扉の向こうの   作:招代

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今年ももう終わりですね……はぁ。
来週の月曜にはもう仕事なのかと思うと憂鬱です。
ああ……もっとダラダラしたい。

……さて、
気分を切り替えて今回は何て事のない日常回。

何とか今年中に間に合いそうなことに安堵しつつ、
投稿完了。




第10話 予定通りの面倒事

平成25年6月29日14:59

 明後日は期末テスト。つまり、ほぼこのテストで補習を受けるかどうかの判断がなされる。

 それがどういう事かと言うと、部活大好きだけど頭の悪い奴等にとっては非常に大事なテストということ。

「まぁ俺には関係ないけど」

 今現在どころかテスト期間中も相変わらずゲームや小説やパソコンばかりだが、赤点を取ることは無いと自信を持って言える。最悪0点でも赤点にならないしな。そもそも「部活大好き」ってわけでも無いし。

 

「……」

 ただ……まあ、いつも通りだとするとそろそろなんだよな。

 そんな俺の嫌な思いが届いてしまったのかベットの上で鳴り響く携帯の着信。

「はあ」

 仕方なく携帯を取り通話を押す。

『モリツ――』

「メンドウ」

 通話終了。

 これで間もなくあいつは来るだろう。

 

 ……さて、どうしたものかな。これに関しては面倒だけどもう諦めてるからどうしようもないとして、問題は高校に入って教科が増えた点だ。さすがに中学同様には教えてやれない。

 しかし6つ以上で補習と言うことは5つは赤点でもいいということだ。とりあえず英語と古文はこの先のテストでも捨てるとして、数学や化学物理などの理数系は基礎や公式をちゃんと覚えないと後々のテストが厳しい。だがそんなものを覚えてもどうせ中学の時と同様に忘れるし割く時間は少しだけにしよう。これらに関しては記号問題に対するムロの運と、テスト直前に単語や数式の詰め込みに任せた。

 そして現文や歴史などのその時その時で覚えれば良いタイプのもの。これらが一番点数を取れる可能性が高い。記号問題も特に多いだろうしな。この辺りの単語や漢字を今日明日で詰め込む作業をしよう。

 その為には適度な休憩と効率の良い糖分補給が必要不可欠だ。無理のしすぎは逆効果だからな。

「たしか甘めの菓子は下にあったはず……なければジュースでもいいか」

 

 

 そして数分も経たないうちにチャイムとほぼ同時で階段を駆ける音が聞こえ、勢いよく部屋の扉が開く。

「モリツネ! 勉強教えてくれっ!!」

「……来てから言うなよ」

 あとうるさい。

「いや言う前に切られたんだって」

「そうか。どうでもいいからとっとと始めるぞ。時間が惜しい」

 こいつに教えることで減る俺の時間がな。

 

 そして始まるテスト勉強は、まずノートを声に出しながら写すところから始まった。

 その為、部屋の中にはブツブツと呟く声が流れている。

「……さて」

 この間にいかに面倒を減らせるかを考えるか。

 

 一番良いのは誰かに任せてしまうことなんだが、それは中学の時に友人関係に頼んでことごとく断られている。高校に来て友人が増えたわけでもないし、これは意味がないだろう。

「いや……」

 待てよ? 駄目元だが一応頼んでみるか……友人ではないけど。

 思いついたことを実行するために数か月ぶりに携帯でメールを送ることにする。文面は簡潔に、

『ムロに勉強を教えてくれ』

 とだけうって送信した。

 

 そして返信が来る。

『馬鹿なの?』

 返ってきた内容はそれだけだった。それに対し、

『ムロは馬鹿だが?』

 さらに返信した。

 何を当たり前のことを聞いているのか……馬鹿じゃなかったらわざわざ頼んでないし。

 

 少ししてまた返信が来る。

『そうじゃなくて、

 何で私に頼むのよ?』

 ……あぁ、さっきのはそういうことか。

 納得と共に少し腹が立たないでもないが、今はそこは重要ではないのでスルーしておく。それよりも今は返信しないとな。

 

 それから、

『自称探偵だろ?』

『家庭教師に頼みなさい』

『今日明日だけだし』

『友達に頼みなさい』

『諦められている』

『それならモリツネ君が

 教えればいいじゃない』

『面倒』

『やる気の問題でしょ。

 私は教えないから』

 という感じで予想通り断られてしまった。

 にしても「自称」は否定しなかったな。まぁ探偵って一応職業だし、本人も本物の探偵ではないということは理解しているようだ。自称探偵でも痛いのに、理解して無かったら痛々しい人認定するところだった。

 

 それよりも、断られたということはやっぱりいつも通りやるしかないか。

「……仕方がない」

「ん?」

 ……また口に出していたか。こいつの勉強に対する集中を切らす行為は避けないとな。

「気にするな。続けてろ」

「おう」

 ムロは再びシャーペンと口を動かして、ノートを写す作業に戻る。

 とりあえずこれが全部終わったら休憩を入れるか……。

 

 

 そしてムロがノートを大まかに写し終えて、

「ヴァァァー……」

 死んでいた。正確にはぐだってる。

「……休憩か」

 毎度のことながらこの様子じゃ使い物にならないしな……仕方がない。甘めの菓子と飲み物持って来てやるか。面倒だが効率を下げるということは俺の時間を減らすことに繋がるからな。

 ベットから立ち上がって部屋を後にする。

 

 

平成25年6月29日16:34

「さて……何かあるかな」

 とりあえずチョコ系で期間限定や新発売の以外、その上できれば賞味期限が近いか切れている菓子を探そう。下手に持っていって後で家族に軽くとは言え文句言われるのは面倒だからな。

 

「……これでいいか」

 小分けになっているスティック状のチョコの箱を発見し、それと麦茶とコップを持って自室へと戻る。

「何で俺がこんなことしてんだろうな……」

 

 

平成25年6月29日16:38

「休憩にするぞ。片付けろ」

「お、おう……」

 まだぐったりしているムロが机の上のノートやらを片付け始める。

 

 片付け終えて。

「ぷはぁー……あー生き返る」

 中年オヤジが仕事帰りにビールを飲んでしていそうなリアクションを、麦茶を飲んでしているムロ。

 まぁ見た目のおかげかオヤジ臭さは無いけどな。

「死んでたわけじゃないだろうに」

「いやいや、ホントに死にそうだったんだって」

「ホントに死んでいればよかったのにな」

「うわヒデェ」

 もちろん冗談なのは理解されている。笑ってるしな。

 

「でもよー、テストってなんであるんだろーな?」

「優劣を決めて贔屓するためだろ。超優秀な生徒に媚び売って、馬鹿な生徒を心の中で嘲笑うためにな」

「マジでっ!?」

 驚愕の真実とばかりに驚きこちらを向く。

「嘘だ」

「だ、だよなー」

 いやまぁ、もしかしたらそういう先生もいるかもしれないが、先生の心の内やテストの意味なんて知ったことではない。知ろうとも思わない。

 人の本音なんて知っても大概が面倒なことにしかならないからな……本当に面倒にしかならない。友人程度の奴等との関係で大事なのは表面上の付き合いだ。

 

「……」

「どうした?」

「いや……お前の頭の悪さは作り物のおバカ芸能人より酷いよな、と思ってな」

 我ながら意味の無い事実を咄嗟に言ってしまった。

 ……まぁいいか。意味なくても事実なんだし。

「あはは、流石にあそこまで酷くないって」

「掛け算もできないのにか?」

「い、一応できるぜ?」

 目を逸らしながら言っても説得力がない。第一……

「5の段までな」

「さ、最近は6の段も覚えた……ぜ?」

「……6×7=(ろくしち)?」

「えっと……よんじゅう、に?」

「……まぁ、正解だな」

 答え方が馬鹿らしく馬鹿っぽいが、確かに作り物よりは頭が良いようだ。あいつら引き算すらまともにできないのもいるもんな。

「ふぅ……良かったぜ」

 だからって、この歳で6の段までしか掛け算ができないのは安堵していいことではないと思うが……将来掛け算の必要のない仕事に就けば良いだけだし、さすがにそこまでは俺の知ったことではない。

 

「さて勉強に戻るぞ」

 コップや飲み物を机から離して置き、今度はワークとプリントを取り出す。

「とにかく文字を脳に詰め込め目に焼き付けろ無意識に刻み込め。分からない所はとっとと俺に聞け。理解できていないものをお前の頭で悩んだところで無駄な時間でしかないんだからな」

「お、おう」

「分かったらとっとと始めろ」

「おう! さっそくわかんないから教えてくれ!」

「そこは――」

 

 

 そんな感じで夕飯前まで勉強は続き、夕飯後もいつもムロが寝る時間まで勉強をした。それは翌日も同様に。

 

 

平成25年7月3日12:34

「んー……終わっ――たぁ!!」

「補習決定か。あと近所迷惑だ」

「そっちの意味じゃねぇって」

 先ほどよりも声を落とすムロ。

「分かってる」

 だがもしこれで補習にでもなろうものなら、俺にとっての無駄な時間が無意味になるわけで。それは俺としても本意ではない。

 

「で、これで夏休みまで残すところあとは球技大会だな!」

「そうだな」

 似たようなセリフを前に聞いた気がするが、今度は実際にそうだし別にいいか。

「来週だよな? モリツネは何に出るんだっけ」

「あぁ。出る競技はバレーボールだが、試合に出るつもりはない」

 その為にバレーにしたんだ。サッカーは試合に出る人数が多いから出てしまう可能性があるし、バスケは勝ち進んでしまう可能性があるからな。試合数が増えれば出る可能性も高まってしまう。

 その点、バレーなら勝ち進むことは無いだろうし参加人数もサッカーより少ない。つまり、試合に出る気の無い俺としては一番いい選択なわけだ。

「まーモリツネだしな」

「その通りだ」

 別に体を動かすのが嫌いなわけではないが、団体競技は正直嫌いだ。何が嫌いって連帯責任だとか、「○○のせいで」とかが嫌いなんだ。個人競技ならどんな結果だろうと自分の責任だから良いんだけど。

 

「まっ、そんなことより、今はこの溜まったものを発散したいぜ」

 そう言って上に伸びをする。

 毎回の如く慣れない勉強をしたわけだし、ストレスが溜まるのも仕方がないか。

「馬車馬のように走り回れば良いじゃないか」

「だな。それじゃあ帰ったらさっそく走り込んでくるぜ!」

「あぁ。行ってこい」

 ……あれ? この「溜まったもの」って今回詰め込んだ勉強内容のことじゃないだろうか……もしかするとこうやって次々に忘れていく仕組みなのか? だとしたら走らせないべきか……いや、結局明日からの部活で忘れるのだろう。無駄だろうしどうでもいいや。

 

 

 その後、家に着いたムロは本当に町内を走り回りに行った。

 よくやるよ、ホントに。

 

 

平成25年7月4日15:45

「大変だったわね」

 部活の時間。掃除をしていたのか、俺より後から来た溜井が俺の二つ隣に座っていきなりそんなことを言ってくる。

「何がだ?」

「聞いたわ。ムロ君、中間テストで現文以外赤点だったって」

「あいつは馬鹿なんだ」

 隠すことでもないので肯定しておく。クラス内の人間ならほとんどが知っていることだしな。

「それで土曜日はあんなメールしてきたのでしょう?」

 ……そういうことか。そう言えばそんなこともしたな。

「じゃなきゃわざわざメールなんてするはずないだろ」

「それで、出来はどうだなの?」

 出来……出来、か。そうだな……うん。

 

「まだ分からないが……前よりは良い、はず、だ」

 自信は持てないから正直こうとしか言えない。毎年毎年のことだが点数はほとんど上がるけど、だからって赤点回避できるかは絶対じゃないからな……

「そして詰め込んだ内容はもう忘れただろう……」

「それは……大変ね」

 分かりやすいくらい同情された。

「同情するなら今度から変わってくれ」

「それは断るわ。私も自分の勉強があるから」

「そうか」

 キッパリと断られたが元から期待していないし。

 

 

 結果的に、ムロは赤点4つという数で補習を回避。そして勉強を教えたことにより俺の平均点も5くらい上がった。

 まあ上がったところで感謝も喜びも何もないんだけどな。迷惑面倒千万でしかない。一回くらい奇跡が起こって勉強を教えなくても良い時があっても良いと思うんだけどな……。

 

 

 

 翌週、バレーは控えのまま一回戦敗退し、バスケは準々決勝で敗れた。

 

 

 

第10話 予定通りの面倒事 完。

 




今回はバイト(仕事)の有無。

吹田……創って売る。
船井……無し。
津出……無し。
菅……無し。
溜井……探偵業のようなもの。
室井……無し。
識……退魔。

あと少しで2015年です。
これを見ていてくださる数少ない皆様、
良いお年を。
来年もよろしくお願いします。

次話は今書いているものをかき終えて、
できればその次の話をかき終えてから投稿したいです。
ちなみに次話は久々に非現実回です。
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