刀剣は誰かに出会いたい 作:コズミック変質者
ヴィータとの邂逅よりクリスタルガーデンへと急いで出向いてみれば、そこでの戦闘は終わっていた、ということはなく。鉄道憲兵隊が主となって、残る魔獣を相手取っていた。
近衛兵達の持つ装備と大した差はないとはいえ、それでも彼らよりも確実に早く、的確に魔獣を駆除していく。身につけてきた経験が格段に違いすぎるのだ。
どのような状況になっているのか分からないが、外から見えるクリスタルガーデンの内部にも騒乱の跡が残っているということは、進度は不明だが、事態は大分進行したということだろう。元より、間に合わせない為の足止めだ。ならばこの状況は当然のこと。
鉄道憲兵隊はヤワではないため直に治めることだろう。この場は任せていいと判断し、クリスタルガーデン内へ入る。
内部はもぬけの殻という訳ではない、が人は疎らにしかいない。この場に列席していた客品達やレーグニッツ知事は騒乱の元凶となったギデオン達が立ち去るや否や、憲兵隊の護衛を受けながら魔獣蔓延る戦域から離脱し、安全な場所へと移動している。
内部にいるのは魔獣との戦いによって傷を負い、負傷で足でまといにならないように離脱した者達だけだ。
その内の一人、比較的軽症の近衛兵に近づき、膝を曲げて向かい合う。
「すまない、傷に障らないのであれば話を聞かせて欲しいのだが」
「・・・その服、学生か。ああ、そういえば遊撃隊として士官学院生が参加していたな。確か彼らも制服を着ていたよ」
「その事について訊ねたいのだ」
曰く、突然現れた魔獣の起こした騒動に紛れてこの庭園内に侵入し、レーグニッツ知事に負傷を負わせた後、アルフィン皇女とお付の学友、昨日紹介されたエリゼを人質にして奥へと魔獣を残して逃走したらしい。残した魔獣はこのエリアを巡回していたA班が討伐し、そのまま下手人達を追いかけに行ったとのこと。
感謝を述べながら、この後の自分の行動を即座に考える。リィン達を追うべきか。それとも他にも予測されていた襲撃地点を回るべきか。特に本来自分も共に戦うはずだったB班の現状が気になるが、しかしベルグシュラインはリィン達を追跡することを選択した。
理由として、まず最も危険な状況に立たされているのが彼らだから。ギデオン達に関わらず、テロリストというのは入念な事前準備を行ってから行動に移す。それは軍でも猟兵でも変わらないが、持ち得る戦力などのことを考えれば、テロリストや猟兵の方が準備に余念が無い。
事を起こしたのは帝国の中枢であり、帝都憲兵隊や近衛兵、そして泣く子も黙る鉄道憲兵隊までもが跋扈している場所である。そんな場所で行動を起こすというのなら、尚更だ。
よって彼らの取る行動に無駄なものなど一切なく、あらゆる行動が次の手へと繋がっていると考えた場合、リィン達がとったのは悪手とも言えるだろう。
逃走先に待ち構えるのはより強大な魔獣か、それともヴィータの言っていた『彼』なのか。どちらにせよ人質を抱えたまま追跡されることを計画に組み込むのなら、追手を潰す準備をしておくのは当然のことだろう。
彼らだけでは些か心許ないと、地下水路へと足を踏み入れようとしたその時、地震を思わせるような大きな揺れが起こった。下で一体何が起きているのかは分からないが、少なくともこの揺れは人為的な物であり、起こしたのは敵方だろう。
「遊撃隊のウィリアム・ベルグシュラインで相違ないな?」
戦闘行為はともかくとして、下にいるであろう《Ⅶ組》と人質となった皇女達の安否の確認の為に止めた足を動かそうとするが、またも邪魔が入る。割り込んだのは増援に駆けつけていた鉄道憲兵。手には未だ硝煙香るライフルが握られており、恐らく戦闘終了と共にベルグシュラインのもとへと来たのだろう。
求めの人物が自分で間違いないことに頷く。
「クレア大尉より通達があった。人質となった皇女殿下とそのお付。そして主犯を追跡していた学友達は無事との事だ。逃走した主犯の追跡は我々鉄道憲兵隊が請け持つ。よって遊撃隊である学生達はその任を解く、と」
事務的にそれだけ告げると、その後の仕事も残っているのかすぐに立ち去る。元より戦うことしか出来ないベルグシュラインでは、これより先は必要ないだろう。
クリスタルガーデンより出て、辺りを見回す。傷の治療を行ったり、足を引きずりながら仲間に肩を貸す兵士達。皆やりきったという顔をしている。実際そう言っても差し支えないのだろう。帝都で起こるテロ事件、戦力として投入された強大な魔獣。それらを乗り越えてみれば、確かに達成感などは満たされるだろう。
しかし満たされることも、満たされないことも無く、ただの感慨すらも持ち得ずに、ことの終わりを知ったベルグシュラインはこの場を後にした。
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テロリストの襲撃で手傷を負いながらも、陣頭指揮を執ったレーグニッツ知事の働きで、その後の夏至祭は無事に終了した。クリスタルガーデンや街路などには未だ戦果の跡が残っているものの、市民に大した犠牲はなく、また人質となったアルフィン皇女とエリゼも無事。防衛作戦は成功と言えるだろう。
翌日、サラ教官を含む《Ⅶ組》のメンバーは揃って帝都を後にすることになった。そしてその前に、オリヴァルト殿下とアルフィン皇女に呼び出され、バルフレイム宮殿へと訪れていた。
「君たちには本当に世話になってしまった。兄妹共々、士官学院に足を向けて眠れなくなってしまった」
「いえ、そんな・・・」
「その、あまりに畏れ多いかと・・・」
快活な笑みをしながらオリヴァルト殿下が言うが、自分達は至極当然のことをしたまでだ。元よりかなりの因縁を持っていたので、寧ろ願ってもないことだろう。それに皇族にそういうことを言われると、やはり恐縮してしまう。
「ところで、彼は来ていないのかい?」
「ええ、昨日言っておいたのですが、あのバ———ウィリアムは大した働きをしていないから出向く訳にはいかないと」
「そうか・・・それは些か過ぎた謙遜だと思うのだけれど。いや、これが彼の美徳なのかな」
バカと言いかけ、訂正するサラ教官。そう、ベルグシュラインはこの場に来ていない。というのも、本人曰くA班は皇女殿下を救出し、B班は別の場所でセドリック皇太子殿下の守護をしていた。対して自分が為したことなど比べることすら烏滸がましいと言って、宮殿近くまでは来たのだが、その後は別行動をしている。
ベルグシュラインの行いは聞いている。警戒の網を広げさせようとしたのか、街道に現れた幾多の魔獣を速やかに、風のように排除するその姿は、市民をはじめとした様々な人たちの目についただろう。一般市民からすれば魔獣の強大さなど関係なく、ただそのカテゴリーに収まるだけで大きな驚異である。故に魔の手より守り抜いたベルグシュラインも呼ばれる資格はあるとは思うのだが、本人が拒否するのだからどうしようもない。
そういえばベルグシュラインは今何をしているのだろうか。流石に帝都で刀身を出したまま素振り等を出来る場所は殆どないはずだ。この特別実習の期間中に戦ったフィーとラウラは自然公園を利用したが、あくまで夜で人気がないのを確認してからだ。
時刻は昼前、人は確実にいるだろうし、何より距離の問題もある。
もしくは何か別のことでもしているのか。しかしこれまで見てきた中で、趣味らしいことをしているのは見たことがない。或いはバルフレイム宮殿の前で待っているのだろうか。付き合いが長いフィーに確認しようにも、今は皇族の前である。
そんなことを考えていると、話はテロリストの事へと移った。
ギデオンが皇女とエリゼを連れて逃げた先の暗黒時代の
戦闘員の数はこちらの方が有利だった。にも関わらず、『C』はたった一人で俺達のことを凌駕し、蹂躙した。絶対的な力の差はどうしようもなく、このまま為す術なく事が進んでしまうのかと思ったが、なんと『C』は人質を解放したのだ。
何の狙いがあったのかは分からない。少なくとも皇女という人質が重大なものだと理解しているにも関わらず、呆気なくそれを捨ててしまった。
その後『C』は意味の分からない言葉を残し、仲間達を連れて崩れ去る
無闇矢鱈な破壊主義者かと思えば、何を考えてか容易く人質を解放する。残していった言葉に関しても、まるで帝国を憂い、内より帝国を侵害する者を排除せんとするような物言いだった。
テロリストの狂言でくだらない戯言だと、少なくとも彼らの言葉を直に聞いた俺はその様に流すことは出来なかった。
彼らが真に何を目的としているのか。自分の中で考えても答えは出ない。燻り続ける悩みとして、いつか真実を知り決着の着くその日まで、心の中に残り続けるのだろう。
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帝国解放戦線と名乗る者達のアジトは様々にある。帝国を中心に戦力を地道に蓄えるために、各地にいる帝国へ、そして憎きあの男へと憎悪を募らせる者達を集め、また集った同胞たちの協力のもと、送られてくる武器の数々を安全に、そして内密に運ぶ為に、各地に用意されている。
暗黒時代より残された地下神殿もまた一つ。長年忘れ去られていた場所は当初は魔獣の蔓延る巣窟となっていたが、屈指の戦力である『C』を始めとした幹部達、そして今は壊されてしまったが魔物を操る『降魔の笛』により、確実な安全地帯と化している。
よって、あらゆる敵に怯えることなく、次の時が来るまで安心して潜み隠れることが出来る。
神殿の最奥。安全とはいえ解放戦線であっても気軽に近づこうとは思わないそれなりに深い場所に、リーダーである『C』と名乗る仮面の男と、ヴィータは相対していた。彼女の存在は同じ思いを胸にする同胞たちにも秘密であり、その存在と役目を知るのは真実『C』の一人のみ。
『助かったよ。アンタが『
「構わないわよ。結社としての私も彼とは遅かれ早かれ、一度はああなるはずだったもの。まぁ正直な話を言えば、あんな役目は二度とゴメンね。生きた心地がしなかったわ」
『アンタ程でも、やはり手も足も出ないのか?』
「そうね・・・やりようによってはということかしら。盟主様の言う通りなら、どうにも何かに執着しているから完成していないらしいの。まぁ関係あるのかは分からないけど、何らかの理由があって殺すつもりがないことだけは確かよ」
もしその気があったのなら今頃首は落ちていたと、優しく、繋がっている首を守るように撫でる。
『もし次に《Ⅶ組》と殺り合うことがあれば「二度はごめんよ」・・・だよな。なら他に結社に当てはないのか?アンタでさえも中堅程度なんだろう?戦闘狂とかいそうだし、いるなら是非とも頼みたいんだが』
「いるにいるんだけど、彼の足止めが出来て且つ来てくれそうなのは一人、いえ良くて二人だけね。それでも多分だけど、その時の計画ごと滅茶苦茶になるんじゃないかしら?」
『制御出来ないのか?』
「無理よ。というより、意味合いが違うわね。強さに関しては同類の怪物なのよ。それに飢えている。だから多分、彼らが戦えば戦場ごと更地になるんじゃないかしら」
『なんだそりゃ。本当に人間か?』
「さぁ。知らないわ。・・・ともかく、私の代わりとして用意出来るのは彼くらいよ。他は実力の違いで完封されるわ。これでも文句があるのなら、そちらで用意してみたらどうかしら?」
『アイツらの力を知っているんだろ。悪いがアイツらじゃ不可能だ。『V』なら経歴上、もしかしたらと思ったが本人曰く逆立ちしても勝てないらしい。それに何事も役目ってもんがあるだろう?』
「なら貴方達のスポンサーは?『星座』でも何でも、目的の為なら出費は厭わないでしょう?」
『あっちもあっちで最後の大詰めだ。それに俺達は下請けみたいなもんだしな。どうせ俺も役目が終わればあっち側だ。今後の中心になる以上、優先的に回される戦力はあっちだよ。だからなぁ、頼むよ』
「はぁ・・・あまり無理な注文を言わないでちょうだい。そんな都合良く動いてくれる実力者なんてレーヴェくらいよ」
『確か《剣帝》だったか?だがそいつは何年か前に死んだと聞いたが』
「そうよ。だから私としても困っているのよ。・・・故人の話なんて今はいいわ。だからこの話はこれでおしまい。できるだけ私の方で宛は探してみるわ。まぁ無理なら、さっき言った彼しかいない。だから今度からは全部台無しにされてもいいように計画を練った方がいいわ」
『しゃーない。こっちも出来るだけ対応できるように準備はしておく。まぁちょいと早いかもしれないが、
彼ら二人が見上げた先。闇の中でも薄い輝きを放ち、異様な存在感を醸し出す神殿の中央に祟られている蒼の鋼の巨体。片膝を着いて頭を垂れているにも関わらず、その巨人は見上げるほどの体躯を持つ。
伝承にある七つの騎神。その一つの青を司るその機体はいずれ来る相剋のため、目覚めの時を待ち続ける。
「そういえばお仲間を連れて見守りに来てたのなら《Ⅶ組》?だったかしら。彼らのことを任せても良かったんじゃないの?」
『いや、ちょっと色々あって俺の事を知られるのは不味いんでな・・・』
塩がバルフイレム宮殿に《Ⅶ組》と入るとルート分岐が発生。《Ⅶ組》を離脱、間違いなく偉大な人であるオズボーンに忠誠を誓って鉄血風の塩になって《相克》がオズボーン一強になります。