扉の向こうの   作:招代

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もうすぐGWですね。
仕事が入らないことを祈るばかりです。

……まぁ、
今は忙しいので入る可能性が高くて恐々しているんですがね……。
本当に怖い。
仕事に不満はありませんが連休は特別ですからね。
大事なんです。

なんて、
悲観的未来に怯えつつ中編の投稿。


第12話 合宿 中編

平成25年7月29日21:22

 宿に戻り風呂に入って出て夕飯を食べた俺は、死体のことをなるべく考えないようにするために津出さんと一緒にやっていたテレビゲームを一旦止めて休憩している。ただしその間にも津出さんは黙々とゲームをし続けている。

 よく続けられるなぁ。

 

 そんなことを考えながら俺は床に転がって宿に帰って来てからの出来事を思い出していた。

 そう、それは部屋に戻ってきたときのこと。部屋に着いた津出さんが据置機をバックから取り出したのだ。あれには驚いた……そんなこともあるかもしれないと出発前は冗談ながらには思っていたが、スペース的にも重量的にも邪魔だし携帯機だってある。だからまさか持って来るとは思ってなかった。

 もしかしたらこの人はテレビが無い場合はテレビすら持ってくるのではないだろうか……?

 そんな考えが頭をよぎるが、さすがにその時は携帯機で我慢するだろう。

 

 ……我慢、するよな?

 

「……いゃ」

 考えるのはやめておこう。本当に持ってきそうで何だか頭が痛い。

 

 思考を変えよう……そうだな津出さん以外の人達のこととかどうだろう。

 例えば吹田さんはパソコンで何やら調べており、菅さんは姿が見当たらない。恐らくその辺をぶらついているのだろう。それかトレーニングとかか。

 そう言えば風呂と夕飯の間の時にもいなくて、夕飯には少し遅れてきていたな。

 あと船井さんと溜井は部屋が違うので知るはずもない。もしも知っていたら俺は変態のレッテルを張られてしまうだろう。

 

 

「……」

 まぁ、溜井と言えば気になることが一つ。

 風呂上りに部屋へと戻る途中で溜井を見かけたのだが、ここの従業員と話しをしている所を目撃した。その時は関わるのは面倒だったので近づかないように部屋に戻ってきた。

 だが今思えばあの時溜井は失踪に関しての聞き込みをしていたに違いない。自称探偵のことだ、その可能性は高いはずだ。

 だとしたら良くやる……俺だったら「明日から」って言われたら絶対明日からやるし。わざわざやらなくて良いことするとか基本的にありえない。そう、ありえないわけだがこれは俺にとっては良いことではないだろうか? これによって俺の負担が減る可能性は高い。

 元々やる事は少ないだろうとは思っていたが、そうなる可能性は高いに越したことは無い。楽ができるに越したことは無いのだ。もちろん、やるべきことをやったうえでのことだが。

 でも迷惑こうむる可能性もあるのだろうか……いや、その可能性は考えないでおこう。そもそも少ないだろうし、せいぜい仕事量が変わらない程度だろう。

 

 嫌な方向に行きそうになった思考を止めてこれ以上考えないようにする。それすなわち、

「ゲームしよ」

 そう言うことだ。

 

 

 

 その後、菅さんと吹田さんが寝た後に俺はゲームをし続けて力尽きた。

 確か24時ぐらい……だったと思う。

 

 そして微睡む意識の中、最後に見たのはゲームをし続ける津出さんだった。

 

 

 

 

 翌日。

 若干の疲れと寝不足がありながらもいつも通りの時間に目が覚め、あたりを見回すと他の人は既に起きており、津出さんに至ってはゲームをしていた。

 菅さんは見当たらない。

「……おはようございます」

「おはよー」

 津出さんはこちらを見ずに挨拶を返す。

「朝飯は7時だ」

「分かりました」

 30分後か。とりあえず布団を畳もう……面倒くさいけどやらないといけないしな。家でならやらなくていい事だから余計にそう感じてしまう。

 とは言え、もちろん家の布団も一か月に一回は干している。清潔感ってのは大事だからな。

 

 そう思いながらもキチンと折り畳んで部屋の隅へと重ねてその辺に座ってボーっとする。

「……ああ」

 どうせ今はやる事もないし今日の行動でも整理しておこう。

 

 まず、聞き込みをして夜に死体を掘り起こす。

 聞き込みに関しては溜井がやってくれるだろう。もちろん俺もやる事はやる。しかしほとんど溜井が勝手にやってくれるだろうから、それに関してはだいぶ楽が出来そうだ。

 次に掘り起こすことに関しては……死体が埋まっていないことを祈っておくしかない。正確には行方不明とか失踪者がいないことを、か。何にしたって無いに越したことは無いんだから。

 でもきっとあるんだよなぁ……

「……うん」

 静かに頷き覚悟を決めておく。

 これだけでいくらかマシにはなるはずだ。何だったら直視しなければいい話だし。

 

 

平成25年7月30日7:36

 あの後、朝飯の時間になり食べ終え、俺達は当初の予定通りに行動することになった。

 

 現在は宿の前。

 そこには俺と溜井がいて、他の部員はそれぞれのやる事をやっている為にいない。

 いや、昨日の話が正しければ菅さんがいるはずなのだが辺りを見ても見当たらない。一体どこに隠れているのか……考えても仕方ないのだろうけど気にはなる。

「それじゃ、聞き込みをする前に昨日私が従業員に聞き込みした情報を話すわ」

「ああ」

 ……気にはなるけど今はこっちに集中しよう。

 

「まず周辺の失踪者の有無だけれど」

 そして溜井が革のカバーがかかったメモ帳を取り出して読み始めた。

「一件だけあるみたい。夜逃げらしいけれど有名らしいわ。名前は『滑方(なめかた) 夫明(あきてる)』。当時28歳の一人暮らしで男性よ」

「夜逃げって、借金でもあったのか? 闇金とか」

「闇金ではないと思うけどあったらしいわね。ただそれを従業員が知ったのは失踪後だから信憑性は低いかもしれないわ。特に生命保険にも入っていなかったようだし、人柄としては『良い人』でご近所付き合いも良好。お金は貸してあげても借金をするような人ではなかったみたい。彼を知る従業員の人も当時は驚いたようね」

 それで夜逃げとかいくらなんでも怪しすぎないか? いや、昨日のことがあってそう思えてしまう傾向に俺の頭がなっているんだろうか……判断できないな。

 

 そして溜井は一度こっちを見て俺が聞いてるのを確認したのか、メモ帳に視線を戻して話を続けるようだ。

「それでこれからの捜査方針だけれど、家のあった場所も分かっているから、とりあえず近所に聞き込みをして、それから友人関係をあたりましょう。借金や当時の状況もその人たちからさらに詳細を聞けるかも知れないわ」

「別にそれは構わないが……そもそも相手からすれば得体のしれないであろう俺たちにそう簡単に話してくれるか?」

「確かに怪しまれるでしょうね。だから『ここで起きた神隠しについて調べに来たオカルト研究会の学生』として聞き込みをしてたのよ。こっちの方が多少怪しまれないでしょう?」

「……」

 何だその設定は……アホなんじゃないか?

 とか、色々と言いたいことはあるがやめておこう。こいつ自身も「多少は怪しまれない」と言っているし、実際に情報も聞き出せてるんだから。

 でもそのせいで俺もそんな変な集まりの一員に従業員から思われていたかもしれないわけで、そう思うと恥ずかしさと怒りがこみ上げてくる。

 

 

 何も言わなければ変人の一員だなんて思われなかったのに……。

 

 

 だがやっぱり成果を出している以上文句は言えない。でもなぁ……。

「それに、今回大事なのはそこじゃないのよ」

 脳内で葛藤していた俺に、やけに真剣な表情と小声で溜井が話し出した。

「部長も言っていたでしょ、失踪事件があったかを『念の為』調べろって。大事なのは失踪事件の中身じゃないのよ。そもそも夜逃げって言われてるこの失踪事件は昨日の時点でほぼ、殺人である事が分かっているんだから」

「だが殺人じゃなくて事故の可能性もあるんじゃないのか?」

 これは昨日も思っていたことだが、見つけて欲しいっていうのなら「事件」じゃなくて「事故」の可能性だってあるんじゃないだろうか? というかそう思いたい。

 

「それは無いでしょうね」

 しかしすぐに否定されてしまった。

「だったらあんな回りくどい方法をする必要はないわ。もっと簡単に自分の居場所を知らせることはできるはずよ。それをしないということは、簡単に居場所が分かるようにするのは駄目だと判断したのでしょうね」

「なるほど……確かにそうだな」

「あとは私の探偵の勘が事件だと言っているわ」

 ……は?

「話を戻すけれど、今回の捜査で一番大事なことは遺棄された死体を探すこと。これは部長たちがやっていることね。だから私たちがやるのは二番目、犯人を炙り出すことよ。事件である以上、探偵を目指す者として犯人を放っておくわけにはいかないわ。その為にこの聞き込みで怪しい人に目を付けて、煽っていく必要があるのよ。そして犯人は近しい人間と見た!」

「煽るって……危険だろ」

 ビシッと決めたポーズとか色々ツッコみたいところはあり過ぎるが面倒すぎるので放置するとして、部活とは言え危険なことはなるべくしたくない。命は惜しいし。

 もちろん、それをしなくてはいけないならやるんだけど。

「大丈夫よ、その為に菅先輩がいるんじゃない。隠れて着いてくるように言われたのは犯人に警戒されない為だと思うわ。私たち二人だけなら大したことなさそうだし」

「む……そういう事だったのか」

 自信満々な溜井の言葉に納得する。

 なるほど、確かにそれなら安全だ。菅さんの異常さはある程度分かってるし、その辺の人間なら相手にならないんだろう。命の危険も感じない。

 それに溜井は女子だし、俺はどう見ても強そうには見えない。実際に弱いし。それなら相手も舐めきって油断する可能性は充分に有る。

 

 

 ……こいつはただの自称探偵の変人ではないという事か。

 俺の中でこいつに対する見方が少し変わったように思う。変人であることに変わりはないが。

 ただ――

 

 

 

「――今日って平日だろ。友人や近所の人はいるのか?」

 

 

 

「……」

 俺の発言を聞いた途端に固まる溜井。

 先程こいつに対する見方が変わった気がしたがそれは、気のせいだったようだ。

 なので冷めた声で再び問いかける。

「で、いるのか?」

「だ、だだだ大丈夫よ!」

「……」

 どこからどう見ても動揺しまくりで大丈夫には見えない。

「まだ一般的な仕事開始時間までは時間があるし、農家とかみたいに仕事中でも少しは話を聞けるかも知れないし、そもそも仕事をしてないかもしれないわ!」

「随分と早口だな。確かに全員居ないなんてことは無いとは思うが」

「そうよ。それに……それに……えーっと、時間を考えれば仕事帰りでも問題ないはずよ! だから大丈夫!」

「……まぁいいか」

「あ、あと近所や友人以外の人の話も一応聞きましょう」

「そうか」

 最初の予定は何処へ行ったのか、そんな考えが頭をよぎる。

 が、どうでもいい事なのでそのまま流した。

 

 むやみやたらにやるのは効率が悪いが一応近しい人間以外の可能性もあるわけだし、時間に余裕もある。聞きこんでおいて損は無いだろう。

 それにどうせ主にやるのは溜井なんだから。

 

「じゃあ行きましょう」

「あいよ」

 かくして、俺達は失踪した男の家へとようやく向かうのであった。

 

 

 ……当然のことながら歩きで。炎天下の中を。

 




今回は興味のあること。

吹田……色々。
船井……グロいもの全般。
津出……ゲーム。
菅……裏の仕事。
溜井……未解決事件。
室井……楽しそうなこと。
識……怪談話。

こんな感じです。
前にあった趣味と結構かぶっていますが気にしない方向でお願いします。
良く考えたら似たようなものですしね。

次回は22話を書き終えたらです。
いつになるか分かりませんが、
内容は大方決まっています。
後は時間を見つけて書くだけか……。
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