの…人のためになるなら。でも、私は鬼。本来人間の敵となるもの。いいの?」
「…かまわない。命を懸け、鬼と戦い人を守る者は、誰が何と言おうと鬼殺隊の一員になりうる。」
そう言って雄哉は右手を虹架に差し出してきた。
「…そこまで命を懸けてるわけでもないけれど。…まぁ、私の力が必要とされるのなら。…よろしくお願いします。」
そう言って虹架は雄哉の手を取った。…ここに、最初の“鬼”と“人間”の協力関係が成ったのだ。
「ならば、今から君には伝令役をつけよう。」
「伝令役?」
「おいで。」
雄哉がそう言うと、拠点内にいた鴉と梟が雄哉の元に来た。
「この子たちは鎹鴉、鎹梟だ。実は私以外には誰にも懐かなくてね。どうしたものかと思っていたのだが、君のことは気に入ったみたいでね。君さえよければこの子たちを伝令役の鴉と梟にしてはくれないだろうか。」
虹架はその鴉と梟を見つめた。まっすぐと見つめ返す二羽に虹架は手を触れてから雄哉を見つめた。
「…いいですよ。」
「助かる。よかったらその子たちの名前は君が付けてくれないか?その子たちにはまだ名前がないんだ。」
「…名前…」
「カァァァ」
「ホォォォ」
「ふふ」
鳴く二羽に笑ってから一匹ずつ持ち上げた。
「…そうだな…鴉さんの方は“
それを聞いた鴉と梟は嬉しそうに飛び回った。
「…いいみたいだね。それではその二羽は今日から君の伝令役で、君も鬼殺隊の一員だ。一度本部に向かい、君の身体の寸法を測ろうか。隊服に必要だからね。」
「…分かった。」
「縁壱、彼女と会わせてくれてありがとう。」
「いえ、私は別に何も…」
「そうやって自己評価が低いところ。縁壱くんの悪いところだと思うよ?」
「そう…ですか?」
「そうそう。」
そういう虹架は笑っていた。しかし次の瞬間、虹架の表情が不機嫌なものになった。
「…で。また誰かこの森に迷い込んだのがいるんだけど。」
その言葉に縁壱と雄哉は噴き出した。
「笑うことないでしょ…とりあえず捕まえてきます」
そういうとその場から虹架の姿が消えた。
「…お館様、良かったのです?」
「うん。彼女の力はいずれ必要になる。そう思ったからね。柱たちにはよく伝えておこう。」
「そうですね…」
虹架のいないところでそんな会話がされていたという。
と、いうことで今回は“虹架の鬼殺隊への入隊”に関して書きました。次回は2年くらい時間が飛ぶかもしれません。かも、というのは黒死牟さんが鬼と化したころが分からないからなんですね…そもそも縁壱さんがこの頃20歳というのも“これくらいならまだ鬼殺隊にいる頃だろう”という予測から設定したものです。
原作ネタバレ防止線───
原作ネタバレ防止線───
縁壱さんは7歳の頃に家を出て、その後奥さんと出会い、鬼狩りとなった…そして鬼狩りになった後に巌勝さんと出会っているわけですから…原作177話の双子、という記述から考えれば同い年ですし、原作174話の“最後に会ってから六十数年の時が経っていた”、“人間のままの縁壱は齢八十を超えているはず”という記述から恐らく鬼となる前は20代だったのではと。原作の時間から最後にあったのは400年前のことで、そこから鬼となる前の60年を引くと、460年ほどの間が縁壱さんが鬼狩りを追放されてからの時間があるわけで。
1915-460=1455
そこから5年引いて1450年。六十数年、という部分から完全に60年というわけではないでしょうから1452年とかに鬼になったとしましょう。そうすると所々合うのですよ。とはいえ、多分これ時間最終戦の時からズレてますから鬼になったのが1456年だとしても、その辺は80歳を超えているという点で補助できます。まぁその当時の寿命とか知りませんけど。さすがに調べるのは辛いです。
とまぁ、考察関係もこの辺で。さすがに疲れました。