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本当に、本当に、ありがとうございます!
近いうちに1日数話更新すると思います。
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シュレイド地方・南部。
そこに広がるのは人類未踏の『魔境』の1つ、サーネル樹海。
元から凶暴な猛獣が多数生息していたジャングルだが、モンスターの出現によりその危険度はさらに跳ね上がり、バテュバドム樹海にも匹敵する危険地帯になっていた。
そんな『魔境』の中を、自動四輪車が大量の排気ガスを垂れ流しながら爆走する。
木の根や穴ぼこだらけの獣道を最高速度で駆け抜けているので、自動四輪車の揺れは凄まじい。
それはもう、自動四輪車での移動に慣れているキャロルが顔が真っ青になるほどに。
基本的に傍若無人で他人など顧みないフランシスカも、数少ない友人の1人がこれでは流石に心配してしまう。
「おい、大丈夫か貴様。今にも朝食を全て戻しそうになっているが」
「分かっているならあまり話しかけないでください! というか、貴女はどうして平然としているんですか……っ」
「自分の足より遅い乗り物で酔うわけないだろう」
フランシスカの全速力はあの祖龍に匹敵する。
体幹と動体視力も音速を遥かに凌駕する世界に適応しており、自動四輪車のスピードと揺れなど問題にならない。
余談だが、危険地帯である『魔境』をこれほど音を立てて派手に移動しているのにモンスターに襲撃されないのもフランシスカの影響である。
竜の方が怯えて逃げるフランシスカを乗せていなければ、この『魔境』を車1台で横断するなど不可能だ。
「それで、私をこの『魔境』に連れてきた理由は何だ?」
「今回の貴女の任務は、イコールドラゴンウェポンの起動実験のセーフティです。アレは兵器ですが、同時に生物でもありますから。万が一トラブルが発生して暴走した時は、貴女が無力化してください」
「あの気持ちの悪いガラクタの管理など全くもって不本意だ。オモチャ作りに精を出すくらいなら、刀を鍛える方がマシだな」
「武器1つだけで戦えるキラーズなんて、貴女を含めても10人未満ですからね? ……うぅ」
それだけ言うといよいよ限界なのか口元を抑え始めた友人を尻目に、フランシスカは欠伸を噛み殺す。
はっきり言って、フランシスカは竜機兵に興味はなかった。
竜の上位種である『古龍』をも殺すという触れ込みらしいが、肝心の古龍種をフランシスカはまだ見たことがないのだ。
しかし、あの祖龍が強いと断言しているのだから古龍種は強いだろう。それ程の存在を、たかが鉄屑のオモチャが殺せるとは思えない。
(まぁ、竜機兵の性能が本物ならばそれで良し。私の遊び相手くらいにはなるだろう。ガラクタであったとしても、アレは間違いなく龍の怒りに触れるもの……運が良ければまた祖龍と会えるかもしれん)
そう結論付けて、フランシスカはキャロルから渡された実験資料に目を通す。
今回の実験では3機1組とした計12機の竜機兵を王都から4箇所の戦場に飛ばすらしい。
南のサーネル樹海、北のノウス凍土、西のデボン平原、東のイード火山。この4つの『魔境』を壊滅させることで、今回の実験は成功となる。
だが竜機兵はあくまで生体兵器。
受信機としての機能を持つ脳に遠隔で命令を出すらしいが、その時に色々とややこしいコトが起きるそうだ。
全く興味が湧かなかったので、フランシスカはそこから読むのをやめた。
「ん、車が急に止まったようだが?」
「ここが……今回の実験地点、ですよ……」
「話しかけた私が悪かった、貴様はもう喋るな。担いでやるから大人しくしていろ」
「うぅ……」
まず自動四輪車の鉄のドアを長い足で蹴破り、キャロルを抱えて車を降りる。
車が止まった場所は、樹海の中に作られた巨大な穴の前だった。
「フランシスカ、車のドアをむやみに壊さないでください……」
「知らん。それより目的地はこの穴の中か? 飛び降りるぞ?」
「絶対にやめてください! 下に降りるためのロープが、って、ちょっと待っ、きゃあああああああああ!?」
話の途中でいきなりフランシスカが飛び降り、キャロルが絶叫する。
穴の深さは10メートル近く、常人ならば大怪我は免れない高さだ。最悪の場合は死に至るだろう。
しかしフランシスカにとっては10メートルも1センチも大差なく、自分と同じ身長のキャロルを抱えたまま悠々と着地する。
「どうだ、この方が早いだろう?」
「…………、……………………」
「おい、吐くなら私の服にかけるなよ」
「吐き……ません……っ!」
「無駄なところで根性を見せるな、貴様は」
渾身の力でフランシスカに抱きつきながら、キャロルは苦しみに耐え抜いて嘔吐感に打ち勝った。
ギリギリで女性の尊厳を守ったキャロルの根性を称えながら、友人の背中を撫でてフランシスカは穴の中を見渡す。
穴の中心には様々な機械が並べられ、カラフルなコードが地面を埋め尽くしていた。そしてその機械群の間を白衣を着た人物達が慌ただしく走り回っている。
これではまるで野外研究所だ。
雨が降れば大惨事になりそうだが、今回限りの臨時拠点なのでそこまで考慮する必要は無かったのだろう。
「そろそろ歩けるか?」
「ええ。ご迷惑を……いえ、半分は貴女のせいでしたね」
「抱えてやったのに随分だな」
「飛び降りのダメージが上回っているので」
軽口を言い合いながら穴の中心に向かい、責任者と思われる男性の方へ。
「竜種観測隊所属キャロル・アヴァロン、着任しました」
「お待ちしておりました、アヴァロン様! 竜種生態学の権威と名高いあなたにお会い出来るとは、光栄ですな。私が本実験の責任者を務めております、オリバー・ルドローです。……して、そちらの方は?」
「こちらはフランシスカ・スレイヤー。竜機兵が暴走した際のセーフティを担います」
キャロルの時は笑顔だったルドローだったが、一転してフランシスカの紹介に嘲笑を浮かべた。
「ああ、あのキラーズとかいう野蛮人の。人類最強だとか太刀1つで千の竜を殺したとか、随分と面白い
「ええと! 早速ですが、今回の実験の詳細な内容をお聞きしたいのですが!」
ルドローが落としたいきなりの爆弾発言を、またも顔を真っ青にしたキャロルが大声で上書きする。
するとルドローは得意げに竜機兵について語り出して、フランシスカは興味がなさそうに太刀の手入れを始めた。
最悪の事態にならなかったことに安堵して、キャロルは大量の冷や汗を流しながらため息をつく。
『研究所』の所員や軍隊の中にはキラーズを“野蛮人”と罵り軽蔑している人間が一定数いるとは知っていたが、そのキラーズを設立したキャロルの面前でこのような態度を取るとは思わなかった。
もしもフランシスカが今の挑発に乗せられていたら、次の瞬間には人間の屍で小山が生まれていただろう。
キラーズは竜を殺すために武器などの所持が認められているのに、その武器で人殺しなど不祥事だ。
そうなれば、キラーズを立案したキャロルの首が飛ぶだけでは済まない。
「……では、12機の竜機兵は既に王都を発進したと?」
「はい、昨夜の23時時00分頃に。もうすぐここに到着すると思います」
ルドローの話を聞き流しながら相槌を打っていたキャロルだったが、研究者の口から気になる言葉が出て眉を顰める。
腕時計を確認すると、現在時刻は5時58分。早朝だ。
「もうすぐ……? 王都とサーネル樹海の間にはかなりの距離がありますし、約7時間では……」
王都は大陸の西端にある。
そこから大陸の南端にあるこのサーネルの樹海までは、3万4000キロメートルの距離があるのだ。
地球一周が4万キロメートルだと言えば、どれだけ離れているか伝わるだろうか。
シュレイド王国が有する最新鋭の航空機でも最高速度は900キロ。途中の燃料補給も考慮すれば、とても7時間では移動出来ない。
キャロルもフランシスカだって3日かけて王都からこの樹海まで来たのだ。
……フランシスカが走れば、1日で移動出来たとか言ってはいけない。
今は常識の範疇の話をしているのであって、常識に唾を吐いた挙句に踏みつけている怪物達の話はしていないのである。
「素晴らしい飛行速度でしょう? 全長69メートルのあの巨体が、マッハ7という想像も出来ない速度で飛ぶのです! 圧巻だとは思いませんか!?」
「な……っ!?」
音速を超えた世界の話にキャロルが絶句したその瞬間、凄まじい爆音が鳴り響く。
真っ先にフランシスカが反応し、太刀を掴んで上を向いた。
耳障りな金属音と共に大地が大きく揺れて、転倒しそうになったキャロルをフランシスカが支える。
「この揺れは……!?」
「どうやら竜機兵が到着したようですな! アヴァロン様、あれで地上の様子をご覧ください!」
そう言ってルドローが指し示したのは、潜水艦が海中から水上の様子を観察する時に使う潜望鏡のようなものだった。穴の中からでも地上の様子が分かるらしい。
駆け寄って覗くと、山のような巨体を持つ鋼の竜の姿が見える。
「本当にあの巨体で音速を……」
「なるほど、大したオモチャだな。1機作るのにどれほどの金が溶けたのやら」
世界最大の領土と国力を持つシュレイド王国でも、この短期間で12機もの竜機兵を作るのは難しいだろう。
恐らく周辺諸国が金や竜の素材を援助している。
契約内容は……まぁ、造竜技術の提供だろうか。
確かに、竜機兵はあらゆる兵器の中でも飛び抜けて強力だ。フランシスカですら「ガラクタ」から「オモチャ」に言葉を変えるほどに。
――人と人との戦争でも、主力兵器として活躍出来るほど。
イコールドラゴンウェポンをシュレイドだけが独占するなど、他の列強国は絶対に許さない。
あらゆる方法で、この造竜技術を得ようとしたはずだ。
(ふん。竜すら殺せぬ雑魚共が、一人前に龍との戦いの後を見ている訳か。実に間抜けよな。この戦争の後には、人の方が絶滅している可能性もあるというのに)
恐らく龍どころか竜の脅威も知らない王侯貴族達の最期を想像して、最強の狩人は嘲笑した。
その隣で、ルドローが興奮に満ちた声を張り上げる。
「素晴らしい……! お前達、すぐに実験を開始しろ! 愚かにも人間様に牙を剥いたモンスター共に、鉄と文明の裁きをくれてやれ!」
ルドローの煽り文句に歓声が上がり、研究者達は一斉に機械の操作を始めた。
そして、人工生命を宿す鉄の竜がそのアギトを開く。
――そして、爆炎。
直径10メートルはある火球ブレスが乱射され、サーネルの樹海が灼熱の炎に包まれた。
着弾の衝撃で木々と地面が消し飛び、続く業火が自然の命を焼き尽くす。
空は黒煙で覆われ、凄まじい熱風が吹き荒れ、木と肉が焼ける臭いが充満する。
わざわざ深い穴を掘って、そこに拠点を設置した理由がこれだ。
竜機兵の圧倒的なまでの力は、その場の全てを破壊して焦土を作り出してしまう。
『魔境』と恐れられたサーネル樹海は火の海に沈み、樹海から逃げ出そうとしたモンスターを残る2機が鉄の牙と爪で惨殺する。
血と内臓で鉄の鎧を赤く染めながら、人間の命令に従って作業のように竜を殺す。
繁殖を防ぐために幼体も殺し、タマゴを割り、子孫を守ろうとした親も殺す。
「う……っ!」
「辛いなら見るのをやめろ。無理をしても得をするような光景が見れるとは思えん」
「私はアレを作るのに協力してしまった1人です! この惨劇と向き合う義務がある……!」
「本当につまらんところで強情な女だな」
自分の天職にするほど生き物が好きなクセに、その自然が徹底的に破壊される光景から目を逸らさないキャロルにフランシスカは呆れて首を振る。
そして歓喜の表情で地上に向かい、竜の素材を回収しようとする研究者達を眺めてゆっくりと太刀を抜いた。
――事故を装って壊すか。
フランシスカの心情的にも竜機兵は気に入らない。
そして友人もアレが作られたことを嫌悪している。
ならば何も問題はない。
あのような気持ちの悪い兵器など、全てぶっ壊せば良いのだ。
その、時だった。
「――ッ!」
フランシスカの表情が、狂喜と殺意に彩られる。
クレーターが生まれるほどの脚力で大地を蹴り飛ばし、深さ10メートルの穴から一度の跳躍で飛び出した。
黒の狩人が地上に出るのと同時に、天空より純白の龍が降臨する。
『禁忌』の一。
全ての龍の祖、白き王、祖なるもの。
生態系の頂点に立つ、モンスターの創造主。
祖龍ミラルーツが、生命を冒涜する悍ましい兵器に牙を剥く。
真紅の光が祖龍のアギトに収束し、巨大な雷球ブレスが容易く竜機兵の火球を呑み込んだ。
紅雷が竜機兵を貫いて、約70メートルの巨体がゴミのように吹き飛ぶ。
残る2機も反撃すら許されずに落雷に撃たれ、煙を上げて地に伏せた。
圧倒的。
竜の贋作とはモノが違うと。
これこそが真の龍の力であると示すように、龍の始祖は天に向けて咆哮した。
それだけで大地だけではなく世界そのものが震え、周囲に真紅のスパークが迸る。
祖龍の圧倒的な存在感と威圧に呑まれて、この場の誰もが動けない。
出来ることは恐怖に震えながら、祖龍の注意を引かないように息を殺して蹲るだけだ。
――ただ1人、フランシスカを除いて。
「……よもや。これほど早く再会出来るとは思わなかったぞ、祖龍!!」
フランシスカが歓喜に叫ぶ。
永劫の宿敵との再会。
そして、気に入らない鉄屑のオモチャを纏めて破壊できる絶好のチャンス。
超常の戦いに心を昂らせた人類最強が、怒りに燃えた龍の始祖が、ただ冷徹に敵を撃滅する人造の竜が。
脆弱な人間を置き去りにして、生物の皮を被った本物の怪物達が、トップスピードで激突する。
Q、1つの大陸の西端から南端までが3万キロっておかしくない?
A、私はモンハン世界がある星は地球の何倍も大きいと仮定しています。
その理由は単純で、生物的にスペックがおかしいモンスターが地球サイズの星では暮らせないからと思ったからですね。
大型モンスターが1日に必要な食事量を考慮すれば、かなり広大な縄張りが必要となります。その大型モンスターも(主にリオレウス)など世界各地で討伐クエストが出される(人里に接近する個体でも多い)ほど個体数が多いので、それぞれが広大な縄張りを持てるくらい多いのかなぁと。
まだまだ人類未踏のフィールドがありそうなことや、超大型モンスターの存在も考慮すれば、やっぱりモンハン世界の星はめっちゃ大きいだろうなという結論に至りました。
大切なものは――
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更新速度ではない、質だッ!
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質ではない、更新速度だッ!