【完結】お墓にお辞儀と悪戯を   作:トライアヌス円柱

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バーサ・ジョーキンズさんって、
お辞儀様復活の上でけっこう原作でも重要な鍵だった気がする


6話 届け恋のゴシップ記事 ~月刊少女ホグワーツ~

バーサ・ジョーキンズの校内新聞 【月刊少女ホグワーツ】より

 

 

 さあさあ! 今年もやってまいりました恋のホグワーツ戦線!

 実況はおなじみのこの私、清く正しいハップルパフのスポークスマン、バーサ・ジョーキンズにてお送りいたします!

 

 いやー、見切り発車で始まったこの企画も早三年目を迎え、当時二年生でしかなかった私も学生生活折返しの四年生となりました。

 細かい調査なんか後回し! ノリと勢いで脳内爆発! 妄想補完新聞と揶揄されながらも皆様に愛され続けこうしてここまでやってこれましたね。よよよ。

 今後とも皆様のご期待と腐女子の妄想に応え、精進して参る所存でございます!

 

 

 さて、挨拶はこのくらいにしておいて、夏休みの間にそれぞれ進展し、新学期の再会とともに新たに始まった恋模様について見ていくとしましょう!

 微妙に影の薄い6年生と7年生はひとまず置いておいて、何かと濃い面子の多い5年生からよ!

 

 まずはこの人、グリフィンドールの5年生キャプテンにして無鉄砲ビーターのロー・ジョーダン! あの有名な悪戯クィディッチ馬鹿に恋人が出来たって噂よ!

 気になる恋のお相手は、グリフィンドール5年生のミーナ・シュート! 私の独自調査によれば、彼女のお父さんグレイスター氏があの狂気の闇祓い将軍こと“マッドアイ”と親しい友人だったらしくて、なかなかに濃い血筋を受け継いでいるイロモノグリフィンドール家系ね。

 馴れ初めとかについては鋭意調査中だけれども、ミーナさんに突撃取材を試みたところ、“もし彼との子供が生まれたら、リーと名付けたいです”とすっごく気の早いノロケをかましてくれたわよ。流石はグリフィンドールの色ボケね、死ねリア充。

 この恋の模様がどんな結末にたどり着くのか!? そして、あの“破局のマートル”が獅子寮のリア充をみすみす放置してくれるのか!? 頑張れマートル! 続きについては乞うご期待!

 

 

 ではでは続きまして、スリザリンの超有名監督生、バーテミウス・クラウチ・ジュニア! 12教科全てで1位という驚異の大記録を打ち立て、魔法大臣の座を今かと狙うお父上様の一粒種の名に恥じぬチート性能を誇る彼だけど、何とここに来ての禁断の恋の疑惑!? これは腐女子の脳内大興奮待ったなし!

 気になる、あまりにも気になるその恋人疑惑の男子生徒の名は、彼と同じスリザリンの5年生、アレクト・カロー!

 何でも、この夏休みに彼と二人っきりで秘密の旅行に出かけていたとのもっぱらの噂よ。これまた有名な妹ちゃんのアミカス・カローより“この私を差し置いてお兄様だけズルいわ!”という証言も取れたし、何とも信憑性のある話ね、ウンウン。その旅行先ってのが、死喰い人の秘密拠点だとか、北部貴族連合に味方する巨人の集落だったとかという話については、取り敢えず無視しちゃいましょう。触らぬ神に祟りなしだわ。

 

 

 続けてどんどん行きたいところだけど、紙面にも限りはあるし取り敢えず今回は次でラストよ。

 今現在話題沸騰中! グリフィンドールの妖精姫こと今年で三年生になったリリー・エバンズ! 去年1年間だけでもグリフィンドール男子同級生の1/3から告白されたともっぱらの噂の超絶美少女! しかし、気になることになぜか告白を試みた男子が返事を受け取る前に次々玉砕! さらにそのうち二人はなぜかトイレの便座に頭から突っ込んでいたという驚愕の珍現象! その裏には嫉妬の悪霊マートルの暗躍の影が!

 分からない、一体我々は何時、ホグワーツの影の秘密に触れてしまったのでろうか。あのマートルが一人の女生徒を守護する理由とは!? それともただ単に、そこが恋愛バカの甘酸っぱい告白の巣窟になっているから寄ってきているだけなのか!?

 

 そんな彼女を取り巻く恋の戦線の行方とは!? 現在はそれでもなお、トイレの悪霊に真っ向から立ち向かう勇気と無謀を履き違えた男子生徒が2名いる模様。グリフィンドールの悪戯野郎Aチームこと、チェイサーコンビのジェームズ・ポッターとシリウス・ブラック! 果たして本気でリリーに恋しているのか、それともマートルと戦うために遊び半分でちょっかいかけているだけなのかまるで分からない悪ガキ共の大暴走! 悪霊警報発令! 出てくる人間大体悪党! 止められる奴は誰もいない、いや誰か止めろよ!

 

 以下、来月号へ続く……

 

 

 

*----------*

 

 

 

 「うーむ、酷すぎる。その一言に尽きますね」

 

 「流石はバーサだわ。温厚柔和なハッフルパフの産んだ異端児にして畸形児と噂されるだけはあるわね。週間魔女の編集者以外の将来がまるで見えないわ」

 

 ホグワーツ校内で発行されている学生新聞を片手に、悪霊たちの夜のお茶会盆踊り。

 

 いやまあ、別に食べるわけでも踊るわけでもなく、いつも通りのんびり駄弁ってるだけなのだけど。

 

 場所については、いつもの事務室の隣に拡張された印刷室。いよいよ事務作業も増えてきたので、印刷関係の仕事場を隣に分離したのである。

 

 ちなみに、これらを手配してくれたのはダンブルドア校長ではなく、シグナス副校長であったりする。戦争で忙しいのは両者同じだけど、騎士団を率いて前線に出る校長と外交内政担当の副校長の仕事の違いがもろに出ている。

 

 そしてこここそが、邪悪な校内新聞が次々に印刷され、悪意も善意も混ぜこんで混沌の渦を作り出していく元凶であった。戦時のプロパガンダにしてもこれほど酷くはなかろうに。

 

 

 「相変わらず脳内麻薬の爆発をそのまま文章にしたような暴走っぷりですが、しかし意外と事実も的確に拾っている部分も見逃せない。特に、バーテミウス・クラウチ・ジュニア氏の情報に関してはかなり重大な事実を含んでいる気もするのですが」

 

 「そういう才能は結構あるのよバーサは。ただ、余りにも真実に近づきすぎて消されなきゃいいんだけどね。ほら、戦争中によくあるじゃない、ジャーナリストの謎の死」

 

 「確かに、特にクラウチ・シニア氏あたりにありそうですね。しかし、普通ならそういった政治に関する疑惑になるはずの情報が、何をどうすればホモ疑惑に繋がるのか」

 

 「あらゆることを薔薇展開に繋げる腐女子特有の思考回路の賜物だわ。なかなかやるじゃない」

 

 「そういえば、貴女も若干腐ってましたね」

 

 「これくらいは少女の嗜み、腐っているうちにも入らないわ。本当の貴腐人ってのは、ハッフルパフの寮憑きゴースト様、“腐った修道女”のことを言うのよ」

 

 「ふむ、寮憑きゴーストの正統後継者と見れば、バーサ・ジョーキンズは秀逸なのでしょうね。この前も副本で“衆道女の教え”なるものを発行されてましたが、あれほど不毛でしょうもない作業もこの世になかなか見られないと思いますよ」

 

 ちなみに、共著は当然のこと“太った修道女”である。

 

 直接印刷機に触れられない彼女のために、ポルターガイストのピーブズが雑用させられ、ノーグレイブ・ダッハウが製本作業を依頼されたのだから間違いない。

 

 ホグワーツ、始まったな。

 

 

 「こうしてゴシップ記事に書かれるようにもなりと、“グリフィンドールの妖精姫”ことリリーさんの三年目の学校生活も波乱万丈になりそうです」

 

 「なかなかやり甲斐のある仕事で燃えてくるわ。何かこう、最近絶好調なのよ、ペチュニアの祈りがアタシに力を与えてくれるのか、鼻垂れ小僧どもを便器に突っ込んだときは心からせいせいしたわ」

 

 ドクズ悪霊が元気になれば、哀れな被害者が次々に生まれる。

 

 風が吹けば桶屋が儲かるではないが、ゴーストなんてのは静かに墓にいるくらいでちょうどよいのかもしれない。

 

 ちなみに、被害者の大半は迂闊にも“妖精姫”をお誘いしようとして、その情熱桃色ラブビームをマートルさんに感知され妨害されたもの。(呪い的ではなく物理的な手段によって)

 

 そして、便器に叩き込まれた二名は、まだまだ恋に疎い上に若干天然気味でもある“妖精姫”の無知につけ込んで、少しばかりの性的な悪戯心を内心に秘めてちょっとしたお願いを計画していたところをマートルさんに見つかり、“助平猿の末路”という張り紙とともに女子トイレに放逐された次第であった、哀れ。

 

 ただまあ、その後通りかかった天使の少女アリアナちゃんに救助され、バブみを感じて恍惚としていた二人は全く懲りていない感じであったが。こいつら、只者ではないぞ、中々に筋の通った変態候補だったらしい。

 

 

 「流石はトイレボッチ、やることが違います」

 

 「グリフィンドールの助平猿にはね、あれくらいでちょうどいいの」

 

 これがハッフルパフ生の純粋無垢な純情からの一世一代の告白であれば、マートルさんとて多少は空気は読む。

 

 しかし、グリフィンドールの生徒は歴代の傾向なのか、ミーハー的な恋愛や煩悩に正直なスケベ根性丸出しも多い。思春期の青春らしいと言えばその通りだが、ホグワーツはあくまで清純な学び舎、性春は許されない。リア充死すべし、慈悲はない。

 

 恋愛はしっかりと、節度を保ってしましょうと、あのマクゴナガル先生だっておっしゃっているのだ。

 

 

 「アリアナちゃんとて万能ではありませんからね。悲しいかな、エロは“不幸な記憶”ばかりではないので、スカート捲りの悪戯の思い出なんかは対象外です」

 

 「やられた女子の“嫌な記憶”は吸い取れるらしいけどね、やった方のエロガキの“幸せな記憶”は吸魂鬼に吸い取らせるのが一番でしょうね」

 

 「実際のところ、イギリス魔法界では性犯罪の再犯率がゼロです。何せ、その手の記憶は全部吸魂鬼の餌ですから。出所したところで二度とやる気も沸いてこない。性犯罪者の更生にはとても優れた制度と言えましょう」

 

 「冤罪の危険性さえなければ、あれもあれで結構良い刑罰になってる部分もあるのよね、アズカバン」

 

 「何事にも良き側面と悪しき側面がありということですね。実際、マグルの刑務制度は性犯罪者の更生が大きな課題となっているそうですし、利点が一切ないアズカバン制度であれば、数百年も長続きすることもなかったでしょう」

 

 色々と問題点は昔から言われているアズカバン制度だが、こと、性犯罪者や女の敵に対する相応しい刑罰としては評価が高い。当然問題点もあり、性犯罪の冤罪は非常に大きな課題ではあるわけだが。

 

 軽い恋の妙薬程度なら許されても、服従の呪文で操ったり、洗脳して手篭めにしたりは重罪であり、アズカバン行きは免れない。

 

 

 「………」

 

 そんな中で、唯一人沈黙を貫くメローピーさん。

 

 

 「いったいどうしましたか、メローピーさん? 聞こえていますか、メローピーさん?」

 

 「何かあったのメローピー? 例え何があってもアタシは貴女の味方よ。性犯罪だけは三歩離れて距離を置くけど」

 

 「……いえ、何でもありません。私のことはお気になさらず」

 

 流石はドクズゴースト。こんな会話は日常茶飯事。やはりまだまだメローピーさんはクズ度が足りていない。

 

 あと、ドクズ悪霊教師は何気に以前のことを根に持っているのかもしれない。流石は悪霊、執念深いぞ。

 

 どこかの純血の家では、蛇語使いの父がイケメンマグル男性を襲ってアズカバン行きとなり、娘が恋の妙薬を飲ましたという極悪非道の案件があったとか。

 

 うんまあ、深くは問うまい。きっと誰も幸せになれないから。

 

 

 

 

 「そういえばこのゴシップ記事、リリーさんに関する話はありますが、セブルス氏に関する記事はまだ載っていませんね。真面目な話、ペチュニアさんからの願いを叶えるとして彼の現状はどうなのです?」

 

 「アイツは根暗で写真映えしないし、根性も歪んでるからねえ。“妖精姫”と幼馴染ってのは結構知られているみたいだけど、今のスリザリンじゃ決して喜ばれる要素でもないし。なんか微妙な感じで孤立気味みたいよ、ペチュニアは喜ぶでしょうけど」

 

 戦争もそろそろ4年目に入り、純血名家の政治バランスも崩れつつある。

 

 小競り合いの時期は終わり、いよいよ本格的な武力衝突が始まるのではと囁かれる昨今。マグル生まれの少女と幼馴染であることは、スリザリンの主流派である死喰い人予備軍からは疎まれることを意味する。

 

 死喰い人予備軍に対して校内の対抗軸の最有力が“悪戯仕掛け人”であり、今や彼らの勇名はグリフィンドールのみならず、ハッフルパフやレイブンクローにも広まりつつある。

 

 

 「ふむ、死喰い人予備軍で有名所と言えば、5年生の兄アレクトと4年生の妹アミカスの“カロー兄妹”、同じく4年生のカーレル・マルシベールとアンドリュー・ジャグソン、それと、2年生のレギュラス・アークタルス・ブラックといったところですが。確か、セブルス氏はマルシベールと親しかったですね」

 

 「そこがアイツの馬鹿なところね。マルシベールなんてコテコテの純血思想で、このマートルさんを“不快な害虫”呼ばわりしてくる程のマグル嫌いよ。あんなのと親しくしてる奴をリリーに近づけることを、ペチュニアが許すことは万が一にもありえないわ」

 

 「……“不快な害虫”と呼んでいる生徒は、スリザリン以外にも」

 

 「何か言ったかしらメローピー?」

 

 「いえ何も。マートル先輩はいつもお綺麗ですわ」

 

 徐々に大人の汚さを身に着けつつあるメローピーさん。大人になるって、悲しいことなのさ。

 

 

 「対抗軸であるジェームズやシリウスのことは大嫌いでしょっちゅうぶつかってるから、他の三寮からは“死喰い人派”だと見られている。実際、レギュラスの奴もシリウス憎しだからセブルスと話が合う部分もあるみたいね」

 

 「にもかかわらず、リリーさんとも仲良くもしたいというのは、確かに“中途半端”の誹りは免れませんね。それをしたくばシグナス副校長の“中立派”に己を置き、ブラックの兄弟の対立を調停する立場を選ぶ必要がありますが、獅子寮のチェイサーコンビ憎し故にそれもできない。これはいけません、蝙蝠扱いされる典型です」

 

 一般的な人間心理として、複数の陣営、それも対立する両方に良い顔をしようとする者のことをあまり信用しようとは思わない。

 

 その根底にあるのは不安であり、自分の嫌いな奴とツルンでるアイツは、いつか裏切るかもしれないという不信感が拭えなくなる。そんな人物を徹底して信じるのはダンブルドアくらいのものだ。

 

 平時ならばいざ知らず、戦時中となれば“色分け”は尚更重要な要素となってくるものだから。

 

 

 「ルシウス・マルフォイが卒業しちゃったなら尚更にね。だから馬鹿なのよアイツは。それも、自分は頭が良いと思い込んでる典型的な阿呆だわ。世のなか間抜けが多いんだから、“複雑な事情のある奴”のことなんて斟酌してくれないのよ」

 

 「なまじ自分は頭が良く、周囲には愚者が多いと思ってはいる。しかし、“愚者が何を思い、どのように行動するか”に考えが及ばずに孤立し立場を弱くするならば、その人間は本当に頭の良い智者と言えるのか? 別の言い方をすれば、頭は良くともそれを実践で使いこなせていない。ありふれていますね、おもしろくありません」

 

 少年の人間関係に面白さを求めるな悪霊。

 

 セブルス・スネイプの事情は複雑であり、彼の精神もまた“捻じくれた”とも表現できる複雑さを持っている。もっともそこは彼の性格だけに起因するものでもないが。

 

 彼ほどの頭脳明晰さがあれば推察できる事情かもしれないが、そうした者は多くはなく、ましてスネイプという男を知るためにその明晰さを使うかどうかは別問題だ。なおかつ彼はお世辞にも愛想は良くない。

 

 結果として、スネイプは周囲を頭の悪い考えなしと決めつけ、周囲はそれ故に彼をへそ曲がりの蝙蝠と排斥する悪循環が生じる。

 

 マートル・ウォーレンにとって見れば、自身の在学中も含め、実に見慣れた展開ではある。

 

 

 「コンプレックスから来る歪んだ自尊心が空回りする駄目な例ね。自分は馬鹿な連中とは違うと孤高なんか気取ってるから周りが全く見えなくなるのよ」

 

 「少しは子供らしく悪戯や馬鹿騒ぎを楽しんだほうが、心のゆとりも、周囲を見る余裕も生まれるというもの。何事も根を詰め過ぎては視野狭窄に陥ります」

 

 「その傾向は前からあったらしいわね。ホグワーツに来る前からペチュニアを“アイツはマグルだ、僕らとは違う”なんてリリーに言って馬鹿にしてるから嫌われるってのに。最近ちょっと悪化してるみたいだわ」

 

 と同時に、セブルス・スネイプには自分の主観で他人を決め付けてしまう悪癖があると、ペチュニアからの手紙で嫌になるほどマートルさんは聞いている。

 

 それ自体は多かれ少なかれ、どの人間にもあることだが、彼は自分にとって好ましくない人間に嫌味な主観を被せ、それを真実と思い込んだ上で他人にまで吹聴してしまう部分があり、最もペチュニアに嫌われる要因となっている。

 

 “セブルスから見た歪んだフィルターのかかったペチュニア像”を他人に、ましてやリリーに吹き込むとあらば、ペチュニアが誰よりもセブルスを嫌うのは無理なきことだった。

 

 

 「そこについては出自の呪いもありましょう。彼の家は“スピナーズ・エンド”だったはずですが、恵まれた家庭環境とは言い難かったようで、孤独から己の心を守るために自尊心と孤高を求め、それらが過ぎると集団における他人との壁に転じてしまう。人間の精神上、よく聞くパターンです。おもしろくありません」

 

 少年の精神状態に面白さを求めるな悪霊。だからお前はドクズなんだ。

 

 人の心は十人十色ではあるが、それでもある程度のパターン分けは出来なくはない。

 

 マグル生まれでボッチトイレだったマートルさんにしても、根底が歪まずに済んだのは両親の愛に恵まれていた部分が大きい。

 

 逆にセブルス・スネイプの場合、両親に全く頼れない故に、己の力と才能を信じる心を強めようと決心しているわけだが。

 

 

 「お家の不幸自慢を競ったところで、それこそメローピーに勝てるはずもないでしょうが。例のアイリーン・プリンスにしても、名家を棄ててマグル男と駆け落ちしたのは自分の判断なわけで。ホグワーツに通わせてももらえないまま糞家族がアズカバン行きになったわけじゃないんだから」

 

 「母親の姓がプリンスであることも加え、最近は“半純血のプリンス”とスリザリン内部では名乗っているみたいですが。この素晴らしきネーミングセンス、どう思いますメローピーさん?」

 

 「ええ、とっても良い名前だと思います。やっぱりセブ君にはキラリと光るセンスを感じますわ」

 

 その言葉はおもねりではない。メローピーさん真実の心からのものであった。

 

 であるだけに、根が深い問題であった。やはりゴーントの血筋なのか、メローピーさんから始まった呪いであるのか。

 

 

 「流石はリドル先輩のお母さんだわ」

 

 「遺伝、というものの業の深さを感じさせられますね。何だかんだでセブルス・スネイプ少年は、トム・リドル氏と近いところがあるようで」

 

 「それって性格が良いのかしら? 悪いのかしら?」

 

 「悪いんじゃないですかね、何せ、メローピーさんの遺伝子ですから」

 

 性格の悪いゴーストは、性格の悪い人間を嗅ぎ分けるという。

 

 これもまた、仲間探しの一環と言えるかもしれない。

 

 リドルさん、どうか強く生きてください。(時既に遅し)

 

 

 「まあメローピーさんはともかくとして、セブルス氏については少し手を打つ必要がありそうですね。ペチュニアさんからの依頼は要約すれば“リリーさんの幸せ”ですから。彼が捻じくれ、歪んだ自尊心に染まり、他人に嫌味を吐くばかりで何も出来ない、大切な女も守れないダメ男に落ちていくことは決して彼女の望むところではないでしょう」

 

 「まあそれはそうよね。アタシ個人としてはセブルスが本当のマダオに堕ちようがどうでもいいけど、もしアイツがリリーちゃんに“穢れた血”なんて言おうものなら絶対にすっごく傷つくからねあの子」

 

 「一度そうなってしまっては、アリアナちゃんといえども傷を塞ぐのは無理でしょう。嫌な思い出を吸い出したところで、忘却術をかけたわけではありませんし、それに忘却術とて“暴言を吐いた”事実を消却してくれるわけでもない」

 

 「言葉についた傷は消えない、とはよく言ったものよね。あーやだやだ、アタシは嫉妬のゴーストだけど、そういうジメジメしたトイレ臭い人間の心は嫌いなの。もっとからっと爽やかに、ドクズな感じでさっぱりいかないとね」

 

 「爽やかなクズとは言い得て妙ですね、今後の我々を定義する上での指標にしましょうか」

 

 悪霊集団の新たなスローガンが決定、“爽やかなクズ”

 

 そしてならばこそ、こういうジメジメとした人間関係を打破するために、ドクズゴーストがやることは常に一つ。

 

 

 「やはりここは、ショック療法が一番ですかね」

 

 「さてさて~、どうやって料理してあげようかしらねえ、セブルス・スネイプ。くっくっく、その点についてはグリフィンドールの馬鹿達も色々と使いようがあるわ」

 

 人間関係の些細な諍いなど、馬鹿らしくなるほどの“大騒ぎ”をぶつけること。

 

 陽気に楽しく、より面白く、洒落にならないからこそ後世に残る規模で。

 

 

 「ムーディVSロジエール方式、ドロホフ大炎上方式、スクリムジョールVSロドルファス方式、モリーちゃんVSベラちゃん方式と、選り取り見取りですね」

 

 「でもまあここはやっぱり、ゴーストらしく行くわ。そうと決まれば準備準備よ、貴女も手伝ってねメローピー」

 

 さあ、悪巧みの始まりだ。

 

 




次次回あたり、セブルス君がえらい目に遭います
次の話は今回の補足というか、少しシリアスめになるかも
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