扉の向こうの   作:招代

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いやー……先日は異常な暑さでした。
暑すぎるあまりに目の水分が蒸発してドライアイになるかと思いました。
そのくらい暑かったです。
外仕事の人は……想像したくもない。

でも今年は冷夏になるって春ごろに行っている人がいましたよね。
ホントになるのかどうなのか……。

遠くない未来に思いを馳せながら17話を投稿。
文化祭に良い思い出はないなぁ……。


第17話 文化祭日和

平成25年9月28日9:10

 今日は文化祭1日目。天気は晴れて少し暑いくらいで、雪が降るには丁度良いとも言えるだろう。グラウンドではうちの部活の出し物である降雪機が一部分に雪を降らし続けている。

 降雪機は安全の為ガラスケースに入れられて一般の人が弄れないようにされており、雪を作るための電気や水を送る為の管は地面に埋めてあるので、これまた安全はしっかりと保障されている。

 これらの面倒な設置作業は昨日、部活時間と夜を使って行われた。そのせいで若干だが筋肉痛であるのは言うまでもない。

 

 

 そして今、俺は暖かい部室でゲームをしていた。

「……暇だ」

 まだ店番までは時間はあるし、お腹も特にすいていない。ムロがいればどうせ出し物を見て回ることになるのだが、今は店番をやっているのでそれもない。

 だから暇を持て余して、行く場所の無い俺は誰もいない部室でのんびりとゲームをしているのであった。本来であれば教室で時間を潰していたいところだが、教室は出し物で使ってるしな……仕方がない。

「……」

 それにしても……基本的に部室棟には出し物がないためか非常に静かだ。外の活気がとても遠くに感じる。さっきまで騒がしい校舎の方にいたから余計にそう感じるのかもしれないな。

 

「……」

 それにしても、

「暇だなぁ……」

 かといって何処かに行くような気分でもないしなー。

「暇だなー……」

 時間までは後1時間はあるし……

「あー……暇だ」

 どうしよっかなぁ。

「暇すぎる」

 ホント、暇だな……。

 

 

平成25年9月28日10:15

 ゲームをし続けて1時間後。店番の時間が近くなったので教室へと移動した俺は、入り口にいた店番に話しかける。

「そろそろ交代の時間だろ」

「だな。じゃー長座用のやつを出してくれ」

「ああ」

 教室内に入って見ると今は客がいないようだが、計測した立ち幅跳びの距離が書かれた表を見ると少ないが来ていたようだ。

 まぁこんなもんだろ。別に儲けを目的にしているわけでもないし問題ない。むしろ客は少ないに限る。その方が面倒じゃないからな。

 

「お、モリツネ」

「交代だ」

「それよりも見てくれよコレ!」

 俺を見つけて声をかけてきたムロが、今俺が見ていた計測表を見せてくる。

 騒がしいな……しかも言いたいことが予想着く。

「誰にも抜かれなかったんだぜ! 凄くね!?」

 だよな。

「まだ人も少ないしな。まだこれからだろ」

「おう。次も気を引き締めていくぜ!」

「引き締めすぎて空回りしないようにな」

「大丈夫だって。それよりもモリツネの店番終わったら一緒にまわろうぜ」

「そうだな」

 どうせ一人でいても部室でゲームするだけだしな。若干面倒ではあるが、暇だし断る理由は無い。

「そんじゃ、1時間くらいしたら来るし」

「ああ」

 手を振ってムロが教室から出て行く。

 

 ……さて、俺も店番頑張らないとな。

 

 

 それから一時間ほどして、次の握力担当の奴らが教室に集まってくる。

「……はぁ」

 ようやく終わった。これで店番をやる回数は残り3回か……気が遠くなるような数だ。客が多くないのがせめてもの救いだな。

 さて、来ているか分からないがムロと文化祭を回るとするか。

 

 

平成25年9月28日11:19

「……」

 教室外に出る。が、ムロはいない。

 ……あいつ忘れやがったな。

「……」

 ここで突っ立っててもしょうがないし、電話も面倒だし、探すのは論外だし、まだ昼飯も早いしなぁ……昼飯を食べるついでだったら探すこともやぶさかでは無かったのだが、そうでない以上は部室でゲームでもしてよう。

 

 

平成25年9月28日11:47

 部室の中にゲームとは別の電子音が鳴り響く。

「……」

 ディスプレイを見るとムロからの着信。

 面倒に思いながらも出ないわけにもいかず、一言目を予想しながら通話を押した。

『すまん!! ほんとスマン!!』

「……で?」

 予想より「すまん」が一回多かったな……と思いつつ先を促す。

『これから回ろうぜ!』

「……まぁいいか。今何処だ」

 どうせ暇だし、面倒臭さはあるが断ることも無いしな。

 俺は立ち上がって移動を始める。

「今はー、俺たちの教室の前だな」

「ならすぐそこの階段に居ろ」

「おう。分かっ――」

 言い終える前に電話を切り、部室のドアを開ける。そして後ろ手に鍵を閉めた。

 

 

平成25年9月28日11:49

「いやぁ……バスケの試合してたら時間過ぎちゃっててさ」

 合流してからとりあえず一階を目指す。

「……単に忘れてただけじゃないのか?」

「それもある! あ、でも忘れてたのは集合時間だぜ?」

「あーはいはい」

 片方忘れてたら意味ないんだよ。ただまぁ忘れたのが集合時間の方というのは……うん、アレだな。うむ。

 

「んで、とりあえず何か食べるか?」

「……そうだな。適当に食べるか」

 腹のすき具合はそんなでも無い。ただ次はムロが店番だから食べておかないと、俺も部室を出る気はないし互いに途中で腹は減るだろう。ならその場でサッと食べられるものと、部室に持ち帰って食べれるものを買うのがベストか? 親から軍資金も貰ってるし、そこまで金を気にすることも無いしな。

「ならアレとかどうだ? 焼きそば」

「袋も無いのに持って歩くのが邪魔だろ。時間もあまりないし、とりあえずは歩きながら食べやすいものにしとけ。焼きそばは後で買って店番の合間に教室で食べるといい」

「おーなるほどな! じゃー……コレとかどうだ? フランクフルト」

「ん?」

 ムロが指差す先には『1-5 フランクフルト 一本100円』といった内容の張り紙。

 

 フランクフルトか……確か溜井が「私たちのクラスはフランクフルト」だと言っていたような気がする。正直、来てと言われたから来たと言う風に思われるのは、なんか嫌なんだが……

「……別にいいんじゃないか」

「なら一階に行こうぜっ!」

「ああ」

 まぁ、今に限ってあいつが店番をしているという事も無いだろう。店番じゃない可能性もあるしな。

 

 そうして俺たちはフランクフルトの売っている教室まで向かうことにした。

 

 

平成25年9月28日11:51

「いらっしゃいませー」

「フランクフルト2つ」

「フランンクフルト2つですね。200円になります」

「はいよー」

「200円ちょうどですね。ありがとうございましたー」

 

 とまぁ、俺はムロがフランクフルトを買ってくるのを少し離れた場所で待っていた。

 同じものを買うのに2人で並ぶのも無駄だろう……それにパッと見、溜井はいなさそうだったが、実は奥に居てバッタリ遭遇とかしたりしたら嫌だしな。

「買って来たぜー」

「ああ」

 そうこう考えているうちに戻ってきたムロからフランクフルトを受け取る。

 ……よし、ちゃんとマスタードはかかっていないな。ケチャップだけだ。

「んで、次どこ行くよ」

「回りたいところは無いのか?」

「焼きそばだなっ!」

 そんなに食いたいか。

「……焼きそばは10分前くらいに行けばいいだろ。その前に適当に何かないか回るぞ」

「おう!」

 俺は呆れつつも、ムロと共にフランクフルト片手に文化祭を回り始めた。

 

 

平成25年9月28日17:06

「いやー……にしてもお前んとこの先輩、凄かったな」

「そうだな」

 文化祭一日目が終わり帰り道。人の多さに疲れた俺は、ムロと一緒に今日の出来事を話しながらゆったりと帰っていた。

 

 ……それはそうと、結局ムロと回った以外は全てを店番と部室で過ごした俺が溜井と遭遇することは無かった。部室に籠っていたことがバレたら小言を言われそうだし、遭遇しなくて良かったとは思っている。

 とは言え、明日もある以上は油断できない。できればこのまま遭遇せずに終わりたいけど……どうだろうなぁ。ホント、面倒なことだ。

 

「あの人なら全国狙えるんじゃね?」

「かもな」

 かも、じゃなくて確定的だけど。「気」を使えばほとんどの競技が余裕なんじゃないか? ……まぁ、それをムロに言うわけにもいかんのだけれど。

 別にムロを信用していないわけではない。が、こいつの場合ウッカリ周りに言いそうで怖いからな。そもそも教えるつもりはないけど、教えるわけにもいかないのだ。

「あーあ、あの人がいなかったら俺も反復で一位取れてたのになぁ……俺もまだまだってことだな!」

「……世界は広いからな」

 色んな意味で。

「だなっ! おーし、がぜんやる気が出てきたぜ!!」

 拳に力を込めてガッツポーズをするムロを横目に「……まぁやる気だけじゃ気を使えるようにはならないだろうから大丈夫だろ……タブン」と、内心ヒヤヒヤとする俺なのであった。

 

 

平成24年9月29日10:20

「暇だ……」

 ローテーションが違う為に最初の店番を終えた俺は、ムロが店番中なので昨日と同じく部室で暇を貪っていた。

 

「モリツネ君はいる?」

 

 貪るはずだったんだけどなぁ……。

 入り口から聞こえてきたのは間違いなく溜井の声だった。今更逃げるわけにもいかないし……

「……」

 なので無駄だろうとは思いつつ無言を貫いてみる。どうしたって見つかったら面倒そうだし、物凄く低い可能性にかけるのも偶にはありか――

「いない……わけないわね。鍵が開いていたから」

 ――とも思ったが完璧にバレてる……そういや鍵開いてるもんな。そりゃその時点でバレるわ。

 などと考えている間にも足音は近づいてくる。

「やっぱりここにいたのね……」

 そして隠れているわけでもないのですぐに見つかった。と言うか隠れるだけ無駄だし。

 

 仕方なしに顔を上げると、すぐそこには呆れ顔の溜井が立っていた。

「もしかして昨日もずっとここに籠っていたの?」

「ずっとは籠っていない」

「……ほとんど籠っていたのでしょう?」

「……」

 それは否定できない……が、よくよく考えればこれは溜井に関係ある話なのだろうか?文化祭をどう過ごすかなんて人の勝手だし、他人に口出しされるべきことではないだろう。

「別に、どう過ごそうと俺の勝手だろ。お前こそこんなところに来ていないで、友達とでも文化祭を回ってきたらどうだ? ……まさかボッチとか言うわけじゃないだろ」

「違うわよ……まったく、失礼ね。昨日は友人と文化祭を回っていたわ。広く交友関係や情報網を持つことも、探偵としては大事なことなのよ? それがあるとないでは大きく変わってくるわ」

「あ、そう。だったら今日もそいつらと回ってこいよ」

 こうして話しているのも何となく気怠いのでさっさと追い払うに限る。

 それに正直お前が誰と何処をまわろうと、どーでもいい。ましてや探偵うんぬんかんぬん何てもっとどーでもいいよ。

 

「友人とは昨日回ったから良いのよ。そうではなくて、えーと……」

「……」

 言い辛そうに言葉を濁す溜井。

 なんか嫌な予感しかしないなぁ……。

「大方、モリツネ君は何処かに引き籠っていると思ったから連れ出しに来たのよ」

「そうか。文化祭はムロと回ってるから問題ない。仮に引き籠っていたとしても、それは俺の勝手だろう」

「それはそうだけれど……」

 と言うか、女子と二人きりで文化祭を回るとか面倒な事になりかねないからな。俺の知り合い関係に変な勘違いでもされたら面倒だ。

 ……ホントにそんなことになったら面倒だしな。

「そういうわけだ。お前もこんなところにいないで友達とでも回ってこいよ。交友関係は広いんだろ?」

「むぅ……」

 とりあえず面倒オーラを出しながら、不満気な溜井に諦めることを促す。

 

 それからほんの少し考えていた溜井だったが、溜息をついてこっちを見た。

「……そうね。無理強いすることではないもの、私は友人と回ってくるわ」

「そうしろそうしろ」

 諦めてくれたようで何よりだ。これでようやく俺の心に平穏が訪れる。

 

「それなら……また部活で」

「あいよ」

 出口に向かう溜井に適当に手を振り、扉が閉まる音を確認。暫くしても何もないことから、確実に退室したと思われる。

 

「……はぁ」

 それにしてもあいつはどうして俺を連れ出そうとしたのか……俺が引き籠っていた上で同じ部活のよしみだとしても、本当にそれだけなのだろうか? と考えるとよく分からない。それに出て行くときに少し残念そうだったのも気になる。

「……」

 いや……まさかとは思うが心当たりがないわけでも……いやそれは無いな。この可能性は捨てても良いだろう。流石に効果もきれているだろうと思うし、何よりそんなことを考えてしまう自分が自意識過剰なんじゃないかと思えてしまい自己嫌悪したくなる。

「うあぁぁ……」

 と言うか既に自己嫌悪と言うかこっぱずかしさがあああぁぁぁ……いやいや大丈夫だ! そんなことはありえ無いし、俺も考えてなどいない。

 悪循環に陥っている頭を抱えながら、とりあえず今は冷静にならなくては……!

「……っ!」

 目の前にある机に向かって思いっきりヘッドバットをかましてみると、鈍い音がして頭に痛みと衝撃が浸透する。

「……」

 それと同時にいくらか心も落ち着いて冷静になれた気がした。

 

 兎にも角にもその可能性は無いし、相手の考えなんて考えても意味のないことだ。そもそもそんな面倒な事を俺が考える理由がない。もう誰ともそういう関係にはならないと決めたのだから……この案件はこれでおしまい。今後悩むことは無い。

 それに今は、手元のゲームを進めるのが先決だ。でなければキリの悪いところでムロの担当時間が終わってしまう。それはできれば避けたいことだ。

「よし」

 気持ちに整理をして心新たに、ゲームを再開する。

 たったそれだけで、俺は時間以外の現実から思考を逸らすことができた。

 

 

平成25年9月29日17:49

 文化祭も終わり、俺たちのクラスは片付けも大して無い為すぐに帰る事が出来た。

「終わっちまったなー文化祭」

「ああ。ようやく終わったな」

 イベント終了後独特の疲労感を感じつつ二人、帰り道を歩く。

 ムロは名残惜しそうであるが、俺としてはこれでやっと一つ、肩の荷が下りたというものだ。「店番のある未来よさらば!」と言う感じである。

 ……もちろん声には出さないが。

「あー来年が楽しみだなー……来年は何しよっかなー」

「……今考えたところでお前が来年まで覚えているわけないだろう」

「だなっ!!」

「……アホめ」

 これで無駄な相談をさせずに済んだ。

 どうせ来年も相談されるんだろうが……無駄にされる意味は無いしな。面倒事は少ないに限る。

「早く来年にならねぇかなー」

「まぁ……そうだな」

 そもそも「お前は進級できるのか?」とか思ったけど、よく考えたら留年しても来年の文化祭は出れるし、それ自体は可能なわけだ。そこは問題ない。

 とは言え、こいつを留年させるわけにはいかないのだが。留年したら面倒な事になりかねないしな……

「はぁ……」

「ん? どった?」

「いやなんでも」

 とりあえずは俺は目先の中間の後にある期末テスト。ムロのそれをどうするか考えないとな……でもこれも中間の結果次第か。どうせ分かりきったような結果だろうけど、もしかしたらはあるかもしれない。期待しないで今はただ考えずに待つとしよう。

 

 

 いつか、俺の肩の荷が全て下りる日は来るのだろうか……とりあえずそれは卒業するまでなさそうである。

 ……俺の肩の平穏は当分訪れなさそうであった。

 

 

 

第17話 文化祭日和 完。

 




時間が欲しい……自由な時間ではなく書く時間が欲しい。
ようするに1人の時間が欲しい。
周りの視線が気になるとどうしても……はぁ。

次回は28話を書き終えたら載せます。
大方の内容は決まっているので頑張りたい。
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