扉の向こうの   作:招代

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あと少しで8月に突入。
嫌になりますね……気分は落ちていく一方です。
これから来る暑さのことを考えると……はぁ。

憂鬱に思いながらも18話を投稿。
早く秋にならないかなぁ……。





第18話 ダウジング試験

平成25年10月2日15:50

 土日の文化祭による振り返り休日明け1日目。

 まだ学校内には文化祭の残りカスとでもいえるものが見える中、そんなものとは無縁の部室内は平常運転である。

「千利乃、これを1階真下の部室に放り込んで来い。その後連絡」

「りょうかーい」

 例え、向こうの部屋から出てきた吹田さんが釣竿のようなものを持って、小さめの星形の物体を一階の部室に放り込んでくるように船井さんに言ったとしても、平常運転だ。

 だって津出さんはテレビでゲームしてるし、菅さんは読書をしているのだから……。

 

「部長、それは何なのでしょうか?」

「ダウジングロッド」

「ダウジングロッド、ですか」

「文化祭で使われた釣竿を再利用した」

「そう言えば釣竿を使った出し物がありましたね」

 船井さんが部室を出て、二人がもはや恒例とも言えるやり取りする。それを聞いた俺はひとまず危険性がなさそうなことに安堵の溜息を漏らした。

 

「……」

 にしても胡散臭い単語が出てきたな……いや、そういう超能力もあったっけ? あんまその辺は詳しくないし分からない。

 でもダウジングってL字の棒で行うイメージだが、吹田さんの持っているのは釣竿で、よく見ると釣糸の代わりにコードがあって先端にはよく分からない機械の塊がぶら下がっている。あれはダウジングマシンと言えるのだろうか……たしかに釣竿(ロッド)ではあるのかもしれないけれど……。

 

「ダウジング、と言えば地面に埋まっている物を探す手段のことですよね」

「ああ」

「ゲームとかだと画面上に無いアイテムを探したりする奴だね。現実は水脈とか鉱脈を探すためのものらしいけど……ほぼ金目当てみたいで夢がないよね」

「そう言われるとそうですね。ですが、浪漫はあるかもしれません」

「あー……確かに浪漫はあるかもね」

 RPGゲームから目を離さずに話す津出さんと、真剣な顔で浪漫とか言う意味不明な単語を発した溜井。

 正直馬鹿じゃないのか、と思う。太古の浪漫とかならともかく、ダウジングなんていう信憑性の欠片も無い物を浪漫とか言ってすがる奴がいたら、そいつは頭がどうかしている。アホみたいだ……と、思いはするのだが……

 

「……あれって大分胡散臭いんですけど、信憑性とかあるんですか?」

 今までのことを考えると「もしかしたら……」と思ってしまう。色々なものを目にしたせいで思考の可能性が増えてしまっているのだ。無視すればいいのだが、気になってしまう。そんな自分が面倒臭い。

「無い」

「……ですよね」

 そんな心配をよそに、吹田さんが端的に否定してくれた。

 いやーよかったよかった。信憑性の欠片も無いのも当たり前だ。あんなもんで見つけられたら現代科学が必要ないもんな。うむ。

 

「ん」

 と、ここで吹田さんの携帯が鳴る。

「……ああ。また電話する。そしたら場所教えろ」

 そして切る。

 必要最低限の会話って感じだな……まぁ、俺も似たようなもんなので人の事は言えない。

 

「それで、何をするのでしょうか?」

「ダウジング機能のテスト」

 そう言って吹田さんは釣竿の持ち手辺りにあるモニターのようなものを操作すると、コードの先の機械をぶら下げたまま部室内を歩き始めた。

 ……こういう光景をシュールというのだろうか?

「大よその形状・密度・表面積・温度などを入れることで目的物を探し出すことができる」

「つまり先程の星の形をしたものが何処にあるのかを探し出す、という事ですね」

「ああ」

 返事をしながらも吹田さんは部室内をゆっくりと歩く。

 俺はそれを何とも無しに目で追っていた。

 

「……ところで、本来は水脈や鉱脈などを探すものと津出先輩が言っていましたが、それらも探せるのですか?」

「深すぎなければ探せる」

「そのダウジングロッドはどの位の深さまで探すことが可能なのですか?」

「出力最大で範囲を絞って100mを想定している」

「100m、ですか。人力で埋められる範囲のモノを見つけるのには十分な性能ですね」

 100mと言えば横にすると大したことないけど、縦にすれば相当な高さだ。そう考えると確かに十分な性能なのではないだろうか。

「数値は今後伸ばす」

 そう言った手元でアラームが鳴った。よく見るとモニターも白から赤に変化している。反応があったという事はつまり、あの下方に星形の物体があるという事だろう。

「……」

 すると吹田さんはリールを巻いてコードを巻きとり、携帯を取り出して何か操作を始めた。

 

「……」

 暫くすると携帯を耳に当て、

「戻って来い」

 とだけ言った。

「置かれていた場所は確認しなくて大丈夫だったのですか?」

「アレにはGPSがついている。場所は合っていた」

「そうだったのですね」

「……」

「どうかしましたか?」

 何かを考え込む吹田さん。

 ……嫌な予感。

 

「俊儀」

「なにー?」

「キリが良くなったら裏庭一部の地面掘削許可を取ってこい」

「あいよう」

 片手を振って答える津出さん。

 それよりも掘削って……まさか掘るつもりか。ダウジングしたいがために。

「裏庭を掘るつもりですか?」

「アレを想定の100mに埋める。準備があるから千利乃に説明しとけ」

「……そっすか」

 吹田さんは向こうの部屋へと行ってしまった。

 ……ま、100m掘るだけなら周りへの迷惑も無いだろうし、俺が特にやる事も無いだろうから別にいいか。物騒な事なんて何もない。そもそも俺にはどうすることもできない。

 

「それにしても、どうやって100mも掘るのかしら?」

「知るか」

 問われても答えられるわけがない。ただ言えることは、

「……何だとしても、絶対に掘ってしまうんだろ」

「それもそうね」

 ……はぁ。奇想天外な方法でなければいいけどな。

 

 

 その後、船井さんが来たので現状説明を溜井がして、バッグに何かを入れた吹田さんが向こうの部屋から出てきたので、津出さんと菅さん以外の俺たちは裏庭へと移動した。

 ちなみに掘削許可は裏庭への移動中に吹田さんに津出さんから連絡があった模様。もちろん、許可は取れてしまった……。

 

 

平成25年10月2日16:32

「……と」

 裏庭へと到着した吹田さんはバッグを降ろし、中から紙のようなものを取り出して広げた。

 ……荷物を置いた時にやけに重い音がした気がするのは気のせいだろう。

「それは何でしょうか?」

 溜井が紙を覗き込む。

「地下にある水道管や送電線の全体図だ」

「間違って傷つけちゃったら大変だからねー」

「……なるほど。かなり広く細かく張り巡らされているのですね」

「ああ」

 俺は紙を見ていないから分からないが、そんなに細かく張り巡らされているのだろうか。

「……ここか」

 吹田さんが安全な場所を見つけ、再び荷物を持って移動する。

 ……でも水道管は最初からありそうだけど、送電線って……まさか自分で張り巡らせたわけじゃないよな? 面倒で怖いので確認しないが。

 

 少し離れた場所で荷物を再度降ろした吹田さんがバッグから、オモチャみたいなドリルのようなものを取り出した。

「それは……ドリル、でしょうか」

「遠隔操作可能自動小型ドリル。水平や深度を計測し決めた角度・深度までまっすぐ掘ることもできる」

「それで100mの深さまで掘るのですね。ですが戻る時はどうするのでしょうか?」

「逆回転でそのまま後退することが可能だ」

「なるほど……」

 話す間にも吹田さんはドリルを足で地面に踏み刺し数歩下がると、ラジコンのコントローラーのようなものを取り出す。

 しかし素人考えではあるが、真下に100m掘ってそのまま逆回転しても後退できない気がするんだが。だって掘られたところは空洞なわけだし……いや吹田さんが言うならできるんだろうけどさ。

「最初は土が少し飛ぶから離れた方がいいよー」

「そうですか」

 何かいろいろ考えたものの考えるだけ無駄なのでやめて、俺は指示に従いその場を少し離れることにした。

 

「起動」

 その言葉の直後、歯医者で虫歯を削る時に使われるようなドリルの音を高く大きくしたような音があたりに響き、次の瞬間には土をまき散らしたドリルは消えていた。

 ……ま、俺は虫歯になったことは無いのであくまでもイメージなんだが。

「どの位の時間がかかるのでしょうか?」

「往復約300秒」

「5分ですか……速いですね」

 およそ1m3秒か……確かにあの大きさにしては速いな。

「じゃーそれまでゆっくりしてましょー。これ広げるから手伝ってー」

「あ、はい」

「準備が良いですね」

 想定していたのか船井さんがレジャーシートを取り出す。それを俺は流れで手伝った。

 

 

 待つこと5分くらい。

「そろそろ」

 言われてドリルが入っていった穴を見ると、その穴より大きく地面が膨らみドリルの先端が出てきた。

 それを吹田さんが立ち上がり摘みあげる。すると何故がドリルの上下が2面ともドリルになっている。摘まんでいる側のドリルは下に比べ大きい。

「……変形した?」

「そうみたいね」

 つい口に出た言葉に溜井が同意する。

「千利乃。星くれ」

「はいよー」

 船井さんも立ち上がり星形のアレを渡す。吹田さんはそれを穴に落とした。

 

「このままテストをするのですか?」

「いや、埋める」

 埋めるのか……まぁ、じゃないとダウジングの意味は薄れるか。とは言え、

「……100m埋めるんですか?」

「揺らせば崩れる」

「……揺らす?」

「離れてろ」

「……」

 何となく危険を感じ、言われたとおりに俺も含めその場を離れる。すると吹田さんはバッグから太めの糸の巻かれた糸巻を取り出した。

「……」

 糸の端を持ち、糸巻の方を無言で穴に放り込む。恐らく糸巻は現在100mまで降下しているのだろう。

 

 下に落ちきったのか、持っていた先端を地面に埋めるように固定しその場を離れる吹田さん。

「すみません。あの糸は一体何なのでしょうか?」

 その様子を見ていた溜井が問いかける。

「大生糸」

 ……今物騒な単語が聞こえたなぁ。

「……え、ダイナマイト、ですか!?」

「大生糸だ」

 マッチを取り出す。

「確認しますけど、爆弾のダイナマイトではないですよね?」

「大・生糸だ」

 聞いたら妙なところで区切られた。ダイナマイトではないのか?

「大・生糸……それは生糸(きいと)のこと、でしょうか?」

「ああ」

「そ、そうですか……安心しました」

 溜井が胸をなでおろす。

 なるほど……「ダイナマイト」ではなく「大生糸」か。それなら安心だな。

「……」

 吹田さんがマッチを擦り火を付ける。

 ……あれ? なら何でマッチに火を点けたんだ?

「だが爆発はする」

「え」

「ちょっ……!」

 疑問に思った時には時すでに遅く、火の点いたマッチは糸めがけ曲線を描き放られた。

 そして……

 

 

 

 爆発音とともに地面が揺れた。

 

 

 

「埋まったな」

「綺麗に埋まったねー」

 二人の声に穴のあった部分を見るとそこは塞がっていた。しかし隙間から煙が漏れている。それが爆発させたんだという事実を俺に認識させた。

 

「さ、流石に焦ったわね……一時はどうなるかと思ったわ」

「……そうだな」

 溜井の言葉は吹田さん達に話しかける感じでは無かったので同意する。

「……周りへの被害は特にないわね」

「一応、その辺は計算してんじゃないか?」

 じゃなきゃ離れればいいってもんじゃなくなってたからな……計算してたよな? まさかぶっつけ本番じゃなかったよな? 俺にはもう、そう信じるしかない。

「ってか気にしても仕方ないだろ」

「それもそうね」

 とりあえず今思うのは、この爆発で誰か(特に先生)が来ないことを祈るだけだ……いや、まぁ。この爆発で誰も来なかったらそれはそれで問題なんだけれど……。

 

 視線の先では吹田さんがダウジングを成功させている。ただ、この瞬間のためにあんなことをしたのかと思うと頭が痛い。他の先輩も止める行為など一切しないのだから質が悪い。むしろ促進させている。

「……はぁ」

 ただ……こんな実験に文句を思いながらも付き合ってしまっている俺は、少なからず楽しさを感じてしまっているんだろう。小中とつまらない学校生活を送ってきた俺にとって退屈しない日々は新鮮で、それだけで価値のあるものなのかもしれない。

 

 そう思えるだけで今は充分そうだ……なんて、単純に他の事を考えるのが面倒なだけなのだけれど。

 

 

 

第18話 ダウジング試験 完。

 




今現在でようやくストック分が3学期に入りました。
あと作品内の時間でまだ1年近くもありますが、
書ききる気ではいるのでウダウダ言っていられないか。

とりあえず大事なのは、
思いついていない分の空白を埋めるためのネタ。
これがなければどうしようもない。

もっと脳内で色々と妄想でもしないとな……。

次回は29話を書き終えたら載せます。
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