天地神明の真祖龍   作:緋月 弥生

15 / 55
第10話 すれ違い

 ……う、うにゅ。

 もの凄く眠たいのを我慢して目を開けると、私の視界に焦土が飛び込んできた。

 あれ?

 私ってば森の中にいたよね?

 でも地面は真っ黒でクレーターだらけだし、大木も倒れたり粉々になって煙を上げてるし。

 あ、でも湖はちゃんとある。

 ということは確かに此処はいつもの湖畔ってことになるよね。

 ううむ、おかしなことだらけだよ。

 

 何より、ボレアスとバルカンが近くにいない。

 いつもは私にくっついて離れないのに、今日は何故か私から少し離れた場所でお互いに身を寄せ合って寝てる。

 そのまましばらくじーっと弟達の寝顔を眺めてたら、私の視線に気づいたのかボレアス達が目を覚ました。そしてビクリと体を震わせると、2人揃って私からちょっと離れちゃった。

 え、どうして警戒心マックスな目で私を見るの?

 まさか反抗期とか?

 独り立ちしてくれるのは嬉しいけど、こんなに急だと私が寂しくなっちゃうじゃん。

 この複雑なお姉ちゃん心はどうしたらいいのさ。

 

 えーっと、落ち着け。

 状況を整理しよう。

 

 まず、どうして私達がいる森がまとめて吹き飛んでるの?

 確か昨日は湖から大蛇が出てこなくなったから、代わりに森の中にいた恐竜モドキを獲物にしたんだっけ。

 それからボレアス達と一緒に恐竜モドキを食べて、その後は普通に寝た。

 別に何もおかしなところは……いや、待てよ。

 

 そうだ、人間!!

 

 私ってば夜中に人間の襲撃を察知して、その迎撃をしてたんだ。

 だけど意外と戦車の一斉砲撃の威力が高くて苦戦してたら、騒ぎに気づいたボレアスとバルカンが来ちゃって……。

 不鮮明だった記憶が一気に蘇る。

 炎に包まれる森に、自然を蹂躙しながら進む鋼鉄の兵器群と人間。

 

 ――っ!

 

 一番大切なことを思い出した私は翼を広げて、少し離れた場所でチラチラと私の様子を伺ってるボレアスの元へと滑空する。

 うわ、体がめっちゃ軽い。

 まるで鎖から解き放たれたみたいに、今まで以上に体が動かせる。しかも体の中を循環する龍脈の量も上昇してるし、空っぽになってるバッテリーに雷が溜まるのも異常に早いね。

 陳腐な表現だけど、体の奥底から力が湧き上がってくる。

 いや、ホントに何これ?

 

 いや、私の事なんて後回しだ。

 今一番大切なのはボレアスなんだから。

 

 いきなり急接近した私からボレアスが逃げようとするけど、私がボレアスの尻尾を咥える方が早い。

 まだお姉ちゃんの方が体も大きいし、身体能力も上回ってるんだから。

 祖龍ミラルーツからは逃げられない。

 これテストに出るから。

 

 馬鹿なことを考えつつもボレアスを引き寄せ、可愛い弟の体に傷がないかを確認する。

 ボレアスが砲撃を受けたのは背中……良かった、特に傷はなさそう。

 私と違って火属性が弱点じゃないから大丈夫だとは思ってたけど、ゲームの大砲は強力な武器だからね。

 最強格のミラボレアスでも、怪我をする可能性は十分にあった。

 何よりボレアスはまだ産まれて数ヶ月だし。

 

 あー、心配した。

 もしもボレアスが怪我してたら、いくら人間が相手でも本気で何発か雷を落としてたかもね。

 ……そう言えば、人間達はいつ帰ったの?

 うーん……ボレアスが砲撃を受けた後の記憶がないんだよねー。思い出そうとしても、何かが邪魔をして鈍い頭痛が走る。

 ぐぬぬぬ、モヤモヤするなぁ。

 今まで物忘れとかしたことなかったから、私は記憶力が良い方だと思ってたのに。

 ちょっとショックかも。

 

 ともあれ、弟達が無事ならそれで良し。

 念のためにボレアスの背中を軽く舐めて、次にバルカンも捕まえて引き寄せる。

 よしよし、バルカンも怪我ないね。

 私が気を失った後に怪我をした可能性もあったから心配だったけど、バルカンも問題なしっと。

 

 辺りが焦土をなってるのを見るに、やっぱりあの後ボレアスとバルカンが人間を追い払ったのかな?

 それにしてもやり過ぎでしょう。

 湖は沸騰してるし、辺り一面が焼け野とか。

 ……流石に全滅はしてないと思うけど、確実にかなりの数の死人は出ちゃってるよね。

 私が翼で吹き飛ばした人達の中にも、落ちた時に打ちどころが悪くて亡くなった人がいるかもしれない。

 黙祷は捧げておこう。

 殺した側に祈られても、迷惑なだけかもしれないけどさ。

 

 それとボレアスとバルカンも気をつけてよ。

 私が攻撃されたことに怒ってくれたのは嬉しかったけど、次はいきなり人間にブレスをぶっ放したりしないでね。

 人間っていうのは少数だと弱いけど、団結したら凄い強いんだから。

 次からはなるべく不干渉を徹底すること!

 

「「………………」」

 

 ど、どうして私をそんな目で見るの?

 私は何も間違ったことは言ってないのに、ボレアスとバルカンから「お前が言うな」って意思が凄い伝わってくる。

 さらに私に対する恐怖心まで。

 お姉ちゃんは怖くないよー? 優しいよー?

 だからほら、いつもみたいに甘えても良いんだよ?

 

 全力でブラコンアピールして、弟達の首筋を優しく舐めたりすること数分。

 ようやく弟達はいつもの調子を取り戻して、ゆっくりと私に身を寄せてきた。

 タマゴから孵った直後の時みたいに恐る恐るくっついてくるバルカンと、尻尾でペチペチ顔を叩いてくるボレアス。

 大きくなっても甘え方は変わらんね、あなた達。

 まぁ、弟離れ出来てなかったのはお姉ちゃんの方だったけど。

 これからも寂しがり屋な私と一緒にいてね。

 

 さて、一段落ついたところでこれからの方針だね。

 まず今から引っ越します。

 軍隊のおじさんが「『新種』を捕獲しろ」って言ってたから、彼らの狙いは私達ってことになる。

 これからも狙われる可能性も考慮したら、すぐにでもこの場所から移動するべきでしょうね。

 そして移動先はもちろん、絶対に人がいないところ。

 何年か隠れてたら、人間達も私らのことを忘れてくれるでしょう。

 ……軍隊相手にやらかしたから、かなり時間はかかると思うけど。

 もう1つこれからやりたい事があるけど、それは引っ越しが終わってからにしようかな。

 

 そうと決まれば、突然だけど引っ越そうか。

 いくよー、ボレアス、バルカン。

 

 弟達から少し離れてから、私は大きく翼を広げて一気に飛翔する。

 うん、やっぱり体が軽いねー。

 さっきはボレアス達の安否を確認することを優先してスルーしたけど、どうして急に祖龍のスペックが上がったんだろ。

 それも怒りで覚醒するバトル漫画の主人公みたいに突然に。

 引っ越してからやる事に、今のスペックの再確認も含まないとだね。

 ……祖龍の力は本当に凄いから、ちょっと加減を間違えるだけで大惨事になるし。

 うぅ、胃が痛い。

 女子高生にこんな凄い力をポンと渡されても困るんだよ。

 

 閑話休題。

 

 さてと、どこに行こうか。

 お世話になった湖の上を通過して、かなりの速度で東に向かって飛び続けること数時間。

 弟達と空中で遊んでたら、遠くにめっちゃ大きい山が見えた。

 うわ、凄いねあの山。

 私ってば雲の高さにいるのに、それでも頂上が見えないくらいデカい。

 富士山とか比べ物にならないね、アレ。

 

 あの高さと険しさなら、山頂に人間が近づくのは無理じゃない?

 あ、でも、戦車があるなら飛行機もあるかも。

 古代文明の科学力ならあの山を攻略することも出来そうだし、万全を期すなら何か対策が必要だよね。

 もう襲撃されるのはゴメンだし。

 取り敢えず、ちょっと見てみようか。

 

 喉を鳴らして後ろを飛ぶボレアスとバルカンに合図を出し、山頂に向かって一気に急上昇。

 気分はMHXXの看板モンスターであるバルファルク。

 話題になったあのムービーさながらに全速力で上昇して、凄い高さの山頂まで一気に辿り着く。

 山頂には私達3人でも活動できるくらいの広場があった。

 広場に着地して辺りを見渡すと、雲海を見下ろすっていう絶景が。

 

 よし、レーダー起動。

 私を中心に電波がドーム状に拡散する。

 今度のレーダーは索敵範囲が広がっただけではなく、上空もしっかりと把握できるようにした。

 私は同じミスはしないのだよ。

 

 と、意外と生体反応ある。

 流石はモンハン世界。

 この険しい山に生息できる生物も一定数いるんだね。

 モンスターはいないけど、地球上の生物よりもこの世界の生物の方が強いのかも。

 大蛇とかティラノサウルスとか巨大狼とか。

 ミラ種から見たら格下だけど、あんなのが地球に現れたらかなりヤバイよね。

 祖龍視点だと、餌に困らなくて済むなーくらいの感想しか出てこないけど。

 相変わらずのチートスペック乙。

 

 ボレアスとバルカンもちゃんと広場に着地したのを確認してから、私は龍脈干渉を開始する。

 ……な、ナニコレ?

 この周囲だけじゃなくて、世界中の龍脈がめっちゃ乱れてる。川で例えるなら大氾濫ってレベルで乱れてる。

 言葉では表現することすら出来ない莫大な量の龍脈が、大気の流れや地脈に沿って世界中を循環してる。

 

 ……見なかったことにしよう。

 

 どっちにせよ、私には何も出来ないし。

 いくら祖龍のスペックがデタラメでも、この星を覆うほどの量の龍脈に干渉して制御するとか無理ゲー。

 初めてモンハンプレイする初心者に、G級のイビルジョーを裸で倒せっていうくらい無理ゲー。

 流石の私でも出来ることと出来ないことがあるのだよ。

 

 なんて考えながら、龍脈を操作してこの山頂を囲むように雷雲を発生させる。

 そのまま周囲に展開させ続けて、常時落雷が発生するようにしておく。

 こうしておけば、どれだけ凄い飛行機でもここには近づけないでしょう。無理やり侵入したら落雷で墜落するし。

 

 ふっふっふっ、私に辿り着きたければこの山を踏破するが良い!

 仮にこの大自然を乗り越えたのであれば、私達が直々に相手をしてやろう!

 自分でも驚くほど完璧に雷雲を発生させられた私は、上機嫌でラスボスのようなセリフを言ってみる。

 ……いや、ホントに人来たら逃げるけどね。

 

 ――さて、それじゃあ始めようか。

 

 全ての準備が終わったところで、私はボレアスとバルカンに向き直る。

 これから私達がやることは2つ。

 まず1つ目は、弟達に人間の言葉を教えようと思う。

 私があの軍隊の会話を理解出来たから、日本語を教えればボレアス達も人間と意思疎通が可能になるかもしれない。

 こっちが話すつもりなくても、人の言葉が分かれば便利ってのもある。

 ハンターと戦う時とかかなり有利になるでしょうね。

 相手の作戦が筒抜けになる訳だから。

 

 そして2つ目が、擬人化能力の習得。

 モンスターハンターをそれなりにプレイしている人なら、白いドレスの少女だとか赤衣の男とかを知ってると思う。

 主に古龍種や禁忌などの高難度クエストの依頼者として名前が出てくるこれらのキャラは、実はミラルーツやミラバルカンが人に化けた姿じゃないかって説がある。

 ネットではかなり有名だよね。

 

 つまり、かなりの高確率で私達は擬人化できる筈だ。

 やり方とかさっぱり分からないけど、紅雷だって感覚で扱えるようになったし。

 可能性はゼロじゃないでしょう。

 そして仮に擬人化を習得出来たら、堂々と人里に入れる。

 モンハンの古代文明を、この目でゆっくりと見られるのは大きい。

 ロマン的な意味でも、敵戦力の偵察って意味でもね。

 要するに、言語理解と擬人化能力のメリットは計り知れない。

 習得しないなんて選択肢はないでしょう。

 

 よし、じゃあ今日から姉弟仲良くトレーニングしようか!

 何故か不安そうな表情を浮かべるボレアスとバルカンに向けて、私は満面の笑みを浮かべる。

 安心しなさい、私はこれでも勉強が出来るのよ。

 幼い頃から財閥の令嬢として父親に世界各国に連れ回され、その過程で6つの言語を習得してきた私の授業を受ければ、偏差値10でも日本語が話せるようになるからね☆

 

 ――ミラルーツ視点では、美人のお姉ちゃんによる優しい個人授業。

 ――ボレアスとバルカン視点では、フィールド1つを消しとばした、怒らせると怖い 姉による、スパルタ教育が始まった。

大切なものは――

  • 更新速度ではない、質だッ!
  • 質ではない、更新速度だッ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。