なぜだろう?
親愛なるペチュニアへ
やっほー、元気してる? 楽しかったハロウィンも終わってふと周りを見てみれば、すっかり森の木々も冬支度しててびっくりよ。
ま、ゴーストは寒さなんて感じないんだけど、こればっかりは気分というか、生前の思い出が感じるはずのない寒さを届けてくれるというか、きっと貴女も死んだら分かると思うわ。
そうそう、リリーちゃんからの手紙で知っているかもしれないけど、今年のハロウィンでもあの子が最優秀仮装賞に選ばれたのよ。お姉さんとしては鼻高々ね。
仮装賞とはいっても、妖精の魔法を駆使してどれだけ上手に変身できるかをグリフィンドールの談話室で投票するだけの身内同士のお気軽なものなんだけどね。ちなみに、我がレイブンクローの文化にはそんな小粋なイベントはなかったわ。シクシク。
私もマグル生まれだから“こっち”に来てから実感したのだけど、こっちのハロウィンは非魔法族のそれとは結構趣きが違うの。貴女も知っているハロウィンはやっぱり多くの部分にキリスト教っぽさというか、聖人と共に悪霊を追い出して豊穣を祝う部分があるのだけど、魔法族のハロウィンはむしろ“悪霊と共に”祝う祭りなの。
つまりは、この世のあの世の境が曖昧になる日。天国と地獄を明確に分けるキリスト教じゃ決して歓迎されないことだけど、魔法族にとっては亡くなった身内の霊をとても身近に感じられる日でもある。だから、私も久々に里帰り、いわゆる“ゴーストの墓参り”が出来るのだけど。
この縁っていうのは本当に不思議なものでね、こうして貴女と私が手紙で繋がっているように、例えどれだけ離れていても必ずどこかで通じているものがあると互いに信じていれば、言葉では説明できない不思議な力が結んでくれるの。ある人はそれを聖人の加護と呼んで、ある人は精霊の力と呼ぶし、偉大な先生は愛の力と呼ぶわ。
どこぞのクズが“確率論を誤認しただけの錯覚かもしれませんよ”とかロマンの欠片もないことを言ってきたから、この前ハグリッドが内緒で連れ込んでたキメラをけしかけておいたわ。キメラの炎は悪霊にも効くのよ、ザマアミロ。わたしだけじゃ到底無理だったけど、ヘレナ校長とアリアナちゃんの協力と例の悪ガキ共の力を利用すれば、大抵のことは何とかなるのよ。凄いでしょ。
他にも、“マーリン・リング”っていう季節の祭りを祝う際の、魔法族の伝統的なゲームというか、催し物もあってね。ホグワーツでは年に七回あるのだけど、新学期から数えてハロウィンはその一回目で、ここは一年生の担当なのよ。二回目はクリスマス直前の冬至の日だから、今年二年生のリリーちゃんもきっと参加すると思うわ。
私がホグワーツに通ってた頃は、マグル文化のクリスマスやバレンタインに押されて一時期廃れ気味だったけれど、ダンブルドア先生が校長になった頃から昔ながらの魔法族や異種族の祭りも見直されているの。最近では湖の水中人や森のケンタウロスと一緒にイベントをやろうって機運もあるみたいね。何だか楽しそう!
ちょっぴり危険なところもあるけど、何だかんだでホグワーツは不思議に満ちた楽しい学校よ。リリーちゃんも色んな友達に囲まれて日々楽しそうだし、心配することなんて何もない。
って言いたいところではあるのだけど、ホグワーツの外側は決して安全とは言えないのも悲しいけど事実よ。特に、マグル生まれの子は何らかの騒動に巻き込まれた時、すぐに助けに行ける親が身近にいないから、絶対に注意だけは欠かさぬように、貴女からも改めて伝えてあげてちょうだい。あの子がホグワーツにいるうちは、私が責任持って預かるから心配はいらないけどね。
来年になったらホグズミード行きも解禁されるけど、保護者の許可サインが必要だから、今後の状況次第じゃ親御さんに頼んで禁止してもらうってこともあるかもしれない。もしその時が来たら、貴女の言葉もきっと重要になるでしょう。まあ、取りあえずはセブルスの小僧を肉盾にして、いざとなったらアイツを囮にすれば問題ないわ。それに、肉盾には馬鹿のジェームズや阿呆のシリウスも使えるしね。
そちらの学校も勉強やら色々と大変でしょうけれど、新たに学んだこと、昔との違いとかをまた教えてくれると嬉しいわ。なにせ、私がマグルとして生きていたのは40年近く前のことだから、何もかもが変わりつつあるでしょうし。ペチュニアが教えてくれる今のマグル世界の数々は、ほんとに新鮮なの。
じゃあ、また会いましょう。いつかこの縁が大きくなって、イースターにでも貴女の下に化けて出られることを願います。
マートル・エリザベス・ウォーレンより
親愛なるマートルへ
こんにちはマートル、私も元気にやっています。本当は貴女の方がずっと年上で、もっとかしこまった書き方をするべきなのでしょうが、貴女の手紙に窮屈な敬語は使いたくありませんのでいつも通りに書きます。内緒だけど、歳の近い友人のように思っているの、本当よ?
お外は随分と寒くなってきましたけど、エバンズの家には最近、電熱ヒーターなるものも取り付けてみました。お父さん曰く、時代の最先端らしいわよ。リリーのために昔ながらの暖炉も残して置きたいところですが、昨今の“此方側”は煙突のある家もどんどん少なくなってきていますし。
リリーの学校生活の事、色々と教えてくれて嬉しいわ、本当に助かっています。あの子ったら、結構まめに手紙は送ってくれるのだけど、素敵なお友達のことばっかりで自分のことは全然書かないの。まあ、あの子のお友達が増えた分だけセブルスの内容が少し減ったのはザマアミロだけど。ええ、隠しませんとも、あいつに嫉妬してます、嫉妬嫉妬。貴女に隠したって仕方ないものね。
アイツは入りたがってたスリザリンに行って、リリーがグリフィンドールに組分けされたと聞いた時には思わずガッツポーズしちゃったわ。まあ、手紙で残念がってたリリーには悪いと思ったけど、こういうのは別問題よね、だって私はセブルス嫌いだもの。
本当に、その辺りは貴女に感謝しています、マートル。私が好む整然さ、きっちり埃一つないキッチンなんかは、リリーの暮らす世界ではあまり馴染みのないもので、どうしても埋められない違いに色々と悩んだ時期もありました。でも、考えてみればそうよね、私はリリーが好きだけど、私が好きなものを全部リリーも好きになる必要はないし、だったら、リリーが好きなものを私が嫌ったっていいじゃない。
そりゃまあ、私はお姉さんだからね、リリーの前じゃあ理解ある姉を演じるわよ。セブルスにもあれで良いところが辛うじてないわけでもないし、物騒な世の中になりつつある昨今、業腹だけど出来るだけアイツと離れて一人でうろちょろしないようにとは言い聞かせてるわ。
むしろ、最近リリーの手紙で気になっているのはジェームズ・ポッターってガキの方かもしれないです。話を聞くに、グリフィンドールの悪戯っ子らしいけど、私の嫌いなタイプと察します。セブルスとは特に反りが合わないみたいで、アイツをよく馬鹿にしたりからかってるからリリーはよく思っていないみたいだけど、本当に嫌いだったらあの子、私への手紙に書いたりしないはずなのよ。
それで、そういうことにはすっごく敏感だと思うマートルに相談なのだけど、もしジェームズとかいうガキがリリーに恋慕してたり、万が一リリーにも憎からず思っている雰囲気があったら、二人の仲を邪魔してあげて、ぶち壊してあげて、粉砕してあげて。二度とリリーに近づこうと思えないようにしてあげて頂戴。
嫉妬です、ええこれは嫉妬です。私はリリーと一緒の学校に通えないというのに、ただ魔法の力を持っているだけでリリーと同じ寮に入れて、あまつさえ悪ガキの分際でお近づきになりたいだなんて、許されることではありません。例え主がお許しになっても私が許しません。そして、貴女は私の味方をしてくださると心の底から信じております、悪霊のマートル様。
私はリリーの姉、そう、姉なのです。であるからには、可愛い妹に近寄る害虫を排除するのもまた、姉の務めであろうと最近感じるようになりました。これも貴女と出逢えた影響かと思うと、嬉しい限りです。
マグルである私には、魔法の力は使えない。だったら、出来る人にお願いすればいいのです。祈りを捧げればいいのだと気付きました。そして、私が祈りを捧げるべき相手はリリーであり、そして、貴女なのです、“破局のマートル”。どうかその御業を余さずお示しになり、ジェームズ・ポッターなるいけ好かないモテ男に鉄槌を。
ええ、本当に気に入らないわ。可愛いリリーに男共が寄ってくるのは当たり前ですけど、顔がいいだけのチャラ男は論外です。まずは自分の日頃の行いを反省して、真面目優等生にジョブチェンジしてから出直しなさい。でなくば、リリーと交際することはおろか、近寄ることすらこの姉たる私、ペチュニア・エバンズが許しません。
ついでながら、シリウス・ブラックなる糞イケメン野郎にも、鉄槌を下してくださると嬉しいです。リリーの手紙を見る限り、あの子の買ったカエルチョコレートを本物のカエルに変身させたとか。ぶっ殺す。
リーマス・ルーピンとか言う秀才君は、取り敢えず保留で。もう一人の、ピーターくんには少しシンパシーを覚えるので、何気なくで良いので気にかけてあげてくださればと思います。多分ですけど、心の何処かでジェームズやシリウスらに対して私と同じ“気に食わねえコイツら”の魂を抱えている気がするのです。
私が共感するということは、それをあまり表には出せないタイプと察するので、取り込めばこちらの手駒に出来るやも。あわよくば、リリーに近寄る害虫共、ジェームズやセブルスの動向を探るスパイに仕立て上げられば最高の結果になれるかと。東洋ではこれを埋伏の毒、あるいは獅子身中の虫と言うとか。
獅子寮に潜む虫(ワーム)かぁ、うん、なかなかいい感じの縁を感じます、凄いぞ私。
いつか、貴女のような嫉妬心と自立心を両立させた立派な女性となれることを夢見て、日々を頑張っていきます。応援していてください。
ペチュニア・エバンズより
*----------*
「こうして一人のいたいけなマグルの少女が、便所の幽霊へと堕ちていく。斯くも悲しき物語の序章であったということですか」
「なってたまるか。あと、人の手紙を勝手に読むんじゃないわよ」
「とは申されましても、これらの手紙はホグワーツ生徒の家族と事務連絡するためのホットラインで届けられるものですからね、検閲するのも私の業務の一環でして」
「あんたって屑のくせに、そういう地道な仕事は手を抜かないわよね」
「性分というか、私の本体がきっとそういうものなのでしょう」
ハロウィンが終わり、クィディッチシーズンが始まろうかという頃。
今日も今日とて、悪霊たちは事務室にていつもの仕事をしながらのんびりと世間話の日々。
世間で話題になる戦争の気配も、その動向も、どこ吹く風の悪霊たちの午後。
「それにしても、ペチュニア嬢はなかなか洞察力に優れた方ですね。むしろ姉の妄念というべきかもしれませんが、リリーさんの周辺の人間関係を少ない情報からしっかりと把握されているようで」
「ふっ、そこは師匠である私の出来がいいからよ」
「マートルさんのドヤ顔は非常にうざいですね」
「やかましいわ。これもまた根暗ボッチの必須技能なのよ、常に周囲の状況変化にはアンテナを張ってないと、気付けばハブられて孤立なんてザラよ。何せレイブンクロー女子は陰険が多いんだから」
ペチュニア・エバンズには、周辺の情報、特にゴシップなどを集めて整理する才能がある。
それを察したマートルさんは、生前の経験と死後の事務業務で培った洞察力を余さず伝授し、今や立派な弟子として成長しつつある。
まあ、嫉妬のゴーストの弟子となることが、彼女の人生を明るい方向に導くかどうかは、神のみぞ知るというものだろうが。
「そうした視点で見ると、グリフィンドール女子には陰険タイプは希少ですね。良くも悪くも感情表現豊か、隠し事に向いていない、ぶっちゃけ単純馬鹿」
「本人は隠しているつもりで、バレバレってのは常よね。特にイチャラブのピンク脳の馬鹿は、だからこそ、アタシも一番リア充判定がやりやすいんだけど」
「ふむ、となると、“桃色のレディ”の異名を持つヘレナ・レイブンクロー様はいったい?」
「………ノーコメントで」
「それが正しい処世術でしょうね」
ひょっとしたら夜間学校の校長先生は、グリフィンドール向きだったのでは?
内心のことは表に出さず、長いものには巻かれましょう、これが大人の処世術というもの。流石はドクズゴースト、子供には見せたくない汚さだ。
その汚さを余さず垣間見たリーマス少年については、強く生きてくれることを祈るしかない。合掌。
「あの、特定の生徒の恋路を妨害する、というのは問題なのでは?」
そして、まだ大人の汚さを十全に身に着けていない重いけどピュアなゴーストがここに一人。メローピーさんがドクズの仲間入りをするにはまだ業が足りていないらしい。
「問題ありません。我々は教師と事務員である前に、一介のゴーストですので」
「若いわねメローピー。嫉妬に基づき、恋路を邪魔する。これは生態のようなもの、要は呼吸と一緒なの」
さすがドクズコンビ、こういう時は息ピッタリ。
「そ、そういうものですか…」
「ふむ、狭い家と限られた人間関係しか知らぬまま亡くなった貴女には、理解するのは少し難しいかもしれませんね」
「あー、じゃあこう考えて見て。貴女を棄てた後の元夫トム・リドルが、貴女より若くて顔の良いけど頭が軽そうで尻も軽そうな女とイチャイチャしている。そんなところを目撃する、あるいは人伝に聞いてしまう貴女」
「殺します、呪います、消し去ります。この世の果てまで追い詰めて、末代に至るまで祟り殺してやります。おお、偉大なるサラザール・スリザリンよ我に力を、ゴーントの血筋舐めんなコラ、ぶっ殺すぞメスガキが」
「おお、素晴らしきかな」
「なかなか板についてきたわね」
悪霊の薫陶、これにあり。
やはり素質はあったのか、ゴーントの血筋は腐っていたのか、徐々にメローピーさんへのドクズ悪霊化教育は進んでいるらしい。
頼むアリアナちゃん、君だけが最後の砦だ。
「とはいえまあ、あの世代の生徒の中では悪戯四人組は際立っていますし、ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックはクィディッチ選手にも選ばれいよいよ存在感を増しています。そこにマグル生まれの才女、リリー・エバンズがいかに絡むか。ホグワーツの歴史観測者としても見逃せない逸材ではありますね」
「ブラックってだけでも相当だけどね。とにかくあの二人はアタシの敵と決定、イケメン死すべし、リア充死すべし、モテル男は地獄に落ちよ」
「流石マートルさん、揺らぎないですね」
「ペチュニアのお願いでもあるし当然よ。もう一方のセブルスの方は、うーん、“こっち側”ともまたちょっと違うというか、随分と面倒くさくて捻じくれた性格してそうなのよね」
「貴女が言うのですか? いえ、私もダメダメ女ですけど」
「あ、メローピー的にはセブルス応援派なのかしら?」
「ええまあ、ああいうタイプのスリザリンの生徒には、なぜか親近感覚えるというか、なぜでしょう?」
どうにも、本人にも理解できない感覚らしい。
ドクズではあるが、己の何たるかをよく知っている二人と異なり、メローピーさんは己自身についてもまだまだ手探り状態だ。
「それは彼の出自によるものかもしれませんね。セブルス・スネイプ少年の母君、アイリーン・プリンスは生粋のスリザリン気質にして純血を誇った家系。メローピーさんのゴーント家に似たところがありますし、ついでにいえば彼女もフリーモント・ポッター氏と浅からぬ因縁がありましたから」
「ポッター家とプリンス家か。確か、どっちも魔法薬の大家で、スラグホーン家と並んで御三家扱いされてたわね」
「最近だとフリーモントの直毛薬が有名ですし、元気爆発薬もポッター家開発です。別に彼らの代に限った話ではなく、このホグワーツで幾度となく時に友誼を、時に反発をと歴史を刻んできた二家です。ジェームズ・ポッターとセブルス・スネイプの反発の根源は、その辺りにもある可能性は大きいでしょう」
「でも、スネイプなんて家は聞いたことないし、セブルスは多分マグルとの混血よね」
「マグルとの混血……そうですか、それで私は、あの子と……」
純血のゴーントとマグルのリドル、純血のプリンスとマグルのスネイプ。なるほど、縁があるといえばなかなかに深い。
むしろ、メローピー・ゴーントが共感を覚えているのは、件の少年の母、アイリーン・プリンスの方であったかもしれない。
「まあ、しばらくは様子見かしらね。リリーちゃんもまだまだ12歳のお子様だし、本格的な恋愛には時期尚早だわ。お姉さんのペチュニアは早熟気味だけど、妹はけっこう年相応な感じね」
「その点は同意ですね。ただ、お姉さんと言えばマートルさん、ペチュニアさんの中で貴女は相当美化されてる気がしますよ。手紙の中の貴女からは随分と頼れるお姉さん的な印象を受けますが、貴女に文才などあったことが驚きです」
「それはそうよ。私、友達と文通することは得意だもん。なんたって“マーテルちゃん”がいたのよ」
「その悲しい過去を誇らしげな顔で語るのはやめてください。私でなければ胃が痛くなっていますよ。日記帳の中でのお友達というのは、鏡の中の悪魔と同じだと何度言えば分かってくださるのですか」
悪霊教師ですら若干引くレベルの闇がそこにあった。
人間の心とは、誠に恐るべきものである。
「まあ! マートル、貴女にもいたのね、日記帳の中のお友達」
「おおう、鏡の中の悪魔がさらにもう一匹ここにもいましたか」
「そんな失礼なこと言わないでくださいダッハウ先生。“メロンちゃん”は暗くて寂しいゴーントの家で孤独だった私を癒やしてくれた、たった一人だけのかけがえのない文通友達だったんですから」
「本当に悲しくなるので止めてください。貴女の人生は重すぎて洒落にならないんですよメローピーさん。そしてなんで、貴女達は疑似人格の名前をもう少し捻ってくれないんですか。似たもの同士のシンパシーですか、そうなんですね」
この分だと、メローピーさんの息子のトム・リドル氏まで、自分の名前のアナグラムを日記友達にしていても驚けないぞ。
なんかこう、己の中に潜む闇の人格、もう一人の自分、偉大なる俺様とかそんな感じで。
うん? 偉大なる俺様? 何処かで聞いた覚えがあるような?
「メローピー、その気持は分かるわ。どんなに一人で寂しいときでも、辛いときでも、“マーテルちゃん”がいてくれたら怖くなかった。日記帳の中にいてくれる、何でも相談できる私だけのお友達」
「ええ、ええ、そうなんです。愚図でドジで、父や兄に怒鳴られるばかりだった私なんかと違って、“メロンちゃん”はとっても綺麗で要領も良くて、どんな時でも私に助言を送ってくれるのよ」
「ペチュニアが文通友達になってくれたのは嬉しいけれど、それでもやっぱり、最初の友達を忘れることなんてあり得ないし、思い出の中で永遠だわ」
「私も、また会いたいです、メロンちゃんに。ああ、トム、あの子にもそんな何でも話せるお友達がいてくれたのならよいのだけど……」
「多分、いないほうが幸せだと思いますよ。むしろ、その友達を必要とするのは精神が洒落にならないレベルで病んでいる証と思うのは私だけでしょうかね」
悪霊教師がツッコミ役に回っている。珍しいこともあるものだ。
「はぁ。相変わらず駄目ねアンタは、女の子のお友達との交換日記ってもんを全く分かってないわ。少しは空気を読みなさい」
「ガッカリですね」
「何で私が滑ったみたいになっているんですか? それとメローピーさん、貴女に怒りの感情を覚える日が来るとは思いませんでした。いつか覚えてなさいコノヤロウ」
これも一種の因果応報というものだろうか。
素行が褒められたものではないことは誰よりも自覚しているノーグレイブ・ダッハウであったが。
例え悪霊であっても、時には善行を積む必要はあるのかもしれないと、ほんの少しだけ思うこともあった文通日和。
ホグワーツの歴史に曰く
見えないお友達との交換日記は絶対にいけません
真の恐怖
それは、己には理解できない名状し難いナニカを見たときである