天地神明の真祖龍   作:緋月 弥生

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第4話 黒龍伝説/紅龍伝説

 やっはろー。

 毎日ずっと狼のお肉だけで飽きてきたから、試しに近くに生えてるキノコを食べたらとんでもなく不味くて悶絶したミラルーツです。

 うん、自分の食性を無視しちゃダメってことがよく分かったね。もうキノコや植物を口にするのはやめよう。

 モンハンの二次創作でよくある、食べた物の特性を獲得できる、なんて都合の良い能力は持ち合わせていなかったみたい。

 

 さてさて、実はここ数日でまた体が大きくなった。

 産まれたての頃と比べたら、今の私は一回り以上も成長したんじゃないかな。

 おかげで一度に食べられる量も増えて、山積みになっていた狼のお肉はどうにか腐る前に全部食べきれそうだね。

 正直に言うとそろそろ違うものを食べたいし、早く食べ尽くしちゃおう。

 

 それにしても、新技を開発してから何もしてないわ。

 朝起きる、お肉食べる、龍脈と紅雷で遊ぶ、お肉食べる、寝るを延々と繰り返すだけのぐうたら生活。

 今も木陰で寝そべりながら、尻尾の上に乗せたタマゴを転がして遊んでるし。

 むぅ、このままじゃニートから抜け出せない。

 かと言って別にやる事もないし……ん?

 

 尻尾の上で転がしていたタマゴが、少し揺れた。

 ま、まさか、ついに産まれるというの!?

 慌ててタマゴをそっと地面に下ろして、私は揺れているタマゴから少し距離を取る。

 あっ、もう1つの方も動き出してるじゃん!

 

 そして動き始めてから数秒で、先に揺れ始めたタマゴにヒビが入った。あっという間に亀裂はタマゴ全体に広がると、ひときわ大きく揺れてタマゴがついに割れる。

 中から飛び出してきたのは、私と同じく頭部に4本の角を備えた紅蓮の龍。

 

 あ、あれ?

 どうしてすでに赤色になってるの?

 私の予想だと、黒色だと思ったんだけど?

 

 ちょっと混乱する私を他所に、まるで溶岩のような赤い鱗と体毛に覆われたその龍はタマゴから完全に這い出した。

 シルエットは私そっくりで、違うのは色と体色くらい。大きさは孵化直後の私と同じくらいで、今の私と比べると一回り小さいね。

 間違いなく祖龍である私に匹敵する力を有するその伝説のドラゴンは私をじっと見つめると、ゆっくり近づいてくる。

 だ、大丈夫かなこれ。

 私の知識が間違ってないなら、この子はめっちゃ危険なモンスターなんだけど。いきなりガチバトルとか嫌だよ?

 

 そんなことを考えているうちに、内心でめっちゃ冷や汗をかいてる私の目の前まで紅蓮の龍がやって来た。

 そしてスンスンと鼻を鳴らして私の匂いを嗅いだと思ったら、次は軽く私の首筋を舐めながらくっついてくる。

 ……なんか子犬みたい。

 見た目はドラゴンで厳ついのに、全ての仕草がとにかく可愛い。私の庇護欲と母性が凄いくすぐられる。

 控えめに言って可愛すぎなんですけど。

 めっちゃ頭を私の胸元にこすりつけてくるし、尻尾ブンブン振ってるし、もしかしなくても甘えられてるよね?

 

 ……っていうか、あなた紅龍ミラバルカンでしょう?

 種族は古龍種、古龍目、源龍亜目、ミラボレアス科。

 その名は『運命を解き放つもの』を意味し、その怒りは大地を震わせ、天を焦がし、世の空を緋色に染め上げる。

 獄炎の大地に降り立ち、この世界に終末の時を齎す存在と謳われる『禁忌のモンスター』の一柱。

 その正体は、黒龍ミラボレアスが怒りで体を紅に染めた姿――。

 

 おかしくない?

 何で生後0秒で怒り狂ってるの?

 MH3Gで大勢のプレイヤーをフルボッコにした黒曜石のブラキディオスでも、殴られるまではキレないよ?

 怒り喰らうイビルジョーだって最初は通常個体だからね?

 

 次々と脳裏に疑問が浮かぶけど、私は思考を強制中断することになった。

 ――パキッと音を立てて。

 残る1つのタマゴにも、ついにヒビが入った。

 

 怒れる邪龍として伝説に名を残してるくせに、タマゴにヒビが入る音に震えて抱きついてくるバルカン。

 可愛いけどそれで良いの?

 ミラバルカンのカッコイイ姿に憧れてたプレイヤー達が今のあなたの姿を見たら、呆然と口を開けて崩れ落ちると思うけど。

 私は可愛いからアリだけど。

 

 私がバルカンと戯れている間にも最後のタマゴは割れていく。

 そして、数秒後。

 私と私の後ろから顔を出しているバルカンに見守られて、タマゴの中から漆黒の龍が顔を出す。

 シルエットは私とバルカンとそっくり。

 ただし体色は私と正反対の黒色で、瞳は黄金の光を放っている。

 

 ――黒龍ミラボレアス。

 古龍種、古龍目、源龍亜目、ミラボレアス科。

 その名は『運命の戦争』の他にも古語で様々な意味を持つ、古から語り継がれる伝説の黒龍。

 モンスターハンターシリーズの初代ラスボスであり、『禁忌のモンスター』の筆頭格。

 たった数日でこの世界全土を焦土に変えるほどの力を有し、伝承で最も凶悪で強大なモンスターの1つとされる。

 

 そんな伝説の龍はバルカンと同じく私をじっと見つめた後、ゆっくりと近づいてきた。

 ボレアスはまず私の匂いを嗅ぎ、次にバルカンの匂いを嗅ぎ、最後に尻尾で私の顔をペチペチと叩く。

 な、なにさ?

 私の顔を叩いても何も起きないよ?

 そう呼びかけてもボレアスは私の顔をペチペチと叩き続け、ご機嫌そうに喉を鳴らす。

 バルカンは私にひっついたままボレアスを興味深そうに眺め、互いに目が合うと同時に首を傾げた。

 

 いや、可愛いけど!

 弟みたいでほっこりするけど!

 何で! 同一存在なはずのボレアスとバルカンが別個体になってるのよ!?

 

 どうやら、何もかもモンハンの設定通りという訳ではないらしい。

 その日は暗くなるまでバルカンにひっつかれ、ボレアスにオモチャにされ、何も出来ないまま3人(3体?)密着したまま寝ることになった。

 

 

 

 

 

〜Now loading〜

 

 

 

 

 

 まだ3分の1くらい残ってた狼のお肉が尽きた。

 大量のご飯がどこに消えたのかというと、それはもちろんバルカンとボレアスの胃袋の中。

 やはり中身が人間のなんちゃってモンスターな私と違うのか、2人(2体?)とも凄い勢いで狼のお肉を平らげてた。

 それ、そんなに美味しいかな?

 口周りを狼の血で真っ赤にしたボレアスがもっと寄越せと尻尾で私を叩いておねだりしてくるけど、もうどこにもお肉はないよ。

 どれだけレーダーで調べても狼の反応ないから、調達は無理です。

 

「――――」

 

 同種だからなのか、一応私の意思はボレアスとバルカンに伝わるらしい。

 もうお肉が食べれないと理解したボレアスは、不服と言わんばかりに尻尾で私を叩く。

 あなたホントにそれ好きだよね。

 でもお願いだから、大きくなったら尻尾で叩くのはやめてね? 成体の黒龍に尻尾でビンタなんてされたら、いくら私がルーツでも絶対に痛いから。

 今だから可愛いで済んでるけど。

 

「――ッ!」

 

 ずっと文句を言うボレアスに苛立ったのか、私に密着して昼寝してたバルカンが牙を剥いてボレアスを威嚇した。

 するとボレアスもすぐに挑発に乗り、バルカンに飛びかかろうとする。

 はいはい、喧嘩しない。

 私はバルカンを尻尾で押さえつけて拘束し、ボレアスの首根っこを甘噛みして軽く放り投げた。

 邪魔されたボレアスが体当たりしてくるけど、体は先に産まれた私の方が大きいからね。体格差でボレアスの体当たりを受け止めて、軽く顔を舐めて機嫌を直すように宥めてあげる。

 しばらく舐めてるとようやくボレアスの機嫌が直った。代わりに嫉妬したバルカンが拗ねたけど。

 あなた達ね、私の体は1つしかないんだから。

 何でもまとめて構ってあげられる訳じゃないでしょう。

 

 はぁ、これは前途多難かも。

 今は私の方が強いからボレアスとバルカンを同時に抑えられるけど、この子らが成長した後はどうしようもない。

 いくらルーツでも、黒龍と紅龍を同時に相手にしたら勝てないよね。

 

 ……それなら、選択肢はただ1つ。

 私が圧倒的に強くなるしかない。

 成体のボレアスとバルカンを圧倒できるくらい私が強くなれば、いつでもこの子達の暴走を止められる。

 覚悟、決めないといけないかもね。

 

 まぁ、その前に、今日の夜ご飯を確保しないと。

 いくら禁忌のモンスターでもご飯がないと死んじゃうし。

 

 ……ミラルーツに転生して初めての狩り、頑張らないと。

 私と手のかかる弟達のためにもね。




明日は用事があるので、更新できない可能性があります。
申し訳ありません。

大切なものは――

  • 更新速度ではない、質だッ!
  • 質ではない、更新速度だッ!

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