大魔王ゾーマ「バーバラを何とかしてやれ、ルビス」   作:Amur

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メダル王? もっと他に封印すべき場所があっただろう

 

 【幸せの国】

 

 魔王ムドー亡き後、世界を魔族の世にせんと企んだ魔王ジャミラスの居城。

 先程までこの地にて凄まじい激戦が繰り広げられていた。

 

「も、もしやお前たちはムドーを倒したという……」

 

 ジャミラスは勇者一行と死闘を繰り広げたが、力及ばず最期を迎えようとしていた。

 

「そういうことだぜ! 俺たちがムドーを倒した勇者一行だ!」

 

 消耗しているはずだが、尚もハッサンは堂々と宣伝する。

 

「や、やはりそうか…………ムーアさまあっ! ぐふっ!」

 

 

「よっしゃー! 二体目の魔王撃破だ!」

 

 ムドーは諸事情により居城が崩壊し、本調子ではなかったので思いがけず余裕を持って倒すことが出来た。

 しかし、そのことで警戒を強めたジャミラスは軍備を増強していたため、幸せの国での決戦は熾烈なものとなった。

 

「最後にジャミラスが誰かを呼んでませんでしたか? まさかまだ魔王がいるのでしょうか」

 

 アモスが不安げに仲間たちに聞く。

 

「わからないわね。グランマーズおばあちゃんに占ってもらいましょうか?」

 

 傾国の美女という表現が相応しい、腰まで届く長い金髪の女性が提案する。

 幼少時は夢の世界でラスボスをやっていた元魔物使い――ミレーユだ。

 

「それがよいでしょう。あの方は私たちに見えないものが見えているようです」

 

 二つの大きな突起のついた帽子を被り、眼鏡をかけた少年が同意する。

 ゲント族としてパーティの回復の要を務める癒しの杖――チャモロだ。

 

 一行は今後の動き方を検討するために、占い師グランマーズの館に行くのだった。

 

 

ーーーー

 

 ルビスの城――

 

 

 ジャラジャラ……

 

「おや? それはお金ですか? ゾーマ」

 

 珍しくゾーマがコインらしきものを集めていたので、気になって尋ねるルビス。

 

「いや、これは『小さなメダル』だ」

 

「たしかメダル王が集めているものですね」

 

「うむ。景品と交換するため40枚ほど集めた」

 

「もうツッコみませんよ……」

 

「ではメダル王の城に行ってくる」

 

「私も行きますよ。あなたとスラリンだけでは明らかに騒動が起こるじゃないですか」

 

 

ーーーー

 

【メダル王の城】

 

 その名の通り、世界中に散らばる小さなメダルが何よりも好きで、メダルを持ってくれば様々な宝物と交換してくれる変わった王様が住む城だ。

 

 

「ここはメダル王の城。王がお待ちかね……ファッ!?」

 

 勇者一行が来るものと考えていた兵士は、明らかに普通じゃない来訪者に頭が真っ白になっていた。

 

「驚かせてしまい、申し訳ありません」

 

「!? ル……ルビス様……!」

 

「人相の悪い連れですが、暴れはしませんのでご心配なく」

 

「は……ははっ! 貴方様がそうおっしゃるのであれば。メダル王の城へようこそお客人」

 

「うむ」

 

「ピキー(お邪魔します)」

 

 

 

「そなたがメダル王か。わしはゾーマ。今日はそなたの持つ品で欲しいものがあって来た」

 

「え……ゾ、ゾーマ……?……え?え?」

 

 当然ながらメダル王は大魔王ゾーマの名を知っている。

 それゆえにあまりの事態に思考が付いてこなかった。

 

 いちいちフォローするのが面倒になったのかルビスは何も言ってくれないようだ。

 

「これが集めたメダルだ」

 

 ゾーマは40枚の小さなメダルを渡した。

 

「――あ……よ、40枚であれば、てんばつのつえ、ちからのルビー、プラチナソード、きせきのつるぎと交換できる……いえ、できますが……?」

 

「ちからのルビーときせきのつるぎだけでよい。残りは次に来る連中に、わしからのプレゼントとでも言って渡しておけ」

 

「え!? そ、そういうわけには……」

 

 ようやくルビスの存在に気付いたのか、助けてくれとチラチラ目で訴えるが精霊は気が付かないふりをしている。

 

「よし。スラリンよ、装備してみよ」

 

「ピキー!(わかりました! ゾーマ様)」

 

 

 ――そういえば、ゾーマがきせきのつるぎを使えば、やはりダメージを食らうんだろうか? ナンバリングだとアンデッドですらホイミで回復するのに、ゾーマだけダメージになる。おそらくそれが『すべてを滅ぼす者』たる所以か。

 

 

 スラリンはきせきのつるぎとちからのルビーを装備した。

 

「ピキー!(バッチリです! ありがとうございます、ゾーマ様!)」

 

「よし、問題ないな」

 

「終わりましたか」

 

 先程まで他人の振りをしていたが、用事が済んだと察してルビスが寄ってきた。

 

「うむ。帰るぞ、ルビス」

 

「はい。メダル王、唐突な訪問で申し訳ありませんでした。これで失礼いたします」

 

「あ、はい、ルビス様……」

 

「そうだ、メダル王よ。きせきのつるぎは1本しかないのか?」

 

「ひゅい!? ――も、申し訳ありません! きせきのつるぎ以上の品はそれぞれ1つしかないのです……!」

 

「そうか。ならばよい」

 

 

 ――ふーむ、やはりそうか。まあ想定内だが、これで勇者パーティの冒険の難易度が上がってしまった。どこかで補填しないとな。さて、どうするか? オレが直接、グラコスあたりを襲撃するのは簡単だが、それはそれで一行の成長を阻害するしな。

 

 

「いったいどういうことなんだ……?」

 

 最後まで現実に追い付いていない(夢の世界だが)メダル王を放置して、ゾーマ一行はルビスの城に帰還するのだった。

 

 

ーーーー

 

 

 数日後――

 

「我が名はゾーマ。今日はそなたらに修行をつけてやるために来た」

 

 伝説の大魔王が当代の勇者一行の前に現れていた。

 




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ゾ「ノリノリだな、ルビス」


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