天地神明の真祖龍   作:緋月 弥生

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アンケート結果(6月25日18時20分)

ボレアス100票
バルカン53票
アルン98票

ボレアス→アルン→バルカンの順にお話が進みます。


黒1話 デボン平原での戦い

 ――大陸・西方・デボン平原。

 その上空をマッハ7という超速で飛行するのは、鉄の鎧に身を包んだ3機のイコールドラゴンウェポンだ。生命を冒涜した人間の罪の象徴にして、この世界に生きる全てのモンスターを殺す決戦兵器。

 そしてソレを追跡するのは、祖龍ミラルーツに連なる『禁忌』の一角。

 黒龍ミラボレアス。

 

(――遅い。な。)

 

 自身の目前を飛ぶ竜機兵を睨み、ボレアスは端的な感想を抱いた。

 確かにシェルレウスのような「竜」とは比較にならない速度だが、上位種である古龍から見れば少し速いと感じる程度。あらゆる「龍」の頂点に立つ『禁忌』から見れば、鈍足ですらある。

 ボレアスにとっては大した脅威ではない。

 そのボレアスすら凌駕する姉からすれば、鉄屑の竜など雑魚も同然だろう。

 

(でも。あの。ルー姉。が。警戒。して。た。)

 

 嫌悪するのは分かる。

 怒りの感情を抱くのも分かる。

 古龍種の支配下にある竜を勝手に乱獲し、その死体から新しい命を作るなど許されざる蛮行だ。

 生命を創造する権利を持つのは、この星ではただ1人。ボレアスが敬愛する姉、ミラルーツだけだ。

 人間のような下等生物が手を出して良い領域ではない。

 その『悪行』に抱く怒りにはボレアスも同感だ。

 

 しかし、警戒するほどか?

 ボレアスと竜機兵は約100メートル離れて飛んでいるが、この距離でも鉄の竜がこちらの接近に気付いた様子はなさそうだ。

 今この瞬間にもボレアスがブレスを放てば、竜機兵達はあっさりと灰と化すだろう。

 雑魚。

 格下。

 ボレアスですら底が見えない圧倒的な力を有するルーツならば、100機を同時に相手しても殲滅できるはずだ。

 

(まだ。ルー姉。の。本気。見たこと。ない。から。断言は。無理。だけど。な。)

 

 そう考えて、ボレアスは心の中で少し笑う。

 怖い話だ。

 この世界に生まれた時からずっと一緒にいる姉なのに、彼女の本気は未だに見たことがないとは。

 理由こそ分からないが、ルーツはずっと自分の力を封じている。

 最近合流したアルバトリオンとの戦いでも、ボレアスは姉が24パーセント程度の力しか使っていないと予想していた。

 それだけ手加減して大ダメージを受けたのだから、流石に『禁忌(かぞく)』の1人であるアルバトリオンを侮っていたようにしか思えないが。

 

(アル姉。も。本気。じゃ。なかった。から。お互い様。だな。)

 

 まぁ、アルバトリオンの方は早々に本気を出しても勝てないと気が付いたのでそれ以上戦うのを止めて降伏したのだが。

 賢明な判断だ、とボレアスは思う。

 『禁忌』の中では最も血の気が多く戦うのが好きなボレアスだが、本気になったルーツとの戦いは少し怖い。

 強敵との戦いと、何も出来ずにフルボッコにされるのは違うのだから。それで喜ぶのはドMだけだ。

 

 思考を切り替える。

 ともかく、それほど突き抜けた力を持つルーツが異様に警戒したのだ。

 見るからに雑魚同然の相手だが、それなりに本気で狩りをした方が良いのだろう。

 そう判断して、ボレアスは心の中から慢心を消す。

 『あの形態』は命の危険を感じた時にしか使うなと姉に言われているので、あくまで通常形態の本気だが。

 

(……ん? 動き。が。変わった。降りる。のか?)

 

 ボレアスの予想通り、竜機兵が首を下に向ける。

 そして広大な平原の中心部に空いている大穴に近くへ、一気に急降下を始めた。

 マッハ7という速度が衝撃波を生み出して雲を蹴散らすが、ボレアスはその衝撃波を浴びても平然としたまま追随する。

 

(どう。する。もう。壊す。か? ……いや。)

 

 ボレアスの心情的には、あのような忌々しいガラクタはさっさと壊したい。

 だが慢心せずに狩ると決めたのなら、襲う前にもう少し様子を見た方が良いだろう。

 万が一。

 ほぼあり得ない話だが、1機取り逃したら大目玉だ。

 ルーツに失望されるだけでも悔しいのに、他の兄弟姉妹に煽られたら屈辱だけでは済まない。

 その時は史上最強の兄弟姉妹喧嘩が発生し、この星が滅びるだろう。

 

 それは流石に冗談だが、失敗が許されないのは事実だ。

 もうこの平原ごと全て燃やせば話が早いのだが、ルーツと交わした「約束」の中に「必要以上に環境を破壊してはいけない」というものがある。

 平原ごと抹消するのはダメだろう。

 また「獲物と定めた相手以外の命は奪わない」という「約束」もあるので、人間を殺すのもダメだ。

 今回のルーツが獲物として定めたのは竜機兵のみ。人間は含まれていない。

 

(ルー姉。甘い。人間。なんて。早く。皆殺しに。すれば。良い。のに。)

 

 ボレアスには何故ルーツがあれだけ人間に甘いのか分からない。

 人間は間違いなくこの星にとって害悪だ。

 竜機兵なんてモノを作っているのに、それは違うなんて絶対に言わせない。古龍種の眷属である竜を大量に殺しているのも許せない。

 生きるために必要な「食べ物」とするのならともかく、竜機兵なんて最悪なモノを作るために狩りをするなど言語道断である。

 

 ボレアスがそう思った矢先のことだ。

 3機の竜機兵が一斉に歪な形のアギトを開くと、巨大な火球ブレスを乱射し始めた。

 予想以上の威力と連射速度を発揮するブレスに少しだけ驚きながら、上空から竜機兵の攻撃対象を確認する。

 狙われているのは子連れのワイバーンレックスのようだ。

 咄嗟に親が子供を庇うが、対古龍種を想定した竜機兵のブレスには意味がない。

 子供と共に、親まで焼き尽くされる。

 そしてワイバーンレックスの死骸に人間達が駆け寄り、焼け残っていた鱗や牙を回収し始めた。

 あの素材もまた、次の竜機兵を作る材料となるのだろう。

 

(……殺す。か。)

 

 一連のその光景は、ボレアスを怒らせるには十分だった。

 狩りをするのは勝手だ。

 しかし竜機兵を使って自分の手を汚さず、安全な場所から他者の生命を奪うその行為。

 それは狩りという行為そのものを侮辱している。

 

 気流と共に世界を循環する龍脈に干渉し、収束させ、己のエネルギーとして変換していく。

 姉であるミラルーツほど美しく龍脈を操ることは難しいが、鉄屑の竜を焼き尽くすくらいは造作もない。

 その気になれば、ボレアスは数日で地球より遥かに巨大なこの星の全土を焼き払えるのだから。

 

 翼を畳んで滑空し、横並びになっていた竜機兵の右端の機体に突貫する。

 ミラボレアスの大技、滑空攻撃だ。

 原作ゲームである初代における攻撃値は脅威の230。

 同シリーズに登場するアカムトルムのソニックブラストの180すらも上回る、問答無用の大技である。

 現実世界で行われるボレアスの滑空攻撃もまた、原作の設定に恥じない超威力を誇る。

 竜機兵のトップスピードであるマッハ7など比較にすらならない。

 雷速に迫る速度にまで加速し、衝撃波だけで残りの2機を数キロ先まで吹き飛ばす。

 滑空攻撃を受けた機体など言うに及ばずだ。

 ボレアスとの衝突でその巨体がバラバラになり、肉片と鉄屑が地平線の彼方まで拡散していく。

 余波で大地が抉れ、暴風が吹き荒れ、臨時実験施設のある「大穴」から外に出ていた人間が挽肉となった。

 

 ボレアスはミラルーツほど甘くない。

 「約束」があるので積極的に人間を襲ったりしないが、竜機兵を破壊する時まで配慮などしない。

 近くにいるのならむしろ好都合であると。

 竜機兵と共に、その天災すらも凌駕する猛攻の巻き添えにする。

 

(まず。は。1匹。勝手。に。吹き。飛んだ。残り。は。ブレス。で。始末。する――……)

 

 上空で収束しておいた龍脈エネルギーを解放。

 古龍種の体内にある「龍脈エネルギーを属性に変換する機能」を持つ龍脈変換神経を通して、ボレアスが誇る炎を生み出した。

 竜機兵のソレとは規模が違う。

 黒龍の火球ブレスは、最大出力ならば1発で大陸全土を焦土に変える。

 

(これで。終わり。)

 

 「約束」を守って必要以上の破壊を行わないよう威力を低下させて、代わりに射程距離を伸ばしたブレスで数キロ離れた場所にいる残りの竜機兵を狙う。

 

 ――その、発射直前に。

 

(――ッ!)

 

 実は『禁忌』の中で最も勘が鋭く、危険を察知する能力が高いボレアスだからこそ反応出来た。意外と不意打ちに弱いルーツなら、高確率で被弾していただろう。

 火球ブレスのモーションをキャンセルし、大地を蹴っての這いずりで一瞬でその場から掻き消える。

 直後に、ボレアスがいた場所に無数の斬撃が走った。

 

(……! 速い!)

 

 空間を引き裂く、怒涛の連撃。

 ボレアスの動体視力ですら、100を超える斬撃が同時に放たれたようにしか見えなかった。

 絶対強者であるはずのボレアスが命の危険を感じるほどの乱入者。その姿を注視すべく、ボレアスは油断なく新手に視線を向ける。

 

「そこまでです、モンスター」

 

 平原を吹き抜ける涼しげな一陣の風と共に、鈴の音色のように凛とした女性の声が響く。

 大空を溶かしたような美しい青の髪に、揺るぎない正義の光を湛えた濃紺の瞳。透き通る肌は雪のように真白で、華奢な体を覆うのは生地の薄い水色のドレス。

 そしてその手には、ボレアスが姉から教わった「人間の武器」のどれとも一致しない風変わりな武器が握られている。

 無理やり例えるのなら、両端に刃が備わっている薙刀。原作ゲームであれば操虫棍が一番似ている。

 ただし蟲を操ってはおらず、何よりも柄の部分が異様に長い。

 両端に備わっている鋼の刃渡りは50センチほど。それだけで合わせて1メートルに達するというのに、柄の部分が2メートルはある。

 明らかに設計ミスだ。

 女の身長は150センチほどしかなく、武器は女の2倍だ。

 

(でも。見えない。ほど。速い!)

 

 そこで、姉の言葉を思い出す。

 姉とバルカンと一緒に初めて侵入した人間の街で見た、凄まじい威圧と殺意をばら撒いていた黒い剣士。

 その剣士は、姉に言ったらしい。

 キラーズの中には、自分に匹敵するほどの強者が1人いると。

 

(間違い。ない。コイツ。だ。この。人間。だ。)

 

 あの祖龍が命の危険を感じるほどの剣士と、同格の相手。

 それはつまり、ボレアスであっても油断すれば簡単に殺されるほどの強敵ということだ。

 ボレアスの中に眠る、生来の獰猛さと凶悪な性格が爆発する。

 

 この青い女は、ボレアスが竜機兵を破壊することを邪魔するのだろう。

 ならば「約束」を破ることにはならない。

 何より、自分の命が危険に晒された時は本気を出しても良いと祖龍から許可を得ているのだ。

 ボレアスは黄金の瞳に戦意を漲らせ、牙を剥いて青の女を睨む。

 

(もしも。本当。に。この女。が。ルー姉の。言ってた。『天秤』の。1人。なら。)

 

 

 

 ――至上の戦いを、愉しめるだろう。

 

 

 

 未来で伝説として謳われる黒龍が、凶悪な咆哮を放つ。

 応じるように青の女は不釣り合いなほど巨大な武器を握り直し、残る竜機兵も雄叫びを上げた。

 殺意に満ちた邪悪な黒龍と、正義を秘めた青のキラーズが交差する。




※以下シリアス破壊の舞台裏。閲覧注意













>殺意に満ちた邪悪な黒龍と、正義を秘めた青のキラーズが交差する。

ルーツ「どっちが味方だっけなこれ?」
フランシスカ「貴様ら揃ってラスボスキャラだろう。何も間違ってないな」
ルーツ「ボレアスもっと可愛いから」





バルカン「それよりどうして最初期からいる我がアンケート最下位なのだ! ボレアスはともかく、ぽっと出のアルンにまで負けるのは納得いかんぞ!」

アルン「おーほっほっほ! やはり時代はゴスロリお嬢様な妹なのですわぁ! 貴方は初期のように甘えん坊キャラでいれば良かったのです」

バルカン「やかましい! 噛ませ犬のような登場をしたくせにこの駄馬め……! そもそも今回のは人気投票ではない!」

アルン「負け犬の遠吠えが気持ちいいですわー! ねぇ今どんな気持ち? ぽっと出のわたくしに負けてどんな気持ちー!?」

バルカン「ぶっころ」






ボレアス「( ^∀^)」←勝者の余裕

ルーツ「結局は全員に出番がくるのにね」←初手アンケート1位+ファンアート獲得者の余裕

フランシスカ「全くだ」←初手ファンアート獲得者の余裕



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