バーサ・ジョーキンズの校内新聞 【月刊少女ホグワーツ】より
緊急スクープ! セブルス・スネイプ特派員が解き明かした“叫ばれない屋敷”の謎に迫る! 特派員が体験した世にも奇妙な冒険とは!
皆さんこんばんわ、バーサ・ジョーキンズです。
今回はいつものノリとは違い、秘境に挑む探検隊のノリで実況していきたいと思います。
ええ、そうです。皆さんも御存知のこの私が、です。それだけで、どれほどおぞましく名状し難い悪夢に出会ったかを物語るというものでしょう。
ことの発端は、スリザリンの三年生、セブルス・スネイプ氏からの調査の依頼でした。
かのグリフィンドールの妖精姫こと、リリー・エバンズにまたしてもジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック両名がアプローチをかけ、嘆きのマートルと激戦をやらかしたという記事は、前々回の通りです。
しかし、悪戯仕掛け四人衆と熾烈な激闘を繰り広げるスリザリンからするとまた別の物が見えたらしく、セブルス・スネイプ氏はそもそもなぜ、あそこまで悪霊共が生徒に絡んでくるのかを疑問に持ちました。そこには、何かホグワーツの重大な秘密があるのではないかと……
そこで急遽、ハッフルパフとスリザリンの連合チーム(二名)にて、月に一度か二度行われるという悪霊たちの饗宴、“叫ばれない屋敷”で行われる謎の催しについて調べることとしたのです。
先生に見つかり、罰則を受ける恐怖をものともせず、魔法史の教師の引率を受けながら危険な夜のホグワーツを徘徊すること幾星霜。
我々はついに! ゴースト達の集う夜のホグワーツ、“夜間学校”なる存在を突き止めるに至ったのです!
その危険な旅の過程には、恐ろしき罠と数多の怪物が待ち受けており、セブルス・スネイプ特派員の尊き犠牲もありました。
ピカッピカに磨かれた髑髏、なぜか尻尾から落ちてくる蛇、マスコットのタランチュラ、なぜかじっとしている毒蠍。
屋敷へ通じる地下通路を歩くうちに聞こえてくる不気味な声、首と血を求めるギロチンのリフレイン。
なぜか響き渡るバイクの音、どういうわけか走ってくるフォルクスワーゲン、入り口の前に鎮座している電気椅子。
そう、そこには、我々の常識を遥かに超える異界が横たわっていたのです……
残念ながら、我々の意識はそこで途絶え、あの扉の先にどれほどの魔境が待ち受けていたのか、知る者はおりません。
我々に出来ることはただ、セブルス・スネイプ特派員の尊き犠牲に報いるため、何時の日か必ずやあの魔の館の全貌を暴き出すこと。
そのためにも、ホグワーツの皆さんの協力が是非とも必要なのです。
この勇気ある探索の力を貸してくださる皆様、どうか、各々の恥ずかしい黒歴史の物語を目安箱に投函くださいますように。
皆様の物語は価値ある力となり、悪霊教師への賄賂となりて、我々に真実の扉を垣間見させてくれることでしょう……
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「いやまあ、中々に愉快な大騒動でしたね。間一髪で助かりましたが、下手をするとセブルス氏はゴーストの仲間入りを果たしておりましたやも」
「カッとなってやった。でも反省はしていない」
「流石はドクズ悪霊のマートルさん」
「ま、アタシは唆しただけで、敵意と歪んだ認識だけで勝手に突っ込んだのはセブルスの責任よ。バーサまでくっついてきたのはちょっと予想外だったけど」
例によって例のごとく、あまりにも酷い記事を次々と量産している事務室の横の印刷室にて、嗤うドクズ悪霊が二匹と、まだ良識を持ち合わせている一名。
悪霊曰く、“ショック療法”、“何時ものやり方”が猛威をふるった結果、何が起こったかは記事の内容からお察しいただきたい。
いや本当に、詳しく説明するとSAN値がゴリゴリ削られていくこと間違いなかった。
「あの、ダッハウ先生? この記事の途中に何気なく混ざっている“賄賂”という単語は……その」
「お察しの通り、バーサ・ジョーキンズを“叫ばれない屋敷”へ案内したのは私です。生徒達だけで行かせるにはかなり危険な道のりですので、万が一のないよう保険として引率しました」
「てゆーか、特派員とか謳いながら、記事の中にも“魔法史の教師の引率を受けながら”って書いてあるしね」
記事の冒頭だけを読むなら、生徒達の夜中の悪戯行というか、秘密の冒険という感じなのだが、実際は教師同伴の実地研修であったという。
正確に述べるならば、以下の順序となる。
①夜間学校開催の手紙がグリフィンドール塔の悪戯仕掛け人の部屋に届く
②夜中、透明マント(本物)を使ってリーマスとピーターが出発
③少し遅れて、透明マント(複製品)を使ってジェームズとシリウスが出発
④セブルス・スネイプがスリザリン談話室を抜け出し、二人の後を尾行する
⑤悪霊教師同伴の下、バーサ・ジョーキンズが影からセブルスを追跡
夜間学校への参加については、リーマス・ルーピンは1年生の頃からだったが、2年生になる頃には勇気ある友人たちも自主的に参加していた。(3人共凄まじく後悔したが、その辺りは割愛。リーマスは地獄の道連れが出来たことを心の底から喜んだ)
“叫ばれない屋敷”での夜間学校については、特に秘密にはされていない。そもそも誰も好んで近寄りなんかしないだけである、そこは嘆きのマートルのトイレと同様だ。
ただし、アリアナちゃんもそこにいるという噂も密かに広まっているので、“地獄の奥に天国”とも伝えられている。今回バーサ・ジョーキンズが一番確かめようとしたのは実はそこでもある。
ゴーストの巣窟なので、とにかく寒い、死ぬほど寒い。おまけにギロチン、電気椅子、アイアンメイデン、アクロマンチュラが寄ってくる。
このままだと精神衛生上非常によろしくないので、四人組はアニメ―ガスへの変身方法をマクゴナガル先生に習おうと計画はしてみた。
(マクゴナガル先生も悪戯には手を焼いているが、夜間学校に参加する勇気と友情は褒めている。でも、自分は参加しない。中々にしたたかな大人だった。)
結果として若干本末転倒気味ではあるが、夜間学校の変身術の先生、ヘレナ・レイブンクロー校長先生に習っている。教師としては優秀なのが逆に憎らしかった。
そんな感じのところに、セブルスが尾行してきた。(彼はその行動を後に死ぬほど後悔したらしいが)
ちょうどメローピーさんの魔法薬の授業の最中、悪夢の光景に放心しているところを、室内ドリフト走行していたワーゲン君に轢かれそうになり、アクロマンチュラのモレークくんに捕まり、ギロチン先輩の毒牙にかけられる間一髪のところをジェームズのタックルに救われたという経緯である。
むしろ、最初に撥ねられていた方が不死鳥のフォークス君に蘇生させられてよかったかもしれない。悪戯四人組とて、彼の涙がなければ何度ゴーストの仲間入りをしていたか分からない。
一度だけ、シリウスが全身アイアンメイデンされかけたが、何とか瀕死の重傷で済んだので事なきを得た。それでも鮮血処女がトラウマにならないあたり、シリウスの精神力が並大抵ではないらしい。
というか、本当にここが学び屋で良いのだろうか? もう常識が全く息していない気がするのだけど、どうしよう?
「悪戯仕掛け人の四人組については、夜間学校の参加は何時ものことですし、そこに表側の教師でもある私が居る以上、彼らの行動は罰則対象とはなりません。その点でも、バーサ・ジョーキンズの行動はかなり理に適っていると言えますね」
「いや、その、先生の引率を受けながら“深夜の冒険”というのは、普通思い浮かばないですよ」
「男の子的な発想だったらそうよね。自分達の力だけで冒険して、教師を出し抜くから面白いんであって、特にグリフィンドール四人衆なら保護者同伴の冒険なんて興ざめとしか思わないでしょうね」
「さればこそ、ゴシップ記者であるバーサ女史は観点が異なります。彼女は胸躍る冒険の体験記を書きたいのではなく、悪戯仕掛け人とそれを追うセブルス・スネイプ氏の顛末を面白おかしく記事にしたいだけなのです」
であるならば、自分は絶対に罰則を受けないように“予防線”を張るのは当然というもの。
考え抜いた末に、夜の探索行に教師の同伴を求めるという、当たり前のようで訳のわからない手段に打って出たのであった。
まあ、魔法史のドクズ悪霊教師以外だったら、彼女の頼みはしなかっただろうが。スネイプの顛末を見るに、彼女は賢明だったと言えるだろう。
「依頼するバーサもバーサだけど、受けるアンタも大概よね」
「それはもう、面白そうでしたから」
「この人、なんて駄目な教師なんでしょうか」
「メローピー、それこそ今更よ」
「ホグワーツの生徒達の行動を記録する、という点については彼女と私は同士とも言えます。違いがあるとすれば、私は正確に客観的に記録することを旨とし、彼女は主観的どころか面白おかしく誇張し時に捏造するところでしょう」
「なぜでしょう? それだけ聞くとダッハウ先生がまともに聞こえてくるのが不思議でなりません」
「歴史を正確に記録するからって、それが良いとは限らない好例だわね」
一般的な観念からすれば、記録者の主観を混ぜることなく真実を伝える方が良い記録のはずなのだが。
どういう訳か、今のホグワーツではバーサ・ジョーキンズのゴシップ記事の方が、ドクズ魔法史教師の“正確な記録”よりもまだましと思える。
「ところで、スネイプ君は無事だったんですか? 記事を見る限りとても怖い目に会ったような気がするのですけど」
「肉体的には無事です。ジェームズ氏の命がけのタックルによって間一髪斬首は免れましたので」
「ざ、斬首……」
「ザマアないわね。自分から危険に首を突っ込んで来て、その上ギロチン台に首を突っ込む羽目になって、挙げ句の果てに不倶戴天の敵ジェームズに命を助けられるなんて、くっくっく、これで少しは懲りたかしら」
「あの、それは全く洒落になってないような」
「生徒が死にかける事自体は、夜間学校では何時ものことです。そのために不死鳥フォークスさんを招いている訳ですから」
不死鳥の涙には、癒やしの力が宿る。
宿るのだが、最近泣いてばっかりでフォークスさんも流石に辛いのではないかと心配にもなってくる今日この頃だ。
狼人間に変身した後のリーマス・ルーピンよりもむしろ、ピーターがうっかりバイクに撥ねられたり、シリウスが電気椅子で処刑されかけたり、ジェームズが腕だけアイアンメイデンされたりと、その度に不死鳥の涙にお世話になるのが夜間学校の日常だ。
よくまあこんな学校に通っているものである。本当に彼ら四人の勇気には驚嘆の念を禁じえない。
「ただし、ギロチンだけはどうにもなりません。首と胴体が離れてしまっては、流石のフォークスさんと言えどもお手上げです。目出度くニックさんの仲間入り確定」
「あればっかりはちょっとギリギリだったわよね。グリフィンドール四馬鹿にはその辺言い聞かせてるけど、セブルスは魔法薬は出来ても魔法生物飼育学はあんまり得意じゃないから」
「アクロマンチュラに捕まって持ち上げられて、フォルクスワーゲンで運ばれてギロチン送りという流れを想像するのが無理だと思います」
「甘いですねメローピーさん。それが、闇の夜間学校の日常です」
「あのざまで闇の魔術に詳しいって自負してるんだから、笑い話ね」
四人の悪戯仕掛け人の持つ“秘密”と、ゴーストたちによるこの世ならざる夜間学校。
ホグワーツ魔法魔術学校における大きな謎を解き明かそうとする意思はまあ立派と言えなくもなかったが、その実態はセブルス・スネイプ少年の予想の遥か斜め上をぶっちぎって大気圏を突破している有様だった。
仮にも学校という名前を冠しておきながら、常識や人権などという言葉は、微塵も存在していなかったらしい。
「スネイプ君も、絶対に後をつけたことを後悔しているでしょうね……」
「そこについては、シリウス氏の作戦勝ちといったところですかね」
「え? マートルさんが発端じゃなかったんですか?」
「それも間違いじゃないわ。まずはじめにセブルスの奴が最近四人組の周辺を嗅ぎ回っていて、アタシがリリーにちょっかいかけてたバカ二人組に取り憑いてるところを目撃したの」
「人間ならばセブルス氏が覗いているのに気付けないでしょうが、マートルさんの目と鼻は誤魔化せません」
正確に言えば、ゴーストは目と鼻で感知している訳ではない。人間の魂や感情そのものを感知するのだ。
それ故に、“嘆きのマートル”にバレずに行動することは困難極まる。例え透明マントを使おうが、感情の動きまでは消しされないのだから。
「で、セブルスが覗いていることを、あたしはこっそりとシリウスの馬鹿に教えてやったわけ。後の流れと筋書きはシリウスが考えて、アタシとそこのドクズはその演目に乗っかってアドリブを演じただけってこと」
「結果として、セブルス氏が斬首されかけたところを、ジェームズ氏がファインプレイで救ったという訳です」
結果として、セブルス・スネイプはジェームズ・ポッターに対して、あまりにも酷い命の借りを作ってしまったという。
ちなみに、リーマスはその頃狼人間に変身はしていたが、電気椅子に縛り付けられていたので害はなかった。むしろ、結果的に言えば不死鳥の涙が必要になったのはリーマスの方である。これも何時ものことだが。
なお、一晩中“桃色レディ”と“ポエム男爵”の小っ恥ずかしい愛の詩の朗読を聞かされ続けたピーター少年と、どちらの責め苦がより拷問であるかについては人によって意見が別れるところだろう。
「まあ、その後結局ゴーストに取り囲まれて気を失ってしまいましたけど」
「駄目じゃないですか」
「そうでもないわよ。何だかんだでこれが夜間学校の授業だもの。一般の部の薬草学でも、マンドラゴラの植え替えで気絶者が出るなんてザラでしょうに」
「飛行訓練で箒から落ちて骨を折ったりも毎年必ず出る日常茶飯事ですしね」
「言われてみればそうでした」
ここはホグワーツ魔法魔術学校、魔法の国のホグワーツ。
マグルの学校らしい常識などは通用しない。安全についてもあくまで“魔法界の基準で”守られているだけだ。
そして、夜間学校においてはゴーストの生徒を基準にしているので、安全を守る気がなかった。自分の身は自分で守りましょう。
「こと、自分の身を守るという部分については、ピーター氏が一番優れていますね」
「言えてるわね、本人にはまだ自覚がないみたいだけど」
「意外ですね。いっつもおどおどしているあの子がですか?」
「臆病さとは、良く言えば用心深い性格とも言えます。ヘレナ校長が診断してくださった動物もどき適性では、ピーター氏は“ネズミ”であったそうですが、彼の魂の形が災難を避けることに適性がある証左でしょう」
「大犬と牡鹿の二人組はその真逆ね」
実際、夜間学校でマートルさんが杖魔法を教えている時でも、ジェームズやシリウスよりもピーターの方が“失敗”は少ない。
元々秀才肌であると同時に隠さねばならない秘密があり、無理はしないタイプのリーマスが一番少ないのは当然として。
ピーターには臆病な部分があり、失敗を恐れる心はかなり強い。
それ故に、授業の課題などで失敗しにくい方法を取る傾向があり、加点は貰えないが、減点もされない結果になる。
逆に、ジェームズとシリウスは煌めくような才能の塊だが、同時に極度の目立ちたがり屋、お調子者である。
ただ上手くやれるだけの方法などつまらないので、失敗する可能性も高い難易度の厳しい手段にあえて挑む取ることが多い。
カケではあるが才能の高さ故に成功することが多く、困難に挑んでの成功のインパクトが強いので周りからはそう見られるが、同じ数か下手したらそれ以上の失敗がある。
特に、お調子者を通り越して【ギャンブラー気質】であるシリウスは一番失敗も多い。つまりは、“やらかす”傾向だ。
「グリフィンドールらしさ、というのも中々面白いものです。失敗が多いのは成績優秀であるはずのシリウスとジェームズ、されど、失敗を恐れずに常に挑み続ける勇気を持つのもこの二人。傲慢で向こう見ずという欠点とも言えますが、恥を恐れぬ勇気と鏡合わせの関係です」
「まさに、セブルスが持ってないものね。アイツは地頭も良いし実力もあるのに、恥をかく勇気を微塵も持っていないから駄目なのよ。好きな子への告白なんてのはその最たるものなのに」
「とはいえ、勇気も過ぎれば蛮勇。何事も過ぎたるは及ばざるが如しではありますがね。その蛮勇を発揮して好きな子に臆面なくアプローチをかけすぎるからこそ、マートルさんに取り憑かれる訳ですから」
「酷いオチですね」
メローピーさんは心の底から思った。
スネイプ君がリリーちゃんに告白できない最大の理由は、ジェームズ君とマートルさんにあるのではないかと。
というか、別にスネイプ君でなくとも、リリーちゃんに告白しようとして便器に叩き込まれるのは嫌でしょう、普通に考えて。あ、駄目だ、ここに普通の人なんていなかったんでした。
「ところで、尋ねたことありませんでしたけど、マートルさんに祟られた生徒にレイブンクロー生が少ないのはやっぱり」
「ああ、それね。別に贔屓ってわけじゃないわよ」
「え? そうなんですか?」
「メローピーさんの疑問ももっともですが、そこには各寮の恋愛傾向が複雑に関係しているのです、例えば、マートル警報に対する行動にしてもそうなのですが」
【マートル警報】 ※マートルが談話室に現れたらどうしますか?
グリフィンドール 立ち向かう
スリザリン リア充を生贄にする(例:ルシウス・マルフォイとナルシッサ・ブラック)
ハッフルパフ 隠れる、逃げる
レイブンクロー 賄賂 (他寮の“よりリア充”の情報を流す)
「という感じです」
「酷すぎます、特にレイブンクロー」
「スリザリンも大概だと思うけどね。ハッフルパフはまあまともな反応よね。特筆すべきはグリフィンドールだけど、なんというか、お祭好きなのよね」
「ここでマートルさんの格言をどうぞ」
「本人たちがどう思ってるかは重要じゃないわ。傍目から見てリア充に見えるかどうかが問題なのよ」
「そこは同意できます」
「本性を現しましたね、やはりメローピーさんもこちら側でしたか」
所詮、悪霊は悪霊である。
比較的まともではあっても、メローピーさんとて本能には抗えない。
「そんでもって、あたしは嫉妬のゴーストだから、イチャついてるカップルがいたらそこに引き寄せられるように向かうんだけど」
【各寮のカップル動向】
グリフィンドール 所構わずいちゃつく
ハッフルパフ 学生らしい健全なお付き合い
レイブンクロー 基本的に隠す、密かな文通 (なお、マートルさんの文通相手は…)
スリザリン 家の立場上、公表しなければならないことが多い
「という感じになるわけですね」
「なるほど、それで」
「そういうことね。消去法みたいなもんだけど、優先的にグリフィンドール、スリザリンが狙われるわけよ」
「中でも特に、グリフィンドールは圧倒的です」
「何よりもアタシが狙う理由は、アイツラの破局率の高さよ。ハッフルパフはね、くっつくまで時間かかるから一度成立したらなかなか別れないし。スリザリンは家の都合があるから本人の意向じゃどうにもならないことも多い。まあ、それはそれで愛人とか不倫とか別の楽しみようはあるんだけど」
「流石ドクズ、マートルさんはぶれない」
「不倫……ちょっぴり憧れますね」
「だからこそ、頭猿並みのグリフィンドールがアタシの餌なのよ。奴らは恋の炎が燃え上がったらすぐくっついて、イチャイチャして、冷めたら別れる。獲物としてこれ以上はないわ」
特にレイブンクローは、【リア充】と分かりにくい。率先して探しに行かないのもあるが、マートルさんの嫉妬センサーをもってしてもなかなか見つからないほどに。
「グリフィンドール生については、完全に自業自得とも言えますね。むしろ最近は“マートルありき”で来るなら来いと言わんばかりにはっちゃけてイチャイチャしているカップルも多くあります」
「そして破局する」
「まあ、吊り橋効果ですらないヤケクソのような全力疾走ですから、恋の熱気も冷めればさもありなんと言ったところですね」
ここまで来ると、本当に恋人になってイチャイチャしているのか、お祭り騒ぎしたいから恋人のふりをしているのか判別し難い程である。
流石はグリフィンドール。恋愛面でも勇猛果敢さにおいては他の追随を許さない。
「もし私がホグワーツに入れたなら、ハッフルパフが良かったですね」
「おや? よろしいので、ヘレナ校長の耳に入ればどうなることやら」
「すみませんすみません、前言撤回です。私はレイブンクロー志望です憧れもマートルさんもそうですから、お願いです許してください何でもしますから」
「ん? 今なんでもって言ったかしら?」
「時計塔は記録いたしました。メローピーさんは“何でもする”と」
「え?」
どうやら、言質を取られてしまったらしい。
「では、いつものいきますか」
「はいはい~、当然よね~、こんな美味しい獲物を前に黙ってたら破局の魔女の名が泣くわ。さあ、ペチュニアからの依頼第二段階、ガンガンいくわよ~」
「そちらが例の、取り憑き誓約状ですか」
「そうそう、ここに書いた条件をこなさない限り、このマートルさんが背後霊としてセブルスに取り憑き続けるのよ」
除霊の四条件
①シリウス・ブラックと本音を晒して殴り合うこと
②ジェームズ・ポッターと本音と本気で殴り合うこと
③ペチュニア・エバンズに心から謝罪し、リリー・エバンズにもその旨報告すること
④リリー・エバンズへ本心からの告白をすること(手紙も可)
「今回はおまけに、メローピーさんも憑けましょう。マグル男性と純血魔女の悲恋物語には一家言ありますから。スネイプ家とプリンス家、そしてエバンズ家とポッター家と、涎の出そうな御馳走が食卓に並びます」
実に碌でもない悪霊共である。まともな人間がここにいたら、馬に蹴られて死んでしまえ、と確実に思うだろう。
しかし悲しきかな、ここは常識のないイギリス魔法界のさらに非常識なホグワーツ魔法魔術夜間学校。
残念ながら、ドクズ糞幽霊共を蹴り殺し、余計な悪行を止めてくれるセストラルは存在しないのであった。
この章は彼らの恋の行方に決着がつくまでで締めになると思います。
それ以後はちょっと形を変えていくので、悪霊たちの夜間学校物語はひとまず終了となりそう。