刀剣は誰かに出会いたい   作:コズミック変質者

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閃の軌跡Ⅰをクリアしたのでベルグシュラインの行動が決定しました。これからII始めます。

それはそうとFate/HF3章良かったです。シルヴァリオもなんかの間違いで映画化しねぇかなぁ・・・しねぇよなぁ・・・。閣下が危なねぇもんなぁ・・・。


第12話

 問題というのは解決した端から、次から次へとまた新たな問題がやってくるものである。

 

 解決した問題がある。以前より問題視されていたユーシスとマキアスのことである。と言っても、こういった前置きをした上で彼らのことを語るのならば、無論一つしかないだろう。

 言うまでもなく、念願叶って彼らの仲が極端なマイナスから修復されてプラスへと傾いたことだ。

 

 切っ掛けとなったのは二回目の特別演習。その中で判明したユーシスが抱えていた事情と、マキアスが領邦軍に逮捕されたことに対してのユーシスの献身などが幸をなし、傾いていたマキアスの貴族に対する偏見意識の天秤が元に戻ったことが原因だった。

 典型的な傲慢な貴族かと思えば、内実は全くの別のものであり、寧ろ他者に対する情は遥かに深いものであった。それは本人から感じとったものもそうだが、ユーシスの故郷たるバリアハートの人々と触れ合うことでも判断できたことだった。

 

 今では全ての貴族というわけにはいかないが、それでもマキアスの貴族に対する偏見意識はかなりマシになっている。貴族をまるで違う生物だと思い込んでいた頃のマキアスはもういない。

 

 これが解決した問題。クラス単位で喜ばしいエピソードである。ならば発生した問題というのが、最近妙によそよそしいラウラである。

 

 特別演習が終わって以降、ラウラの行動に変化が生じた。端的に言って、クラスメイトと共にいる時間が短くなった。それは誰の目から見ても明らかであり、さらに言えば特定の人物達を故意的に避けようとしているのは筒抜けである。

 

 

 

 

 

 中間試験が明日へと迫り、これから試験へ向けての最後の追い込みとして、各々で苦手科目の勉強会でもどうかという流れの時だった。あのマキアスとユーシスでさえ互いの苦手科目を言う中で、学力では最も心配であるフィーがエマに言われて参加を表明してからすぐに、

 

「せっかくだが断ろう。少々個人的に復習したい科目があってな」

 

 ラウラはこういった場では率先して纏めていこうとする委員長気質なのだが、そのラウラが勉強会より離脱を宣した。誰もが驚き、そしてまぁそうだろうなとこれまでの動向から納得する。

 

(ラウラの視線、フィーと多分だけどベルグシュラインに向けられてたよな・・・)

 

 リィンは去っていく背中を見つめながら考える。先程ラウラが向けていた視線の先は、彼女の隣に立っていたからこそ、リィンにもよく分かった。最初はフィーに向けられ、そして正面に戻ったであろうその視線の先は人と人の間であり、あったのは教室の出入口。

 

 この場にベルグシュラインはいない。というのも、ベルグシュラインはHRが終了してからすぐに、サラに連れていかれてしまった。偶に平日であろうと授業終わりに酒瓶を持ってベルグシュラインを付き合わせているのは誰もが知ることだが、まさか中間試験の前日にそんな暴挙は犯すまい。

 ならば何故連れて行ったのか。それはリィンには分からないことだ。

 

 

 

 

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「それで、そろそろ要件を話してもらいたいのだが」

 

「ならもっと手を弛めなさいよ!!模擬戦とはいえ教官を殺すような攻撃をしてくるんじゃないわよ!!」

 

 リィンの懸念を他所に、ベルグシュラインとサラがいたのは旧校舎の地下。ベルグシュラインの手によってものの数分でこの場に存在していた魔獣達が一掃された空間にて、両者は武器を手にぶつかり合っていた。

 いや、丁度サラの手より銃と剣が離れたことによって終了したところだった。

 

 最後の一撃はマジで危なかったと、切断されかけた自分の首を優しく撫でながら落とされた武器を拾う。やはりというか、今回もサラは本気(・・)で戦ってみたものの、ベルグシュラインには一撃も攻撃を当てることが出来なかった。

 最早御法度とも言える全力の魔法(アーツ)さえも、規格外の剣技によって物理現象を切り裂き無効にするという埒外。銃なんてそもそもどこに撃っても当たることなんて億が一にも有り得ないし、牽制にもなりはしない。ならば剣技———言うまでもなく勝てるはずがない。

 

 剣、銃、魔法(アーツ)とバランスの取れている総合力重視のサラに対して、ベルグシュラインは剣のみ。万能は突き詰められた一の舞台に上った時には抵抗虚しく敗北するのみ。これに関しては前々から判明していた事実であるし、今更どうこうするようなものではない。

 

 それにしても、だ。

 

「アンタ、また強くなってるわね」

 

「そう・・・なのだろうか。自身としては前に戦った時と同じように、適切に手を抜いてはいたのだが。仮に成長していたとしても、それを確かめることが出来る相手がいなかったのでな」

 

 全く規格外である。サラは全力で戦ったというのに、ベルグシュラインは程よい手加減を行っていた。しかも本人曰く、加減の具合は前回の戦闘時と同様だと。ならば言うまでもなく、ベルグシュラインはまた一つも二つも強くなっている。

 

 ベルグシュラインの成長には他者が全く関与していない。一概にこうだとは言えないが、ベルグシュラインクラスの実力者ともなれば成長は打ち止めが見えてきて、更に上を目指すようであれば自身に食い下がれる、もしくは釣り合う程の強敵等は必須となってくる。

 しかし現状のベルグシュラインの周りで最たる強者といえばサラであり、そのサラでさえこの有様。

 

 恐ろしいことにベルグシュラインは普段の素振りなど、もはや必要ないのではと思えるような鍛錬を重ねることで、独力で絶えず順調に成長を遂げているのである。

 更にはサラとの戦闘中でも関係なく成長を遂げているのであれば、最早行き着く先など想像すらできない。

 

 やはりというか、評価を下すしかない。ベルグシュラインという男は状況さえ整えられてしまえば、単独で帝国をひっくり返せる(・・・・・・・・・・・・・)可能性が大いにあるということを。

 

 サラとて実力者であることは間違いない。帝国でもマトモに相手をできる者は数えられるほどしかいないだろう。そのサラでさえ、ベルグシュラインに手を抜かれて惨敗している。加えて底知れぬ将来性。

 

 いや、そもそも個人を対象としている時点で前提を間違えている。帝国の誇る二十を超える機甲師団。数多の費用を出されて長年かけて用意され、今も尚技術の発展により進化しているそれら全てが、ベルグシュラインの前では鉄屑にしか思えない。

 

 別段愛国心が強いわけではないのだが、それでも帝国には思い入れがある。ならばこそ、帝国壊滅なんていう最悪の未来を齎す可能性を見過ごすつもりは更々ない。完璧な安全策を取るのであれば殺した方がいいのかもしれないが、もしを考えた時のメリットは計り知れないし、そもそも誰が殺せるという。

 それにサラ個人としても、ベルグシュラインを殺すことには反対である。

 

「近々、っていうか数日以内にウチの寮に管理人———メイドが来るわ」

 

「普段は誘っても断固として断る貴公が今回自ら誘いをかけてきたのは、その人物が原因か。ならば普通の者ではないのだろうな。態々俺に釘を刺しに来るほどだ」

 

「ええまぁ・・・面倒な相手よ」

 

 サラと彼女(・・)の仲はそこまで旧いものではない。寧ろ最近と言っても差し支えないものである。しかも相手側への印象は最悪、とはいかずとも限りなく悪い。彼女自身へもそうだが、所属している組織に対しても。

 

「旧知の様だが、その意識は性格からか?それとも、純粋な力量からか?」

 

「どちらかと言えば当てはまるのは後者だけど・・・私でもなんとかなる相手だからアンタから見ればそこまでね。面倒なのは所属の方よ」

 

 帝国で暗躍する秘密結社。目的不明、構成員の大半は不明。怪しさ満点の組織であり、危険思想などを持っているのかは不明だが、予測している保有戦力は少なく見積っても国単位。

 

「そういった組織については詳しくないのでどこかは知らぬが、俺に言ってきたというのはそういうことなのだな?」

 

「ええ。アンタは界隈じゃかなり有名だからね。引く手数多のはずよ。だからこそ勧誘の類は一切断りなさい。ていうかお願い、断って。最近きな臭くなってきてるって言うのに、アンタまで相手にしていられないのよ」

 

 本人以外には意味さえも分からない目的を持つこの男が目的達成の道を見つけ、結社へと入ればどうなるか。いや、結社でなくても反帝国や何らかの犯罪組織に入るだけでいい。それだけで手の付けようが無くなるのは明白であり、それを未然に防ぐこともサラの役目の一つ。

 

「そうか。しかし了承したと頷くことは出来んな。仮にだ、そこに我が運命があるのならば、俺としては是非乗らせてもらいたい」

 

 しかしだ、たかだか言葉で忠告をした程度でベルグシュラインが納得するはずもない。運命を探し続けている刀剣にとって、出会えぬはずの運命があるのであればそれがたとえどのようなものであれ———己の死という形であったとしても、運命であるのならば了受してしまう。

 

「それが私達の、《Ⅶ組》やフィーの敵になるとしても?アンタの言う運命っていうのがあの子たちなのかもしれないのに?」

 

「無論だとも。そしてだからこそ、俺はそれこそ然りと思うだろうよ」

 

「そう・・・やっぱりアンタはバカなのね」

 

 

 

 

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 旧校舎より帰路へ着けばすっかり日は沈んでおり、降り注いでいた雨も止んでいた。これから寮へ帰り中間試験の前日である今日くらいは自室で復習にでも励もうかと、珍しく修練以外の事を考えていた。

 

 久しぶりの対人戦に、それなりに満足したということだ。空を斬る素振りや、どれだけ強かろうとも所詮獣が相手では、剣技の成長としてはそれ相応になってしまう。それでは実践的な術技を現実的なレベルで磨けない。かといって例え人間が相手でも、相手が弱過ぎれば殺さぬように手加減が必要になってしまう。

 躊躇いなく殺す気(・・・)で戦える相手がいるのはとても良い。是非とも毎日とは言わずとも毎週でいいので手合わせを願いたいのだが、頼んでもサラは断固として拒否してくる。

 

 まだ見ぬ運命との邂逅を思えば、斬空真剣(ティルフィング)は幾度でも、果てなく練磨される。

 

「もしかしてお前さん、ウィリアム・ベルグシュラインか?」

 

 校門を抜けようとしたところで、朧気ながらも奇怪(・・)さに覚えがある青年が声を掛けてきた。バンダナを巻いたベルグシュラインと同じ珍しい銀髪の快活そうな青年。

 

「確かに。俺で相違ない」

 

「おっ、やっぱりか有名人。お前さん学院じゃそれなりに名が知られてるぜ」

 

 彼の言うとおり、ベルグシュラインは悪い意味で学院内で有名である。入学式の場に刀剣を持ち込んでいたことも、校内でも常に同様の姿が見られることも、グラウンドでリィンと殺し合いの如き斬り合いをしていたことも。

 入学式や校内への刀剣の持ち込みは学院から正式に許可を貰っていたし、大勢に見られたリィンとの斬り合いだって、彼らからしてみれば訓練の一環であるし、事実数多の事を学んだリィンは聞かれればそう言うだろう。

 

 しかし誰にも言わないため風評としては、最初は顔の良い男子生徒だったのが、常に手にある刀剣のせいで物騒極まりなくクラスメイトでさえも殺しにかかる危険人物。

 

 間違ってはいないのだ。なぜならベルグシュラインは必要があるのであればクラスメイトを殺すことにさえ躊躇わないため、一概に否定も出来ない。必要が無いからやっていないだけなのだ。

 

「おっと、名乗り遅れちまったな。俺は二年のクロウ・アームブラスト。気軽にクロウって呼んでくれよな」

 

「それでは是非、貴公の事はアームブラスト殿と呼ばせてもらおう」

 

「いやそっちで呼ぶのかよ。是非って言ったならせめて名前の方じゃねぇのかよ。それと殿っていうのもむず痒い」

 

 堅物だなーとクロウは苦笑する。しかしベルグシュラインが名前で呼ぶことなど滅多になく、それこそフィーの様に執念深く何度も言い寄らなければならない。

 堅苦しい呼び方はベルグシュラインなりの相手への敬意なのだが、だからこそ友好というラインには踏み込めない。敬意というのは相手と一線引いてこそなのだから。

 

 だがしかし、それをどこまで気にするのかは人それぞれ。堅苦しいし一線引いてると思い自らも距離感に線引きを行う者もいれば、そういう奴なんだろうと、気にせず気軽に踏み込める者だっている。

 そしてクロウは後者の人間であった。

 

「それで、もしかして俺に何か用でもあるのだろうか?」

 

「いやいや、噂の有名人がいたからちょっと声掛けてみただけ。噂は色々あるけど、実際それがどんくらい合ってそうなのか知りたくてな。あぁ、別に言いふらしたりする気はねぇよ。そういった線引きはちゃんとしてるからな」

 

 そう言って笑うクロウの姿を、ベルグシュラインは微塵も表情を変えずに、まるで観察するかのような目でみている。

 

 見れば見るほど分からない存在だ。やはり何かとのラインとも呼べる物が確立されているのは感覚的に見て間違いないだろう。だがどこに伝わっているか、何を対象にしているかが分からない。接続されているラインも、そこにあることは確立されているというのに、断絶しているかのように中途で途切れている。

 休眠状態ということを表しているのか、それともその状態こそが普通なのか。

 

 それにどうも、ラインを伝って与えられているものは単純な力ではないらしい。

 

 ダメだ、これ以上は分からない。人造惑星(プラネテス)や神の使徒などの存在を目にしたことがあったのならば、きっとこのラインがどう言ったものなのかを理解出来ただろうが、残念ながらベルグシュラインは知識として知っているだけで、実物がどのようなものかは分からない。

 だがこの様なことが特異なのは間違いなく、だからこそと言うべきだろうか。

 

「って、そんなに見詰めないでくれよ。男に見詰められても嬉しくないし、じっくりと見られるのもなんか気恥しいだろう」

 

「申し訳ない・・・不躾だった。ただ興味があってな。貴公に繋がる不可視のライン。どのような存在と繋がっており、供給を受けているのか。そしてそのような存在と繋がる貴公は、何者なのかと」

 

 特大の爆弾を無遠慮に落としてしまった。その言葉にほんの僅かだが、しかし圧倒的な武才のおまけとして驚異的な眼を持つベルグシュラインにはハッキリ見えていた。

 クロウの瞳が揺らぎ、伝えてくる。驚愕になり、敵意へ変わり、そして元に戻ったことを。

 

 そのような分かりやすい反応をされてしまい、そして気づいてしまった以上、鈍感と言われる程疎くなければ、最早間違いないと言えるだろう。クロウ・アームブラストはその力を自覚し、理解していると。そして今この瞬間、喜ばしいことにベルグシュラインは彼の敵となったのだ。

 

 そしてそれ即ち、クロウはベルグシュラインの———

 

「はは、なんだ、結構大人びて冷めたやつかと思ったら案外思春期みたいじゃねぇの。俺は普通の学生、クロウ・アームブラストだぜ?しかしその本性は、日夜帝国に蔓延る悪と戦う正義のヒーローってな。いや、勿論だけど冗談だぜ?マジにすんなよ?」

 

 と、いつもの己であろうと被り直した仮面に違和感は何もない。捲し立てることもなく口調も声音も普段通り。トールズ士官学院二年のクロウ・アームブラストがそこにいる。彼を知っている者ならば、何の疑問も抱かない完全無欠の一般人。

 

「いや、俺は———」

 

「おっと、この後生徒会長や他の奴らと試験勉強しなきゃなんだ。悪ぃな後輩くん。今度は座りながらゆっくりと話そうぜ」

 

 それじゃーなー、と軽く手を振って去っていく。ベルグシュラインは小さくなるその背中が見えなくなるまで、穴が空くのではと思うほど見つめ続けていた。

 

 心中では真偽を確かめるために今すぐにでも背後より殺さない程度に殺しにいけば、きっと出し惜しみはやめてくれるだろうと考えていた。しかし同時に、それではどちらにも負は残ろうとも。

 ベルグシュラインはこの場での運命探しの中断を余儀なくされ、恐らくクロウは秘めている何か、はたまたその素性に何かしらがあるのか。どちらにしても彼もこれまで通りにはいかなくなる。

 

 今やるべきか、それともやらないべきか。どちらにするかはベルグシュラインには選びきれない。

 結局背中は見えなくなった。ならばこの場の機会は失われたと、凝視していた瞳をそっと閉じた。




最後のクロウのなんかコレジャナイ感はごめんなさい。サラの時点まで4000字しかなくて、でもそれじゃぁなんか足りないよなぁって思って。こじつけみたいな感じになってしまいました。

いい加減フィーと塩を会話させてあげたい。でも次回は待ちに待ったシャロンなんだよなぁ。
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