天地神明の真祖龍   作:緋月 弥生

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第1話 初陣

 さて、これからどうしよう?

 私ってばミラルーツ(生後1日)なんだけど、特にこれといってやることはないんだよねー。

 そりゃあモンスターですし。

 人間と違って学校に行く必要も、勉強する必要も、働く必要もない。あれ? 意外と大自然で生きるって良いのかもしれない。

 弱肉強食の世界は厳しいかもしれないけど、ミラルーツである私は間違いなく生態系の頂点。幼体である今は慢心はダメだけど、成体になったら怖いものなしでしょ。

 ……流石にそれは言い過ぎた。

 流石に他の『禁忌モンスター』と戦うのはちょっと……いや、かなり怖い。

 

 

 それはともかく。

 最初はミラルーツの体に慣れるところから始めるかー。

 特に人間にはない翼とか尻尾はちゃんと動かせるか試さないと、いざという時に困るかもしれないからね。

 まずは尻尾から動かしてみよう。

 意識を集中して、尻尾をブンブン振り回す。

 お、おー、動くね。

 ゲームでもミラルーツの尻尾ってめっちゃ硬かったし、大人になってからこの尻尾でぶん殴れば飛竜種すら一撃で倒せるかも。

 格下のクシャルダオラが尾の一撃で飛竜種を倒せるって何かで見た気がするから、ミラルーツにも出来るでしょう。

 多分ね。

 

 両手……というか前足はどうかな。

 かなり鋭い鉤爪がついてるから、これも十分に武器として使えそうだよねー。

 子供のミラルーツの引っ掻き攻撃って、どのくらいの威力があるんだろう。……ちょっとその辺の木に攻撃してみようか。

 一番近くにある木に向かって、私は全力で鉤爪を振り下ろす。

 

 ――スパッ!

 

 そんな小気味良い音と共に、大木に深々と爪痕がついた。

 ……何これやばくない?

 え、だって、私が的にしたこの木ってかなり立派だよね? 太さだって直径2メートルくらいあってまさに大樹って感じなのに、まるで豆腐でも引っ掻いたみたいな感触だったんだけど。

 これ、もし人間相手にやったら……。

 よし、あんまり考えないようにしよう。

 さっさと次行こう。

 

 次は移動速度。

 スピードは大事だから、ちゃんと確認しとかないとね。

 まあ生まれたての時に川岸まで全力ダッシュしてたから、動くことそのものには問題ないと思う。

 あの時は二足歩行で走ったから、今回は四足歩行モードの時の移動能力を確認をしよう。

 取り敢えず、前みたいに割れたタマゴのところから川まで一気に駆け抜ける。

 よーい、ドン!

 

 うおおお!

 速い!

 私は今、風になってるぞー!

 

 蛇のように体をくねらせながら、4本の足の鉤爪でしっかりと地面を掴んで前へと進む。

 速度は明らかに人間の限界を超えてるんじゃないかな。

 川に落ちるギリギリのところで、前足の爪を強く地面に引っ掛けてブレーキをかける。

 よしよし、走るのも止まるのも問題なしっと。

 軽く100メートルは走ったのに全く疲れないし、祖龍のスペックって本当に凄いね。

 私、人間だった時はちょっと運動するとすぐに息が上がるもやしっ子だったから、思い切り体を動かせるのは感動だよー。

 せっかくなので、タマゴの場所に戻る時もダッシュ。

 移動については特に問題ないでしょう。十分に及第点だ。

 

 じゃあ最後はメインの翼の動作確認と、空を飛べるかの確認を……ん?

 ミラルーツが持つ野生の本能のようなものが何かを感知した。

 ……これ、もしかして、敵?

 前方。距離10メートル。数は1匹。

 茂みの奥に、何かいる。

 

 ……どうやら相手はやる気みたいだね。

 私としては逃げても良いと思うけど、祖龍の本能のようなものが敵を前にして逃げるという選択を嫌悪してる。

 それはきっと、ミラルーツの王としてのプライドみたいなものでしょう。本当に危険ならそれでも私は逃げるけど、気配からはそこまでの脅威を感じない。

 よし!

 弱肉強食の自然界で生きていく以上、敵との戦いは絶対に避けられないものだからね。それなら早いうちに経験しとこう。

 負けそうならその時こそ逃げれば良い。

 

 移動に長けた四足歩行モードを維持し、私は臨戦態勢に。

 “モンハン”をやり込んだ私の頭脳が、ミラルーツの攻撃パターンを知っている。モンスターの始祖である祖龍の体と本能が、外敵との戦い方を知っている。

 大丈夫、問題ない。

 慌てず冷静に、私を狙う敵を排除すればいい。

 

 向こうも私に気づかれたことを理解したのか、隠れるのをやめて茂みの中から姿を表す。

 現れたのは、地球じゃあり得ないサイズの巨大な狼だった。

 

 えぇ……。

 流石にデカ過ぎでしょ。

 体高は2メートル以上あるよね? 体長は約4メートルくらいかな。あー、でも、モンスターじゃないみたい。

 地球のハイイロオオカミを倍以上の大きさにしたらこうなるかも。

 

「――――……ッ」

 

 狼が低い唸り声を出す。

 それが威嚇なんだと私が気づいたその瞬間に、狼が地を蹴って一気に私との距離を詰めてきた。

 速い!

 10メートルはあった距離が一瞬で消える。そして目の前には大きく開かれた狼のアギトが広がっていた。

 

 回避は間に合わない。

 それなら……!

 後ろに少し下がりながら二足歩行になり、私と狼の間に尻尾を差し込んだ。狼のアギトが閉じ、牙が私の尻尾に食い込んで……。

 

「――ッ!?」

 

 狼が困惑する。

 私も困惑する。

 

 全く痛くない。

 確かに私の尻尾は狼にがっつり噛まれてるんだけど、その牙は尻尾に弾かれて全く刺さってなかった。

 いやー、うん、確かにね?

 ゲームでもミラルーツの尻尾ってめっちゃ硬かったし、だからこそ私も尻尾を盾にしたんだけどさ。

 まさかノーダメージとは思わなかった。

 先っちょ喰い千切られるくらいの覚悟はしてたんだけどなー。

 

「――――ッ!」

 

 先に次の行動に移ったのはまた狼の方だった。

 私の尻尾をどれだけ噛んでも傷は与えられないと理解した狼は無意味な行動をキャンセルすると、今度は私の首を狙って噛み付いてくる。

 ……っ、調子に乗らないでよ!

 そう簡単に何度も攻撃を受けてあげるほど私は優しくはないし、戦いを舐めてもいないんだから。

 

 左に飛んで噛みつきを避ける。

 狼の牙が虚しく何もない空間を噛み砕くガチンッという音を聞きながら、私はさっきも大活躍した尻尾で思い切り相手の頭を殴りつけた。

 尾の一撃は見事に鼻頭を捉え、狼は血を流しながら地面に叩きつけられる。それが決定打になった。

 頭部に衝撃を受けたことですぐに立ち上がれなくなった狼の首元に今度は私が噛みつき、私の牙はあっさりと狼の肉と骨を噛み砕く。

 骨が折れる嫌な音が、私の初陣の勝利を告げた。

 

 

 

 

 

〜Now loading〜

 

 

 

 

 

 初めての戦闘を終えた私は、血を流して動かなくなった狼を見下ろして息を吐く。

 ふぅ……何とか勝った。

 でも自己評価は間違いなく30点。欠点だよ。

 私が幼体でも高い戦闘能力を持つミラルーツだったから勝てたってだけで、そうじゃなかったら負けてた。

 特に初手が問題だなー……。

 狼の最初の噛みつきを避けられなかったのが一番ダメなポイント。私の速度なら避けれたのに、反応が遅れたせいで防御するしかなかったんだよね。

 

 それにしても、私の防御力ってどのくらいなのよ?

 一言でミラルーツって言っても、シリーズによって能力や行動パターンが変わるからなぁ。

 まぁ、今の私はゲームじゃなくて“現実の”ミラルーツだから、ゲームの設定がどのくらい参考になるのかも怪しいけど。

 私の予想だと、尻尾なら切れ味が青色くらいなら弾けるんじゃない?

 流石に白や紫は無理でしょ。

 まだ子供だし、まだそこまで硬くないと思う。

 

 まぁ、今どれだけ考えても意味ないでしょう。

 時間はいくらでもあるし、これから少しずつ自分の能力を確認していけば良いんだから。

 焦る必要はないわよね。

 

 それよりも、この狼はどうしよう?

 向こうから襲ってきたとは言え、殺しておいて放置っていうのはちょっと可愛そうな気がする。弱肉強食のルール的には食べるのが礼儀でしょうけど、まだお腹は空いてないし……。

 

 うん、まずは寝よう。

 体は全く疲れてないけど、初めての戦闘で精神的に疲れたし。

 一眠りすればお腹も減るでしょうし。

 狼くんは私の朝ごはんになってもらうってことで。

 

 お休みなさーい。




◯狼。
正式名称はファレンスウルフ。
体長は4メートルから5メートル。体高は2メートルほど。
名前の通りデカい狼。
ジンオウガを筆頭とする牙竜種の先祖……という設定。
性格は凶暴で残忍。
知能が高く群れで行動し、本来なら仲間と連携をとって敵を追い詰める。
まだモンスターが誕生していない古代のモンハン世界にいた……という設定。
他にもオリジナル動物がいくつか出る。
今回ルーツちゃんに返り討ちにあった個体は若い雄で、群れとはぐれて苛立っていた時に主人公に遭遇してしまった。
運がない。




「カルラ・イーターに憑依しました」という進撃のSSも書いてます。

大切なものは――

  • 更新速度ではない、質だッ!
  • 質ではない、更新速度だッ!
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