扉の向こうの   作:招代

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せっかくのお盆休み。
有意義に過ごしたいと思いつつも、
もう後2日程度。

……億劫だなぁ。
正直に言えばもう1日休みたい。
それだけあればもう1話くらい書き終えられる気がするのに……気がするだけだけど。

そんなこんなで色々と愚痴りつつも19話を投稿。
一体自分は何を書いているのやら……。


第19話 儀式

平成25年10月18日16:18

 少し時間が過ぎたが今週の授業もようやく終わり、部室へと行く途中で溜井と遭遇する。

「これから部室?」

「ああ」

「そう。それなら一緒に行きましょう」

 と、言うわけで俺と溜井は部室へと向かった。

 

 

平成25年10月18日16:20

「そういえば」

 部室へと向かう途中、珍しく溜井が話しかけてくる。

「先週の中間テスト。ムロ君の点数がまた酷かったって聞いたけれど……大丈夫なの?」

「大丈夫……ではないがいつも通りだしなぁ……」

 天井を仰ぎ見る。

 何かと思えばそのことか……いったい誰から聞いているのだろうか? とか思ったが、よく考えたらムロの成績がヤバいことなんてほとんどの人間が知っていることだった。調べるまでもない。

「中間テストは見てあげないの?」

「それで楽になるならとっくにしてるっての。だけどあいつは追い込まれないと集中できないからな。勉強ごとに関しては、な」

「……何ていうか、大変ね」

 同情された。こんな場面、前にもあった気がする。

「まぁ仮に集中したとしても、前言った通りテストが終わればすぐ忘れるからな。どっちにしても中間は勉強させる意味が無い……と言うか、そう思うなら教える役を変わってくれ」

 ダメもとで頼むがまた断られるかな……何の取引もしてないし。そう思い隣を見るが、

「……」

 反応がない。

 ……あれ、ダメもとだったんだが即切り捨てられないどころか、むしろ悩んでいるように見える。しかし、もちろんただの勘違いの可能性もある。ここは判断を焦らず、俺の楽の為に反応を待とう。

 

「……そうね」

 暫くしてポツリとそんな呟きが聞こえた。

「全て、と言うわけではないけれど、少しくらいなら代わってあげてもいいかもしれないわね」

「……」

「どうかした?」

「いや……」

 驚いた。正直に驚いた。「可能性あるか?」とは思っていたが、少しとは言えこの面倒事を取引無しで受けてくれるということに本当に驚いた。

 これは……どういう風の吹き回しだろう。何か嬉しいような嫌なような……いやしかし断る理由はない、よな?

 

「大丈夫? 嫌ならいいけれど……」

「あ、いや、そんな事はない。少しでも楽になるなら願ったり叶ったりだしな」

 考えていることが顔に出てしまったのか心配されてしまった。

 しっかりしなくては……このチャンスを逃したら卒業するまで面倒が続くんだぞ!? それはできる限り避けなくてはいけない。

「それならムロ君に勉強を教えないといけないときは、事前に教えて頂戴。例えば1学期の期末テストの時みたいに急に連絡されても準備ができないから」

 そういえばそうだよな。ムロに勉強を教えるということは夏休み同様に家にこいつを呼ばないといけないのか……

「……分かった」

 まぁ、大丈夫だろう。夏休みと何が変わったわけでもないんだし。

「それならよろしくね」

「ああ、その時は頼む」

 こうして、よくわからない溜井の心境の変化により、俺の心労も少しは軽減されるのであった。

 

 ……何かムロの勉強を見る以外の面倒が増えた気がしないでもないが、気のせいだろう。アレ以上に面倒に思うことなんてそうそうないはずだから……。

 

 

平成25年10月18日16:23

 あの話の後、部室へと着いた俺たちを待っていたのは暗闇だった。

「また何かやってんのか……」

 聞かれない声で呟き、溜息をつく。

 一体今回は何をしているのやら……物騒じゃないといいけれど。

「随分と真っ暗ね……けれど微かに灯りも見えるし、物音もする。先輩方はいるようね」

「まぁ鍵も開いてたからな」

 でも確かに言われて見てみれば、棚の向こうで光るテレビではない何かの灯りが漏れて見える。

 これは一体何を指し示しているのか、今の俺には分かるわけがなかった。と言うか分かりたくも無い。

 

 

 そうして、部室を見渡せる位置に来た俺たちが見た光景は異様なものだった。

 本棚近くのテーブルでスタンドライトをつけ、本を読んでいる菅さんは別に良い。いつも通りだ。

 テレビの前のソファに座って携帯ゲーム機でゲームをしているらしい津出さんも良い。いつもと違いテレビを使っていないが、やっていることはいつも通りである。

 問題は吹田さんと船井さんだ。

 確かにいつもおかしな行為を(吹田さんは)していると言えばしているのだが、今回のは違う方向におかしい行為で、そのため……だけではなく普通に異様だった。

 

 本棚側とは別の、普段二人が座っている側のテーブル。その上には赤黒い6本の蝋燭の光に照らされた、いわゆる魔方陣のようなものが書かれれている紙が広げられている。

 魔方陣の上には葉のある枝と、何か小動物の頭蓋骨。よく分からないマークの書かれた3枚の人型の紙。液体の入った小皿のが2つ。その液体は片方が無色透明で、もう片方は赤い。その二つの間に白い粉が小さな山になって魔方陣の上に直接盛られている。

 魔方陣の紙を取り囲むかのようにタロットカードのようなものが船井さんの手によって並べられていく。ただし絵柄は一つで、内容は分からないが縁起の良くない絵柄のように見える。

 その中で吹田さんは六芒星が表紙のボロイ本を開き、何やらブツブツ言っている。これが一番気味が悪い。そしてその横には同じくボロイ本が数冊積まれていた。どれもこれもシールが貼られてなく、図書室にあるものではないことが分かるので私物だろう。

 

 以上が俺の見ている光景である。

 それを見てとりあえず頭に浮かんだのは「儀式」と言う単語。それがとてもしっくりくる。

「これは一体……」

「あー二人ともー」

「何やってんですか……黒魔術でもするつもりですか?」

「ああ」

「あ、そうです――」

 ――か、とは続かなかった。

 

「……は?」

 いや冗談で言ったのに何を肯定してるんだこの人は。

「黒魔術って……本気で言ってんですか?」

「正確には、世間一般認識での黒魔術に分類される悪魔召喚等の儀式」

「ほら、今月って神無月でしょー? 神様がいないって言うし、本も手に入ったから折角だし試してみよー、ってねー」

「ああ」

「そんなもん召喚してどうすんですか……」

 軽く言われた理屈もおかしいし、悪魔(そんなもん)が存在するのかは別として。

「……特にどうするということは無い。儀式が成功するかどうか、そこに興味がある」

「あ、そうですか」

 こうしている話をしている間にも着々と準備が進められていく。

 まー俺が何言ったところで無意味だろうし、被害が出なければいいか。

 

「そもそも悪魔、とは幽霊や妖怪のようなものなのでしょうか?」

 しかし、これ以上関わるのをやめようとしたところで溜井が質問しやがった。そのせいで話が続き、離脱をすることが出来なくなってしまう。

 全く余計なことを……。

「『悪魔』と分類する以上、別のものと考えている。しかし悪魔(そういった)存在の確認はされていない。今までにも黒魔術書らしきもので悪魔召喚を試したが成功例は無い」

「そうなのですか……つまり、現時点では悪魔がどのようなものかも、存在するのかも不明、という事ですね」

「ああ」

「それでは悪魔祓いと言われる人たちが払っているのは、もしかすると妖怪や幽霊の類なのでしょうか?」

「日本的にはそうだ。だが向こう的には悪魔祓いの『悪魔』には悪霊なども含まれる為間違いではない」

「そうなのですか。ちなみに、その黒魔術書は何処で売られていたものなのでしょうか?」

新保(しんぼう)(ちょう)1丁目の古書店」

「新保町、ですか」

 口元に手を当て考えるそぶりを見せる。

 俺にはその場所は分からないが、溜井には分かるのだろうか? 見たところ分からないというような表情ではないが……

 

 ……まぁ、新保町なんて聞いたことの無いところ、俺にとってはどうでもいいんだけど。そもそも――

「そもそも……黒魔術書って古書店で売られてるもんなんですか?」

「一般的な本から黒魔術書や妖書、他人の日記まで広く取り扱われている。其処は」

「……古書店ってそういう所だったけか」

「私に聞かれてもわからないわよ……けれど、恐らく珍しいのでしょうね」

「……だよな」

 はぁ……きっとその古書店は古書店ではないんだろう。そして店主が頭のおかしい人に違いない。やはり類は友を呼ぶとは言うが、変人の知り合いもやはり変人、頭がおかしいのだろう。

 

「っと、こんな感じで良いー?」

「ああ」

「なら準備オッケーだねー」

「これで完成なのですか?」

「ああ、始める」

 どうやら話している間にも完成したようだが、コレに関してはもう無視しよう。儀式が成功するにしろしないにしろ、関わらないに越したことは無いからな……ま、同じ部室内である以上限界はあるのだが……。

 そう思いながら俺は所定の位置に座って暗闇の中、ゲームを始めるのであった。

 

 この時「暗い中でゲームをすると目によくない」という感じの定番台詞を溜井に言われたが、「生まれてこのかた目に異常はない」と言ってそのまま続行した。溜井には呆れられたが、気にはしてない。

 ……本音は只々灯りを調達するのが面倒だっただけである。もちろん、口にはしなかったが。それにあれも事実だし、嘘は言っていない。視力は左右2.0で健康そのものだ……だからそう、何も問題ない。

 

 

 

 そんなこんなで時は経ち、現在部室には明かりが点いていた。机の上も片付けられ、吹田さんと船井さんもいつも通りしたいことをしている。まったくもって部活中とは思えない……いや、さっきのも部活中とはとても思えない行動だったけれどな。

 もしあの時に依頼人でも来ていたら、困惑するに違いない。そんな光景が容易に想像できる。俺も含め、一般人には理解できないだろうからな。いやー……依頼人来なくて良かった。ホント良かった……。

 俺は心からの安堵感を抱きつつ、先程まで怪しい品が並べられていた机を見た。

 

 

 ――結果を言えば儀式は失敗した。

 吹田さんがよく分からない言語をブツブツ呟いたりしていたが何も起きなかった。

 だが吹田さん曰く「こんなものだ」らしい。特に残念がる様子も無く、淡々と船井さんと片付けをしていた。

 まぁ今まで成功例が無かったのだから、失敗したところで確かに「こんなもの」なのだろう。そもそも存在が確認されていないのだから「成功」があるのかすら分からないわけだし、そこまでの期待というのは無かったのではないだろうか? つまりは駄目元と言うやつだ。

 それに仮に成功されても困る。もう何度目か分からないが悪魔や天使なんて非現実も良いところだ。そんなものがいたら天国や地獄が存在する可能性もあるという事ではないかっ……! もし存在していたのなら諦めるけど、これ以上非現実を現実にしないでほしい。世の中の様々なことをそっち方面の可能性も踏まえて考えてしまい、さらにこの思考自体も何度も何度も思っているのでとても面倒なのだ。

 

 

 ――と、色々と思う所はあるが、とりあえずは何事も無く平和に終わったので全面的に良しとしよう。今は今やるべきこと、考えるべきことがある。それが最優先だ。

 俺はそれまでの思考をやめて視線を戻し、ゲームに興じるのであった。

 

 

 

 ただ少しだけ、ほんの少しだけ、もし地獄があるとして、死後に生前の罪を償わせられるというのなら、責任を取らせられると言うのなら、たとえそれが悪魔の基準であったとしても、地獄ぐらいはあっても良いのかもしれない。

 ほんの少しだけ、そう思った。

 

 

 

第19話 儀式 完。

 




例えば地獄があったとして、
どれ程の人間が地獄に行くのだろうか。

恐らく人間基準ではかられるわけではないのだから、
それは誰に分かることでもないのだろう。
善行が善行とは限らない。
悪行が悪行とは限らない。
だから死んだ後にどうなるかなんてどうでもいいんですよ。
何したってどうなるかなんて分からないんだから。

やっぱりどう生きるかが大事ってことなんでしょうね。

次回は30話を書き終えたら載せます。
内容は決まっているのであとは時間だけ……でもイカが楽しい。
困ったな。
ホントに困ったな。
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