【完結】お墓にお辞儀と悪戯を   作:トライアヌス円柱

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時計塔の悪霊
1話 ビンズ先生はお亡くなりになりました


 

 「ビンズ先生が亡くなった? 一体それはどういうことでしょうか、ミスター・ポッター」

 

 

 グリフィンドール談話室の様子は、まさに驚天動地の大騒ぎ。

 

 

 おい聞いたか? なんと、あの魔法史の置物講師、ゴースト・ビンズが死んだらしいぞ!

 

 んな阿呆な、ゴーストが死んだ?

 

 いやいや、それが本当なんだって。

 

 どうやってよ、というか。ゴーストって寿命あるのかしら?

 

 さあ、でも、首なしニックとかは何百年もゴーストをやってるんじゃなかったかしら?

 

 でも、何時かは消えて成仏するものなんじゃないの?

 

 これもきっと、“闇の魔術団”の仕業なんだよ!

 

 その秘密結社、誰かのでっち上げじゃなかったっけ?

 

 さにあらず、奴らは実在している。スリザリンの糞ったれ共が巣食う害虫の巣がな。

 

 じゃあやっぱり、ビンズ先生は殺されたのか?

 

 やりやがったなスリザリンの奴ら! ビンズ先生の弔い合戦だ!

 

 

 事件だ! 暗殺だ! 陰謀だ! と騒ぐ獅子寮生らに顔をしかめつつ、ミネルバ・マクゴナガルは若干苛々とした様子で近くにいた寮生に問いを投げた。

 

 なにせ、何か面白そうなことあらば、寮を挙げて皆で大騒ぎをするのがグリフィンドール談話室の使命なり! と半ば本気で信じているのが彼らだ。実話なのか虚報なのか、人伝に判断するのは極めて難しい。

 

 

 「ポッター、聞いてますか?」

 

 「いや、それが僕にも何がなんだか、気付いたら皆この調子で」

 

 マクゴナガルに話を振られたくしゃくしゃの黒髪にメガネをかけた男子生徒にしても、かなり困惑した様子であった。

 

 騒動について詳しい事情を知っているとは思われず、ミネルバからすると若干当てが外れたといったところだ。

 

 この少年、ひょろりとして細長い一見頼りなさげな見た目に反して厄介ごとに良く巻き込まれる性質で、中々濃い面子の揃った交友関係も持つことから、こういう事態にはかなり通じていることが多いのだが――

 

 

 「はあっ、分かりました。貴方も詳しいことを知らないならば、“いつものこと”と言うわけですね」 

 

 彼女、ミネルバ・マクゴナガルがグリフィンドール談話室を率いる立場になって以来、こうした話題で大騒ぎになっては、黙らせるために四苦八苦するのが日常である。

 

 別段、本人が望んでそうしているわけではないが。

 

 グリフィンドールとは、いわばお祭り大好きなお調子者の巣窟でもある。勇気と義侠心を斜め上の方向に発揮し、凄まじい暴走の果てに雪だるま式で周囲を巻き込むことも一度や二度のことではなかった。

 

 そして、最後に膨れ上がった厄介ごと雪だるまを力づくでぶっ飛ばすのも、彼女の主な役割だったりする。

 

 

 「僕の後輩は、ハッフルパフのスプラウトから聞いたと言ってましたし、レイブンクローのフリットウィックから聞いたという話もありましたね」

 

 「フィリウスから? それにポモーナ、いえ、ミス・スプラウトもですか」

 

 「別に名前で言ってもいいじゃないですか」

 

 「お黙りなさい、これも監督生のけじめというものです。しかし、となれば厄介ですね」

 

 その二人からの情報なのであれば、ほぼ間違いはないだろう。

 

 ミネルバもよく知る二人だが、いたずらに煽るために噂話を広める人物でもないし、確信のない話を他人に吹聴することもないはずだ。

 

 となれば―――

 

 

 「ともかく、ダンブルドア先生に話を伺わねばなりません。私は校長室へ向かいますので、談話室については貴方が監督するように、頼みましたよポッター」

 

 「ええぇ、僕、監督生じゃないんですけど……」

 

 「口答えはしないように、貴方だってもう6年生でしょうに。それに、ダンブルドア先生が監督生の候補に挙げられていた中には貴方の名前もあったのですから、出来ないことはありません」

 

 言い切り、颯爽とミネルバは背筋を伸ばして早足で歩を進める。

 

 グリフィンドール談話室は塔の8階にあるが、その階段を下も見ずに駆け降りることは彼女にとっては慣れたこと。今となっては眠っていても出来る自信があった。

 

 ちなみに、残されたポッター少年は愚痴りつつも獅子寮生らをまとめているあたり、やればできる子なのだろう。昼行灯の性分なのかもしれない。

 

 

 「しかし、ビンズ先生が亡くなったとは――」

 

 そんな彼女をして、流石にこの話は寝耳に水であった。

 

 魔法史の教授、カスバート・ビンズは最も古参のホグワーツ教員の一人であり、ある日目覚めたら自室に肉体を置き去りにし、そのままゴーストの姿で授業を続けたという筋金入りだ。

 

 ある意味でホグワーツの“死した伝説”のような人物であり、生徒の眠気を誘う程度の能力においても、伝説的な力を持っている。

 

 その彼が、死んだ。

 

 死んだ? ゴーストなのに?

 

 どうやって死ぬの?

 

 

 「むむぅ、意味不明ですね」

 

 思わず呟きが漏れてしまうが、それも無理なきことかな。

 

 まだ頭が混乱していることを認めつつ、若干はしたないと思いながらもスカートの裾を翻し、彼女は残る階段を一気に飛び降りるのだった。

 

 

 

 

*----------*

 

 

 

 

 「スイートポテト。…………留守ということですか」

 

 校長室へ続くガーゴイル像に合言葉を告げても、何の反応も示さない。

 

 ホグワーツの石像、銅像、胸像の類はとても頭が良く、火急の要件となれば合言葉なしでも通してくれる融通の効く連中だ。その彼らがうんともすんとも言わないのならば、通しても意味がないと彼らが分かっているからだろう。

 

 教員達を含めても、校長室への合言葉を知る人間はそれほど多くなく、ミネルバは数少ない人物の一人ではあったものの、不在であるのならば意味がなかった。

 

 

 「フクロウ便を飛ばすほどのことではないですし、そもそも外出されているかどうかも」

 

 フクロウ便は基本、外部への連絡手段として使われる。探す相手がホグワーツ校内にいるならば、素早い伝達手段としてはあまり適していない。

 

 ダンブルドア教授が出張されているという話は聞かないし、そもそも今日の午前中にも変身術の講義はあったはず。校長室にいないとしても校内にはいるはずだ。

 

 となれば、別の手段で伝言を飛ばす必要がある訳だが。

 

 

 「来なさい私の猫、エクスペクト・パトローナム!」

 

 手っ取り早く即断即決は、ミネルバ・マクゴナガルの特徴であり、長所と言えた。

 

 杖の先から飛び出したのは銀色の猫。守護霊呪文の仕上がりとしては文句なく、実体のある形で出現している。

 

 彼女にとって縁の深い生き物である守護霊に、“ビンズ先生が亡くなったという話について”という伝言を短く託し、グリフィンドール寮監の下へ向かわせる。

 

 彼女は既に守護霊呪文を会得しており、伝言のために使ったことも幾度かあるが、学生が教師に対して伝言に用いる例はさほど多くはないだろう。

 

 

 「これでよし。後は―――おや、アメリアではありませんか」

 

 「校長先生の部屋の前の廊下で守護霊の呪文だなんて、相変わらず横着なことね、変身クラブ代表殿」 

 

 「的確で即決の結果と言ってほしいですね、副代表殿」

 

 ミネルバの方へ歩きながら声をかけた流麗な魔女。片眼鏡をかけ、怜悧そうな印象を与える女生徒の名は、アメリア・ボーンズ。

 

 ハッフルパフの七年生であり、監督生も務める成績優秀な才媛であることはあまねく知られている。

 

 同学年のグリフィンドールにミネルバ・マクゴナガルがいなければ、この学年の首席女子の座は彼女のものとなっていたことはホグワーツにおける“秘密”であった。

 

 

 「私の要件も同じだと思うけれど、ミネルバが守護霊を飛ばしているということは、校長先生は留守だったのね」

 

 「まだダンブルドア先生は校長代理ですよ、アメリア」

 

 「相変わらずお堅いわね。私達が入学する前から副校長で、不在がちなディペット校長の代理をずっと務められているのだから、実質的には彼が校長でしょうに。そもそも、それを言うなら貴女こそ、ボーバトンへ出張中のディペット校長にフクロウ便を出すべきではなくて?」

 

 「それについてはまあ、返す言葉もありませんが」

 

 特に意地を張ることもなく、あっさりと前言を撤回するミネルバ。

 

 実際、彼女にしても内心は、アメリアと同じことを考えているのであろうことは明白であった。

 

 実質上、ホグワーツの最高責任者は“イギリスの英雄”アルバス・ダンブルドアであると。

 

 

 「そもそも、なぜダンブルドア先生は頑なに校長になることを拒否されるのかしら? 魔法大戦の頃は仕方ないにしても、グリンデルバルドをあの伝説の決闘で倒したのは他ならぬ先生なのだから、誰も異を唱える人なんていないでしょうに」

 

 「それについては私も思うところはありますけどね、校長の座はおろか、当時は魔法大臣の座もあちこちから打診されたみたいですし」

 

 「そう、そこも疑問なのよ。ホグワーツ特急を提案して実際に運用させたオッタリン・ギャンボル校長のように、先に魔法大臣を務めてからホグワーツの校長になった人だっている訳でしょう。そりゃあ確かに、私達としてはダンブルドア先生に直接変身術を教えて貰えるのだから嬉しくはあるけれど」

 

 人には、それに見合った地位というものがあり、責任がある。

 

 将来の目標として魔法法執行部を目指すアメリア・ボーンズにとっては、それが持論であり歩む道のりに対しての前提条件でもあった。

 

 そんな彼女からすれば、“煮え切らない”とも表現されうるアルバス・ダンブルドアの現状は、若干にしても歯がゆいところがあるのだろう。

 

 

 「ねえミネルバ、貴女はそのあたり、先生に尋ねたことはないの?」

 

 グリフィンドールの寮監はダンブルドアであり、当然の帰結として獅子寮の監督生とは関わる機会が多い。

 

 ダンブルドアが変身術の教師であり、アメリアもまた変身クラブの副代表であることから、ハッフルパフの生徒としては近しい立場にいると言える訳だが。

 

 グリフィンドールの首席であり、5年生の頃から監督生を務め、変身クラブの代表であるミネルバの方がより近い存在と言えるのは当然である。

 

 

 「そうですね、あまり他言するようなことではありませんが、“動物もどき”の申請のためにダンブルドア先生と一緒に魔法省へ出向いた際、小耳に挟んだことはあります。先生は昔から、権力の座に就くことをかなり頑なに拒否されているのだと」

 

 「ああ、そいつは俺も聞いたことがあるぜぇ。けどなあ、それで無能な馬鹿野郎が大臣になっちまうんじゃ、本末転倒ってもんじゃねえかね?」 

 

 「っ! プロテゴ・マキシマ!」

 「プロテゴ・ホリビリス!」

 

 瞬間、二人が一斉に杖を抜きざま盾の呪文を唱える。

 

 いつの間にか彼女らの背後にいた男から“あいさつ代わり”に放たれた全身金縛り呪文(ご丁寧なことに、無言呪文でだ)は、盾に阻まれ霧散するように消えていく。

 

 

 「おーおー、相変わらず見事なこって、過剰防衛って言葉の見本市だな」

 

 「そうでしょうか? これが仮に磔の呪いであったとしても私は驚きませんよ、ミスター・ドロホフ」

 

 「いきなり攻撃を仕掛けるなんて、随分なご挨拶ね」

 

 険しい表情で杖を構える二人に対し、現れた男は自然体で飄々と笑う。

 

 体格はがっしりとしたクィディッチ選手を思わせるが、印象としてはチーターやヒョウの如きしなやかさ、獰猛さを併せ持つ。

 

 スリザリンの七年生にして監督生、防衛クラブを率いる蛇寮の代表格と言える男、アントニン・ドロホフがそこにいた。

 

 

 「ああそうさ、ただの挨拶だよこいつは。ほれ、証拠に杖なんて持ってねえだろうが」

 

 「杖がなくとも、魔法が使えないとは限りません」

 

 「アンタ、杖なしで撃ったわね」

 

 五年生以上が習う無言呪文よりも、さらに難度の高いとされる杖なし呪文。

 

 簡単な浮遊呪文ですら熟達した魔法使いであっても杖なしでは使えぬ者は多い。普通ならば。

 

 上級生と言えどホグワーツ生徒が滅多に使えるものではないからこそ、ドロホフという男がこの魔法をあちこちで悪用していることを、ミネルバとアメリアは嫌というほど知っていた。

 

 何しろ、その「悪用」対象となる場合の大半は彼女たちか、もう一人のレイブンクローの首席なのだから。

 

 

 「誇るほどのもんじゃねえさ、我らが決闘チャンピオン殿に至っては、杖なしで失神呪文だろうが使えるって話じゃねえかよ。まだ学生だってのに大したもんだぜ」

 

 「そして貴方には、杖なしで服従の呪文が使えるという噂がありますが?」

 

 「ついでに言えば、悪霊の火で談話室のソファーを焼いたなんて話もね、“炎の蛇”殿?」

 

 「おお怖い怖い。グリフィンドールの首席様にハッフルパフの秀才様はそんな恐ろしいことを考えるとは。残念ながら、まだ俺には“そこまで”のことは出来ねえよ。ま、炎については拘りがあるからいつかはやってみたいがね」

 

 「やった日には、めでたくアンタをアズカバン送りにしてあげるわよ」

 

 「やってみるかい? 俺は別に、今でもいいんだぜ」

 

 言いつつ、杖をいつでも抜き打ちできる体制で構えるドロホフ。

 

 表情こそ相変わらず笑みを浮かべたままだが、その眼は油断なく二人の杖先に向けられていた。

 

 

 「……」

 「……」

 

 無言のまま、二対一の構図で対峙する三人。

 

 廊下で魔法を使ってはならないという校則など、もとよりドロホフの眼中にない。この男を前にして、正当防衛であったとしても校則を守ろうとする殊勝さなど、愚か者のすることであると才媛二人は知っていた。

 

 故に―――

 

 

 「そこまでです、三人とも。ここは互いに杖を収めるのが賢明でしょう」

 

 それを止められるのは、可能なだけの実力を持った第三者しかあり得ない。

 

 ゴブリンかあるいは小人との混血の特徴を持つ小柄な生徒。レイブンクローの監督生にして、七年生の男子首席、フィリウス・フリットウィック。

 

 決闘クラブを率いる代表にして、同時にホグワーツの決闘チャンピオンでもある。少なくとも、正面きっての戦いならばドロホフをも上回る杖捌きの持ち主だ。

 

 新たに加わったその声により、緊張を孕んだ対峙は解けたようであった。

 

 

 「おやおや、噂をすれば決闘チャンピオンってか。元気かい、フリットウィック」

 

 「ああ、お陰様でね、ドロホフ。君が誰彼構わず呪いをかけて回るのをやめてくれれば、レイブンクローの監督生としても助かるんだが」

 

 「はは、そりゃあご愁傷さまだな。なあに、ありゃあちょっとした防衛訓練って奴だよ。お宅の決闘クラブみてえな真正面からの打ち合いだけが、闇の魔術って訳じゃねえんだから。“油断大敵”ってな」

 

 女性二人とドロホフの場合と異なり、ドロホフとフリットウィックの組み合わせには対峙しながらも談笑出来るだけの交流と言えるものがあった。

 

 それは、個人の性格もさることながら、レイブンクローとスリザリンという寮自体の距離感も影響していると言えるだろう。

 

 

 グリフィンドールのミネルバ・マクゴナガル

 

 ハッフルパフのアメリア・ボーンズ

 

 レイブンクローのフィリウス・フリットウィック

 

 スリザリンのアントニン・ドロホフ

 

 曰く、“当たり年”の四人であり、いずれも同じ年に監督生に任命された四人。

 

 男性二人と女性二人、それぞれごとにライバル関係にありながらも時に協力もするその姿は、創設者たちの寮の在り方そのものを象徴しているようにも見えた。

 

 それは生徒や教員のみならず――

 

 

 

 「あーらあら、まーたしても例の四人が勢ぞろいだわ。こんな廊下の隅っこじゃなくて、わたしのいるトイレに来てくれてもいいのにねぇ」

 

 四人の生徒がいる場に、さらに場違いな闖入者が現れる。

 

 それは生者の気配を持つ存在ではなく、このホグワーツの至るところに存在する死者の念の具現。

 

 このホグワーツに多く住まうゴースト達の多くは、生徒と関りを持たないが、中には例外的に生徒に関わっていく者もいる。

 

 

 「特にフィリウス、あーんたはわたしの後輩なんだから、8年上の先輩をもうちょっと敬ってもいいんじゃないの?」

 

 「マートル、いや、それは……流石に、女子トイレには入れませんよ」

 

 特に彼女、マートル・ウォーレンは、わずか9年ほど前にゴーストになったばかりの新参者にして、“ホグワーツの生徒”でもあった地縛霊。

 

 有名な生徒、あるいはカップルに絡んでは、灰色だった自分の学校生活との格差を妬み、僻み、呪詛を放つ。実に“トイレの悪霊”らしいゴーストであった。

 

 

 「おやおや、根暗のマートル様のおでましかい。ってえことは、くたばったビンズの野郎の代わりに二代目のゴースト教師が誕生するって噂は本当なのかね」

 

 「あん? ドロホフ、アンタわたしに喧嘩売ってんの?」

 

 「いやいや、これは簡単な推理でございまっせ、レディ・ウォーレン? “嘆きのマートル”あるところに、“悪霊のダッハウ”あり、これはもう、ホグワーツの秘密ってもんだろ」

 

 「あー、ダメダメ、アイツの名前は出さないで。アイツのおかげで私のゴースト生活滅茶苦茶なんだから」

 

 「何だお前、ダッハウの野郎が苦手だったのか?」

 

 「苦手っていうか、働かされるのよ、アイツに見つかると。せっかくゴーストには授業もフクロウ試験もないってのに、アイツに関わると雑用、事務仕事、掃除警備の嵐よ。オマケになんか、ゴースト達を集めた“夜間学校”なんてのまでおっ始めるらしいんだから。いつかゴースト・ストライキ起こされるわよアイツ」

 

 「ははっ、ゴーストの待遇改善要求ってか、前代未聞だな。それにしても、“夜間学校”ねえ、そりゃまた珍妙なもんを」

 

 随分と人数が増え、混沌としてきた場から、そそくさと女性二人は退避していた。

 

 何しろ、頭脳明晰を地で行く二人である。この場でマートルに目を付けられようものなら、確実に僻まれ、妬まれ、絡まれること請け合いだ。

 

 

 

 「ねえミネルバ、聞いていい?」

 

 「あまり答えたくありませんが、なんですかアメリア」

 

 「何にせよ、ビンズ先生がいなくなって、次の魔法史の先生が必要ってことよね?」

 

 「そうでしょうね。今年は我々はイモリ試験ですし、フクロウ試験にしても魔法史の教師不在という訳にはいかないでしょうから」

 

 「んで、ドロホフの馬鹿とマートルの話の内容から察すると……」

 

 「新しい先生もまたゴースト、というか、管理人のあの方、ということになるんですかね」

 

 二人の疲れたような表情からは、出来れば外れていてほしい予想であることはひしひしと感じ取れた。

 

 脳裏に浮かぶのは、この不思議いっぱいの魔法の城であるホグワーツにおいても、ひと際摩訶不思議な“ゴーストのような何か”。

 

 基本的には霊体だけれど、ポルターガイストのピーブズのように、実体として物を動かすこともできる珍しい存在。

 

 

 

 人呼んで、“ホグワーツの幽霊管理人”

 

 

 

 あの悪名高きダッハウ氏が、魔法史とはいえホグワーツの教師になるということは、良いことなのか悪いことなのか。

 

 ホグワーツの誇る才媛二人であっても図り切れるものではなく、この人事を認めたであろうダンブルドア先生に、一言文句でも言ってやりたい気分になるのであった。

 

 




本作の登場人物の年齢および所属寮は、一部原作と異なるところがあります。
原作で判明している人物は基本そのままですが、分からない人物は独自に組分けしています。
もし、作者が通じていない所属寮情報がありましたらお教えいただけると嬉しいです。
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