扉の向こうの   作:招代

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お久しぶりですが全然書けてない。
相も変わらず周りの目も気になってしまう。

でも気づきました。
書き溜めていた分を仕事の休憩時間中に修正していくことはできる、と。
人目も気にならないし。

そういうわけで少しずつですけど書き溜め分は投稿していきたいと思っています。
……これで書く意欲が出てくればさらにいいんだけれどなぁ。


第26話 ゲームは学業に含まれない

平成25年12月29日13:11

 冬休みに入り、後3日後には新年という頃。

 外には雪が少し降り積もり、窓を曇らせている。当たり前だが気温は低く、部屋の中は暖房で暖かい。少し乾燥はしているが……支障はない。

 そんな快適な部屋の中で俺はゲームをしながらゴロゴロとしていた。もうすでに大掃除も片付けも宿題も終わり、後はダラダラと新年を待つだけである。

 気楽なものだ……まぁ、最終日にムロに冬休みの宿題をやらせないといけないんだけど……量は少ないのでそれほど時間はかからない。夏休みに比べれば苦でも何でもない。

 溜井を呼ぶことも無いだろう。

 

 そんなことを考えていると、携帯が鳴りだした。

「……」

 気だるく思いながらも手を伸ばし、携帯を取る。そしてディスプレイを見ると『津出さん』と表示されていた。

「あー……」

 そういえば2学期に入って少ししたくらいに、溜井に無理やり部活関係の電話番号とかを登録させられたんだった。

 ……特に使うことも無かったので、今の今まですっかり忘れていたのだが。

 

「っと……んなことよりでないとか」

 鳴り続ける携帯の通話ボタンを押し、耳元へとよせる。

「――もしもし」

『あ、常? 俺だけど、時間大丈夫?』

「問題ないです」

 電話越しに津出さんの声が聞こえてくる。

 ……一瞬、いつもの癖ですぐに切ろうとしてしまったが、相手がムロではないことに気付き踏みとどまった。それでもやっぱり、若干の面倒臭さを感じるのは性格の問題なので仕方のないことだと思う。

『なら丁度良いね。で、用件なんだけど』

「はい」

『実は家のゲームソフトを置く場所の余裕がだいぶなくなってきててね。これからも新しいのを買っていくし、1年以内にやりそうなものとそうでないもので整理してたんだよ』

「そうなんすか」

 確かにゲームソフトなんてどんどん新作が出るし、津出さんなら片っ端から買っていそうだから場所を圧迫していそうだ。というか、しているのか。

 ……少し羨ましいな。それだけのゲームを買えるというのは。バイトもしていない俺には金銭的に無理そうだ。

 

『だから、やらなそうなソフトの中に欲しいのがあればあげるよ』

「え、いいんですか?」

 羨ましく思っていた俺の耳に、津出さんからの気前のいい提案が届く。

『いいよいいよ。だってやらないからってしまっておくくらいなら、誰かやってくれるかもしれない人にあげた方が絶対良いしね』

「それならもらいます」

「それじゃ、住所送るから。いつでも来ていいよ……あ、でもできれば今日中にね」

「はい、わかりました」

「じゃ、また後で」

「了解です」

 電源を切り、携帯を置く。そしてすぐにメールが送られてきた。

 

 メールは住所だけが書いてある簡潔なものだった。しかしそれを見て内容を見て気付く。

「……分からない」

 ……住所の場所が何処なのかが分からない。

 とりあえずパソコンで調べて見るものの、何となくの方向しか分からない。学校からあまり離れていないのだが……分からない。

「……」

 まぁそもそもこの雪の中を歩いて行くなんていう行為、面倒すぎて嫌だし。とりあえず地図をプリントして親に見せて、車で送ってくれるかを聞いてみよう。

 駄目だった場合は……行くと言ってしまった以上、何とかして歩いて行くしかないだろう。今思えばゲームをくれるという事に浮かれて、だいぶ迂闊な発言だったなぁと思う。

「……さて」

 そうと決まれば親に直談判しに行こう。時間が惜しいからな。

 

 

平成25年12月29日13:25

「帰る時になったら連絡するし」

 交渉に成功し、母さんに地図を見せて送ってもらった俺は、一軒の家の前で車を降りた。表札には「津出」とあるので津出さんの家で間違いはないだろう。

「見た感じは普通の家だな……」

 車が遠ざかっていく音を聞きながらそんな事を思う。

 ……いや、吹田さんならともかく津出さんだし。だいたい家は親のものだからそこまでおかしなものであるはずがないか。

「……」

 とりあえず中に入ろう。外は寒いし、いつまでも家の前に立っていたら不審者だ。

 

 インターホンを押す。

 これがムロの家なら問答無用で入っていくんだがな……流石にムロ以外の家には問答無用で入ることはできない。

 そういうわけで玄関扉が開くのを大人しく待っていると、すぐに開いて津出さんがそこに居た。

「来たね。それじゃついて来て」

「はい。おじゃまします」

 津出さんの後について家の中に入り、辺りを見回す。

「……」

 とりあえず変なところは無い。いたって普通の家だ。

 

 そんな、普通ならあたりまえのことを思いながら後をついて行くと1つの扉の前で津出さんが止まる。

 そこを開けると……

「ここがゲーム部屋」

「うわ……」

 部屋の中には大きい方だと思われる一台のテレビ。それを置いている下の棚には数々の据置機が設置されている。そして壁一面に設置された棚の中には数多のゲームソフトのケースがキレイに収められていた。それでいて床には座布団と段ボールが4つある以外は、何も置かれていない所を見ると、整理整頓はしっかりされているようだ。

 まさしく「ゲーム部屋」と名乗るのにふさわしい部屋だろう。自称ゲーム部屋(汚部屋)とは大違いだ。これは個人的に好感が持てる。

「凄い量ですね……」

「これにしかお金をつぎ込んでないからね。まぁ、そのおかげで2年くらいに一度は整理しないとまったく収まらないんだけど」

「そうなんすか」

 そんなに早い感覚で棚が埋まるのか。しかしゲームが出る頻度を考えればそんなもんだろうか? 発売したゲームを全て把握しているわけも無いから分からないな。

「まぁ本当はダウンロード版を買えばもっと余裕を持てるんだけどね。でもやっぱり、出来る限りは現物が良いよ。買ったっていう実感が持てるしね」

「そういうもんですか」

「そうそう、そういうもん。で、これが今回整理したやつ」

 そう言って重量感のある段ボールを全て中央に引きずってくる。

 これはかなりの量があるな……棚の空きを見れば予想できたことではあるが。

 

「……これって今まではどうしてたんですか?」

「うん? あー今までは全部研究所に送ってたんだよ。あそこなら湿度や温度が管理されてる部屋があるからね」

「そうなんですか」

「あ、そっちの方も見る?」

「いえ、今回はここにある分だけで充分です」

「そっか、なら終わったら声かけて。ゲームしてるから」

「了解です」

 津出さんはテレビの所へ行き据置機を起動する。そしてディスクを挿入して座布団に座った。

 ゲームの音が聞こえる中、俺は分別作業へと移るのであった。

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 途中ゲームを見たりしたりしながら、分別し続けて4時間。貰う分のゲームをエコバッグにいれ、残りは元に戻し、ようやく作業が終わった。

 そして親に迎えに来てくれるようにメールを入れて、津出さんに声をかける。

「終わりました。津出さん」

「あ、終わった? それならー……どうしよっか。迎えとか来るの?」

「今メール送ったんでそのうち来ると思います」

「そっかー。それじゃあゲームをしてる時間はなさそうだね」

「そうですね」

「ならリビングで何か飲んでく? ずっとこの部屋に居たら喉乾くし、というか乾いたし」

 そういってゲームを止めると、津出さんは立ち上がる。

 確かにこの部屋は暖房も効いているし、喉が乾いていないと言えば嘘になる。とは言え迎えもそんなに遅くなるわけではないから普段なら断るところだ。

 しかし今回は津出さんもこう言っていることだし、お言葉に甘えさせてもらおう。

「それならそうさせてもらいます」

「ならリビングにいこっか」

「はい」

 荷物を持って、津出さんの後に続き暖かい部屋を出る。

 廊下は普通に寒かった。

 

 

平成25年12月29日17:35

「あー……生き返るねー」

「そうですねぇ」

 ここは暖房の効いたリビング。俺は津出さんの母親が淹れてくれたお茶を飲みながらゆったりしていた。

 ちなみに津出さんの両親は先ほど買い物に出かけたので今はいない。俺の親に関しては、まだ迎えに来ていないので恐らく手が離せないのだろう。これならゲームをしていても大丈夫だったなとは思うが、まぁ考えても意味のない事だろう。その時は分からなかったんだし。

 

 ……それよりも、気になると言えば気になる事がある。

「……」

 それは棚の中にあるトロフィーのようなものや、表彰状の数々である。内容までは流石に棚の扉や距離の問題で読めないが、結構な数だ。

 ……もしかして津出さんって凄い人なのだろうか? 吹田さんとは別の意味で。

「ん、どうかした?」

「いえ、何でも無いです」

「そう?」

「ええ」

 俺の行動が不自然だったのか、気にさせてしまう。気を付けないと。

 でもうーん……普段を見る限り変わったところは無いんだけどなぁ。吹田さんに付き合っている時点で変人の類だろうと最初の内は勘ぐっていたんだが、どうにもただのゲームが好きすぎる人にしか思えない。

 他の人と比べ、とりわけ凄いようなところも見たことないんだが……。

 

「……」

 こういうのは本人に聞くのが手っ取り早いんだろうなぁ……溜井ならしそうなことだ。でも聞くのもなんだか面倒臭い。でも気になる。でも人の経歴とかを興味本位で聞くのも何だかなぁ……どうしようか。

「ふーむ……」

「ん?」

「あ、いえ……」

「……?」

 気になるなぁ……もしかしたらこうも気になってしまうのも部活に毒されているのかもしれない。

 しかしわざわざ聞くというのも……しかしこうしている時間の方が無駄だろうか。今のうだうだしている状態の方が面倒な感じになっているのでは。

 

「いえ、何と言うかその……」

 とりあえず直接聞くのは憚れるので、辺りを見回すことで間接的に伝えてみる。

「うん? ……あ~、やっぱりその辺のやつが気になる?」

「まぁ……そうですね。何のやつなのかな、と」

 苦笑いを浮かべる津出さん。

 あまり聞かない方が良い事なんだろうか。でも、だったらリビングに飾っておくのもおかしいよな。なら照れとかだろうか。恥ずかしい過去みたいな。

「何のやつっていうか、主に学校の勉強関係のだから内容は色々なんだけどね。どれも小学校低学年とか幼稚園のやつだし、昔の話だよ」

「勉強関係っていうと国語とか算数みたいのですか」

「だね。ほら、暗算の大会とかそういうやつ」

「あー……なるほど」

 まぁ本人が話してくれてるし、聞いちゃいけないようなものでもなんだろう。気になる感情を晴らすためにも聞いておこう。

 

 ――ってアレ? 幼稚園で暗算とかの大会に出て表彰状とかを貰ってたのか? もしそうだとしたら……

「……津出さんって頭良いんですか? もしかして」

「頭が良いっていうかなんて言うか……そういえば話したこと無かったね」

「なにがですか……?」

「俺っていわゆる『天才』ってやつなんだよね」

「はぁ」

 まぁその歳でこれだけ貰ってれば確かに天才なんだろうとは思う。すくなくとも凡人には無理そうだし。

「と言っても完璧なやつじゃなくて限定的なものなんだけど」

「『限定的』、ですか?」

「そう、限定的。俺の場合は『高校3年生レベルまでの勉強に関しては天才』なんだよ。だからそれ以外は人並み」

「高校3年生レベル、ですか。何ていうか随分とまた……変わってますね」

「あははは……まぁそういう体質だから仕方ないよね」

「体質?」

「うん。『天才体質』とでも言えばいいのかな。頭でわかるっていうか、体が答えを分かるって感じ」

「……そうなんですか」

 前にあった不幸体質とかと同じ類、確か「特異体質」と言っていたな。

 ……もしかして世の中の天才も特異体質なんだろうか。もしそうだとしたら……いや、そうだったとしても特に今までと天才に対する認識は変わらないか。結局は「天才なんだなー」ってだけだ。

 

「だから頭が良いかっていうとどうなんだろうね~……平均くらいじゃないかな?」

「はあ」

「ま、だからこそ、勉強が退屈で退屈で仕方がなくってさ。その代わりに天才性の発揮されないゲームが楽しくて仕方がなかったんだよ」

「あぁ、そういう理由だったんですか」

「そうそう。特に最初の内はそんな感じだったね。今は純粋にゲームが楽しいんだけど」

「なるほど……」

 勉強なんてする意味も無かったからこそ、新鮮さを感じるゲームにのめり込んだのか。そう考えればこのゲーム好きも納得できる。

 ……ちょっとのめり込み過ぎな気がしないでもないが。成績に影響も出ないだろうし問題ないか。

 

「と、そんな感じでこの周りにあるのはゲームに出会う前のものだね。俺は特に興味もないし、どうでもいいんだけど」

「そういうもんですか」

「そういうもんだね」

 心からそう思っているというのが分かる様子で津出さんが言う。

 実際にそういう方面で努力している人間でもいれば怒りそうな台詞だが、勉強しなくても分かってしまう(・・・)人にとっては価値も意味も意義も無い物なのだろう。本人が興味無ければなおさらか。

 

 この話はこれで終わり、ゲームの話へと転換した。

 そして数分後に親から「着いた」というニュアンスのメールが来たので、俺は津出さんの家をあとにしたのであった。

 

 

 

第26話 ゲームは学業に含まれない 完。

 




行き過ぎた天才キャラは扱えないので制限付き。
しかも大して活躍させないという……ほとんど意味は無いと思っていいでしょう。
そんな彼の設定を。

津出(つで) 俊儀(しゅんぎ)(study genius→tsude syungi)
・性別……男性。
・誕生日……9月25日。
・血液型……B型。
・利き手……左利き。
・視力が悪いため眼鏡着用。
・身長……170少し上くらい?
・黒髪。ゲームに支障をきたさないために目にかからないぐらいに切ってる。
・家族……母・父・兄。
・所属……2年2組23番。調査解決部副部長。
・特技……暗算。
・好物……骨付き肉・ドライフルーツ・ガム(ハイパーハードハーブ)。
・好きな教科……静かな教科。
・嫌いな教科……声のうるさい教師が担当している教科。
・廉都とは小学校からの付き合いで、補佐役。

・天才。
 学校(おおよそ普通科高校3年まで)の範囲だけで天才体質。ほとんどの教科でTOPをとるが、鍛えているわけではないので体育は他の教科に比べて苦手。しかし、ある程度の練習を行えばインターハイ出場は狙える。
 勉強の必要も、集中する必要もないので授業中や宿題中はゲームのことをメインで考えて、それ以外は片手間にやっている。
 昔は天才少年としてそこそこ有名だったが、大分冷めていた。そんなときその天才性に興味を持った廉都に目を付けられてしまい、どこまで天才なのかを調べつくされる過程で与えられたゲームにドハマりしてしまう。
 
・ゲーマー。
 おこずかいなどは全てゲームにつぎ込む。


こんな感じで次回は未定。
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