鬼ヲ狩ル者達之交差【休載中】   作:Luly

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第六十一話……この辺一日で書き上げてるのですよ。気力尽きますよ、ほんと……
ちなみに前話と同日に投稿手続きしてます。


第陸拾壱話 謎の夢・肆

「これはこうで…ん、やってみて」

 

「……リィィィィ」

 

虹架は春華に技を教え、春華は独特な呼気音を出していた。

 

「“華舞の呼吸 壱の型 桜開(さくらひらき)”」

 

春華の言葉と同時に春華の刀が振られ、周囲を桜の花が彩った。

 

「うん。綺麗だね。」

 

そう呟いた時である。

 

 

 

キィィィィン…

 

 

 

「!?」

 

突如、虹架の脳裏に響く高い音。

 

「……共鳴音。ごめん、春華ちゃん。屋敷内に戻ってて。」

 

「へ?あ、はい…」

 

「“三稜鏡幻惑之肆・歪空”!!」

 

虹架がそう叫ぶと、一瞬で虹架は森の中にいた。

 

「この共鳴音……まさか……!!」

 

虹架は音の高い方へと走った。しばらく走ると、そこには虹架が活動拠点にしていた場所があった。…その付近に、一つの人影。

 

「……縁壱くん」

 

「……虹架殿。この森に来れば、確実に会えると思っていました。」

 

「どうして、この場所に。迷いの結界は…」

 

虹架がそう縁壱に問うと、縁壱は自分の肩に視線を向けた。虹架もそこに視線を向けると、緑色に光るものがそこにいた。それを見て、虹架はその場に崩れ落ちた。

 

「…“導虫”。そういうことね。」

 

「えぇ…どういうわけか、私をここまで案内してくれました。」

 

「…そう。」

 

そう答えると、虹架は立ち上がり、拠点内にあった切り株を示した。

 

「どうぞ。たまにきて掃除とかはしてるから腐ってたりはしてないよ。」

 

「…失礼、します。」

 

縁壱が座ったのを見ると、虹架は属性を操って茶を淹れた。

 

「粗茶だけど。」

 

「…いただきます。」

 

縁壱は少し茶を啜ってから机代わりになっている切り株の上に置いた。

 

「…数日ぶり、かな?」

 

「そうですね。」

 

「会いに来るか分からなかったけど、会いに来てくれてよかった。…でも、どうしてここに来たの?」

 

「…貴女のお弟子さんの前で、堂々とあわせる顔がありませんでした。」

 

「どうして?」

 

「…貴女を鬼殺隊に引き入れておきながら、私は取り返しのつかないことをしてしまいました。無惨や、兄上のこと。貴女のお弟子さんの前で何を言えばいいのか、どんな顔をすればいいのか…分かりませんでした。」

 

その言葉に虹架はため息をついた。

 

「じゃあ、ここに来たのは謝るためなの?」

 

「…えぇ。」

 

「…そう。許すよ?」

 

「……え?」

 

「許すって。何を許せばいいか分からないけど。」

 

「……」

 

縁壱が目を瞬いている様子に、虹架は笑った。

 

「…奴のことも、巌勝くんのことも、縁壱くんに何の非があるの?」

 

「無惨に逃げられたせいで、これからも多くの人が死ぬでしょう。」

 

「いや、奴に逃げられる、っていうか…そもそもの話、奴と対等に戦える人間がそんなにいると思ってるの?石柱とか絶対無理だよ?」

 

「…身内から、鬼を出しました。」

 

「そんなの私だってそうだよ。私以外にも、鬼になった身内はいる。…私はそれが心残りなんだけどさ。」

 

「……鬼を一人、逃がしました。」

 

「はぁ?」

 

虹架が何をおかしなことを、というような声を上げた。その声に縁壱がびくついた。

 

「何をいまさら。私という鬼を見逃し、鬼殺隊に所属させている時点でたかが一人逃したくらいなんなの?鬼だからって悪いものばかりじゃない、それは縁壱くんがよく知ってるはずだよ?」

 

「…」

 

「縁壱くんは、私という例外があるからこそ、逃がす判断をしたんじゃなくて?」

 

「……はい。」

 

「でしょうね。どうせ私みたいに奴の支配を逃れてるんでしょ?」

 

「はい…」

 

「だったら問題なし。基本的に鬼の基本行動である食人欲求は奴の支配によるものだから奴の支配さえ外してしまえば年を取らず、普通の人間よりも回復速度が速いくらいで特に変わらないよ。」

 

「……」

 

それに対して縁壱は黙り込んだ。

 

「…ねえ、縁壱くん。縁壱くんも、私も、元を辿ればただの人間なんだよ?鬼達だってそう。元を辿ってしまえばただの人間。ただの人間の中でも、縁壱くんみたいに周囲の人間よりも強い人間だったり、私や私の教え子達みたいに人の身で属性という名の異能を使える人だっている。もっと昔には、陰陽術なんていう呪術が使えた人だっていたんだから。確かに陰陽術を使う人や縁壱くんみたいに強い人、私みたいに属性を扱える人は何も力のない人から考えれば脅威だったり神様に思えたりするかもしれない。でも、忘れちゃいけない。私達は元を辿ればただの人なの。鬼達はただの人にさらに異能とほぼ永久的な再生を付け加えられただけ。鬼も、私達も、出来ることには限界があるの。神様なんかじゃ決してないんだから、全てを背負えるわけがないんだよ?」

 

「…ですが」

 

「ですがも何もない。縁壱くんはこれまで出来ることを十分にやってきた。もう打つ手がないなら、あとは後継に託すべき時だよ。もちろん、この私もね。そろそろ打つ手がなくなりそうだから、私の命にも終止符を打つ時が迫ってきてる気がする。」

 

「…え?」

 

虹架の言葉に縁壱が驚きの表情をしていた。

 

「虹の呼吸はまだ完成しない。でも、何かが揃えば完成する。それが何年先で見つかるかは分からないけど。でも、最近属性持ちが少なくなってきているのも事実だから。私は私が決めた時に、私の命に終止符を打つ。そう決めてるんだよ。」

 

「…そうですか…」

 

「…ね?私はともかく、縁壱くんに私に許されるべき罪なんてない。あなたはあなたのできることをした。それで十分なんだよ。」

 

「虹架殿……」

 

「…ほら、おいで?」

 

虹架が手を広げると、縁壱がそこに入った。

 

「…今はお姉ちゃんに任せて、お眠りなさい。」

 

「…すぅ」

 

虹架が言った直後、安らかな寝息が聞こえた。

 

「ホントに寝たし…いいけど。…縁壱くんが、少しでも癒されますように。」

 

「…んぅ」

 

「ふふっ」

 

虹架は微笑んで縁壱を抱きしめた。

 

「…母上…」

 

「……年齢的には貴方のひいお祖母ちゃんかな?200歳超えてるし…」

 

そんな呟きは誰にも聞かれなかった。

 

 

 

しばらくして縁壱が目を覚ますと、縁壱は顔を真っ赤にして飛び退いた。

 

「も、申し訳ありません…」

 

「いいよ。眠りなさいって言ったのは私だし。」

 

そう言ったのち、虹架は何かを思いついたように口を開いた。

 

「縁壱くん。日の呼吸の型を見せてくれないかな。」

 

「…えぇ。ですが、ここでは…?」

 

「ふふ、ついてきて。」

 

虹架は縁壱を連れて森の奥深くへと入っていった。たどり着いたところには、見覚えのある黒い石があった。

 

「ここは…貴女が喰らってしまった人達の墓場…でしたか?」

 

「ま、代わりだけどね。ここで、お願いできる?」

 

「…いいのですか?」

 

「うん。それに、私も“出来上がったら見せる”って言っていた技があるでしょ?」

 

「…それは、そうですが。」

 

「その技と私が見せたいものにここはちょうどいいから。ね?」

 

その言葉に縁壱は観念したようにため息をついた。

 

「分かりました。精一杯やらせてもらいます。」

 

そう言って縁壱は刀を構えた。

 

「ゴォォォォォ」

 

呼吸音と共に縁壱の刀が振るわれる。

 

「“日の呼吸 壱ノ型 円舞”」

 

「…うん」

 

「“日の呼吸 弐ノ型 碧羅の天”」

 

「…」

 

「“日の呼吸 参ノ型 烈日紅鏡”」

 

「やっぱり…」

 

「“日の呼吸 肆ノ型 灼骨炎陽”」

 

「思った通り…」

 

「“日の呼吸 伍ノ型 陽華突”」

 

「だったかな」

 

「“日の呼吸 陸ノ型 日暈の龍・頭舞い”」

 

「綺麗」

 

「“日の呼吸 漆ノ型 斜陽転身”」

 

「まるで…」

 

「“日の呼吸 㭭ノ型 飛輪陽炎”」

 

「神楽。」

 

「“日の呼吸 玖ノ型 輝輝恩光”」

 

「なら、名前は…」

 

「“日の呼吸 拾ノ型 火車”」

 

「そうだな…」

 

「“日の呼吸 拾壱ノ型 幻日虹”」

 

「これがいい。」

 

「“日の呼吸 拾弐の型 炎舞”」

 

「“ヒノカミ……神楽”」

 

虹架がそう呟いた時、縁壱が技を終えた。

 

「…今のが、“日の呼吸 拾参ノ型”です。壱ノ型から拾弐の型までを連続して振るう。それが日の呼吸の、私が最後に生み出した技です。…名前、付けてくれませんか。」

 

「……“神楽舞”」

 

「神楽舞、ですか?」

 

「うん。神にささげる神楽舞。“日輪神楽舞(にちりんかぐらまい)”…それがいいかな」

 

「…では、拾参ノ型は“日輪神楽舞”と。そう呼ばせていただきます。」

 

「……さ、次は私だね。」

 

そう言うと、虹架と縁壱が立ち位置を変わった。

 

「さてと…新しい型の前に、見せたいものから見せようか。」

 

「そういえば、見せたいものがあるとか…」

 

「うん。」

 

そう言って虹架は何かを懐かしむような表情になった。

 

「私の家に代々受け継がれていたとある神楽…私の新しい型達の基礎にもなった舞だよ。」

 

「それを…私に見せてもよいのですか?」

 

「うん……思い出した時、何故か見せたいって思ったんだ。」

 

「そうですか…」

 

「…じゃあ、始めるね。」

 

そういうと、虹架はいつの間にか手に持っていた扇を振り、踊り始めた。

 

「……」

 

その踊りは鮮やかで。縁壱の興味を惹きつけていた。

 

「……」

 

暫く踊ると、舞の質が変わった。鮮やかだったものから、力強いものに。魅了する力は、より強く。属性を纏いながら、振るわれる。

 

「…綺麗だ」

 

縁壱がそう呟いた時、虹架の舞が終わった。

 

「…今のが、私の家に代々伝えられてきた二つの神楽…魂を鎮める“鎮魂神楽(ちんこんかぐら)”と念を浄化する“浄念神楽(じょうねんかぐら)”。属性を纏って虹の呼吸に転ずることで“虹の呼吸 舞の型 七色神楽(なないろかぐら)”と“虹の呼吸 舞の型・乱 七色神楽(なないろかぐら)乱舞(みだれまい)”。これが私が思い出した型だよ。」

 

「なるほど……すごく、綺麗でした。」

 

「まだ終わりじゃないけどね。」

 

そう言うと、虹架はどこからか大幣を取り出した。

 

「本命はこっち。…シューーーーー……」

 

虹の呼吸の呼気音。それを発しながら踊る虹架。

 

「…これ…は…!」

 

縁壱はその踊りを見て声を上げた。

 

「綺麗で、優しいですが……これが攻撃に転じると…!?」

 

その声が聞こえたのか、虹架が舞を終えた。

 

「…縁壱くんは、気づいたんだ?」

 

「えぇ…この舞は……攻撃に転じると……性質がまるっきり変わるのでしょう?」

 

「そう。この舞は……“虹の呼吸 舞の型・極 虹巫娘神楽(にじみこかぐら)”は、武器使ってないからこそ、優しく、綺麗に見える。」

 

「武器を持てばそれは一変……優しさの塊が一気に狂暴になる……これは……“二面性を持つ神楽”だ……」

 

その言葉に虹架は微笑んだ。

 

「…そう。やっぱり、縁壱くんに見せてよかった。」

 

「え?」

 

「私とは別の考え方をしてくれるから。私はこれを、“想いを紡ぐ虹神楽の到達点の一端”だと思ってるから。」

 

「虹…神楽。」

 

「そう。…さて。そろそろ帰る?結構時間経ってるし。」

 

虹架がそう言うと、縁壱は悩むような声を上げた。

 

「…虹架さん」

 

「うん?」

 

「私は…行きたいところがあります。そこに、連れていってはくれませんか?」

 

「……場所は、どこ?」

 

「……貴女の生まれた家と、とある山に。」

 

その言葉に虹架が詰まった。

 

「……私の家?」

 

「はい。」

 

「……」

 

虹架は少し悩むような表情をしてから縁壱を見た。

 

「…縁壱くん。…私の家を見ても…」

 

そこで虹架は口を閉じた。

 

「…ううん、何でもない。行こうか。私と手を繋いでくれる?」

 

虹架が手を差し出すと、縁壱はその手を握った。

 

「“三稜鏡幻惑之肆・歪空”」

 

虹架がそう言うと、虹架と縁壱は蔵だけがある広い敷地にいた。

 

「…ここは?」

 

「私の家があった場所。……200年前、()()()()()()()()()()。」

 

「え……」

 

「その時はまだ奴の支配下だったから。食人衝動に任せて、ここにいた家族たちを喰らった。」

 

そういう虹架の表情は辛そうだった。

 

「その時、私の友達と会って…私はそれで覚醒した。その時に私の支配は完全に外れたの。…できることなら、この場所には来たくなかった。」

 

「…申し訳ありません。嫌なことを思い出させてしまい。」

 

「いいよ。気にはなっていたんでしょ?」

 

「えぇ…」

 

「ならいいよ。…さて、今は夜だから、すぐにここを去るよ。」

 

「えぇ…」

 

「“三稜鏡幻惑之肆・歪空”」

 

そう言うと虹架と縁壱の姿がその場から消えた。

 




何を話せばいいかよくわかっていません。とりあえず、この作品での日の呼吸拾参ノ型は“日輪神楽舞”という名前であるということで。
で、もう気がついている方もいるでしょう。“鬼縫 虹架”は妹紅さんの夢に出てきた“心音 虹架”と同一人物です。虹架の方は妹紅さんが不死者だとは知りませんが、あまり心音家の屋敷跡地にいたくはなかったのですね。
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