扉の向こうの   作:招代

38 / 40
最近は少しづつ運とかが回復してきたかなと思い込んでいます。

ではストックを消費して27話。


第27話 新年の決意

平成25年12月31日23:45

「あー……やっぱ年越しそばはうめぇ。最高だな」

「そうだな」

 適当に賛成しつつ、毎年毎年馬鹿だなと思う。

 全く以て一体こいつにはいくつの「最高」があるのだろうか……考えて発言してないから考えるだけ無駄なんだけど。

 

 そんな事を思いながら暖房の効いた自室。年越しそばを食べながら、この時期特有のテレビ番組を見て俺たちは寛いでいる。

 ムロがいるのは例年通りの事なので気にしない。どうせ年が明けたら一緒に初詣に行かされるんだしな……あぁ面倒。

 

「にしても、今年ももう終わりだな」

 そばを食べ終え、つゆを飲みきったムロが器を置きながら言う。

「そうだな」

「来年の干支って何だっけ?」

「午年だな」

 そんなことも分からないのか……分からないんだよなぁ。

「午年……午年……馬……馬……?」

 すると何やら呟きながら考えている。

 どうせ馬鹿な事なんだろうなとは思いながらも、とりあえず経過を見守る。

 

「つまり馬肉だなっ!」

 暫くして、急に顔を上げたかと思えばそんなことを言い出した。しかし真面目に取り合うのも馬鹿らしい。適当に流そう。

「……そうだな」

「なぁなぁ、馬肉ってうまいのかな?」

「食べたことないから知らん」

「そっかー……どんな味なんだろうなっ?」

「調理法にもよるが肉の味だろ」

「なるほどっ! てーことは牛や豚や鳥と同じ感じだから美味いってことだな!?」

「そうかもなー」

 まぁ俺も食べたことは無いし、馬刺しとかをテレビで見るくらいではある。でもムロなら好き嫌いもないし不味いということは無いだろう。基本的にあいつは何でも美味しく食べられる。

 

「あー……馬肉、食べてみたいぜ」

 溜息をついてテーブルに突っ伏す。

 俺はテーブルの上のものが倒されないように、床へと避難させる。

「親に頼んでみればいいだろ」

「馬肉ってスーパーに売ってんのかな?」

「気にしたことがないから分からん」

「マジかー」

「マジだ」

 それにしても大晦日番組がついているというのに、それをそっちのけで馬肉の話をしているというのは、いかがなものなのだろうな。大晦日番組の側からすればたまったものではないだろう。

 ……ま、大晦日にそんな話をしている俺たちも俺たちか。

 

 

 と、そんなくだらない話を続けるうちに新しい年まで残り僅かとなった。テレビの中ではカウントダウンが始まる。

「お、カウントダウンが始まったぜ」

「そうだな」

「じゅー、きゅー、はーち、なーな……」

 馬鹿みたいな発音でムロがテレビと同時にカウントダウンを始めた。正確には「馬鹿みたい」ではなく「まぎれもない馬鹿」なのではあるが、それは些細なことだ。

「さーん、にぃー、いーち、ぜぇえええろぉおおおおお!!!」

「……うっせ」

「よっしゃぁ! 初詣に行くぜぇええええ!!」

「あー……はいはい。上着着てからなー」

「おう!」

 テンションは高いものの、言われた通りちゃんと上着を着る。

 それにしても近所迷惑な奴だ……大晦日とは言え、夜中にこんな大声を出して。俺の家が変な目で見られたらどうしてくれるんだか……ま、大晦日だし大丈夫だと思う事にしよう。

「よっしゃ着た! 行こうぜっ」

「賽銭忘れずにな」

「おう! すっかり忘れてたぜ!!」

「……そうか」

 そうして準備のできた俺たちは親に近所の神社に行くことを伝えてから、家を出た。

 

 

平成26年1月1日0:04

「あ~寒い……」

「神社まで走るか!?」

「蒸すだろ。そんなことしたら……はぁ」

 溜息が白くなる。その事が余計に寒さを実感させた。

 ……いやまぁ、普通に寒いけど。真夜中、それも冬の真夜中ともなれば寒いに決まってる。コートを着込もうが手袋をしようがマフラーを巻こうが寒いもんは寒い。指先は冷えるし冷たい夜風で鼻がツーンとする。まったくもって不快だ。

 

「……はぁ」

 こんな時間にわざわざ辛い思いをして初詣をするなんて馬鹿のやる事なんだろう……文句を言いながら付き合ってしまってる俺も含めて。ホント、我ながら馬鹿な事をしていると思う。だってムロがいなければ初詣にすら行って無いだろうし、悠々と寝正月を過ごせているに違いない。

 でも現状はこうなわけで……いや、こうでもしないとムロがウザいんだよ。物凄くしつこいんだよ。何でこいつはこんなに初詣に行きだがるのか……それもこんな時間に。俺からしてみれば迷惑で仕方がないんだが。

 思いつつ、隣で能天気に歩く馬鹿を見る。

「……」

「ん、どうかしか?」

「……いや、お前は相変わらず猿未満の馬鹿だな、と」

「まぁな! 年が変わったくらいじゃ俺は変わらないぜ!!」

「あ、そう」

 俺の視線に気づいたムロの問いかけに真実を返して、何故か嬉しそうなムロに呆れつつ視線を戻す。

 今のコイツに何を言ったところでノーダメージか。いわゆる無敵状態。相変わらずこいつの年明けの変なテンションは恐ろしいものだ。

 

 ムロに対する認識を再確認して神社へと向かう。

「はぁ……」

 夜空を見上げれば雲一つなく、幾つもの星が光っている。普段なら綺麗だと感じるその夜空が今はまるでムロの脳内のように感じられ、無意識に溜息が零れていた。

 

 

平成26年1月1日0:06

「よっしゃ着いたー!!」

「……はぁ」

 寒空の下を歩き続けてようやく――と言っても3分くらいだが――目的の神社へとたどり着いた。

 その神社は特に何があるわけでも無い。狭いし古いし汚いし、一年通して出店も出ないし、神主的な人がいるのかも怪しい。他の人がお参りしている所も見たことがない。あるのはホントに神社としての最低限、小さな鳥居と賽銭箱と本体のみ。あと灯りが点いている。

 それ以外は鈴なんて見当たらないし、手水舎もない。縄……は、よく見るとあったような形跡もあるが、今は無い。無いものだらけである。

 

 とまぁ、兎にも角にも神様なんて祭る気の無い廃れた神社である。仮に神が存在していたとしても、ここで拝んだところで御利益は無いだろう。

「さっそく参ろうぜっ!!」

「あーはいはい」

 うるさく催促してくるムロの後を呆れながらついて行く。

 というか「参ろうぜ」ってなんだよ。恐らくお参りをするという事なんだろうが、時と場合と場所によっては何処かに行くみたいに聞こえるぞ。

 

 そんな事を思いつつも特に訂正はせずに賽銭箱の前へ。しかしムロは中々賽銭を淹れない。

「……」

「どうした。十円程度じゃジュースは買えないぞ」

「いやいや、流石の俺もお賽銭でお菓子は買わねぇよ!?」

「そうか。で、どうした?」

「いやー……やり方忘れちまった」

 照れたように頭を掻きながらこちらを向く。

 ……まぁ、想定内だ。何年かに一回はある。

「賽銭入れた後に二礼二拍手一礼な」

「二礼二拍手一礼……」

「2回頭を下げる。2回手を叩く。手を合わせたまま願い事をする。1回頭を下げる、だ」

「あーそうそう! それだっ!!」

 いつも以上のオーバーリアクションで理解し、ムロは再び賽銭に向き直る。そして十円玉を取り出した。

「っしゃ! いっくぜぇええええ!!」

 掛け声とともに思いっきり賽銭箱に十円玉を投げつける。賽銭箱の中で十円が跳ね回る音がした。

 ……これ、罰当たりじゃないだろうか。別に神なんていないだろうから良いけどさ。そんな事を思いながら、俺は自分の分を普通に投げ入れる。

「んでっ……っと、2回だな!」

「ああ」

 俺に確認を取り、壊れた機械の如く90°の礼を勢いよく2回くりだす。その後に境内に響き渡る程の拍手を2回。そして目を瞑り願い事を何やらブツブツ言っているが、何を言っているのかは分からない。

 ……いや、別にムロが馬鹿すぎて呟いている言葉が理解でないわけではない。ましてや俺の耳に馬鹿の言葉が聞こえなくなるようなフィルターが張られているわけでもない。単に聞こえないだけだ。

 

「……」

 馬鹿な事を考えていないで俺も願っとこう。

 えーっと……

「……」

 ……考えてなかったから別にいいや。今から考えるのも面倒だし。

 俺は何も願わずに一礼して隣を見る。どうやら隣も終わったようだ……何を願ったかは気にすることでもないだろう。どうせ「何かいいことありますように」とかだろう。

「終わったか?」

「バッチシだ!」

「なら帰るぞ。寒い……」

「おうっ!」

 ムロを引き連れて神社を後にする。その途中で振り返りお参りしたばかりのオンボロ神社を見るが、

「……」

「うん?」

「いや……何でも無い」

 やっぱり御利益はなさそうだ。でも人もいないし、うっとおしくないから俺にはこのくらいが丁度良いのかもしれない。神様信じているわけでもないしな。御利益とかどーでもいいし。

 結論を付けて帰路につく。早く家に帰って温まりたかった。

 

 

平成26年1月1日0:16

「あ~……」

 自室に戻りダラけながら、俺は現在1人でテレビを見ている。ムロは持て余したテンションを発散するためにその辺を走りに行っているのでいない。

 そんな状況で先ほどの事を振り返って、ふと思う。「今更だが神仏とかその辺っていないよな……?」と。

「……ううん」

 しかし、いたとすれば世界はもう少し平和だろうし、ゴミクズも減っているだろう。仮に他者に干渉しないタイプなのだとしても、そうだとするなら存在を考える意味が無い。俺にとって意味が無いんだから。

 ……いや、そもそもこれに関して考えることが無駄か。今まで妖怪やら何やらがいる事に気付かない状態で過ごしていた日々を普通に日常、及び現実として認識してたわけで。だったら神仏がいて今の状態という事も考えられる。既に影響を与えて今の有り様なのかもしれない。

 ならばやはり無駄なのだろう。「いるとすれば~」なんて、意味が無いのだ。神だろうが仏だろうが、スタンスは変わらない。存在を認知してしまったら受け止める。それだけだ……と言うか前に似たようなことを考えたことがあるような気がするんだが。

「……はぁ」

 溜息をつきながらベットへと寝そべる。

 どうにもこうにも駄目だな。ついつい同じ思考をしてしまう。こういう時は発想の転換が必要だ。コペルニクスなんちゃら~のように。

 

「……」

 こうは考えられないだろうか。非現実に対して同じ思考を何回もしてしまうのは、俺の思考回路が一般常識という枠にしっかりと存在しているからではないだろうか? だからついつい非常識(それら)に反応してしまうのだ。

 そう考えればこの状態と言うのは好ましいものだと思う。どのような状況下でも毒されずに日常や現実を忘れない。それこそが俺にとって、もっとも大事な事だったんではないだろうか。

 そう。例え面倒臭かろうと、変人の仲間入りはごめんだ。その方が面倒だし、何よりも常識人でありたい。

「……そうだな」

 それが一番の優先事項であったはずだ。どうして今まで気づけなかったのか……もしかしたら現実の非現実に気を取られて、目先の面倒回避を優先しすぎていたのかもしれないな。いや、そうだったんだろう。間違いはない。

 ならば気付いた以上は考えてしまうことについて悩むのは止めだ。異常に対して反応をすることは良いこと。それだけ自分はまっとうな人間なのだ。

 

 そんな新年の決意を新たに、再びだらけ始める。まだまだ正月は長いし、そろそろ普段のテンションに戻ったムロが帰ってくるころだろう。

 ……なんて、思っていたところに玄関の開く音と階段を駆け上がる音が聞こえてきた。そして次の瞬間には部屋の扉が勢いよく開く。

「帰ったぞ!!」

「……とりあえずシャワー浴びてこい」

「おうっ」

 若干テンションの戻ったムロは返事をしてから踵を返し、階段を勢いよく下りていった。

「……さて」

 あいつが戻ってくるまでの間につまむものでも補充しておくか。だいたい8分くらいだろう。それくらいあれば十分だ。

 ベッドから上半身を起こして、重い腰を上げ立ち上がる。そのまま開けっ放しのドアへと向かい、廊下へ出て扉を閉めた。

「……寒い」

 これは早くやることをやってしまった方がよさそうだな……。

 

 

 

第27話 新年の決意 完。

 




ストックを使い切ったらどうするかはとりあえず考えないことにしました。

今回の紹介はムロで。
まぁ、あまり設定とか考えてないんですけど。

室井(むろい) 群太(ぐんた)(long time→ロングタイム→ムロイグンタ)
・名前はモリツネと長いこと一緒にいるという意味でロングタイム。かなり適当。
・性別……男性。
・誕生日……9月18日。
・血液型……O型。
・利き手……右。
・身長……そこそこ高い方。
・所属……1年1組32番。男子バスケットボール部員。
・特技……運動。
・好物……肉、野菜、魚。
・趣味……走ること。
・好きな教科……体育(運動のみ)。
・苦手な教科……座学。
・成績は平均37くらい。結構な確率で2個は赤点有。
・あだ名は「ムロ」。

・モリツネの幼馴染。
 家が隣同士で仲が良く、幼少の時から頻繁に遊んでいる。クラスもずっと一緒。
 とても理解のある関係だが、そのためにモリツネがムロの面倒見役で一緒のクラスに入れさせられる……らしい。

 
 こんな感じでした。
 では、またそのうち投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。