扉の向こうの   作:招代

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そういえば前話の死体の人の紹介を出していませんでした。
といわけで、

滑方(なめかた)夫明(あきてる)(滑方夫明→行方(なめかた)夫明(ふめい)行方不明(ゆくえふめい)
・多額の借金の末に夜逃げされたとされる人物。
・当時28歳。
・実際はお金を貸していた人たちに殺されて山に埋められた。
・ミステリーサークルを作って自分の居場所を教えようとしていた。

です。

では前編行きます。


第13話 犬と直感と変化と 前編

平成25年8月21日16:28

「あっつ゛……」

 部屋から一歩出ただけで感じた蒸し暑さは屋外へ出ることでさらに増し、日光を伴って俺に襲い掛かる。蝉がうるさいし、蝉の死骸はキモイ。

「さっさと出よ……」

 何故俺はこんなうだるような暑さの中、外に出ているのだろうか?

 

 と、思わずそんな疑問が出てきてしまうが、これも家の手伝いだから仕方がない。

 こういう場合はせめてもの救いである冷房の効いた目的地のスーパーに早く行くに限る。そして頼まれたものとアイスを買ってとっとと帰ろう。

 俺は自転車を倉庫から取り出し炎天下、スーパーへと向かった。

 

 

平成25年8月21日16:35

 直射日光から解放されてスーパー。

「……はぁ」

 やっぱりスーパーって素晴らしい。なんといっても涼しく快適だ。

 とは言え早く家に帰りたい気持ちの方が強いのも事実。さっさと買い物を終わらせて冷房の効いた部屋でゴロゴロするとしよう。

 

 そうと決まれば早速行動開始だ。

「あら、モリツネ君」

「……」

 知り合いの探偵モドキのような声がした気がしたが気のせいだろう。このスーパーは電車通学のあいつが来るようなところでもないだろうしな。

 俺は正面のみを向き、そのまま買い物を――

 

「流石にこの距離で気づかないふりは無理があるわよ」

 

 ――しようとして捕まった。

「……チッ」

「今舌打ちしなかった?」

「いや?」

「そう。ならいいけれど」

「で、何のようだ」

 仕方なく声のした方向を振り向くと、制服姿の探偵モドキがいた。

 何故制服なのかと疑問はあるが、兎にも角にも面倒なのに掴まってしまったな……どうするか。

「ただ声をかけただけ、だけれど」

「そうか、じゃあな。何も用がないなら俺はとっとと家に帰らせてもらう」

 これ以上関わるのも面倒だし、探偵モドキに早々に別れを告げ買い物を再開……

 

「あ、ちょっと待って」

 ……できなかった。

 面倒なことに探偵モドキは何かを思いついてしまったようだ。

 もう少しで立ちされたのに……余計なことをしてくれる。

「モリツネ君は買い物が終わったら暇? っていうより暇よね」

「全然忙しいな」

「……本当に?」

 やっぱり怪しまれているな。とりあえずここは嘘をついてこの場をやり過ごそう。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()(宿)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 こう言った時に大事なのは本当のことも混ぜること。相手を騙す場合の基本だな。

 

「……嘘ね」

 何故バレた! もしかして表情とか声に本音が漏れていたか……クソッ、ミスったな。

 だがここはまだ知らんぷりだ。

「事実だが?」

「嘘ね。私が知る限りの情報から考えると、ムロ君がまだ余裕がある状態で夏休みの宿題をするわけがないじゃない」

「……」

 こ、これは的確な事実過ぎて言い逃れできない……バレた理由がムロだと言うのが若干納得いかないが、この嘘を選んだ俺のミスだしな。

 ……諦めるか。

 

「ハァ……で、何のようだ」

「暇なら手伝ってほしいことがあるのだけれど」

「断る。じゃあな」

「ちょっと待ちなさい。まだ内容も言っていないでしょ」

 再び去ろうとして肩を掴まれた。

「どんな内容にせよ俺が手伝わなければいけない道理はないはずだ」

「それはそうだけれど……少しは考えてくれてもいいでしょ?」

「そして俺はどんな内容だろうと手伝わないと決めている。俺は早く家に帰ってゴロゴロしたいんだよ」

「……それが本音ね」

「ああ」

「……」

 キッパリと言ってやると探偵モドキは何やら考えている様子。

 

 このまま離脱してもバレないだろうか……? いや、離脱したところでこのスーパー内ではどの道見つかってしまう。買い物しないといけないし。

 ならば話をつけてからじゃないと駄目か……面倒だな。

 

「なら、こういうのはどう?」

「あ?」

 また何か思いついてしまったのか……厄介だな。

「私がムロ君の夏休みの宿題を見てあげる。その代わり、今やっている用事が終わったら私を手伝う。と言うのはどう?」

「……お前の手伝いはどのくらいかかる」

「移動も含めて少なくとも、4時間あれば終わると思うわ」

「……内容は」

「迷い犬探しよ。でもGPSがあるから場所は分かっているわ」

「GPSがあるなら飼い主が行けばいいだろ」

「足があまり良くないのよ。だから、前に居なくなった時に知り合った私に依頼してくれたってわけ」

「……そうか」

 前もいなくなったのかよ……とか、足が悪いんだったらそもそも逃げられないようにするべきだろ……とか色々と思う所はあるが、まぁいいや。

 

「それで、どう?」

「……」

 再度訪ねてくる溜井。

 ……さて、こういうのもなんだが、これは結構魅力的な提案じゃないだろうか。

 やる事は「迷い犬」探しで、その犬の場所は分かっている。移動もあるらしいが4時間あれば終わる。

 それに比べてムロの夏休みの勉強はどうだろうか? アレは恐らく早く見積もって10時間以上かかるはずだ。

 つまりこの提案のるのならば、4時間の不自由で10時間以上の自由を手に入れられる……マイナスして6時間以上の自由か。でも10時間以上以上の不自由よりはましだ。

 

 この提案は乗るべきだろう。損得計算では断然良いはずだ。

「それなら手伝っても良い」

「えっ! 本当に!?」

 自分から提案したくせに、まさかOKされるとは思っていなかったのだろうか。

「ああ。その代わり約束は守れよ」

「もちろんよ。探偵に二言は無いわ」

「そうか」

「ええ。それなら詳しい内容は移動時間にするとして、持ち物は水分補給のために水筒、タオルもあっていいわね。服装は汚れても良い長袖長ズボンを持っていけば何でもいいわ。靴はサンダルじゃなくて履きなれた靴が良いわね。集合場所は5時に駅で大丈夫?」

「電車に乗るのか?」

「歩いて行くには遠いのよ」

 電車に乗るのか……しかも汚れても良い長袖長ズボンとか嫌な予感しかしないんだが。

 

 ……でもOKした手前、今更やめるわけにもいかないしな。

「分かった。4時半に駅な」

「よろしくね。それじゃあまた後で」

「ああ」

 そうして溜井と別れ、俺はようやく本来の目的である買い物を開始するのであった。

 

 

 

 そう言えば……何であいつはあんなに執拗に俺を誘って来たのだろうか?

 

 

平成25年8月21日16:55

 買い物と準備を終わらせた俺は再び炎天下を歩き駅へと到着した。

 すごく……すごく暑かった。道中「どうして俺はこんな猛暑日のこんな時間に駅へと向かっているのだろうか?」と本気で自分の正気に問いただし続けていたくらいだ。

「……ハァ」

 思わず溜息も出てしまうが今は溜井を探さないとか……とある不安はあるが気にしてもしょうがないしな。

 

「モリツネ君」

 とか思ってたらすぐに見つかった。て言うより向こうから来た。

「ちゃんと来たわね」

「ああ」

 一度家に戻ったのだろうか? 溜井の服装は制服ではなく私服? だった。

 ……良かった。まさかそれは無いだろうと思ってはいたが、本当に良かった。ホント、「西洋の探偵」って言う感じの恰好をしていなくて良かった。そんな奴と一緒に行動とか嫌すぎるからな。

「これが切符。もう少しすると電車も来るでしょうし、予定より早いけれどそれに乗りましょう」

 切符は買ってくれてあるのか……別に自分の分くらい自分で買う予定だったんだが。

 

 ……まぁいいか。

「そうか。で、降りた後はどうするんだ?」

「バスで20分、その後は対象を見つけるまでね」

「バスに乗るのか」

「そうね」

 なんか雲行きが怪しいな……もしかして引き受けるのは早計だったか? だとしたら面倒なことになりそうだ……

 

「……ちなみに聞くが、犬は今どこにいるんだ?」

「バスを降りて10分くらいの山の中よ。そこからはあまり動いている様子はないわね」

「そうか……」

 また山の中か……先月のぼったばかりだし、もう冬くらいまで上るまいと思っていたのに。

 まさかもうのぼらざるを得ない状況に陥るとは……面倒くささ倍々だ。

 

 

「そろそろ電車が来るわ」

「そうか……」

 でもしょうがないか……そういう約束だもんな。誰が悪いかって言ったら、詳しく聞かなかった俺なわけだし。

 時間的には得するのだから、未来の楽のためにこのくらい我慢しよう。

 

 

平成25年8月21日17:36

 電車に揺られバスに揺られ歩いて辿り着いた山の前。空に雲は無く、明るくも暗くも無い状態の中にそびえる(ソレ)

 見ているだけで気が滅入るな……。

「とりあえずは道なりだから、服もそのままでいいと思うわ」

「そうか……」

 はぁ……頑張ろ……。

 

「……ダルそうだけど乗り物酔い、じゃないわよね。もしかしなくても『面倒くさい』って思ってる?」

 どうやら思いっきり顔に出ていたようだ。ま、隠そうとしていたわけでもないが。

「ああ」

「否定しないのね」

「事実だし。でもグダグダ言ってどうにかなる事でもないしな。やる事はやるからとっとと行こう」

「そう、それなら行きましょう。依頼人の為にも早いに越したことは無いもの」

「そうか」

 早いと言っても、もうこんな時間だけどな。

 

 とは思いつつも突っ込むのは面倒なので、俺は空返事だけをして大人しく溜井の後をついて行くのであった。

 

 

平成25年8月21日17:48

 空は暗くは無いのだが、木々のせいでそれなりに暗い山道を歩くこと結構。

 溜井が立ち止ってこちらに振り替える。

「ここからは道を外れて歩くことになるから、多少暑くても長袖を着た方が良いわ」

 と言って上着を着始める溜井。下は俺もすでに長いズボンを履いている為、着替える必要もない。

 ……俺も上着を着よう。正直暑苦しいが、流石に半袖で舗装されてない道を通るのはリスクが高い。後々面倒になるのも面倒だしな。

 

「準備は出来た?」

「ああ……だが大丈夫なのか? 迷ったりしたら洒落にならないぞ」

 それで帰る時間が遅くなったりしたら時間がもったいない。

「大丈夫よ。GPSだってあるし、迷わない様に念の為ここまで舗装された道を歩いてきたのよ」

「GPSのことはよく分からないが、どのくらい正確性があるんだ?」

「首輪に付けられているGPSは市販のものだからそこまで正確性は無いけれど、こっちのGPSの場所を表示しているのは部長の作ったものよ。正確性はかなり高いと思うわ」

「あぁ……吹田さんのか」

 なら大丈夫だろう。壊れでもしない限りは安心だ。

 

「それじゃあ行きましょう。後は横にまっすぐ進むだけだから」

「そうか……」

 横にまっすぐってことは、わざわざ目的地の真横まで舗装された道を歩いてきたという事か……それで「念の為」、な。まぁ迷うよりはましだ。

 それにようやく終わりも見えてきたし、兎にも角にも頑張るかな。

 

 

 しかし、そんな心とは裏腹に、俺の中には得体のしれない不安感が込み上げ始めているのであった。

 




そもそも何でこんな時間に溜井は犬を探しに山へ行こうとしているのか、
と言うことについてですが、
理由としては、
「一度GPS便りで山に来たはいいものの、制度が悪すぎるため一度引き返し、部室で吹田から道具などを借りて準備を整え、スーパーで買い物をして再出発」
するところで袖森に会ったというわけです。

では次回の投稿も書き溜めずに行きます。
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