頭の中を空っぽにしてゆる〜く読んでくれると幸いです。
Fateの酒呑童子を出したのは続き書きやすいかなぁと思って出した。
牛鬼ちゃんの見た目は角を生やした女の子!
あとは想像にお任せします。
注意点はクソ駄文です。
とぞ
──牛鬼
各地で伝承があり、その大半は非常に残忍・獰猛な性格で、毒を吐き、人を食い殺すことを好むと伝えられている。ただし、その中の一部には悪霊を祓う神の化身としての存在もいる。
その存在は一つとは限らない。古来より妖怪というものは人の噂や恨み憎しみによって生まれるものが多く、逆に言えば人があっての妖怪なのだ。
つまり人あるとこに妖怪あり、場所や環境によって様々な伝承があり同じ妖怪だとしてもその見た目や在り方はそれぞれ違う。
そして今から話すものは牛鬼と恐れられた妖怪の少し不思議で切ないお話。
◆
『夜一人で出歩くと牛鬼に襲われ食われてしまう』
ここ最近は妖が出るという噂が村から村に広まり人は外に出ることが少なくなっていた。
その犯人である牛鬼は人間を捕まえることが難しくなり空腹に身を任せて手当たり次第に他の妖怪を食らった。
少しは腹も膨れた牛鬼だったがその場しのぎの間食のようなもの、人間の血肉を叫びを絶望した顔が牛鬼の喜びであり力になる。
たがそれでもまだ足りない食い足りない。そこで出てこないならこちらから出向いてやろうと角を隠して人間を装い村に侵入した。
村に潜入した牛鬼は少しがっかりしていた。村人達は痩せ細り前のような活きのいい人間は少なくなっていたからだがそれでも久しぶりの人間を目の当たりにして溢れる涎を止めるのに精一杯だった。
少し落ち着こうと休憩できる長椅子に座り今宵のターゲットはどれにしようと村人をじっくりと観察していた。すると隣に若い青年が座ってきて昼食の弁当を食い始めた。
青年はそこまで痩せ細ってはなく旨そうに弁当を食べている。弁当は決して良いものではなく味も付いてないだろう、それでも旨そうに食うもんだから牛鬼は余計にお腹が減りグゥ〜っと腹を鳴らしてしまった。
「……」
「えぇーっと、食べる?」
青年も牛鬼がチラチラと見てくるのを気付いており腹を鳴らした牛鬼に自分の弁当をあげようとする。
しかし牛鬼は空腹より人間に恥をかかされたことに腹が立ち弁当を奪うように受け取ると口の中に全部掻き込むと空になった容器を青年に渡してゆうえつ愉悦スマイル!
「ふっ、すまないな全部食べてしまった」
口では謝罪しているがどちらかというと馬鹿にしているように聞こえる。牛鬼はここで青年は怒ってくるとばかり思っていたが、
「いい食べっぷりだ」
とニッコリ笑顔の青年を見て牛鬼は訳が分からなくなった。何故この男は自分が少ししか食べてない弁当を全部食われて笑っていられるんだ? と疑問が頭の中でぐるぐる回る。
「どう、美味しかった?」
「……まずい」
「はは、手厳しいね」
相変わらずニコニコと笑う青年にだんだんと興味が湧いてきた牛鬼、そして同時にこの男の絶望に歪んだ顔が見てみたいと思い始めた。
「そういえば見ない顔だ」
「……この村の者じゃないからな」
「なるほど」
この男の絶望した顔が見たいが流石にここで襲うわけにもいかない。と青年を諦めようとしたときに牛鬼にチャンス到来。
「今日は泊まるとこは決まってるの?」
「……ない」
「えっ、でも近くの村に行くにも今からだと日が暮れるよ」
「……」
「んー、もしよければ俺の家に来るかい? 俺は一人暮らしだし家も無駄に広いからさ」
青年には純粋に目の前の女性をほっておけなかった。この村はそこまで貧しくはないが裕福でもないため自分と家族のことだけで手一杯のためよそ者を歓迎する人など存在しない。夜に女性を一人で出歩くのが心配で家に誘ってるが……
「いく!」
この妖怪、青年を襲うことしか考えていない。
「ここが我が城ってね」
「……ボロいな」
「なっ!?」
家に案内してもらうと「飯を作るから待っててくれ」と青年は慣れた手つきで料理を始める。
「よし、完成っと」
「これは……」
「ただの雑炊。味には自信ありだよ」
「貴様の分は?」
「あ、あぁ、お腹一杯でね」
理解し難い、また訳の分からない行動をして私を油断させようとしているのか? と警戒する牛鬼だが青年は特に何もすることなく台所で洗いものをしている。
「ところで何でこの村に?」
「貴様には関係ない」
「でも気をつけた方がいいよ、最近は妖怪が出るって噂だ」
「どうりで誰も村の外に出ない訳だ」
「村の皆んなは恐怖に包まれてる。実際村に帰ってこない人もいるしね」
「……妖怪を恨んでいるか?」
この不思議な青年は自分を妖怪を恨んでいるのだろうか、それとも他の村人のように恐怖しているのかという牛鬼のただの好奇心だった。
「妖怪を?」
「あぁ、人を襲い命を奪い略奪の限りを尽くす妖怪を恨んで恐怖しているのか?」
「…………可哀想だと思うよ」
「……なに?」
可哀想、同情のようにも聞こえるそれに牛鬼は怒った。自分よりも下等な人間に同情され見下されることが我慢ならなかった。
すぐにでも殺してやるという衝動を抑え込みどういう訳か問いただす。
「人間だって人を殺すし奪う、どうしようもないクソ野郎だっている。人間もいくつもの命の上で生きていてそのくせ自分達は強者であり続けようとする。人間の方がよっぽど恐ろしい生き物だよ」
「……」
「じゃあ妖怪はどうだろう。確かに人を襲い命を奪う怖い存在だ、けれど彼らだって生きてるし生きる為の行為なんだろう。妖怪の全てがそうだとは言えない、けれど孤独というのは悲しいものだよ。
俺の思う幸せは友を作り、愛を知り、妻を娶り、子供や孫に囲まれて死ぬ。
人に恨まれ恐怖されながら死ぬなんて……俺は可哀想だと思う」
やはりこの男は妖怪に同情していた、下等な人間が同情なんて馬鹿にしてると襲ってやりたかった。しかし牛鬼は青年を襲えなかった、もし襲ってしまったら自分が可哀想な生き物だと認めてしまうような気がして。
「俺個人の感想だけどね」
「まったくだ、貴様の価値観を押し付けるな」
「あはは、ごめんごめん」
「疲れた、私はもう寝る」
「おやすみなさい」
「……」
日も沈まり真っ暗な部屋の中で牛鬼は青年が眠るのを待っていた。そして青年がぐっすり寝たのを確認して静かに青年に近寄り殺して食べようとする。
「zzz」
「……」
青年の喉元に突き刺そうと腕を振り上げる。しかし鋭い爪が青年の喉元の手前でピタリと止まる。
「……チッ」
先程の話から牛鬼は胸の中がモヤモヤしていた。初めて妖怪に本気で同情している人間、初めて優しくされたこと、見ず知らずの者を助けるお人好し、この人間を見ていると牛鬼はおかしくなりそうだった。まるで空っぽだった心の中が満たされていくようで。
そしてそれが牛鬼には我慢ならなかった。それを受け入れてしまうともう二度と残虐非道な妖怪には戻らないような気がした。
ここに居てはいけない。
牛鬼は静かに青年の家から出て行き元の住処へと帰るのだった。
◆
あれから一ヶ月、牛鬼はさらに弱っていた。
人が襲えなくなったのだ。
いつものように人を襲おうとしても直前で手が止まってしまい人間に逃げられてしまう。人を襲うたび思い出すあの青年の顔とあの笑顔。
もうすっかり襲う気力も無くなった牛鬼は山を登り古きライバルを尋ねた。
山に登るにつれ強い酒の匂いと唯ならぬ妖怪を感じる牛鬼は重い足を動かしついに頂上へと着くとそこには一人の少女がいた。
「久しぶりやなぁ、牛鬼」
「あぁ」
酒呑童子。日本の大妖怪とも呼ばれる牛鬼の知る中で最強ともいえる存在で昔は血で血を洗う争いをしてたが今は偶に世間話をする中になていた。
「えらい弱りきってるやないの、どないしたん?」
「……酒呑、貴様は人間をどう思う」
「んー? うちは人間好きやでぇ、食べたら美味しいし酒のつまみにもなるからなぁ」
「そうじゃなくてだな。……その、なんだ」
牛鬼がうまく言葉に出来ないでいると酒呑童子はじっと牛鬼を見つめて何か分かったように頭を抱える。
「牛鬼、おまえはん…………人食えなくなったやろ」
「えっ、なぜそれを」
「はぁ〜まさかおまえはんが人間に感情を持つなんてなぁ」
「あ、ありえん! この私が人間に感情を持つなど!」
「偶におるんよ人間と暮らしたり話したりして人間に感情を持ってしまい食べれんくなってしまう妖怪をいっぱい見てきたわ」
牛鬼ににも当てはまり青年とのことを酒呑童子に話すと涙を流しながら笑うので牛鬼には訳がわからなかった。
「あはははっ! それ、おまえはん、恋やねぇ」
「は? ……こい、恋……はあぁぁぁ!?」
そう恋。牛鬼はありえないと思いながら今までのことを頭の中で思い返すと、ニッコリと笑う青年、見ず知らずの自分に優しくしてくれた青年、妖怪にも同情する青年、ドキドキと高まる胸のざわめき。
確かに世間一般で言う「恋」なのだろうが牛鬼は認められてなかった。何せ今まで散々見下してきた人間によりにもよってこの自分が恋をするとは思ってもいなかった。
「わかるわぁ、人間でもイケメンやったら誰でもええよなぁ」
「貴様と一緒にするな!」
◆
酒呑童子と別れて自分の家へと歩いているが頭の中は青年のことで一杯だ酒呑童子に教えてもらうまで唯の違和感でしかなかった感情が恋だと知ると青年への想いは爆発していた。
しかし、同時に不安が高まる。青年は自分のことを認めてくれるだろうか、今までの行為を許してくれるだろうか、騙していたことを怒らないだろうか、と悩みは増えるばかり。青年は見ず知らずの者を助けるほどのお人好しでそんなことはないだろうと自分に言い聞かせるも乙女は深く考えてしまう。
だがそんな不安をかき消すように青年に会いたいと会う気持ちが一番だった。あんな別れ方をしてしまって気まずいが今すぐにでもあの笑顔が見たいとルンルンで走る牛鬼。
数日前までとは大違い、恋する乙女は怖いものだ。
──妖怪が人の心を持ってしまったことの罰なのだろうか、すぐにその想いは儚いものとなることを知らない。
帰り道の途中に大雨が降り近くの川は氾濫して近づけばひとたまりもない状況だった。
だがそれは人間だったらの話で牛鬼には関係ない。荒れ狂う川の中だろうが本来の姿に戻れば逆流にも逆らえる。
降り注ぐ大粒の雨と稲妻の音の中、牛鬼には聞こえていた人の叫び声が。何かあったのかと辺りを見渡すと川の中で暴れているなにかがいた。それを見て牛鬼は足に力を込めて一気に走り出す、川の中で暴れていたのは紛れもないあの青年だったから。
「だ、誰かっ……!」
今にも溺れそうで一刻も早く助けなければと川に飛び込もうとする牛鬼は足が止まる。
自分に課せられた掟に背くことになるが自分は後悔しないだろうか?
否! ここで彼を助けなければもっと後悔する! と牛鬼は本来の姿に戻り川に飛び込む。
「ツカマレッ!」
「っ!? ……!」
青年がつかまったことを確認すると牛鬼は川から飛び出して雨のしのげる近くの洞窟へと駆け込む。青年の体は酷く冷たく危険な状態で牛鬼は口から火を吐き青年の体を温める。
「っ……君はっ」
「喋るな、黙って休んでろ」
「……ゴホッ……君、妖怪だったんだ」
「……」
「……ありがとう」
雨も止み空には虹がかかり日が差す洞窟で青年は目を覚ます。横にはずっと看病してくれていたであろう牛鬼が座っていた。牛鬼は青年が起きたことに気づくと青年を頭を引っ叩く。
「馬鹿者っ! 何故あの雨の中川に近づいたのだ!」
「いてっ! そ、そんな怒らなくても」
「うるさい! そこに直れ!」
牛鬼の説教は数十分続いた、青年の足は痺れる痛みに耐えながら自分の行動を本気で反省するのであった。
「ふふ、貴様が無事ならそれで、いい」
「えっ……ど、どうした!?」
膝から崩れるように倒れた牛鬼を青年は咄嗟に受け止める。そして青年は気づく、牛鬼が消えかかっていることに。
「な、なにが……」
「安心しろ、これは人を助けると身代わりになりこの世を去るという掟だ」
「っ! 安心なんかできるかっ!」
「! ……怒ってくれるのか?」
「当たり前だっ、なんで、なんで俺なんか」
「……鈍感な……奴め。女の口から言わせるな」
「……え」
「お前に惚れたらしい」
「っ! ……君が」
「いい顔だ……その顔に免じて……許してやろう」
「でも俺は、君になにもっ!」
「もらったさ……たくさん、な」
「……」
「私は……怖かった……お前に妖怪だと知られて……恐れられることが」
「……」
「私は……醜い妖怪、今まで何人もの……人の命を奪ってきた。そんな私が……恋をしていいのだろうか、お前に……恋をしていいのだろうか」
「……」
「……最後に、聞かせてくれ……お前は……妖怪の……私が怖くない、のか?」
「……怖くなんてない、君はとても綺麗だ」
「そう……か、私は綺麗か……これは、そうだなぁ……とてもいい気分だ」
牛鬼は生まれて初めて心の底から笑い、光となって消えた。
Fateに続く!
的な感じにしたいけど stay night、zero 、Grand Order どれに繋げようか迷う。