天地神明の真祖龍   作:緋月 弥生

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第18話 禁忌の宴

 ……ん、眩しい。

 うっすらと目を開けると、明るい光が差し込んできて私はもう一度目を閉じる。全身が痛いし、血を流し過ぎたのか頭がグラグラする。

 このままずっと寝ていたい気分だよ。

 ……あれ?

 何だか体に違和感が……。

 頑張って重たい瞼を持ち上げて確認すると、擬人化した自分の体が視界に入った。

 私を支えてくれてたボレアスとバルカンも擬人化状態になってる。どうやら私は2人の膝の上で寝てたっぽい。

 おおう、これまた珍しいシチュエーション。

 こういうのって普通は主人公の男の子が激闘の末に倒れて、ヒロインの膝の上で目覚めるパターンじゃない?

 それなのに女である私が膝枕された挙句、その相手が弟とか。

 

 寝ぼけている挙句に血の足りない頭でバカなことを考えつつ、痛みに耐えて上体を起こす。

 うわぁ、角で刺された脇腹がヤバい。

 出血こそ止まっているけど穴が空いたままで痛々しいし、かなりグロテスクだわ。

 真っ白だった肌も傷だらけで、純白のドレスワンピースも血が滲んで赤色に染まってる。

 うん、よく生きてるな私。

 人間だったら確実に死んでるレベルの大怪我だよね。

 

 擬人化は私の体が勝手にやってくれたんでしょう。

 擬人化能力が持つメリットの1つに、体力の消耗を抑えるっていう効果があるからね。

 休息して傷を癒すなら、この姿の方が実は適してるんだよ。

 

「姉上、お体は大丈夫でしょうか?」

 

「それ。痛い?」

 

「めっちゃ痛いけど、出血は止まってるから一応は大丈夫かな」

 

 心配そうに私の傷口を見る弟達を安心させるために笑顔を作って、空元気を出す。

 あぁ……痛い。

 転生してからここまで『死』に近付いたのは初めてだけど、やっぱり怖いね。

 戦闘中は龍の本能が恐怖心とかをセーブしてくれるけど、意識のスイッチが戦闘から通常に戻ると恐怖心が一気に湧き出してくる。

 やっぱり出来るだけ戦いは避けたい……いやいや、強くなるって決めたのに弱気になってどうするよ。

 邪魔する敵は全てぶっ潰すくらいの気持ちでいないと。

 

「はぁ、辛いけど頑張らないとねー。立てるかな……?」

 

「姉上、あまり無理をされては……我が支えます」

 

 バルカンに肩を貸してもらい、何とか立ち上がる。

 うへー、孤島が消えてる。

 私達が今いる場所はちょっと大きい岩場で、ここにあった孤島はこの岩場を残して吹き飛んでた。

 うん、まぁ、そうだよね。

 古龍種の頂点格である『禁忌』同士で喧嘩したら、こうなるよね。

 むしろここが絶海の孤島じゃなかったら、それこそ被害はもっと大きかっただろうし。

 最後の同時“全体落雷”とか、地球でやったら大変なことになるでしょう。

 

「アルバトリオンは?」

 

「先程の不敬者であれば、あそこで倒れておりますが」

 

 バルカンが指差した場所を見ると、岩場の端っこにアルバトリオンが倒れていた。

 めっちゃ波を被ってるけど、傷だらけの状態であれだけ海水を浴びて大丈夫かな? 私なら激痛で飛び起きる自信があるけど。

 

 と、その時アルバトリオンの体が光を放った。

 まさか、まだやる気じゃないよね?

 これ以上の戦闘はもう本当に嫌だけど、どちらかが死ぬまでやるつもりなら私も容赦しない。

 今度こそ首を喰い千切って……あれ?

 擬人化を解除しようと龍脈に干渉しかけた私は、急激にアルバトリオンに収束していた龍脈が霧散したのを感知して動きを止める。

 う、嘘でしょう?

 ソレ(・・)が出来るのは、この世界で私と弟達だけの筈なのに。

 

 愕然とする私の前でアルバトリオンはさらに強く光を放ち、クシャルダオラの2倍はある巨体が少しずつ小さくなっていく。

 やがて、光の中から人影が現れた。

 編み込みにされた長い黒髪は、不思議なことに見る角度によって色合いが変化する。白黒のゴスロリに身を包み、無数の赤と青のアクセサリーで飾った派手な少女だ。

 肌の露出は少ないけれど、見えている部分は私と同じく傷だらけで痛々しい。

 立っているのも辛いでしょうに、それでもゴスロリ少女は私の前へゆっくりと歩いてくる。

 

「素晴らしいお力です。流石はわたくしのお姉様……これまで多くの敵と戦いましたが、完敗したのはこれが初めてですわ」

 

 そう言うと、ゴスロリ少女はスカートの裾を摘んで優雅に一礼した。

 

「この度の不敬、誠に申し訳ありませんでした。そのお力を確かめるためとは言え、姉上に牙を剥いたのは大罪に他なりません。罰は何なりと」

 

 え?

 ……え!?

 

 待って、ストップ、落ち着け私。

 いきなりの急展開を前に諦めるな、頑張って現実と向き合おう。

 まず、擬人化したよね!?

 それが使えるのは私、ボレアス、バルカンだけの筈なのに!?

 ゲームのクエスト依頼者の中に、アルバトリオンの化身と思われるキャラって存在してないよね?

 確かに同じ『禁忌』カテゴリーなら可能性はあるでしょうけど、かなり信じ難い。

 私はそれ習得するのに3年必要だったんだけど……。

 

 それにさっきまで本気で潰し合ってた相手に何で敬われてるの?

 しかもお姉様って何なの。

 私の『妹』は日本に置いてきちゃったあの子だけで、他に存在しませんけど。

 

 とにかく意味不明で大混乱していると、ボレアスとバルカンは何故か納得したように頷いた。

 何で?

 どうやったら今までの情報で理解出来るのよ……?

 

「ふむ、そういう事か。気持ちは分かるが、あまりにも不敬が過ぎるぞ」

 

「殺され。ても。文句。言え。ない。」

 

「おーい、お姉ちゃんを置いて行かないでぇ」

 

 ここまでお互いにズタボロにしたのに、どういう理論なら即和解の空気になるんだろう。

 今までパターン的にバルカン達がブチ切れて、ゴスロリ少女に襲い掛かると思ってたんだけど。私に喧嘩を売った相手には、いつも私が反応するより早く殺そうとするのにさ。

 

 はてなマークを浮かべていると、横からバルカンが解説を入れてくれた。

 

「既に気付いておられるでしょうが、この龍は間違いなく我らの系譜に連なる者です。我らと合流したまでは良かったのですが、どうやら姉上のお力を見抜け無かったようですな」

 

「つまり、私がどのくらい強いか気になったから喧嘩売ったってこと? マジで?」

 

 ジト目でゴスロリ少女ことアルバトリオンを睨むと、戦犯は頬を紅潮させて俯いた。

 

「今から約1095日ほど前にお姉様のお力を感じてタマゴから出たのですが、近くにお姉様の姿はなく……。何とか生き延びながらお姉様を探して飛び回り続け、先日ようやく人間の街で人の姿となったお姉様を見つけたのです」

 

 お、おう?

 1095日ってことは、約3年くらい前か。

 もしかして、この子は産まれてからずっと私を探してたの? 3年間?

 

 その重さに私がドン引きしたことも気にせず、ガバッと顔を上げると猛烈な勢いで話し始める。

 

「なぜ人の姿なのか、なぜ下等生物に混じっているのかはわたくしでは想像もつきませんでしたが、とにかくお姉様にお会いするには人の姿にならなければと近くの森で練習しておりまして。そこで擬人化に手間取っていますとヤケに血の匂いを纏った下郎がお姉様に刃を向けるではありませんか。あまりの不敬にこの大陸ごと消し飛ばしてやろうかと思いましたが、お姉様の実力を知る機会であることも事実。なので傍観を続けましたのに、もはや人と言うのも憚られる猿がお姉様の邪魔を。しかしその猿どもをわたくしが殺そうとすると、お姉様がどこかへと飛び去ってしまいまして。慌てて後を追う途中で偶然妹とも出会ったのでどちらがお姉様と戦うかで言い争いになり、なんやかんやでわたくしがお姉様の相手を務めることになりました」

 

「ごめん早口過ぎて何を言ってるのか全く分からない!」

 

 既に情報過多で頭がオーバーヒートしてるのに、さらに大量の情報を乗せて倍プッシュしてきたゴスロリ少女の話を途中で遮る。

 取り敢えず、もう私と敵対するつもりはないらしい。

 いきなり喧嘩を売ってきたのは私の実力を確認する為で、私に負けたことに不満はなくむしろ満足だと。

 うん、もしかしてこの子なドMかな?

 和解に至った理由がまだ分からないわ。

 

「えーっと。まずあなた、名前は?」

 

「ありません。ですのでお姉様の好きなようにお呼びください」

 

 あ、そっか。

 てっきりアルバトリオンって名乗ると思ってたけど、それはあくまで人間が勝手に付けた名前だもんね。

 ライオンに名前を聞いても、ライオンって答える訳がないのと同じだ。

 

「それじゃ、あなたの名前はアルバトリオンね。長いから愛称はアルンで」

 

「はい! ああ、お姉様から名前を貰えるとは至上の喜びですわぁ」

 

 何がそんなに嬉しいのか、うっとりした顔で息を荒げるアルン。

 めっちゃ興奮しているらしく、飛び跳ねる度に傷口が開いて血が出てるし。

 もう止める元気もないからアルンが勝手に落ち着くまで放置して、数十秒してようやく冷静になった頃に会話を再開する。

 

「それじゃあ今からアルンに色々と質問するけど、良いかな?」

 

「はい、何なりと」

 

 聞き分けが良すぎて逆に怖い。

 確かに憎悪メラメラで殺しにくるよりずっと良いけど、ほぼ殺し合った相手にどうしたらここまでフレンドリーになれるのか。

 ボレアスとバルカンは特にノーリアクションだから、モンスターにとっては別に普通のこと……なのかな?

 どれだけ殺し合った相手でも、結果として生きてればオッケーなのかもしれない。

 何その修羅みたいな考え。

 怖すぎるでしょ。

 

 ……と、思考が逸れた。

 

「まずは最初の質問。どうして人間の言葉を喋れるの?」

 

「ここ最近はもう嫌になるほど人間に襲撃されていまして。返り討ちにしている間に、自然と覚えてしまいました。おかげでお姉様と円滑にコミュニケーションが取れていますので、結果オーライですわ」

 

 ……アルバトリオンにまで?

 今戦ったから嫌ってくらい理解してるけど、アルンは強い。

 私が本気を出して、ようやく辛勝できるくらいだ。

 フランシスカさんならともかく、3年前に見た軍隊程度じゃアルンには到底敵わないでしょうね。

 アルンが生きて私の前にいる以上、人間側は惨敗したってことになる。

 それなのに何度も攻撃を続けた……?

 人間達は何を考えているんだろう。

 

 ……この疑問は放置しよう。

 今どれだけ考えても答えは出ないだろうし、他にも聞きたいことは山ほどあるしね。

 

「次の質問ね。私はあなたのお姉ちゃんなの?」

 

「……? 当然ですわ。お姉様の龍脈を浴びて、私は産まれましたので」

 

 それだとお母さんになるんじゃない?

 そう思って詳しく聞くと、なんでもアルンはタマゴのまま2年も孵化しなかったらしい。

 そのまま孵化出来ずにタマゴのままになってたら、私が放った龍脈に刺激されて孵化出来たって訳だ。なんで私の龍脈を浴びたら孵化出来たのかは分かんないけどね。

 でもタマゴを産んだのは私じゃないから、私はお姉ちゃんらしい。

 

「じゃあ3つ目ね。もっかい聞くけど、何で攻撃してきたのさ」

 

「わたくしは産まれてから一度も負けた事がありませんでした。それ故にお姉様が本当にわたくしが従うのに相応しいか存在か、不敬と理解していても試さずには要られませんでした。本当に申し訳ありませんでしたわ」

 

 つまり「自分より弱い相手に従うつもりはねぇ! お前の全力、見せてもらうぜ!」って感じだったのかな。

 何て傍迷惑な……。

 だけどここまで聞いて、ようやく理解出来たよ。

 

 私も自分より弱い相手に従うなんて絶対に嫌だし、信用できない。

 人としての「私」は 誰かに縛られる事に拒絶反応を起こすし、祖龍としての『私』は弱者に従うなんてプライドの傷つく事はごめんだ。

 ボレアスとバルカンは産まれた時から私といたから、私の方が実力が上って理解してたんだねー。

 

 取り敢えず、聞かなきゃいけないのはこのくらいかな?

 他は気になった時に聞けば良いし、これ以上戦わないで済むならそれより良いことはないよね。

 そう結論付けて傷の回復に徹するために寝ようとしたら、アルンが思い出したとばかりに声を上げた。

 

「そう言えば完全に忘れていましたわ。お姉様、最後の妹をご紹介致します」

 

 そう言ってもう学校の体育館くらいのサイズしかない岩場の陰から、小さな人影を引っ張り出す。

 アルンに手を引かれて現れたのは、黒いショートヘアに前髪の一房だけが赤色の幼女。

 身長145センチくらいのボレアスよりも、さらに背が低い。

 赤い瞳を不安で揺らしながらテクテクと私の近くまで歩いてきたその子は、私を見上げて小声で話しかけてきた。

 

「お姉ちゃん……?」

 

「そうだよ私があなたのお姉ちゃんだよ!」

 

 傷?

 はっ、この子の存在と比べたら致命傷でも問題ないね。

 謎の幼女を抱っこして、サラサラの黒髪をやさしく撫でる。

 

「んふー」

 

 撫でられるのが気持ち良いのか、幼女は満足そうな声を出してぎゅっと抱きついてくる。

 何この可愛い生き物。

 ずっと抱っこしてたい。

 

「我らと扱いが違わんか……?」

 

「不満。」

 

「わたくしの時とは態度が全く違いますわね」

 

 後ろでバルカン、ボレアス、アルンがぶつぶつと何か言ってるけど、シスコン全開の私には届かない。

 あー、お姉ちゃん欲が満たされる。

 甘えん坊な妹に頼られるとか、お姉ちゃんとしてこれほど幸せなことはないよね。

 生きてて良かった。

 

 一通り幼女を可愛がって満足した私は、ロリっ子と手を繋いで皆のところへ戻る。

 

「アルン。それでこの子は?」

 

「ええと、わたくし達の末妹ですわね。わたくしと同じで名前はないと思いますわ」

 

「……ない。お姉ちゃん、私も名前欲しい」

 

「任せて!」

 

 やっばい可愛い。

 鼻血出そう。

 これくらいテンションが爆上がりしたのは、初めて焼き魚を食べた時以来かも。

 私の龍生、弟妹と焼き魚くらいしか癒しがないってヤバくない?

 ゼロよりはマシだけど。

 

 ともあれ、名前だよね。

 私にはネーミングセンスが無いから、結局のところロリっ子の種族名をそのまま名前にするんだけど。

 愛称はそこから考えるし。

 そんな訳でロリっ子に擬人化を解除するように頼んで、私達はロリっ子から距離を取る。

 岩場を端っこギリギリに立って、ロリっ子は封じていた龍脈を解除した。

 

 ザッパアアアアアアアアアアン!

 

「「きゃあああああああ!? 傷口に海水があああああああああああ!!」」

 

 ロリっ子の正体はよほど巨大なモンスターだったのか、擬人化を解除して海に着地すると莫大な量の海水が巻き上げられた。

 それをモロに被った私とアルンは、姉妹揃って激痛に悲鳴を上げて転げ回る。

 痛い! めっちゃ痛い! まるで傷口に塩を塗られたみたいに痛い!

 ……あ、塗られたんだった。

 全く面白くない1人漫才を脳内でしつつ、涙目でロリっ子の真体を確認する。

 ソレは、本当にあの可愛くて小さいロリっ子かと疑うほど巨大だった。

 

 私達と同じ『禁忌』の一角。

 その巨躯はボレアスと同じく漆黒で、その全身には溶岩が流れている。

 世界を滅ぼす悪魔とも、大地を創る巨人とも伝えられる伝説の龍。

 煉獄の王、大地の化身、獄炎の巨神、偉大なる破壊と創造などの異名を持つ超大型モンスター。

 その名を、煉黒龍グランミラオス。

 

「ちょっ、戻って! カムバーーーック!」

 

 私が慌てて叫ぶと、グランミラオスは再び龍脈を収束させて可愛いロリっ子の姿に変わる。

 ちょっと考えればバカでも分かるのに、どうして気付かなかったのよ私……。

 テンション上がると知能指数が下がる体質なのどうにかしないとね。

 

 私を筆頭に『禁忌』が勢揃いしてる中で、アルンが末妹として連れてきた子も『禁忌』に決まってるのに。

 そして空欄なのは5番目のグランミラオスだけなんだから、擬人化解除しなくても正体は分かったじゃん。

 私って、ホントにバカ。

 

 傷口の痛みに耐えながら猛省してると、グランミラオスがまた私の所まで駆け寄ってきた。

 そして私の裾を握る。

 

「お姉ちゃん……名前……」

 

 そうだったね。

 えーっと、グランミラオス……ね……。

 男の子ならそのままグランで良かったけど、女の子にこの名前はないよね。せっかくならもっと可愛い愛称を付けてあげたい。

 しばらく熟考して、私はようやくロリっ子の名前を捻り出す。

 

「よし、あなたの名前はグランミラオス。愛称はララね」

 

「ん……!」

 

 どうやら私がつけた名前は気に入ってくれたらしい。

 嬉しそうに笑うララを抱きしめてから、私はようやく全員集結した『禁忌』の面々に向き直った。

 ボレアスとバルカンにはそろそろ話そうと思っていたことがある。

 ずっと言い出す機会を探ってたけど、弟妹が全員集まったこの瞬間より良いタイミングなんて無いよね。

 

「お姉ちゃんね、少し前からやりたい事があるんだ。でもそれは私1人の力でやり遂げるのは出来ないくらい難しいの」

 

 地平線から太陽が顔を出し、夜空が消えて新しい朝がやってくる。

 それはまるで、今日から新しい「何か」が始まることを暗示しているようで。

 海にポツンと浮かんだ岩場に、日が差し込む。

 

「私は、この星に住む全てのモンスターと人間が共存する世界を作りたい。皆はきっと人間が嫌いだろうけど、全ての人間が敵って訳じゃない。きっと私達と仲良くしてくれる人がいると思う」

 

 この願いを叶えるのは、想像も出来ないくらい難しいと思う。

 竜は人を襲う。

 人は竜を狩る。

 その関係は絶対だし、殺し合う中で憎しみや怒りといった負の感情が生まれるのは避けられない。

 それでも、私はモンスターハンターが大好きなんだ。

 あの素晴らしい『現代』へと繋がるために、私はこの『古代』で頑張りたい。

 

「皆の力を貸して欲しい。自然の摂理の外側……ただ憎しみだけで、竜と人が殺し合うのは見たくないから。……そんな私のワガママな夢を、手伝って欲しい」

 

「姉上の願いは我の願い。姉上が決めたことであるなら、我に異論など有りません」

 

「ルー姉。が。そう言う。なら。まぁ。手伝って。やる。」

 

「お姉様の力に屈した瞬間より、わたくしの力と心はお姉様のもの。どうぞ、好きにお使いくださいませ」

 

「……お姉ちゃんのお手伝い……したい」

 

 身勝手でワガママな話だ。

 元人間の私と違って、弟妹達はモンスターだというのに。

 それでも、間髪入れずに私の頼みを受け入れてくれた。

 

 ――ああ、本当に私は恵まれている。

 ここまでお膳立てされて、引き下がれる訳がない。

 

 何がなんでもハッピーエンドを引き寄せる。

 歴史に語られる凄惨な竜大戦なんて、絶対に阻止してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍は人との共存と平和を願い。

 人は龍種の絶滅と戦争を願う。

 根底の部分で噛み合わない、どこまでも続く平行線のようなすれ違い。

 それでも、祖龍の少女はハッピーエンドを宣言した。

大切なものは――

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