扉の向こうの   作:招代

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気がついたら、
前回の投稿から1か月近くたってしまいそうになっている。
……もう11月か。
そうしてあっという間に12月になってしまうんですね。

正月休みは楽しみですが、
今は間近にある3連休を楽しみに頑張っていきたいです。

そういう気持ちで23話を投稿。




第23話 面倒の軽減

平成25年11月22日16:17

「そろそろ期末テストが近いけれど、ムロ君は大丈夫なの?」

 部活へと向かう途中、溜井が問いかけてくる。

 ……確かに12月の2日から期末テストが始まってしまう。

「大丈夫じゃないけどギリギリにならないと意味がないからな、あいつには」

「あー……そう言えばそうだったわね」

「だから勉強を教えてやるのは来週の土日だな」

「そう。分かったわ。それならその日にモリツネ君の家に行けばいいわね」

「……そうだな」

 思う所はあるものの、有り難いことに溜井の方から言ってきてるんだし、面倒が軽減できるなら受けるべきだろう。

「何時に向かえばいいかしら?」

「いつもは午後3時からだな。そこからムロが寝る時間まで休憩や夕食を挟んで続ける感じだから……まぁ、帰る時間まで負担してくれてればいいから」

「随分と遅くまでやるのね」

「……そこまでやってようやく、数教科の赤点回避ができるんだよ」

「……本当に大変ね」

 溜井に同情され、溜息が漏れる。

 だって同情されるという事は、俺はその辺の奴らより大変な目に遭っているという事で、いかにムロの頭の悪さが普通じゃないのかを思い知らされる。そしてそのムロの勉強を見なければいけないという事がどれだけ大変かという事が、再確認させられる。

 まぁ、溜井の場合は夏休みに少し経験しているから、同情だけでなく溜井自身も気分が落ちているのかもしれない。

 だって、どことなく空気がドヨンとしている。

 

「勉強の方針とかはどうしているの?」

「ん……前提として英語とか古文は諦める」

「諦めるのが前提なのね……」

 呆れ声で言われるが、それが最も現実的な方法なので仕方がない。

「単語とかを理解できるわけもないからな。時間を無駄にするだけだ。だからとりあえず、単語を覚えればいいだけの教科を優先して勉強させて、確実に数教科の赤点を回避させる」

「難易度の低そうなところを重点的にやるという事ね」

「あぁ、確実に取れるところを取らないと補習回避は絶対に無理だからな。だがこれだけだと回避できない」

「そうね」

「だから次は今回の範囲だけ覚えれば問題無いやつだな」

「ああ……前回憶えたことはもう忘れているのよね」

「確実にな」

「……だから、今までの内容を覚えていないといけない教科は後回しにすると」

「そういうことだ。これに関しては80%ぐらいで赤点回避できれば良い方だ」

「赤点回避が80%で良い方……何て言うか……残念ね」

 反対方向に目を逸らし、溜井が呟く。

 しかしまぁ、その気持ちも分かる。ホントに残念な頭だからなぁ……あいつ。だからこそ楽ではあるんだが、この時ばかりはな……。

 

 だが目を逸らしてばかりもいられない。例え残念だろうと、ようは回避できればよかろうなのだ。

「まぁ……80%ぐらい上手くいけば補習回避は行けるからな。それで充分だ」

「それもそうね……」

「で、今までの内容を覚えていないといけないやつだが、主に計算のある理数系だな。これは割く時間は少なくて良い。公式とか適当に詰め込んで、後は選択問題とかの運に任せるしかないな」

「最悪、今までのものが上手くいけば落としても構わないという事ね。保険みたいなものかしら」

「頼りない保険だけどな。無いよりはましだ」

「無いよりは、ね」

 そこで会話は途切れ、無言で部室へと歩き続ける。

 廊下から見える空は秋晴れ、と言う訳ではないが晴れている。俺の心とは真逆だな。

 

「はぁ……」

 来週の土日が億劫だ。

 ま、いつもの事だけど。

 

 

平成25年11月30日15:00

 溜井との約束の一週間後、ムロの補習回避会当日。

 両親は遠出しており、妹は部活。暖房の効いた俺の部屋にはムロと溜井がいて、勉強道具をテーブルに広げていた。

「とりあえずさっさとノートを写せ」

「おう!」

「なら私は移し終えるまで自分の勉強をしているわね」

「好きにしてろ」

 そうして溜井は自分の勉強を始め、ムロはノートを片っ端から写し始める。

 それを横目に、俺はイヤホンをしてゲームを始めた。

 

 

 1回の休憩を挟んで暫く、ムロが勢いよくシャーペンを置いた。

「おわっ――――たぁぁぁああ!!」

「確かにお前の頭は終わってるな。人間として」

 時間を見ると丁度いい時間だ。

 イヤホンをはずし、ゲームをスリープにする。

「マジかっ!」

「あーマジマジ。じゃ、休憩がてら菓子でも取ってくる」

「おう」

「お願いするわ」

 両手をあげてガッツポーズをしていたムロが勢いよくこちらを向くが、俺は立ち上がり適当に返事をした。

 テーブルでは溜井がまだ勉強を続けている。よくもまぁ、自主学習をここまで頑張れるものだ。俺には到底できない。

 そう思いながら、俺は部屋を出た。

 

 

平成25年11月30日16:49

「菓子は……溜井が持ってきたので充分か」

 甘いものは疲れた頭にいい。

 冷蔵庫を開けてチョコクッキーと麦茶を取り出す。そして食器棚からコップを3つ取り出した。

 これらをトレーにバランスよく乗せ、落とさないように気を付けながらも早足で部屋へと向かう。

 

 当たり前だが、廊下に暖房なんてものは無く、少し寒いし床が冷たい。靴下から伝わる冷たさに、スリッパを履いてくれば良かったとちょっと後悔した。

 

 

平成25年11月30日16:51

 部屋へと戻ってくると溜井も勉強を中断して、ノートなどを端に避けていた。

「持ってきた。麦茶は自分でいれろよ」

「おう。分かってるって」

「頂くわね」

 テーブルの上にトレーに乗せていたものを置き、宅配ピザについてきたウェットティッシュをそれぞれに放り投げる。

 そして俺もベットへと座った。

 

「にしてもさー、よくそんなに勉強できるよな、溜井さん。俺なんかノート写すだけで死んだような気分だぜ?」

「そう?」

 菓子と麦茶により回復したムロが、溜井のノートを見て言う。

 まぁ、その意見には同意だ。だが、

「お前と比べれば98%くらいが勉強のできるやつだよ」

「『98ぱーせんと』ってどんくらいだ?」

「100人中、98人ってことになるわね」

「いやいや流石にそれは無いだろ~あっははっは」

「そうだな。98人は甘く見すぎかもな」

「だろ?」

「99.5%はお前より勉強ができるな」

 確かに良く考えたらこいつより勉強ができない人間が100人中2人もいるわけないからな。いたら学校が大変だ。

 

 しかしまだ%を理解してい無いようで、ムロは首を傾げている

「……つまり、どんくらいだ? 98ぱーせんとが100人中98人なんだよな。つまりー……ええっと……どんくらい?」

「つまり1000人中、995人はムロ君より勉強ができる、という事ね」

「ええ! 増えてる!?」

「妥当だろ」

「お、俺ってそんなに勉強できてなかったのか……」

「自覚症状なしか。重傷だな」

「ま、マジかぁー……」

 テーブルに肘をついた状態で頭を抱える。

 事実なのでこのまま放っておいても良いのだが、このままだと今後の勉強に支障をきたしかねない。面倒だがフォローしとくか。

 

「だが安心しろ。下には下がいる。お前より勉強のできないやつは1000人中5人もいるんだからな。ビリじゃない」

「な、なるほど……つまり俺もまだまだ大丈夫ってことだな!?」

「ん……まぁ、そうだな」

「……いいの?」

「まぁ、いいだろ」

「ならいいけれど」

 どういうお花畑in筋肉脳回路でその答えを導き出したのかは知らないが、そして大丈夫なわけはないんだが……まぁ、復活したなら良しとしようか。

 これに関して突っ込むのは不毛だろう。

 

「んでさっ、やっぱり溜井さんはよく勉強できるよな。モリツネもそこまで勉強してないじゃん?」

「俺はやる事だけやってるだけだからな。お前と違ってノートは取ってるし、授業も聞いているし提出物も出している。やる事やってりゃ、まず赤点なんてとらないし」

「流石モリツネだなぁー……そんで溜井さんは? いつもそんなに勉強してんの?」

 流石とかではなく、やる事やってればほとんどの人間が赤点なんて取らねぇよ……まぁ、小学生の時からでないと分からないが。

「いつも、と言えばそうね。テスト前ほどではないけれど、普段から予習復習はやっているわ」

「間違ってもムロにはできないな」

「なー」

「……褒められているのかしら」

「ムロ基準では」

「……そう」

 褒められてないことを分かってか、何とも言えないような表情の溜井。

 

 しかし咳払いをして麦茶を飲むと、一息ついてコップを置いた。

「まあ、どんなことが探偵の仕事に役立つかは分からないから、知識があるに越したことは無いわ」

「へー、なんか凄いな」

「何がだ?」

「いやー……だってさ、俺なんか将来の事なんて何にも考えてねぇよ」

「そうだな。お前は将来を見る前に明後日のテストを見ろ。休憩時間は終わりだ勉強を始めろ」

「おうっ」

 無駄に威勢よく返事をし、テーブルの上を片付けて勉強道具を展開する。

「分からない所があれば私に聞いて」

「さっそくわからないから教えてくれっ!」

「……分かったわ」

 なんて、俺にはいつも通りな展開を眺めつつ、ムロを溜井に任せてゲームを始めるのであった。

 

「ま、扱いに困ったら言ってくれ」

「そうさせてもらうわ」

 あー……この時期に楽できるって良いなぁ……。

 

 

 途中に妹が帰ってきたりして、午後8時ごろ。

「そろそろ私は帰るわね」

 時間を確認した溜井が勉強道具をしまい、立ち上がる。

 俺も階段辺りまでは見送る為にゲームを止めて立つことにした。

「ああ、今日は助かった」

「明日も今日と同じ時間で良いの?」

「そうだな」

「分かったわ。それならムロ君、頑張ってね」

「おう、頑張るぜ!」

 そして俺と溜井は部屋を出た。

 

 

平成25年11月30日20:00

「夏休みの宿題の時に大変さは分かったつもりでいたけれど……こっちの方が何倍も大変ね」

 階段を下りる前で立ち止まり、こちらを向いて溜井が話しかけてきた。

 電気をつけていないために表情は分からないが、きっと疲れているのだろう。俺もこれからその大変なことをやらないといけないと思うと、溜息が出る。

「そりゃぁな。答えを写せばいいって話じゃないし」

「本当にそうよね」

「別に無理強いはしないぞ?」

 本音は手伝ってくれてありがたいが、言葉通り無理強いするものでもないしな。元々は俺の仕事……と言う訳でもないが、俺の役割なわけだしな。

「……いえ、明日も来るわ。モリツネ君がよければ次回の期末の時も手伝わせてもらうけれど」

「……まぁ、お前が良いなら断る理由は無いんだが」

「そう。それならそうさせてもらうわ」

 何でわざわざこんな面倒事を引き受けるのか、俺には理解できない。でも面倒事を引き受けるからには何かしらの理由はあるんだろうと察することはできる。

 深くは考えないし、聞きはしないが。

「それじゃあ、また明日」

「ああ、明日」

 溜井は向きを変え、階段を下りていく。

 俺は溜井が玄関を出るまで見送り、部屋へと戻った。

 

 

平成25年11月30日20:03

「ヴヴヴヴヴァ……」

「……」

 部屋に戻るとムロが頭から煙を出す勢いで死にかけていた。おそらく教えてくれる人間がいないことによるオーバーヒートで脳内回路がやられたのだろう。

 全く以てスペックの低い脳みそだ。仕方がないので蹴り起こすか。

「はぁ……おら、生き返れ」

「――はっ! あ、あれ……俺はいったい何を」

「何もしていなかったからとっとと勉強を再開するぞ」

「何にも分からんけど分かったぜ!」

 こうして、ムロの補習回避勉強会が再び始まる。

 次の休憩時間で風呂だな、なんて思いつつ、ムロの質問に答えていくのであった。

 

 そして、翌日も同様に補習回避勉強会は行われたのであった。

 

 

 

第23話 面倒の軽減 完。

 




今さらですが、
これから主要キャラの設定とかを載せていこうと思います。
まずは主人公から。

袖森 常(tiresome sound→sodemori tsune)
・tiresomeは「やっかいな・面倒な・嫌な・うるさい」と言う感じの意味。
・soundはなんとなくわかると思いますが……これは初期の設定の名残です。
・性別……男性。
・誕生日……10月11日。
・血液型……A型。
・利き手……右。
・身長……160台後半。
・濃いめの黒髪で、暗い印象を受ける。
・家族構成……母・父・妹。
・所属……1年1組16番。保健委員。調査解決部。
・特技……柔軟。なるべく移動したくないがために柔らかくなった。
・好物……カップ焼きそば・きくらげ・かっぱ巻き。
・趣味……漫画・アニメ・ゲームなど、動かずできるもの。寝転がりながらが望ましい。
・好きな教科……現代文・歴史。
・嫌いな教科……体育・音楽・英語。
・宿題は学校で終わらせる派。
・成績は平均70前後。
・テスト勉強は出されたものをやって、テスト直前に見る程度。ムロのは含まない。
・昔は図鑑とかをよく読んでいたので、虫や魚の種類に少し詳しい。
・どちらかと言えば感覚派。
・人の顔と名前、両方を覚えるのが苦手。どちらかだけ覚えていることが多い。
・過去に付き合っていた経験有り。自然消滅したが、責任は自分にあるとしている。
・初期案ではもっと独り言とかぶつぶつ言って、擬音を良く使うようなキャラだった。
・しかし書いている途中で「これは駄目だ」と思い、その設定は削除。

・性格は責任感の強い面倒臭がり。
 授業は面倒ながらも真面目に聞くし、ノートもしっかりと取る。提出物も出すし、委員会の活動も怠らない。
 なので先生からの評価は悪くはない。
 周囲からは「真面目」と取られる時があるが、本人は否定。本人からしてみればやるべきことをやるのは当然のことなので、真面目などではない。できることなら楽がしたい。
 また、肉体的な面倒臭さよりも、精神的な面倒臭さを嫌う。理不尽な説教や、逆切れが特に面倒で嫌い。
 そしてその性格ゆえに、無駄に考えこんでしまう傾向にある。本人からしてみれば、そんな自分がたまらなく面倒で嫌い。
 面倒臭がりな自分は責任感がなくて嫌いだが、責任感のある自分は面倒くさくて嫌い。要するに自分自身が結構嫌い。

・実は第六感の持ち主。
 その効果は「自分の命の危険がなんとなくわかる」というもので、99.5%くらいの的中率。
 それ故に「どうすれば自分の命が助かるか」もなんとなく理解できる。
 しかし自分が死ぬような状況でしか発動しないため、命に危険がなければ重症だろうと発動しない。
 また、命に危険がある状態でなら火事場の馬鹿力などは普通の人より早く発動するのだが、命に危険がないと第六感に判断された状況では普通の人より発動が遅い。


こんな感じでしょうか。
不足が思いついたら追加します。
では次回は34話を書いたら載せます。
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