ハイスクールD×D 〜鏡花水月とともに〜   作:bad boy

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はい!bad boyです!

たった二話だけなのに多くの人が拙作を読んでくださり本当にありがとうございます!皆様の評価や感想などをモチベーションにこれからも執筆していきます!

それと、第二話にすこし文章を加えました。鏡花水月はそこまで使い放題というものではないという内容です。

それでは第二話どうぞっ!


第二話 彼の過酷で孤独な日常

 両親が殺されてからもう5年がたつ。

 

 俺はもうすぐ13歳になる。中学1年生の年だが学校には行っていない。今となってはこの広い一軒家での生活びも慣れた。今の時刻は朝の5時、もう起きねば。

 

「ふあ〜〜〜あ」

 

 大きな欠伸を1つしておれはベッドから出る。まず起きたらシャワーを浴びのが毎朝のルーティーンだ。朝に弱い俺はシャワーを浴びないと目が冴えない。これは前世からも変わらない俺の体質だ。

 

 シャワーを浴びふとドライヤーで髪を乾かしながらふと鏡の中の自分を目を合わせる。うん、似てきたな、()()藍染惣右介に。普段はメガネをかけているが、風呂上がりの裸眼に髪の毛を上げている自分は俺の知っている破面篇の藍染惣右介を幼くした感じだ。我ながらイケメンだなと思う。

 

 次に視線を少し落とす。5年前の細い体に比べたらだいぶしっかりとした体つきになっている。しかしもともと筋肉がつきにくい体なのか細マッチョという印象だ。それでも質を上げるように日々鍛錬している。

 

 いつもの伊達眼鏡をかけ、シャワー浴び終えたら朝食だ。しかし朝食といっても手早く摂取できるバランス栄養食(所謂カ○リーメイト)だけだ。キッチンにあるダンボールに大量に入っている。自分で料理を作る時間があったら鍛錬に使った方がマシだ。

 

 でも時々無性に母さんの手料理が恋しくなる時がある。もう5年も食べていないあの味、もう一度食べたいなあ……。いかんいかん泣きそうになってしまう。

 

 そうして朝食を済ませ日課の鍛錬に出かける前にリビングの片隅にある仏壇に手を合わせる。そこには両親の写真と亡くなったときにも身につけてくれていた俺があげたお守りが飾られている。

 

「父さん、母さん、いってきます」

 

 そう父さんと母さんに告げておれは家を出る。そして家を出ると同時に仮面を被る。なぜならこの街にいる人は俺の姿がいつものまだあどけなさの残る姿ではなく、()()藍染惣右介の姿に見えているからだ。

 

「あら藍染くん毎日朝早いわねえ」

 

「佐藤さん、おはようございます。今日も朝から散歩ですか?」

 

 毎朝同じ時間に会う佐藤さんは犬の散歩をしておりよく俺に話しかけてくる。といっても佐藤さんが話しかけているのは俺であって俺ではない。この街では家の中以外では誰も俺を俺と認識しない。そしてあの事件から俺は誰も家に上げていない。つまり俺はこの5年間誰にもおれ自身を認識されていない。

 

 最初の方は苦労した。なんせ誰も俺自身を見てくれないからだ。言いようのない寂しさに襲われよく泣きそうになっていたが、今となってはもう慣れた。

 

「そうよお、藍染くん一人暮らしなんでしょう? 家の場所さえ教えてくれれば時々ご飯作ってあげるのに」

 

 家の場所なんて決して教えない。まだあの家に誰かを上げる気はない。

 

「いえいえ、僕は自炊していますので大丈夫ですよ。お気持ちだけありがたく受け取っておきます。それではまた」

 

 そして俺はマダムにモテる。この佐藤さんにしろスーパーでレジのパートをしてる鈴木さんにしろなぜかマダムからのウケがやけにいい。

 

 なんでだ? 俺がヨン様に似てるからなのか? そうなのか? どうせモテるなら若くて可愛い子がいいに決まっている。だって俺まだ中学一年生の年だよ。流石に自分の四倍の年齢の人からモテても嬉しくねーよ! 

 

 でもたとえ若くて可愛い子にモテたとしても親密になるまで仲良くなろうとは思わない。あくまで時々話す上辺の友人までだ。

 

 なぜならまだ目の前で両親が殺されたことを引きずっているからだ。もし誰かを好きになってその人を失ってしまったら俺はもう立ち直れる気がしない。情けない話だ。()()藍染惣右介ならきっとこんな風にならないだろうに。

 

 それに親しい人を作らない理由はもう一つある。それは家の中には全ての催眠をかけていない。なぜなら父さんと母さんにはありのままの自分を見て欲しいというささやかな願いからだ。つまり家の中に人を入れるとその人には全てがバレてしまう。だから自分の中で決心がつくまでは他の人を家に入れたくない。

 

 佐藤さんと別れた俺は近くの山に入り、周囲の霊圧(魔力)を探り誰もいないことを確認して鏡花水月を発動させる。この山付近を近くを通る人の認識から外す。簡単に言えばこの山の存在を忘れさせるのだ。こうすることで誰にも邪魔されることなく鍛錬ができる。

 

 

 

 

 

 

 気がつけば夕暮れになっており、今日の鍛錬を終わらせる。

 

 かなり力がついてきたと思う。拳で岩を粉砕できるし、鏡花水月で川を切ることもできるようになった。正直言って自分でもここまでパワーが出せるなんて驚いた。俺って人間? もしかしていつの間にか人間やめてる? しかしこの体が藍染惣右介のスペックだからというのが一番有力な説だ。なぜなら頭の出来も違う。一度見たことは忘れないのだ。このことからもこの体は藍染惣右介仕様だというのが正しいだろう。魔力探知の精度もかなり上がった。

 

 しかし……。

 

「やはり黒棺はまだか。」

 

 そう誰にも認識されない山の中で呟く。

 

 そう、黒棺がいまだに習得できないのだ。詠唱は完璧なはずなのに。完全詠唱を覚えている鬼道は黒棺だけだが他にも名前とイメージを覚えているものを片っ端から試してみたがどれもダメ。蒼火墜も赤火砲も六杖光牢も全部だめ。こういう魔法の類のようなものはやはりコツがいるのかもしれないから誰かに習わないとダメなのかなあ。多分霊圧ってここでの魔力と同義っぽいし。でも頼れる人なんかいないしなあ。藍染惣右介なら魔力量は半端ないはずなんだけどなあ。制御できてないから多分垂れ流しなんだろうし。まあ鏡花水月で認識されないようにしてるから感知されることはないと思うけど。

 

 まあ色々考えすぎても仕方ないか、今日は帰ろう。

 

 

 

 

 

 

「うん?」

 

 家に帰る途中で異質な魔力を探知する。この感じは……。

 

「はあ、またはぐれ悪魔か、最近多いね。」

 

 この魔力の質からして悪魔だろう。それもかなり荒々しいためおそらくはぐれ悪魔だ。

 

 はぐれ悪魔、俺が覚えている原作のワードの1つだ。アニメの序盤でフルボッコにされているのが印象的で覚えていた。確か主人から逃げ出した眷属悪魔だったかな? 

 

 正直原作の知識が少なすぎる。忘れないようにノートに書き留めてあるが原作を見たのがもう15年ほど前の話だ。正しいのかもわからないしこの世界についても知識があやふやだ。これについても詳しい人に話を聞ければいいんだがなあ。

 

 そんなことを考えながら俺ははぐれ悪魔の魔力を感じる廃墟にやってきた。感じる気配は2つ。1つは入った正面にいるな。もう一人は隠れているのか? まあいい、鍛錬だと思えば対人戦を経験できる数少ない機会だ。有意義に使うとしよう。

 

 戦闘のため俺は伊達眼鏡を外し、普段下ろしている前髪をかきあげながら廃墟の扉を開けた。

 

 

 

 

 

「なんだあ? 人間かあ?」

 

 おぞましい低い声が響いてくる。そこにいたのは半身半獣。正確に言えば下半身が馬の男だった。ケンタウロスか。

 

「そうだよ、はぐれ悪魔」

 

「ちっ! 裏の世界の事情を知ってる人間か。神器もちか?」

 

「肯定しよう、確かに私は神器をこの身に宿している」

 

 そう答えるが俺は今回鏡花水月を使う気はない。()()藍染惣右介は鏡花水月がなくとも恐ろしく強かった。だから俺も鏡花水月なしでも戦えるようにならねばならない。

 

「だったら……。死ねやあ!!」

 

「ふっ!」

 

 はぐれ悪魔は作戦なしに俺に突っ込んできた。所詮人間だと侮っているのだろう。早く重い一撃でバラバラにしてやろうというところか。

 

 だが遅い。遅すぎる、まるでスローモーションだ。おれははぐれ悪魔の拳を紙一重で避け此奴の鳩尾に一撃叩き込む。

 

「ぐほぇ!!!」

 

 鳩尾への一撃がクリーンヒットし、はぐれ悪魔は腹を抑えて悶絶する。弱い、弱すぎる、そこまで力入れたわけじゃないのに。俺が強くなりすぎたのか? しかしこういう作品でパワーインフレが凄まじいのはお約束。きっとインフレしていくのだろう。もっと強くならないとな。

 

「そこに隠れてる君、もうそろそろ出てきたらどうだい?」

 

 そう言って背後の気配のする方に振り返る。

 

「ほお、少しはやるようじゃねえか」

 

 そういって物陰から出てきたのはいかにも悪魔です! って感じの見た目のやつだった。頭からはツノが生え、翼を出し全身赤い上に服を着ていない。なぜか男の弱点もついてない。どういう体してるんだこいつ。この世界の悪魔は見た目人間と変わらないはずなんだが。

 

「ククク、さっきはしてやられたが二対一だ。さっきの分やり返させてもらうぜ」

 

「そういうことだ大人しくぶっ殺されなあ!!」

 

 さっきまでうずくまってたケンタウロスが起き上がり、前後で挟まれている状況だ。

 

 だが……。

 

「払う埃が1つでも2つでも、目に見えるほどの違いはない」

 

 そう、こいつらは明らかに弱い。俺はまだ全力ではないし鏡花水月も使っていない。だが、過去の経験から油断は一ミリもしない! 確実にこの世から消し去る! 

 

「戯言をっ!! 死ねえ────!!」

 

「食らいやがれええ!!」

 

 二人のはぐれ悪魔は前後から攻撃を仕掛けてくる。俺は奴らの目では追えないであろう速さで目の前のケンタウロスの背後に回り込み鏡花水月を発現させそのまま首を落とした。

 

「なっ!!」

 

 もう一人の悪魔が驚いているがその一瞬で貴様を殺すには十分だ。

 

 俺は突っ込んできていて体を驚きで硬直させた悪魔の懐に入り込みそのまま鏡花水月で心臓を貫く。

 

「がっ! はっ!」

 

 それだけ言うと悪魔は息絶えた。

 

 弱いな。これでは自分がどれだけ強くなれたのかわからない。でも俺がまだまだなのは間違いない。なぜなら()()藍染惣右介はこんなもんじゃないはずだ。魔力の制御を身につければそれを解放するだけでこいつらを跪かせていただろう。俺には課題がまだあだある。剣の一振りで地形が変わるほどのあの力を身につけなければ。俺の目標とする人のいるところは果てしなく遠い。

 

 

 

 

 

「ただいま。」

 

 もちろん返事はない。しかしどうしてもやめようとは思えなかった。

 

 そのあとは何事もなく家に着いた。シャワーを浴び、キッチンにあるダンボールの中からバランス栄養食品を2つ取り出し食す。はっきり言って飽きた。でもわざわざ何かを買いに行く時間があれば他のことに使う方がいい。

 

 そして俺は両親がいた頃からのおれの部屋でノートを開く。そこには過去俺が思い出せるだけ書き出したこの世界の原作知識と鬼道が書いてある。そして新たに思い出せることがないか思案し、何も思い出せず溜息を吐く。

 

 せめてもっと早くこれを始めていれば他のこともわかっていたのになあ。昔の自分に腹がたつ。何も考えず呑気にしていたあの時間を返して欲しい。しかし何度目かわからない自己嫌悪をしても仕方ないのでこの感情を抑えてノートに目を落とす。

 

 そこには思い出せる限りの原作の主要人物やその特徴、原作で起こった大きな出来事、この世界の特徴などが書いてある。しかしまだ俺はこの主要キャラたちにはあったことがない。学校に通ってないから当然のことではあるが。

 

 しかし普段から感じる駒王学園の中等部から感じる魔力。あれはきっとリアス・グレモリーのものだろう。大人しくしているから手は出さない。もしここで殺してしまえばただでさえ少ない原作知識が全く意味のないものになるからだ。

 

 次に鬼道のページを開く。そこには黒棺の完全詠唱を始め多くの鬼道の番号と名前が書いてある。しかしその多くは番号が欠けている。思い出せないのだ。名前は思い出せたのだが番号が思い出せない。番号がないと使えるのかわからない。

 

 とりあえず黒棺と他幾つかの番号と名前が揃っている鬼道の暗唱を行いいつでも即座に唱えられるようにしておく。これも日課だ。

 

 

 

 

 

 そこまでやってノートを閉じる。時刻は夜の11時、そろそろ寝なければ寝坊してしまいそうだな。そう思いベッドに横になる。

 

 

 

 

 

 まただ。はぐれ悪魔を殺した時の映像がフラッシュバックする。ずり落ちていく首、悪魔の心臓に鏡花水月が吸い込まれてく様子が目を閉じるとまぶたの裏で蘇る。

 

 その場で殺すことに対しての躊躇や恐怖は無くなった。しかし殺したと言う事実に俺は震える。俺がやっていることはあの堕天使と同じなのではないか。もしかしたらあの悪魔たちにも何か理由があったのかもしれない。でも向こうから仕掛けてきたのだから仕方ない、正当防衛だ。そう思いこむがやはり喉の奥に魚の骨が刺さっている感覚に襲われる。

 

 やっぱり俺はまだまだ甘いな。強くならなければならないのに。()()藍染惣右介のようにならなければいけないのに。

 

 

 

 

 

 そう考えていると眠気に襲われ俺はその眠気に身を委ねる。

 

 ああ、きっと疲れていたんだはぐれ悪魔と戦ったせいで。

 

 

 

 

 

「寂しいな、一人は」

 

 

 

 

 

 そう呟き彼は寝息を立てる。彼の最後の一言は寝言であったのか、それとも本心から出た独り言であったのかは彼にもわからない。

 

 こうして彼のいつもとほとんど変わらぬ1日は終わる。




惣右介くんは誰にも認識されることなく孤独な日常を延々と繰り返しているようです。

誰か彼を救ってくれえ

次回の執筆も頑張ります!

評価・感想も自身のモチベーションになるため、お待ちしております!

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