天地神明の真祖龍   作:緋月 弥生

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第24話 嵐の前の静けさ

 幾千にも及ぶ鉄の竜を、荒ぶる古龍達が撃ち落とす。

 永遠に続くんじゃないかと錯覚するほどの激戦は、骸龍が放った瘴龍ブレスによって終わりを迎えた。

 そのモーション値は何と250。

 ガード強化スキルをぶち抜く上に、ブレイブスタイルのイナシすらも貫通という、ラスボスに相応しい威力を秘めたぶっ壊れブレス。

 あかね色に染まる空を引き裂く龍属性の極光が、最後の竜機兵を破壊した。

 

 ――双頭の骸、あるいは奈落の妖星。

 その異名に相応しい大破壊を見せつけたオストガロアは、墜落した竜機兵を次々と捕食する。

 うわぁ……。

 流石はイビルジョーにも負けない捕食欲求の持ち主だね、私はどれだけ空腹でも竜機兵を食べるのは無理だわ。

 

 終わった、ね。

 念のためにレーダーを最大範囲で展開するけど、数えるのも億劫になるほどあった竜機兵の存在はどこにもない。

 今度こそ、竜機兵の脅威は去ったと思う。

 

 終わってみれば大勝利だったけど、私達モンスター側も無傷じゃ済まなかった。

 まぁ、うん。

 数千機の竜機兵に対して、こっちは『禁忌』を含めても総数は30には届かないからね。

 不利な状況から短期決戦を挑んで、完全勝利とか無理に決まってる。

 むしろ集まってくれた古龍種が全員生還してるってだけでも、十分に奇跡的でしょう。

 

 それに、自然もかなりのダメージを受けた。

 炎に包まれる森、干上がった川や湖、割れた大地、焦土になった平原。どの場所も、元通りになるまで長い時間が必要になる。

 かなりの被害だけど、空を覆い隠すほどの竜機兵に襲撃されて再生する余地が残っているだけマシだと思いたい。

 

 疲れ果てた私は滞空する気力も失せて、ほぼ自由落下の勢いで着地する。その隣に、私と同じく力を使い果たした『銀翼の凶星』が落ちた。

 100を超える竜機兵を破壊したバルファルクの全身は傷だらけで、美しい銀色は赤く汚れてしまっている。

 ……本当に、助けてくれてありがとう。

 私と共に転戦を繰り返したあなたが、1番辛かったよね。

 感謝の想いと共に龍脈を流し込み、少しでも早く完治するように再生力を高めてあげる。

 

『ご無事ですか、姉上!』

 

『お怪我はありませんか!?』

 

 バルファルクを治療していると、私が驚くほどの勢いでバルカンとアルンが戻ってきた。

 2人の後ろから共に戦っていたらしいクシャルダオラ、シャガルマガラ、アマツマガツチまでが私が今いる焦土に降臨する。

 流石に『禁忌』の2人には目立った傷はないけど、その後ろにいる古龍達はみんなボロボロだった。

 

『ただいま。』

 

『戻ったよ、お姉ちゃん』

 

 少し遅れてボレアスが空から、ララが大地の中から姿を現す。

 その後ろからはテオ・テスカトル、ナナ・テスカトリ、ヤマツカミ、キリン、オオナズチまで焦土に現れた。

 何この壮絶な光景。

 流石に超大型モンスターまではいないけど、優秀な私のレーダーは近い所で待機する超大型古龍種の反応をいくつも捉えてる。

 要するに、全員集合だった。

 

 ……いや、どうして全員で来たの!?

 ひとまず竜機兵の脅威は去ったから、もうみんな帰って休んで良いのに。『禁忌』はともかく、あなた達はかなり辛いでしょう。

 

『お姉ちゃん、まだ終わってないよ。すぐに人間は攻撃してくる』

 

 という私の「お疲れ様でしたモード」は、ララの一言で完璧に破壊された。

 ち、ちょい待ち。

 まだ続くってどういうこと?

 あれだけの数の竜機兵が破壊された直後に、次の攻勢をノンストップで仕掛けられる余力があるとは思えない。

 時間的に考えても、あれだけの竜機兵を製造している裏で他の兵器を用意するのは不可能なはず。

 現状で人間側の戦力はキラーズだけ。

 そのキラーズの中でも、今のところ大きな戦力になるのはフランシスカさんくらいで……

 

『お姉ちゃんの命令通りに、シュレイド王国の王都に侵入した』

 

 ……え?

 確かに最初の12機の他に竜機兵がいないか確認してとは頼んだけど、王都にまで入ったの!?

 

『うん。それからシャルロットお兄ちゃんに助けてもらって、対モンスターの兵器開発研究所に入った』

 

 ……ん、んん?

 待って。

 私がフランシスカさんと3機の竜機兵を相手にしてる間に、サラッと凄いことしてない?

 よく1人で世界最大の人間の街に入れたね?

 あとシャルロットお兄ちゃんって誰?

 もうこれ以上は他に禁忌モンスターもいないし、王都で会ったならその子は人間だよね?

 

『そこには偽物の竜だけじゃなくて、色々な兵器があった。まだ量産はされて無いと思うけど、どの兵器も1号機は完成してたから素材さえ集まれば量産可能になると思う』

 

 そう言うとララは擬人化して、スカートのポケットから紙束を取り出した。

 祖龍のままだと受け取れないので、私も擬人化してララが差し出してくる紙束を見る。

 そこには開発された兵器のリストがあった。

 

 な、に、……これ?

 嘘でしょう、どうして人間が古龍みたいなことが出来るの!?

 いや、今は開発された経緯とかはどうでも良い。

 もしもこのリストにある兵器群が大量に生産されたら、竜大戦が終結する以前にこの星が砕けてしまう。

 

「……ララ、これどこから盗んできたの?」

 

「シャルロットお兄ちゃんにお願いした。王都の中心で龍が暴れるのは嫌だよね? って聞いたら、大急ぎで取りに行ってくれたよ?」

 

「マイシスター。それはお願いじゃなくて脅迫って言うのよ」

 

「……?」

 

 紅の瞳をキラキラさせて、言外に「お姉ちゃん褒めて」アピールしてくるララの頭を優しく撫でる。

 

「えへー、お姉ちゃんもっと」

 

「はいはい」

 

 うん、やり方はともかくお手柄だった。

 可愛いロリっ子の姿をしたグランミラオスに脅迫された謎のシャルロットお兄ちゃんにはいつか謝ろう。

 というか「シャルロット」って女性名だよね? なのにお兄ちゃん呼び? 凄くボーイッシュな女の子だったのかな?

 もしくはオカマとか。

 

「姉上。ところでララが入手したその紙には、どのような兵器が書かれているのですか?」

 

「わ、わたくしも気になりますわ!」

 

「俺。も。見る。」

 

「ちょっと一斉にくっつかないで、おしくらまんじゅうになってるから!」

 

 いつの間にか擬人化していた他の3人が互いを押し合いながら兵器リストを見ようとするので、喧嘩にならないように紙束をバラバラにして3人に配る。

 もう、子供みたいなことしないでよ。

 一応は古龍種の頂点なのに、集まってくれた古龍達の前で威厳のない姿を見せて良いのかしら。

 

「これは……!?」

 

「あのサル共、本当にこんなモノを使ってますの!?」

 

「やっぱり。人間。クズ。」

 

 私の背後で、兵器リストに目を通した弟妹達が絶句する。

 いきなり嫌悪と殺意を滾らせた『禁忌』の迫力に、周囲の古龍達が怯えて後ろに下がった。

 あのリストを見れば、そういうリアクションになるよね。

 私も反射的にリストを破りそうになったし。

 

「姉上、これが事実ならばもはや猶予はありません。一刻も早く人間共を絶滅させるべきです」

 

「竜機兵を含めて兵器は全て潰す。その製造方法も絶対に後世には残さない。だけど絶滅はナシだよ。この世界に、人間は必要だから」

 

「しかし……」

 

 納得がいかないのか、不満そうな表情になるバルカン。

 確かにこの兵器はある意味では竜機兵よりも酷いけど、悪いのはこの兵器を開発した馬鹿共だ。

 私も口が悪くなるのも仕方ないと思う。

 

 だって、このリストにある兵器は全て龍脈をエネルギーにして起動するんだから。

 

 古龍種もブレスや能力の使用に龍脈を使うけど、古龍種が使った龍脈は自然に還元される。

 だから何の問題もないけど、この兵器には龍脈を自然に還元する機能なんてものは付いてない。

 つまり、リストにある兵器を使うとこの星の龍脈は凄い早さで減る。その先にあるのは龍脈が枯渇して星が砕ける未来だ。

 

 繰り返すけど、この兵器を考案・開発した奴は馬鹿だ。

 これだと敵であるモンスターを倒すどころか、自分達も一緒に死ぬことになるのに。

 

「……やられる前に、こっちから攻撃しよう」

 

 パチンッと指を鳴らして、私はこの場にいる全ての龍の視線を自分に集める。

 

「まずはシュレイド王国の力を奪おう。どれだけの大国でも、あれだけの数の竜機兵は作れない。間違いなく周辺の列強国もグルだ。だからまずはシュレイド王国に手を貸してる、周りの国を狙う」

 

「お姉様、なぜシュレイド王国を後回しに? わたくし達とこの場に集った龍の力で一斉攻撃すれば、今日にも勝てますわ」

 

「それだと死人が多すぎるよ。私達が攻撃するのは各国の首脳陣、キラーズ、そして兵器開発に関わった連中だけ。一般人は絶対に巻き込まない」

 

「それは……」

 

「確かに遠回りだけど、被害を最低限に抑えるにはこれしかない。人間が持つあらゆる戦力を粉砕して、降伏させよう」

 

 理想論はこうだ。

 まずは全ての国に共存の提案をして、和平条約に応じなかった国を攻撃対象とする。

 同時には攻めない。

 1つずつ順番に国家の首脳陣と兵器に関係する施設だけを襲撃し、国の頭を潰すことで政治上の滅亡とする。

 そうすれば国を失った人々が難民として他の国家へ流れ込み、その対応で国力が奪われるでしょう。

 これを繰り返し、ジワジワと人類全体を締め上げる。

 最後にシュレイド王国の首脳陣が降参すれば、一般人への被害は最低で収まる……と思う。

 私は戦争のプロじゃないし、そもそもモンハン世界だからね。セオリーとか分からないよ。

 

「とにかく攻撃の優先順位はこう!

1位、兵器。

2位、和平を受け入れない首脳陣。

3位、キラーズ」

 

 これが私が今の段階で思いつく『理想論』。

 全て思い通りにはならないだろうけど、悪くない戦略でしょう。

 

「姉上。その作戦なら、やはりシュレイド王国が最優先では? 最大の国家を潰す方が見せしめになりますし、多くの難民が出ます」

 

「潰す前に、シュレイド王国で調べたいことがあってね」

 

「……姉上がそう仰るなら」

 

 よし、決まり!

 それじゃあ早速――

 

「お姉ちゃん、待って」

 

「どうしたのララ、何か分からないことあった?」

 

「ララ達はともかく、他のみんなは?」

 

 ……あ。

 そうか、忘れてた。

 いくら祖龍でも、同種じゃない他の古龍との会話はできない。

 今も思い切り人間の言葉で話してたから、周りの子は私が何を言っていたのか理解してないじゃん。

 

「……古龍達も人間の言葉を憶えることは出来るかな? このままだと意思疎通が大変じゃない?」

 

「確かに。大雑把な命令を出すには問題なさそうですが、詳細なやり取りには支障が出ますな。分かりました、我らで今回の戦いに参加した龍に言葉を教えましょう」

 

「おっけー。じゃあボレアス、バルカン、アルンに任せたよ」

 

「「「は?」」」

 

 全く同タイミングでポカンとした表情になる3人に苦笑しつつ、私はララを抱っこする。

 

「私はララに案内してもらってシュレイド王国の王都に侵入してくるよ。なるべく早く帰るから、よろしくね」

 

 そう言い残して擬人化を解除し、ララを頭に乗せる。

 『禁忌』の中でララだけが空を飛べないから、こうして私に乗せて飛ばないと移動が手間だからね。

 

 ――それじゃあ、シュレイド王国へ行こうか!

 

 

 

 

 

 

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「……バル兄。恨む。から。な。」

 

「せっかくお姉様と合流出来たのに、また別行動なんて……。バルカン、覚悟は出来ているのでしょうね?」

 

「わ、我は何もしてないではないかッ!?」

 

 理不尽に責められたバルカンが逃げ出し、アルンとボレアスが火球ブレスで狙撃する。

 自分達を率いる王達の酷い姿に、古龍達は呆れた視線を向けた。

 このアホみたいなやり取りが嵐の前の静けさだと、全ての龍が本能で感じながら。






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