扉の向こうの   作:招代

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モチベーションが上がり30話を書ききる。
でも31話目とか何も考えてないな……これは不味い。
とりあえずは仕事しながら何か考えるとします。

今はただ、
30話目を書き終えれたことに安堵しつつ、
21話目を投稿。


第21話 平穏な部室

平成25年11月14日15:26

 面倒な掃除を終え、面倒な階段を上りきって部室にたどり着く。どれだけ回数を重ねようと慣れようと面倒なものは変わらないな。

 そう思いながらいつも通りにドアノブを回して中に入った。

 

「……?」

 入った瞬間に感じる違和感。

 それが何かは分からないがとりあえず部室内を見渡せる位置まで進み、そこで気づいた。2年生がいないという事に。

「……あれ、吹田さん達は」

「何言っているのよ……2年生は今日から修学旅行でしょう」

 俺の呟きに勉強をしている溜井が呆れた様子で答える。

 ……そういえば今日から2年生は修学旅行か。確か京都方面だっけ? どうりで今日は校舎内がいつもより静かな気がしたわけだ。人も少ない気がしたし、違和感の正体もいつもは絶対に聞こえてくる津出さんがゲームをやっている音がしないからか。

 まぁ、ゲームの音が絶対に聞こえているというのも部活としてどうかとは思うけど。それは今さら気にすることでもないな。

 

 そんなわけで部室内には溜井と菅さんしかおらず、俺も所定の場所に座ってイヤホンを軽く付けてからゲームを始めた。

「……」

「モリツネ君」

「ん?」

「コーヒーをいれるけど、モリツネ君も飲む?」

 立ち上がり俺に問いかけてくる溜井。

 ……ふむ、コーヒーか。嫌いじゃないし悪くないな。それにどういう訳か淹れてくれると言うのだから面倒な事もないし、素直にもらっておくか。

 でもその前に確認するべきことがある。

「……いれられるのか?」

「失礼ね……いれられなければ言わないわよ」

「そうか」

「ええ。それにコーヒーは探偵の嗜みでしょ。少しは自信があるのよ」

「……そうか」

 若干不安だが自信ありげだし大丈夫だろう。そもそもいれられると言うことは、いれたコーヒーを飲んでいるのだろうから不味くはないはず。不味いものをわざわざ飲ませるような奴でもないと思うし。

「なら貰う」

「分かったわ。菅先輩はどうですか?」

「……」

「分かりました。それならいれてくるから待っていて」

 菅先輩が首を振っていらないことを示すと、溜井は俺にそう言って台所の方へと行った。

 

 

 少しするとコーヒーのいい匂いが漂ってくる。見てる限り手つきも慣れたものだし、これは不味いということはないかもしれない。

 というか今更だけどこの部室、コーヒー豆とかそれ用の機材も置いてあったんだな。前に船井さんがインスタントを入れていたのは見たことあったけど、コーヒー豆を使っているところは見たことが無かった……それとも溜井が持ってきたとか? ありえない話ではないが今まで使っているところは見たことがない。

 時々船井さんがインスタントコーヒーとか紅茶をいれてるのは見たことあるけどな。

 そう思いながらコーヒーを待ちつつ溜井の様子を眺める。

「……」

 ――――って! 何で俺は溜井を眺めてんだよ! いや確かに俺の不安とは裏腹の慣れた手つきに「意外だな」とは思ったけど、別に見て待ってる必要はないだろ。そうだよ、別にゲームしながら待っていればいいんだよ。見ている必要なんかないない。

「……ふぅ」

 落ち着け。今俺がするべきことはコーヒーを待つことではない。このゲームを進めることだ。コーヒーはあくまでも+αだ。

 深呼吸をして取り乱しかけた心を落ち着ける。そして俺はゲーム画面へと集中し始めた。

 

 

「お待たせ。ブラックでいい?」

「……ッ! あ、あぁ」

 ゲームに集中しすぎていたために近づいて来ていた溜井に気付かず、不意打ちの様にかけられた言葉に驚きついどもってしまう。

 ……別に声のする方を向いたら溜井が目の前にいた上に、目が合ったので焦っているわけではない。断じて、ない。

「火傷しないように気を付けて」

「……ムロじゃあるまいし」

「それもそうね」

「ああ」

 そう言って溜井はもともと座っていた場所に座った。そしてこちらをチラチラと見ている。自分のには手を付けていないことから、恐らく味の感想を聞きたいのだろうが正直落ち着かない。と言うか飲みづらい。気づかれていないつもりか?

 探偵目指しているくせにこういうの下手なんだな……前見たときはそうでもなかった気はするが。でも時々抜けている気はする。

 ってか今どうにかするべきは、この視線だった。

「……」

「……」

 ……仕方ない。

 期待するかのような視線に促されるように俺はイヤホンを外してゲームをスリープにし、溜井のいれたコーヒーをまずは見る。

 

 とりあえず外見は問題ない。普通のコーヒーの色だ。変なものも浮いていない。

 次に匂いだが、これも作業中と同様でいい匂いだ。

 最後は味だがこれはどうだろうか……

 

「……」

 ゆっくりとカップを持ち、火傷しないように気を付けながら口を付ける。そして味をしっかりと確認して喉に通す。

「……」

「……」

「……」

「……どう?」

「……」

「……」

「……美味しい」

「そ、そう。それは良かったわ」

 安心した様子の溜井。

 俺は二口目を口に含んで味わい、飲み込む。

「……うん」

 美味しい。ブラックだから苦いは苦いのだが、苦いだけでなくなんか美味しい。美食家やバリスタではないし詳しいことは分からないが……少なくともたまに家で出てくるインスタントよりは美味しいんじゃないだろうか。

 それが豆の力によるものか溜井の実力なのか別の何なのかはわからないが、それはどうでもいいか。

「……うん。美味しいわね」

 横で溜井がコーヒーを飲んで自画自賛する。つまり俺への視線はもうないという事だな……よし、コーヒーを飲みつつゲームを再開しよう。

 スリープモードを解除し、イヤホンを軽く付ける。そして再びゲームへと集中力を向けた。

 

 

 

「……ふぅ」

 暫くして、ゲームがキリの良いところまで進んだので休憩のためにスリープモードにしてイヤホンを外す。そして座ったまま腕を上にあげて体を伸ばす。

「んん…………はぁ……」

 それにしても……

 

 ……平和だなぁ。

 

 2年生、と言うか吹田さんがいないだけでここまで平和だとは。毎日毎日やらかすわけではないけど、あの人がいると心のどこかで「何かやらかすんじゃないか」と身構えてしまうからな。それに実際、数々の事件は突然やってきているわけで……ゲームをしながら寛いでいるいるようで、最低限の心の準備はしていた。じゃないと事が起こった時に対応しきれないし、精神的疲労も増してしまう。

 しかし今はどうだろう? 普段でも吹田さんが外出している時はあったが、いつ帰ってくるか分からない状況である為に心の準備をしてしまう。けど修学旅行に行っているなら話は別だ。つまり帰ってくる日が明確になっており、その前に帰ってくることは無いという事だ。

 ああ見えて吹田さんは行事には一応ちゃんと参加だけはしているみたいだし……途中で帰ってくることも無いだろう。吹田さんに限らずなんだかんだやるべきことだけはやってるんだよな、ここの人たち。色々するにしても許可をちゃんと取るし、安全もバッチリ。恐らくだけど、そうすることで余計な面倒事を避けているのだと思う。俺も似たようなところはあるし理解はできる……やっていることは理解したくないが。

 

「はぁ……」

 兎にも角にも平和だ。少しも身構える必要が無いと、こうも心の平穏度が違うとはな。おかげでいつになくゲームにも集中できるし、コーヒーも突如の事に吹き出す心配も無く今の様に安心して飲むことができる。

 ただ、吹田さんのせいで俺の警戒レベル上限が上がり、そのぶん安全な日における俺の警戒心と言うものが0に近くなってしまっていると考えられる。原理としては、吹田さんに対して精神力を使う為に他の所での消費量を抑えてしまっているのだろう。バランスと言うやつだ。

「……」

 何が言いたいかと言うと、さっきのアレに関しても油断していたからああいう反応をしてしまっただけで、普段、溜井が間近にいたぐらいで驚くことは無い。目が合ったところでどうとも思わない。

 そう……別に、溜井だからああなったわけじゃない。あの時声をかけたのが例え菅さんだろうと同じ様な反応をしていただろう。いや、菅さんの声とか結局一度も聞けてないけどさ……わざわざ確かめるようなマネも間抜けに思えてやらないけど、ホントに喋るんだろうか? 実は喋れない妖怪とかそういう事は無いよな……?

 ちらり、と菅さんの方を見る。

「……」

 菅さんは特に変わった様子も無く本を読んでいた。

 

「……」

 視線を戻して、突拍子もない思考を頭を掻きながら否定する。

 いやいや、あり得ない。流石にそんなんだったら学校生活を送る際に何かあるだろうけど、そう言う話は溜井とかからも聞かないしな。

 そもそも船井さんが喋ると言っていたんだから喋るんだろう。嘘をつく意味も無い。

 そう結論付け、休憩を止めた俺は再びゲームを再開した。

 

 

 

 ……時間か。

 ゲームのディスプレイがPM6:00を表示しているのを確認して、電源を切り、イヤホンを外して入れ物にしまった。

「ん~……」

 体を伸ばしたり捻ったり曲げたりして体を解すと、体中から関節の鳴る音がする。吹田さんの不在やコーヒーの効果もあってか、いつもより集中してできた。そのぶん体も結構固まっているようだ。

 

「……はぁ」

 解し終えて息を吐き、力を抜く。

 ……うん。だいぶスッキリしたな。それじゃあ……

「……帰るか」

 ゲームなどをバッグにしまって立ち上がる。この時、椅子を出しっぱなしにしないのは当たり前である。

「お疲れ様でしたー」

「ええ、お疲れ様」

「……」

 もはや習慣と言ってもいい挨拶をすると、当たり前のようにいつもより返ってくる言葉は少ない……と言うか、菅さんはいつもこちらを無言で一瞥するだけなので今日は溜井のみだ。

 だからどうという事ではない。ただ、そのことに少しの違和感を感じている自分がいた。

 

 そんな自分に内心、溜息をつきながら俺は部室を出た。

 

 

平成25年11月14日18:06

 帰り道。

 暖かい部室とは違い、外はすでに冬服でも肌寒い。しかし暑いよりはましだし、頭も丁度良く冷えるので考え事をするには良い季節とも言えるだろう。色々と悩まされることの多い俺としては有り難い。主にムロとかムロとかムロとか吹田さんとか吹田さんとか……後、溜井も少し。

 どうにもこうにも部活に入って退屈はしないのはいいのだが、悩みが増えている気がしてならない。

 

「はぁ……とりあえず明日は今日みたいにならないようにしないとな……」

 あの時の事を思い出すと、どうにも情けなく思う。あの程度の事で動揺してしまうとは……でも原因は分かっている。要は油断しすぎが原因なのだから、油断しなければいいだけの事。

 なに、簡単なことだ。ゲームに集中しすぎず溜井に気を配れば良いだけの事。そうすることで不意に声をかけられても驚くことは無いだろうし、いつの間にか近くにいたとか言うことも無くなる。

 普段通りにしていれば大丈夫なのではないか? とも思ったが、吹田さんがいない以上ついつい気が抜けてしまう可能性は十分に考えられる。ならば万全をつくし、溜井を少しだけ警戒し続けよう。これで今日の二の舞にはならないはずだ。

 対策も決まったので考えるのはそこで止め、俺は帰路を歩き続ける。考えがまとまったおかげか頭はだいぶスッキリとしていた。

 

 

 

 翌日、それを実践した俺だったが途中で無性に馬鹿らしくなったと言うか何と言うか……とにかく! 途中で馬鹿らしくなり止めた。

 だってこれじゃあまるで…………。

 

 

 

第21話 平穏な部室 完。

 




今日から仕事時間がいつも通りに戻ります。
ようやく自由時間がそれなりにとれる……。

ただ、
それと書けるかどうかは話が別。
前書きにも書きましたが、
今はとにかく今は大まかな内容を考えないと……。

次回は31話を書き終えたら載せます。
……いつになるやら。
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