刀剣は誰かに出会いたい   作:コズミック変質者

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あけましておめでとうございます。


第29話

 話には聞いていたし、記録された映像や遠視を使って実際の戦闘風景は幾度か覗いていた。確かにどれも最高峰で、紛れもなく人類の頂点に立つことができるのだろう。戦闘は専門ではないけれど、強者が近くに多くいる為その程度は理解出来る。

 確かに強いが、それでもあくまで人の範疇。闘気が使えれば更に上まで行けたかもしれないが、使えないのだから仕方ない。

 

 だから仕向けられた《火焔魔人》に相対するには新生を行う必要があり、そのために必要だったのが今使われている鋼の刃。手を貸した結果、盟主の目論見通りに新生は行われたのだが。

 

 だからといって予想外にも程がある。《火焔魔人》が差し向けられた以上、相応の相手であるのは間違いないことで、用意されたものを考えれば半端ということはないだろう。事前情報から見積って《鋼》の首にもその力を届かせるといった程度だと思っていた。

 別に自分とて彼らの全霊を知っている訳では無い。あまりに強力すぎる力は使い所というものがどうしても限られる。マトモに相対できる相手など数える程しかいないだろうし、そういった相手は皆一様に表で名が売れている。よって個人としてはともかく裏の組織の一員である以上は気軽に手出しができない。よって自然と相手は格下になるのだが、甚振るなどの趣味嗜好を持ち合わせていない彼らからすれば、昂らない限りは必要な時に必要な分だけ使えばいいと言うだけのもので、それは長らくこなかった。

 

 端的に、カンパネルラは見誤ったのだ。

 

「これは冗談抜きで《鋼》と互角かそれ以上でしょ」

 

 今回与えられた役割は観測で、どこまで行っても蚊帳の外。直接的な関わりは配達くらいだろう。だけど盟主の命令ということもあるし、個人的な興味も尽きないため結構乗り気であったのだが、いつも浮かべてる笑みは消えて今は結構引き気味である。

 何せ瞳に映し出される映像には、最強を相手にして互角以上に、要塞を諸共に壊しながら凄絶な殺し合いを繰り広げる怪物がいるのだから。

 

 

 

 

 

 ————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 最初の戦場が耐えきれず、要塞全域へと拡大されるのははやかった。焼かれ、砕かれ、斬り裂かれ。戦域が足りないと超越者達が去った後も、条理を超えて襲い来る攻撃は途絶えない。斬撃と炎があっという間に鉄屑を築き上げた。

 そしてそれは一箇所に留まらない。常に移動を繰り返しながら、戦いの余波は確実に内部を破壊する。繰り出される攻撃が多く威力も絶大。蓄積したダメージはいつ限界ラインに到達してもおかしくない。このまま戦い続ければ帝国軍もテロリストも関係なく、要塞の破壊に伴い生き埋めになるだろう。それどころか既に巻き込んでいるかもしれない。

 もしかすれば《Ⅶ組》も。

 

 で、だから?

 

 絶対剣士の名に相応しく、剣技の冴えに欠片の曇もない。あらゆる要因に囚われず理想の形で武技を振るうことができる。目的は一つ、やるべきことは決まっている。ならば躊躇う理由はどこにもないだろうと、持ち得る力を正しく行使するし出来てしまう。

 何せ彼は《斬空真剣(ティルフィング)》。抜けば万物を斬り裂く神の愛刀故に。

 

「流石は我が好敵手(・・・)。この技さえも防いでみせるか」

 

 だからとて、容易に崩せる程に魔人は甘くない。しかしそれでこそと同時に讃える。

 刀剣の性能は間違いなく上昇している。それこそ先程までとは比べるまでもないほどに。星の力も把握している通り。しかしただの(・・・)星辰奏者であるためか、基準値と発動値、集束性と操縦性がワンランク程知っているのとは下がっていたが、それはそれと踏まえて適応するし、大した影響は出ていない。元より高い素養を持ち合わせていたのと、異能単体はシンプルだが単純に強いという訳ではなく、使い手の技量ありきの性能であったため本質的な部分に劣化はそこまで感じない。

 本当に足りなかったのは異能という壁。人間と怪物を隔てる境界線を超える力。故に境界を踏み越えてしまえば《火焔魔人》の力であっても、たとえ再び引き離されようが対応可能。共に扱うは異界の力故に。そして力は闘気(オーラ)に代替可能。刀剣に足りなかった要素は埋め尽くされた。出力に大きな差はあれど、基本的な条件は互角まで到達する。

 

 よってこれで劣りはしないと何度も位置を変えながら、刀剣の冴えを証明するように鋼と焔の軌跡を残して《火焔魔人》と要塞内を疾走する。無論、ただ駆け抜けるわけではない。秒コンマ間隔で何度も刃を交わしているし、魔人が避けた斬撃は要塞に深い斬痕を付ける。夥しく舞い散る火花は衰えを欠片も見せず、むしろ時が経つ事により激しく派手に飛び散っている。

 

 流派を変え、方向性を変え、幾度も適切な手段で攻めては見たものの、未だにマクバーンは健在だ。何度か傷は付け、一度は出力の差異を用いた不意打ちで左腕を切り落としたが黒い炎、魔法(アーツ)の類なのだろう。その炎が彼を癒し、斬り落とした左腕を再生した。

 つまりは無傷の状態で、それはどちらも変わらなかった。

 

 状況は完全なる互角。多彩な焔と強大な出力に任せた力技のマクバーンと、刃の斬線延長と神域の技巧の組み合わせによるベルグシュライン。互いにできず、向いていないものを相手が持つからこそ、そこが妙に噛み合っている。得意分野が同じであればもっと早く決着が着いていただろう。

 

「言ってる割にはまだ温いぞ。もっと奥まで引き上げろ、燃え尽きちまうまで上げていこうぜ」

 

「それでこそだ。そら、次だ」

 

 数多の火球を一振で一度に両断しながら壁を駆け上がる。無邪気に追ってくる視線を確認すると同時、微塵に変えてやろうと閃く三桁を優に超える斬撃が驟雨の如く降り注ぐ。刃は容赦というものが欠け落ちて、ただマクバーンを斬滅することにのみ目的を注がれている。よって斬れ味が落ちることなど有り得ない。事実、通り過ぎた風景の一部となっていた帝国兵の幾人かは巻き込まれて既に彼らの刃により轢殺され屍となっている。しかしそれを気にする事はなく、だからたとえ要塞ごと斬り刻もうともお構い無し。ただ敵を斬滅するという目的の元、達成の為にも闇雲に被害は広げられる。

 

「くくっ、はははははッ!」

 

 力ではなく数による攻撃。しかしどれもが無視していいものではなく、マトモに受ければマクバーンとて容易く下される。そして全てを逃げきることは不可能。どのような逃げ道を選ぼうと、確実に一撃は与えてみせ、そこから崩すと。刀剣本人に情が薄いため殺意というものは感じられないが、迫り来る斬撃は逃がさぬと雄弁に語る。そんな絶望を前にしても決して心は折れることは無い。寧ろ先のベルグシュラインのようにこれでこそと、さらに心を滾らせながら出力を上昇させる。

 

 才気溢れ、道を歩む者が一生に一度できるかの究極の剣が出来て当たり前のように無造作に放たれる死の領域。少し前に光の剣匠に使用したものよりも、さらに発展し進化を遂げた絶技を前にすれば恐怖で身体がすくむだろう。差を感じて背を向けるだろう。攻めるという意思を砕く領域にマクバーンはあえて身を晒す。

 

 何か策があるというわけではなく、そちらの方が面白そうだからという悦を優先した自殺行為。足を踏み入れた瞬間に、マクバーンを刃が襲う。如何にマクバーンの能力が高くとも強引に突き進んでいるため狙い刃は増えていき、それら全てを捌ききれるはずがない。致命的な斬撃以外は魔剣で叩き落としている、共に埒外の力であるため延長される刃を焔をもって急所を防いでいる。それでも一瞬ごとに切創が魔人の身体に刻まれる。余裕なんてない。しかし決して引くことはなく、寧ろ傷を負うごとに前進の意思は強くなる。

 

 絶対に踏破するという強靭な意志が、マクバーンに強い影響を与える。

 

(ああ、最高だ。レーヴェでも《鋼》でもねぇ。これだ、こいつが欲しかったんだ)

 

 切り刻まれながら、マクバーンは夢の中にいる感覚を抱く。それはこれまで求め続けてきた楽しめる相手、情動が薄く鈍いことを除けば最良な獲物は、マクバーンの渇きを癒し続けた。

 

《剣帝》ではマクバーンの方が強い。その為、戦いは常に追われる立場であった。追い縋ってくるのは嬉しい。今はまだでも、いつか必ず自分を楽しませてくれるという確信があった。いつか自分から余裕を無くせると、戦に狂わせてくれるという確信があった。

 

《鋼》は物足りない。彼女はレーヴェよりも確かに強い。それこそマクバーンと結社における双翼の最強と、今はまだ呼ばれている。しかし彼女は理性が利きすぎる。なまじ最強で、そして背負うものが大きいからこそ最後の一線を超えることをしない。良くも悪くも遊びがない。

 そしてマクバーンはそれを知っているから、その頑固を認めているから。だから乗り切ることが出来ず、やる気を出せない。

 

(コイツは違ぇ。全霊を出して全部を振り絞って、なのにまだ追いつけた気がしねぇ。火力がどうとかじゃねぇのが滅茶苦茶にも程がある)

 

 その点、ベルグシュラインは理想そのものだ。成長を続ける剣技は出力を上げていくマクバーンの炎さえも関係なく切り捨て続ける。無いにも等しい情動は冷徹に過ぎ、マクバーンの殺害という一念のみを元に駆動している。

 これが異常なことなのは誰から見ても明白で、だからこそ誰よりも楽しませてくれる遊び相手となっている。

 

 心無き相手を詰まらないなどというのは弱者の戯言だ。強者は、マクバーンはいつでも飢えさせられる。なまじ強すぎるから、万能な炎を操り愛称の良すぎる魔剣を振るう。まるで物語に出てくる魔人の如く、人が勝てる存在ではなくなるから。

 

 命を賭けることによる危機感。生物として当然の如く持ち得るソレを、強いが故に腐らせてしまったから。しかしもはや違うと、滾る炎が証明する。

 

(そうだ、これでいい、これがいい。矜恃だの計画だの、煩わしいもんなんざ微塵もない)

 

 上昇を続けていく出力は、遂に肉体に深い影響を与え出した。刻まれた傷口より溢れ出るのは灼熱の炎。まるで身体に血と炎が入れ替わったかの如く、より深い炎を纏っていく。もはや変化は血だけに留まらず。視線に、呼吸に、関節に。出口を求めて暴発しようとしているかの如く、それに応じて、マクバーン自身の性能が飛躍する。

 

「見事、切り抜けてきたか・・・!」

 

「いい感じだがまだ足りねぇなぁ、この程度よォッ!!」

 

 傷だらけのマクバーンが遂にベルグシュラインを己の領域へと引き込んだ。刻まれた傷は計り知れない。ボロボロのその姿は最強という称号には似合わない。常人ならば失血死しても可笑しくないほどの出血だが、魔人故に人外れている故に気にせずベルグシュラインへと肉薄する。そしてここまで踏み込んでしまえば、刃を伸ばす意味は無く。

 

 刃が無限にぶつかりあえども鍔迫り合いには陥らない。一瞬でも止まってしまえば次の瞬間には絶命するやもしれぬ激動の戦いに、そんな余裕は欠けらも無い。

 

「かっ捌いてやるよ、喜びやがれ」

 

 呼応するように魔剣が唸る。技を捨て、力のみを費やされた一撃は、瞬間的にベルグシュラインが受けてきた攻撃の中で何より重いと予期させる。鋭さなど後からついてくるものだと、目先の威力に囚われたからこそ出せる必殺。

 だがそれで?その程度は刀剣ならば簡単に予測できるし、予測できるなら対処は解ると対応し容易く攻守を幾度も逆転させる。そこから有利な状況へ。しかし許さないと意表を突くかのように魔剣が投擲される。

 

 宙を切り裂く魔剣は炎が色づく衝撃波を撒き散らす。あまりの速度に何かに燃え移るということはないが、その光景は地と並行に飛ぶ流星。しかしそれすらも対応してみせるのは流石としか言い様がない。

 まともに受けることが出来ないのならまともに受けなければいいと、跳ね上がる剣先。瞬のうちに放たれた幾多の斬撃は魔剣ではなく足場へと向けられる。落下していく刀剣を、魔剣を呼び戻した魔人が追撃する。

 

「最高だよなぁ、お前さんもそうだろ?こんだけ熱く殺りあってんだ、魂が燃えて仕方がねぇ。嗚呼、《鋼》の奴とは大違いだ。今にも殺せそうなのに、同時に殺されちまいそうだなんて。たまんねぇじゃねぇかよ、なぁ」

 

「無論だ。俺は今、生きていることを初めて実感している。思い通りに進まぬ今に、しかし抗おうと心が湧いて堪らない」

 

 自分も同じ、この戦いを楽しんでいると肯定する。涼やかな顔に微笑を浮かべた刀剣は燃え盛る魔剣の刃を迎撃する。魔剣だけでは無い。絶えず放たれる炎の弾幕。それら全てを魔剣と同様に撃ち落とす。身も心も燃えたぎり諸に影響を受けるマクバーンとは正反対に、無情の刀剣の冴えは相変わらずブレがない。心と体を徹底的に切り離した動きは選択を決して間違えない。

 

 迎撃の刃と同時に神速の斬撃で切り捨てられた上下の鉄板。今度はベルグシュラインではなく、マクバーンの足元だ。くり抜かれた天井がマクバーン目掛けて落下し、崩された床は丁寧にマクバーンの力の入れの邪魔をし、多少の浮遊感を与えてくる。崩落に巻き込まれても負傷はしないが、目障りなのは変わりなく、行動へと遅れが生じてしまう。だから当然、吹き飛ばすなりなんなりするのだが。

 

「だから従ってみることにしてみたよ。貴公を斬滅したいというこの意志に。故に、簡単に斬滅されてくれるな。まだまだ期待に応えてくれ」

 

「やってみろォ!!」

 

 ただ見ていることもなく、抵抗を阻害するべく刀剣が更なる刃を振るう。正面からの狙いも捻りも特にないシンプルな横一閃は、しかし防がなければ正確にマクバーンを斬滅する。上下の崩壊と正面からの斬撃、退く道は背後にしかなく。そしてその道を選べばきっと、詰将棋のように刀剣の求めた方程式は完成する。ならば上か、それとも身を任せて下に落ちていくか。もしくは正面。しかし踏ん張りが利かない。

 

 気付けば歩まされていた敗北への道筋に、しかしマクバーンは未だ消化不良。まだまだ楽しみたい、戦いたい、充足を得て心を埋めたい。故に敗北を受け入れることなど断じてゴメンで、死んでやるつもりもない。

 だから———

 

「————!!」

 

 叫んだ言葉、抗う意思は剣閃が迫るよりも早く焔と呼応する。僅かの間にマクバーンの炎が意思に従い限界まで増幅し、収縮し、破裂する。四方八方に凝縮され尽くし、爆裂した炎の嵐は規模も威力もこれまでとは比べようにもない。それは最早先程までの順調な出力の上昇とは比較にならない。本来ならば通るべき過程さえも知らぬと飛び越えている。言うなれば奇跡を形にするかのようなあまりにも唐突で急激で、埒外の現象。

 

 延長された刃が消し飛ぶ。瓦礫が抉れる。鉄が溶かされる。炎が炎を喰らい尽くす。マクバーンを中心に引き起こされた噴火の如き大爆発は問題となっている列車砲の威力が可愛らしく見えてしまうほどに、凝縮された力を遺憾無く発揮する。地獄の炎をそのまま持ってきたのかも思うような止まることの無い破壊の連続。見るも無残なほどに内部に歪な大穴を開け、要塞としての機能を今度こそ完全に停止させてしまう。

 

「くはっ・・・んだよ、こんなことも出来んのか」

 

 マクバーンは運が良かった。もし自身の炎に対して完全なる耐性を持っていなければ、今頃真っ先に消し炭になっていただろうから。余波である爆破の勢いを諸に受けたことで瓦礫に突っ込んで生き埋めになりかけたが、頑強な体に大したダメージにはならない。間違いなくあの瞬間に限界を振り絞ったというのに欠片も衰えがない炎の噴射で瓦礫を吹き飛ばす。起こす体は羽毛のように軽い。

 

「・・・くくくっ、なるほどな。こりゃいい。まさか俺の炎にこんな使い方があったとはな。盲点だったぜ。ああ、そりゃあ普段はぶっぱなして終わっちまうから気付きようもねぇか。我ながら勿体ねぇなぁ、ったく」

 

 傷のついた体を『神なる焔』で癒しながら、先程自分が起こした現象を再現し、完全に手にしようと掌に炎を灯し破裂させながら開閉する。理論派ではなく感覚派であるため、一度やってしまえば後は慣れだ。

 いくら全部が混ざっているとはいえ、使い方全てを知っている訳では無いということだ。焔の全てを知った気でいた自分に呆れてしまう。まだまだ可能性は広がっているし、楽しみは延々と続いていく。

 

「で、お前さんはいつまで見てるんだ?」

 

 仰ぐように視線を上に向ければ、突き破れ風通しが非常に良くなった上階から無情の刀剣が平然と見下ろしていた。完全に無傷、とはいかなかったのだろう。似合わなかった《Ⅶ組》の赤い制服は形をなくし、白いシャツは煤などで黒ずんでいる。しかしそれだけだ。

 マクバーンの外れた条理さえもを超越した力を前にしても、刀剣は外的負傷を受けることはなかったのだ。あの瞬間に何をしたのかは、最早マクバーンには想像つかない。

 

「ったく、一瞬だがやったと思ったんだがな」

 

 何せ今の自分は最高に調子がいいのだ。まるでゴミで詰まっていた水道がやっと勢い良く流されたかのように。スッキリとした爽快な気分を味わえている。これにスパイスを追加すればさぞ楽しいだろうと、魔人は再び魔剣を手に取る。

 魔剣の握り心地が格段に上がっているという確実な実感。心做しでもなんでもなく、純粋に身体が軽い。

 

 マクバーンの力とて無限ではない。精神的な形で消耗という概念も存在するのだが、どういう訳か底というものが実感できない。限界値に穴でも空いたかのように、永遠に飛翔できるかのように。

 

「だから———」

 

 踏み出した一歩が軽い。一息で刀剣を魔剣の間合いに侵入する。

 

「ここらでいい加減、ケリをつけようじゃねぇか。さっさと決めちまおうぜ」

 

「無論だ。貴公を決して逃しはしない。しかしその前に、どうか寿がせてくれ。貴公の為しえたその偉業、正しく俺の求めた運命だ」

 

 もう幾度目の確認か。迎撃に移る刀剣はやはりというか、いっそ清々しいまでに何も変わっていなかった。

 

 

 

 

 ————————————————————————————————

 

 

 

 

「あの男、こちらの計画まで潰すつもりかッ」

 

《V》は立ち向かってくるトールズ士官学院《Ⅶ組》を巨大なガトリング砲で牽制しながら振動を続け、破壊音を撒き散らす要塞へと意識を向ける。今回の最大の不安要素であったウィリアム・ベルグシュライン。

 彼のことを、元猟兵であり『西風』と粗を競っていた《V》が知らないはずはない。

 

 直接力をぶつけあったことは無いが、その歩みや経歴、なし得た結果を知ってしまえば成程、正しく規格外だ。聞けば直接戦闘を主とする猟兵としての基礎的な技能である闘気(オーラ)を使えないという。だというのに、並み居る猟兵団を斬滅し、果てにはあの『赤い星座』の副団長とその娘である狂犬を傷一つなく撃破したという。

 よって元同類ということもあり、最もベルグシュラインの実力を正しく評価できるのは自分だろうと《V》は考えている。

 

 だからこそ最大最強の相手であると、疑いようもなかったし自分と《S》では太刀打ちできないと認めるのも当たり前だった。トップである《C》でもいい勝負ができるかどうかと。現実を知るからこそ、《V》はマクバーンの計画への投入に賛成した。たとえ理念を一蹴されようとも、ベルグシュラインの足を止められるのならば構わない。寧ろ自分達はどう言い繕うがテロリスト、勝手な理想を力で押し付ける集団に違いはない。この道を進む決意をした時点でそんなものは全て受け入れているから。

 

「だとしても、どっちもどっちだ。まさかここまでッ・・・!」

 

 それはマクバーンか、もしくは《Ⅶ組》に向けられた言葉か。

 弾丸が当たらない。足場が微細に振動しているせいか、狙いが正確に付けられない。その振動に対応して動こうとしても、少しすれば巨大な振動。対応が追いつかない。

 振動源であろうマクバーンにまさかこれ程の力があるのは想定外だったが、だがそれは同時にマクバーンがこれだけの力を以ってしてもベルグシュラインを打ち破れないことに他ならない。逃げ回っているのか、それとも正面から相手をしているのかは分からないがそれでも生きているだけで異常である。

 

「オオオオォォッ———!!」

 

 ベルグシュラインが底知れぬ怪物と戦っている。ほぼ確実な事実がリィンを奮い立たせる。別れる原因となった絶望的な破壊。明らかに異常な何かにベルグシュラインはたった一人で立ち向かっていった。ここに来るまでの道中で見た数多の斬痕と激しい火災の数々は、それだけ激しい戦いを要塞内で繰り広げたということだ。怪物的な相手に今もまた。そしてまだ終わっていない。今も命懸けで戦っている。味方もなく、頼れる誰かもいない。孤立無援の状況で。

 

 ならばこそ、ここで自分たちが彼より先に倒れるわけにはいかない。

 

「面倒な奴らだな、お前達は!!」

 

 ユーシスへ牽制の弾丸をばら撒きながらリィンの太刀を《V》は砲身で受け止める。まだ力が足りない、押し切れないと見た目以上に鍛えられた歴戦の肉体を崩すに能わず。太刀を跳ね上げ、無防備となった胴に豪脚を叩き込む。マトモに当たれば臓器が破裂するのではと見紛う蹴りの手応えはかなり軽い。すかさずの追撃は、しかし行えず。《V》としては一瞬の隙を狙ったつもりだが、視界に入った後衛の魔道士による魔法(アーツ)の光に身構え、チャンスを一つ取り逃してしまう。

 

「今尚積み重ねた経験が実を結んでいるのか、それとも当てずっぽうの予測での単なる偶然か」

 

 この年にしては間違いなく強い。ベルグシュライン程の規格外ではないが、この実力ならば今からでも猟兵として活動していけるだろう。追撃封じの連携も完璧だ。リィンに攻撃が行われた直後からエマは既に魔法(アーツ)を待機していたし、穴を埋める為にユーシスが前に出ている。《S》と戦うサラの援護を担っていたガイウスも穂先を《V》へと向けている。

 ああ、彼らはいいチームだ。互いのことをよく見ている。仲間の行動に全幅の信頼を置いていると言ってもいい。それはまるで、在りし日の誰かのように。

 

「懐かしむ資格など、俺にはない・・・そして!」

 

 止まるつもりも毛頭ないと、ガトリング砲の回転数を上げていく。ここで砲身が溶け落ちようが爆散しようが構わないと。完璧な勝利を掴むことを諦めた、相打ちを前提とした戦術へと移行する。《Ⅶ組》を相手取るにはこれは必要なことなのだと、《V》は既に彼らを認めていた。




マクバーンについての本作での設定。勢いで書いたので注意。

覚醒の中ではダインスレイフのように小刻みに連続して覚醒する、上昇値が少なめのタイプ。基本的には焔の出力の強化が主で小技は万能型特有のやれそう、やれるだろ、やれたって感じ。
強みとしては能力による自傷が存在せず、全ステータスが高水準。突き詰めればグレンファルトみたいにできる。また異能の源泉が自分自身なので心次第で無限に覚醒できる可能性を秘めている。

ただ覚醒はあくまでも火焔魔人としての限界値の更新で、魔神としてはあんまり意味ない。魔神になれば本来のステータスに戻るけど覚醒で振り切ることが出来なくなる。ゲームプレイした際に、人間体の方が楽しそうじゃない?っていう所感からの設定。

火焔魔人のシルヴァリオ風ステータスとしては
発動値AAA
収束性AA
拡散性AA
操縦性AAA
付属性AAA
維持性AAA
干渉性C
で考えてます。
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