今年中に更新をしたかったので2話投稿します。
……ストックが減るのはあまりよくはないんですけれどね。
ではクイズ番組でも見ながら投稿します。
平成25年6月13日15:16
授業終了。
さて……今日もゲームをするために部活へ行くとしようか。
そして部室へ向かう為に廊下へ出ると、
「これから部室?」
偶然にも同じく部室へ向かうだろう溜井と遭遇した。
問いに関してはこれと言って問題があるわけではないので、とりあえず肯定をしておく。
「あぁ」
「そう」
そう言って部室へと向かう溜井に続いて俺も部室へと向かう。
まあ、掃除が無ければ部室に向かうのが一緒になることはそう珍しいことではない。授業が終わるのは同じ時間なわけだからな。
平成25年6月13日15:20
そして何か会話をするわけでもなく、部室に到着。
俺はそのままいつも通りの席に座ろうとしたが、何の気も無しに向こうの部屋の方を見るとドアに張り紙がしてあるのに気がついた。
「……ん?」
その張り紙には『立ち入り禁止』と書いてある。
何故立ち入り禁止……気になるな。
「あの『立ち入り禁止』の張り紙はどうしたのですか?」
そう思っていたら同じく気になったのか、溜井が船井さんに質問してくれた。
これで質問と言う手間を省いて疑問を解消できる。しかし、ただ聞いているだけでは暇なので音が必要のないゲームでもやりながら耳を傾けよう。
「あーあれね。あの張り紙を張ってる場合はたいてい危険物を作ってるときよー」
「危険物、ですか?」
行きなり物騒な単語が出てきたな……学校で一体何作ってるんだよ。
「例えばー……ほら、毒物とか」
「ど、毒物!?」
「え゛」
……思わず声が出てしまった。いやでも、毒物を学校で作るのはおかしいだろ。大学ならまだしもここ高校だよな? しかも部室。
「えっと……どうして部長は毒物を作っていたのですか?」
それよりも学校でそんなものを作っていいのかが疑問なんだが。
「何だったっけねー。シュンは覚えてる?」
溜井さんが問いかけると、津出さんはスタートボタンでゲームを止めてからこちらに顔だけを向けた。
「毒物なら『Gを一瞬で殺せる殺虫剤を作る』って言ってた時と、『河豚の毒を作る』って言ってた時があったよ」
「あーそうだったわねー」
津出さんはゲームを再開し、船井さんは手を叩くと呑気な声でそういった。
「「……」」
しかし俺たちは開いた口が塞がらない。
だって校則どころか法律的にどうなんだろうか……いゃ、何も言うまい。どうせ砂城の時と同じで何かしらの許可はとってあるんだろう。
……そんなものがあるのか分からないけどそう思うことにした。
「それで、その……毒物はどうなったのですか?」
「確かー……河豚毒の方は分からないけど、殺虫剤は試作品を試しに噴射したら床が熔けたのよね?」
「だね。その後すぐに改善されたけど」
この二人は何でもない風に言っているが、どう考えても床が熔ける殺虫剤っておかしいだろ。明らかに虫以外も殺しにかかってる。
あ、いや、殺虫剤って元々人体にも毒だったか。
「ちなみにその殺虫剤? は、今は何処にあるのですか?」
まぁ、思わず「殺虫剤」が疑問形になる気持ちは分かるな。
「今はたぶん研究所にあるんじゃない? まー改善されて人体に影響はないし、もしかしたらその辺に転がってるかもしれないけどねー」
「研究所……町外れにあるって言う噂のですか?」
……まぁ、人体に影響ないならその辺に転がってても良いか。それにしてもどんな噂だよ町外れの研究所って……怪しすぎるだろ。今度はそっちの方が気になるんだが。
「別に町外れってほどでもないけど、確かに周りに民家は無いねー」
「そうなのですか」
よく分からないが周りに民家がないとなると、工業地帯とかそう言う所だろうか? ま、場所を知ったところでどうせ分からないし、行く事も無いだろうからどうでもいいや。
「きっとそのうち行くこともあるんじゃないかなー?」
言葉にもしていないのにいきなり否定された。
「そうなんですか?」
「きっと、だけどねー」
笑顔で言われる。
正直な話、そんな怪しいところに出入りしたくないのだが。面倒なことになりそうだし。
少し間が空いて。
「それで、部長は今何を作っているのでしょうか?」
緊張した様子の溜井が船井さんに尋ねた。
確かにそれが一番気になる。それを考えると不安で仕方がない。一体吹田さんは何を作っているんだ……。
「んー……私は何も聞いてないけど『トロン……ボーン……』とか呟いてたわよー?」
「トロンボーン、ですか?」
「呟いてただけだし、ホントーにそう言っていたかは分かんないけどね」
「そうですか……」
そして溜井が悩み始めたことにより会話が途切れる。と言っても、もともと会話の多い部活でもないしいつも通りだけど。
俺もイヤホン付けてゲームに集中するかな。
「……」
それにしても「トロンボーン」か。前科を聞くとどうしても不安になるな。まさか本当に金管楽器のトロンボーンを作っているだけならいいのだが、そんなことは残念ながら無いと思う……危険物とは違うような気がするし。でも金属加工なら確かに危険なのか? いやでも危険物でない以上違うのだろう。
となると「トロンボーン」とは制作物そのものではなく、制作物に関連するキーワードの様なものだろうか?
俺が「トロンボーン」で思いつくのはー……。
「んー……」
駄目だな思いつくのはせいぜいゲームのキャラくらいだ。だがゲームのキャラ関係だとしてもまさか空中要塞や二足歩行な戦車とかなんて作ってないとは思うが……広さ的に無理があるだろ。ならプラモとかフィギュア……は危険物ではないだろうし。
ホントに吹田さんは何を作ってるんだ……気にしないようにしたいけど不安で不安でどうしようもない。ゲームにも集中できないし。
その後、結局俺の帰る時間に吹田さんが隣の部屋から出てくることは無かった。
平成25年6月13日19:44
家に帰っても「トロンボーン」が気になった俺は、面倒に思いながらも気になり続けることの方が面倒だと判断しパソコンで「トロンボーン」と検索をかけてみる。
しかし……
「……駄目だ」
椅子の背もたれに寄りかかると、天井を見上げ溜息をつく。
どれだけ「次へ」を押しても出てくるのは金管楽器のトロンボーンばかり。分かったことと言えば「トロンボーン」というのはイタリア語で「大きなラッパ」と言う意味らしいことくらい。
もうこれ以上調べるのは面倒というか、意味がない気がする。さすがに「次へをクリック→下にスクロール→次へをクリック」し続けるのも億劫だ。
「やめよ……」
どうせそろそろ夕飯だ。
俺はパソコンをスタンバイ状態にして、いつでも下の階に行けるように読みかけの小説に手を伸ばす。
まぁ、きっと明日分かるだろう。
そう信じて。
平成25年6月17日3:39
あれから土日を挟んで月曜になった。その間一度も吹田さんを見ていない。
いや、土日に見るわけもないけどさ。家から出てないし。
そして今日も向こうの部屋には「立ち入り禁止」が貼られていた。
相変わらず気にはなるものの、さすがに数日も経てば不安にも多少は慣れて気にしなくなってくる。
俺は普段通りにイヤホンを付けてゲームを始めた。
6ステージ目をクリアしてゲーム内蔵の時計を見ると、16時半を表示していた。
「んん……」
同じ姿勢でいた体を伸ばしたり首を回すと複数個所の関節が音を上げる。正確には関節の中か何処かにある気泡の弾ける音だったけな。どうでもいいけど。
そんなことは放っておいて
と、思ったところで向こうの扉が開いた音がした。
「あ、できたのー?」
「あぁ」
「?」
首だけを向けるとそこにいたのは久しぶりの吹田さん。そう言えばあんな顔だったなー……なんて、思ったのは本当だが、それよりも今は……
「部長……その、手に持っている瓶はなんでしょうか?」
そう。溜井の言うとおりそれだ。
見た感じ蛍光黄緑みたいな色のナニカが入っているようなんだが……。
「トロンボーンだ」
「トロンボーン、ですか?」
どう見ても金管楽器のトロンボーンには見えない。もちろんゲームキャラ関係でもなさそうだ。
「正式名称は『スライム状水分起爆連鎖爆破型爆弾トロンボーン』だ」
「……ばく、だん?」
溜井がゆっくりと呟く。
「ば……く?」
俺も目を瞑りその言葉を心の中で噛み締めてみる。
「ばくだんバクダン爆弾爆弾爆弾爆……爆弾? 爆弾て……え? 爆弾」
いや、まさかそんなはずは……船井さん曰く常識はあるはずだし、まさか部室で爆発物を作るはずが――あ、前に毒物作ってたんだった。
「え、え? 爆弾って……爆発する爆弾のこと、ですか?」
恐らく溜井も分かってはいるものの、再確認せずにはいられなかったんだろう。
「ああ」
「……」
そして当然のように平然と肯定する吹田さんと沈黙する溜井。
いやそもそも……
「……何でそれがトロンボーンなんですか?」
トロンボーン的要素が欠片も見当たらないんだが。
と言うか、幽霊やらなんやらの時よりも現実的なはずなのに、その時よりも驚きを通り越して疑問しか出てこない。
「トロンとしてボーンって感じだからだ」
「あぁ……なるほど」
ようするに「トロン」っていうのがスライムのイメージで、「ボーン」が爆発するイメージってことか。
その連想は分からなくもないけど……それで爆弾を作るのは理解しがたい。
「あの、部長はそれを作ってどうするのでしょうか?」
それは確かにそうだ。
「……」
問いに対して何故か考えている様子の吹田さん。
まさか響きだけで爆弾作ったのか。
「……排水溝掃除?」
返ってきた答えは疑問形。
……マジで響きだけで爆弾作ったのか。
「掃除用、ですか……?」
「爆破の威力で汚れを吹き飛ばす」
「汚れどころか排水溝まで一掃しそうなんですが……」
「だろうな」
「「……」」
いや、何言ってんだこの人。
そこまで言い切ると清々しいが、言い切っちゃ駄目だろ。
「俺は帰る。千利乃、後は任せた」
言葉も出ない俺たちを余所に、吹田さんは爆弾を持ったまま帰るようだ。
「任せてー」
呑気に手を振る船井さん。
そして吹田さんは部屋をそのまま出て行った。
……爆弾をあのまま持って帰るんだろうか。恐らく吹田さんだから何かの対策はしているんだろうと判断して何も言わなかったが……まぁ今さらだし面倒だし信じよう。
そんなことよりも、相変わらずここの人たちは耐性がついているというか慣れているというか何というか……爆弾が部室で作成されたのに驚きもしないどころか平然とゲームや読書をし続ける。
俺もいずれこうなってしまうのだろうか……いや、その方が一々驚かなくて済むし面倒じゃないだろうけど。
だがこんな非日常的なことを俺の日常に入れてしまえば、ただでさえ非現実が現実だったことにより現実への認識が一般人よりずれてしまっているというのに、一般的な常識さえもずれてしまいそうだ。
なら、やっぱりその辺の線引きはしたうえで諦めるしかないのだろう。慣れてはいけない。受け入れてもいけない。認めもしない。
前に決めたとおり、この先どんな非現実に直面しようとそれが現実だということは面倒だし認める。だが非日常を日常だと、それが常識だとは例え面倒でも認めない。認めてしまった瞬間、俺も変人になってしまうのだから……それは勘弁してほしい。あくまでもあの人達は俺とは違う側の人間で、一部の常識が俺とは決定的にずれているのだ。
前に船井さんが「一般常識やマナーはある」とか言ってたがあれは嘘だ。恐らく俺の推測だが、常識やマナーがあるのは余所に迷惑を掛けそうな時だけで、こういう関係者だけの時には無くなるのだろう……なんという迷惑な。
……だから俺は俺の常識の範囲内での日常をしっかりと持っていなくてはいけない。正直なところ意識してそうするのは面倒ではあるのだが……変人にならないためにもそれは仕方がないか。
よし、面倒な決意も新たにしたところでゲームに集中しようか!
そうして俺は現実から目を背けるようにゲームに勤しむのであった。
平成25年6月18日4:22
翌日。部室へ行くとまた『立ち入り禁止』の張り紙。
「……えっと、あの張り紙は……」
思わず口からこぼれた言葉に船井さんがこちらを見る。
「あー昨日排水溝に試したら木端微塵になっちゃったみたいでねー。『爆破力の調整と殺菌効果を付け加える』って言ってたよー」
「……そうですか」
殺菌効果のある爆弾って何だよ……社会のゴミでも殺菌するつもりか。
「……」
はぁ……ゲームしよ。
第09話 トロンボーン 完。
時間もないので手短に。
今回は高校の志望理由です。
吹田……部室棟があって一番近いから。
船井……吹田が行くから。
津出……吹田が行くから。
菅……学力的に余裕をもって行けるから。
溜井……調査解決部があると知って。
室井……袖森が行くから。
識……姉たちがいるから(来年入学予定)
以上です。
では次話は今年中に投稿したいです。