あっちの話もまとまってきたんで書きたいなーと思いつつ、
そんな暇があるならこっちを書けと思う今日この頃。
……まぁ、
書けるものから書いてくのが一番なんですけどね。
そういった意味ではこっちのも書けそうなんで問題はなさそうです。
今回は32話を置き終えたので前編も後編も投稿できます。
ではとりあえず前編をどうぞ。
平成25年11月18日15:18
2年生の修学旅行も終わり、学校も平常通りの騒々しさをとりもどした。俺としては静かな方が嬉しいんだけどな……それに、2年が帰って来たという事は部活も平常通りになるわけで。
吹田さん達も返ってくるんだよな……短い平穏だった。
そんな思いに頭を痛めながら、溜井と部室に入る。すると馴染み深いゲームの音が聞こえてきた。その音に、改めて帰って来ているんだなという実感が沸く。
そして、通路を抜けるといつも通りの光景があった。
「二人とも5日ぶりー。留守中なにも無かった? まー何もなかったと思うけどね」
「はい。留守中は何もありませんでした」
「だよねー」
困ったような笑みを浮かべる船井さん。
まぁ依頼人が来ることなんて極稀だし、吹田さんがいなければ何も起こることは無いだろうからなぁ。船井さんもそれは分かっているんだろう。
「あ、そーそー。これ、2人にお土産」
「ありがとうございます。頂きます」
「ありがとうございます」
受け取ったお土産を見ると、八つ橋を筆頭に京都っぽいもので構成されていた。
……正直、変なものを買ってこなくて安心している。
ただ、安心しつつも1つだけ気になる事があった。
「あの……吹田さんは帰って来てないんですか?」
「……本当ね。『本日不在』の張り紙があるわ」
「あー……レンは遠出したついでに富士の樹海に行ったのよ」
「遠出したついで、ですか」
「うん。ついで。たぶん2・3日すれば帰ってくるんじゃないかなー」
「そうなのですか」
「ってか、吹田さんって出席日数とか大丈夫なんですか?」
「その辺りはキチンとしてるから平気よー。ほら、基本的に授業は休まないで出てるし」
「……そっすか」
まぁあの人に限ってそんなへまはしないか。
「あー……私も行きたかったなー」
「行けばよかったんじゃないですか?」
「んー……そうしたかったんだけど、やっぱり何も準備してないと危ないからねー。レンに断られちゃったのよー」
「行こうとはしたんですね」
「もちろん! でもしょーがないから『落し物を拾ってきて』って、お願いしといたのよー。楽しみよねー」
「はぁ……そうなんですか」
よく分からないが、先程は残念がっていたのに随分と嬉しそうだ。ただ、あまり詳細は効かない方が良さそうかな。
「もしかして、部長は修学旅行に樹海に行くための装備を持って行かれたのですか?」
「うん。最初っから計画してたみたいだねー」
「そうなのですか」
「よくやりますね……」
どこの高校に修学旅行の帰りにそのまま富士の樹海に行く高校生がいるのか……ってか、今さらだけど「ついで」っていう距離じゃないだろ。
なんて思いつつも、気にするだけ無駄と判断して、その後は普段通りに過ごしたのであった。
この日、そして翌日も吹田さんは帰ってこなかった。
2日後、部室に入ると久しぶりの吹田さんが。
しかし何やら珍しく悩んでいるようにも見られ、机の上にはよく分からない道具と共に一冊の錠の付いた本が置かれていた。表紙は赤く、金色の文字で『RubyDiary』と書かれている。
……ダイアリー、という事は日記帳とか記録帳だろうか?
「部長は何をされているのでしょうか?」
「あー……開けようとしたみたいだけど開かなかったみたいなのよ」
溜井が問いかけると、吹田さんの隣に座っていた船井さんが答えた。
「鍵がかかっていたのですか? それでしたら私、ピッキングは得意ですけれど」
「ううん。確かに鍵はかかっているらしいんだけど、どうやら特殊な力でかかってるらしいのよねー」
「特殊な力、ですか。何か特殊な本なのですか?」
「魔道書だ」
それまで黙っていた吹田さんが端的に述べた。
……頭の痛くなるような単語を。あまりにも突拍子もないので溜井も戸惑っているようだ。
「ま、魔道書、ですか」
「そんな胡散臭いもんどこで買ってきたんですか……」
「樹海の帰りに露店で」
「店主の人が魔道書だと言っていたのですか?」
「ああ」
「……信じたんですか?」
「ああ」
「……そっすか」
良く信じたな……そんな胡散臭いもんを。
「仮に魔道書でなくても、特殊な力で閉じられているのは間違いない」
「そうですね……そうなると、内容が気になりますね」
「気になるよねー」
「……そうですか」
しかし俺には関係のない話だ。後は勝手にやってくれ。
そう思い、ゲームをしようといつもの場所に座りに行こうとした。が、急に吹田さんが本を持って立ち上がったため、ふと動きを止めてそちらを見る。
「千利乃」
「なにー?」
「出かける」
「それなら私もー」
「何か開ける手立てがあるのですか?」
「無い。だが中身を知る手だてがある」
「中身を知る手だて、ですか……よろしければ私もついて行っていいですか?」
「俺もついて行こっかな。魔道書の中身って気になるしね」
今までゲームに徹していた津出さんがゲームを消して、こっちに来た。
どうやらほとんどの人は吹田さんについて行くようだ。そうなると俺と菅さんで留守番だな……どうせ依頼も来ないし、静かに過ごせそうだ。
まぁ俺も内容とか中身を知る方法に興味がないわけでもないが、それは後で結果を聞けばいいことだし。今はゲームをする方を選ぼう――
「それじゃ、行きましょう。モリツネ君」
――と、背を向けた俺の肩が溜井により掴まれる。それにより溜井の手の感触や温度が肩から伝わり、なんとも居心地が悪い。
「いや俺は――」
「じゃー菅さん。留守をお願いしますねー」
「……」
船井さんに留守を任された菅さんが無言で手を挙げて答える。
「ほら、行きましょう」
「……あぁ」
溜井の手が肩から離れ、皆は既に部室を出た吹田さんを追っていく。
俺は溜息をつきながら皆の後をついて行くのであった。
……正直に言って「流されているなぁ」とは思いつつも、どうにも断る気にはなれなかった。それもきっと、何だかんだで内容とかが気になっているせいだろう。
肩に残る温度が少し気になりつつも、そう言い聞かせることにした。深く考えてしまえばまた面倒な事になるだろうから。
平成25年11月20日15:25
学校を出るとそこにはタクシーが2台停まっており、2年と1年に分かれて乗り込んだ。出発したタクシーは次第に学校から離れていき、窓の外には俺の知らない景色が流れていく。
俺はそんな景色をただただ、眺めていた。
平成25年11月20日15:47
20分ほどしてたどり着いたのは、落ち着いた雰囲気の漂う町。そしてその町に違和感なく溶け込む一軒の木造建築の前。入り口である引き戸の上には看板が掛けられており、そこには「新飯田古書店」とかかれている。
「古書店、ですか。もしかして前に黒魔術書を買った場所でしょうか」
「ああ」
「そうだったのですか」
あの胡散臭いものを買ったのはここだったのか……一気に建物全体が胡散臭く感じ始める。
入るのがやだなぁ……。
しかし吹田さんは気にすることなく、立てつけの悪そうな引き戸を開けて中に入って行く。その後を追うように、俺は仕方なく他の人と一緒に中に入った。
平成25年11月20日15:48
最後に店に入り引き戸を閉めて、店内を見る。そこにあったのは複数の本棚と、綺麗に収められた本の数々。灯りは明るすぎず暗すぎずで丁度よく、埃っぽい感じもなくよく掃除されているのが分かる。
そして店の奥、カウンターの向こうに座っていた女性が立ち上がり、こちらに会釈をする。
俺は会釈を返したが、吹田さんは気にすることなく女性のほうへと歩いていき、俺たちもその後に続いた。
「いらっしゃいませ。吹田さん。それから後ろの方々は……お友達でしょうか?」
「同じ部活の所属だ」
「レンの友達の船井 千利乃です」
「同じく友人の津出 俊義です」
「後輩の溜井 天衣、です」
「……後輩の袖森 常です」
「船井さんに津出さん、溜井さんに袖森さんですね。
笑顔でそう言って頭を下げた。
こちらとしては今後ともよろしくするつもりはないのだが。
「それで本日は……日記の鑑定でしょうか?」
「ああ」
「分かるのですか?」
溜井が驚いた様子で問いかける。
まだ日記帳を出していないのに言い当てたのだから、それも無理はないか。俺も少し驚いた。
「ええ、実は私、古書店をやらせていただいておりますが、専門は日記なのです。もちろん、古書にも詳しいと自負してはおりますが」
「あ、いえ、そういうことではなくてですね」
「はい?」
「『まだ出していないのに日記を持ってきた、ということが分かるのですか?』という意味だったのですが……すみません、言葉足らずでした」
「あ、そちらでしたか……こちらこそ察しが悪くて申し訳ありません」
本当に申し訳なさそうに頭を下げている。
しかしそんな事より、早く用事を済ませないのだろうか……?
「それで、どうして日記を出す前に分かったのかということですが、それは私が日記帳の精霊だからです」
なんかメルヘンなワードが出てきた。妖怪とかとは違うのだろうか?
「日記帳の精霊、ですか?」
「はい」
「契約して召喚できそうな単語だね」
「契約や召喚はできませんが……そうですね、日記帳の妖怪と思っていただければ分かりやすいでしょうか? そのおかげで日記が近くにあれば、妖力でそれが分かるのです」
津出さんの言っていることも分からないでもないが、どうやら違うらしい。話を聞く限りでは妖怪の一種ってとこだろう。
「なるほど……そうだったのですね」
「はい。それで日記の件ですが」
「これだ。特殊な力で閉じられている」
吹田さんがバッグから取り出した日記帳を新飯田さんが受け取る。
これでようやく話が進むのか。
「妖力などは感じませんでしたが、特殊な力ですか……それなら2階に行きましょう」
そう言ってカウンターの裏側から長い棒のようなものを取り出すと、それを天井のくぼみに引っ掛けて下ろした。するとそこから木製の隠し階段が現れる。
「それではこちらへ」
どこから取り出したのか、灯りのついたランプを持って階段を上がる新飯田さん。その様に少しだけ幻想的なものを感じつつ、その後を俺たちはついていった。
前編は少なめですが、
区切りの都合上仕方がないのです。
ですので後編は少し長くなってしまいますが……。
それは置いておいて今回登場した彼女の紹介を。
無駄に長め。
新飯田 ふうり(Life Diary→ライフダイアリー→アライイダフーリ)
・新保町一丁目の古書店店主で女妖怪。
・何も書かれなかった栞紐付きの日記帳が妖怪化したもの。
・付喪神とは違い本体とは別に実態を持っている精霊型。
・髪色はカバーと同じ茶色で、肌は白め。
・目は金色だが普段はカラーコンタクトで黒く見せている。
・今使っている名前は前の持ち主の名前。
・本体が消えない限りは生き続けられる。
・妖怪なので本体も実態も、傷がついても妖力で勝手に修復されていく。
・本体に傷がつくと実態にも傷がつくが、逆はない。
・妖力で本に限らず日記の場所が分かる。
・触れることで歴代の持ち主や内容、経てきた年月が分かる。
・妖力で日記帳を創り出せるが、絵日記は創れない。
・妖力で傷んでいる日記帳を修復できる。
・妖力で魂のこもっていない日記帳に限り白紙にできる。
・本体である日記帳には一日の終わりにその日あった出来事が3行ほど記される。
・実態が致命傷を受けた場合、本体の栞紐がはさまれているページの出来事のころに記憶などのあらゆる状態が巻き戻り、実態は再び本体の元へと現れる。
・本体のページが埋まりきった場合にも同様になる。
・こうなった場合、巻き戻った分のページは白紙になる。
・また、栞紐のはさまれているどちらのページになるかは運しだい。
・栞紐がはさまれていない場合はすべて白紙になる。
・本体が致命傷を受けた場合はそれが治るまで実態は出現できない。
・ただし記憶は時々バックアップを取ってもらっているので、巻き戻った後にそれを入れることで記憶を保っている。
・もしもの時のために店内には防犯カメラやボイスレコーダーが多くあり、自分でもかなり細かく日記をつけている(誰が何時来て何の用事だったか等々)。
・防犯カメラなどは自分で取り付けたわけではないので、ふうり自身も忘れているものがある。
な……長い。
この先出るかもわからないキャラに自分は一体何をやっているのか……。
ま、
まぁとりあえず後編は今日中にあげますので。
出来なければ明日。
そういうことでお願いします。