【完結】お墓にお辞儀と悪戯を   作:トライアヌス円柱

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2話 闇の帝王の勃興と没落

 この世に天使が、三つあり

 

 アリアナ、マーテル、メロンちゃん

 

 

 

 「一体誰ですか? このような珍妙な落書きを追加した愚か者は」

 

 「知らないわ。きっと、マーテルちゃんが妖精の力を借りて書いたのね」

 

 「あいにくとわたくしも存じ上げません。ですが、メロンちゃんの祈りの成果なのだと信じております」

 

 ここは、摩訶不思議なるホグワーツ。

 

 この悪霊教師を目をもってしても、なぜかこの落書きを誰が書いたのかは謎であった。

 

 いや、まさか。残留思念に過ぎないゴーストの精神的暗黒面が分霊として顕現して落書きを残した? それこそまさか。

 

 時計塔より這い出して以来初めて、背筋の凍る思いというものを味わった、ノーグレイブ・ダッハウのとある日。

 

 イギリス魔法界は物騒なれど、今日もホグワーツは平和だった。

 

 

 

*----------*

 

 

 

 とまあ、背筋も凍る謎の落書きはさておき

 

 

 「本日は1980年の7月31日、とある予言に従うならば、闇の帝王へ三度抗った両親から、闇の帝王を滅ぼす力を持った子が生まれるとのことでした」

 

 「生まれてないわね」

 

 「生まれてませんね」

 

 予言に該当すると見られていたのは二人、ハリー・ポッターとネビル・ロングボトム。

 

 “闇の帝王に三度抗った両親”という条件を満たし、なおかつ7月末に臨月を迎えると言えば当然絞られてくる。

 

 なので、ちょびっとばかし予言に逆らってみることにして、母体に負担のかからない範囲で可能な限りずらす、という意味があるんだかないんだか微妙な策を行った。まあ、失う物は特にないので分の悪い賭けでもなかったわけだが。

 

 リリー・ポッターは、マグルの総合病院で出産だったので、少しばかり主治医らに軽めの錯乱の呪文をかけ、認識をずらすことで“一週間早めの帝王切開”による出産に切り替え。

 

 アリス・ロングボトムは聖マンゴ魔法疾患病院にて、魔法的な手法によってこちらも予定日より10日ほど早くの出産となった。

 

 その結果

 

 

 ハリー・ポッター  1980年7月21日生まれ

 

 ネビル・ロングボトム 1980年7月20日生まれ

 

 

 ということになり、予言に謳われた条件を完全に満たす子供は、この世に存在しなくなったのである。

 

 

 「はい、その通りです。この時点で見事に予言は外れてしまった訳ですが、ここは解釈次第でしょうかね。厳密に7月31日と名言されたわけではなく、“七つ目の月が死ぬとき”ですから」

 

 「かなり難解な言葉よねそれ。普通に解釈するなら7月の終わる時、末の日って意味っぽいけど」

 

 「結局、その日に生まれなかった訳ですから、ちょびっと前後にずれるとかありそうですもんね」

 

 「そもそもからして、闇の帝王を滅ぼすことが出来るのは予言の子のみ、という前提そのものが間違っていると私は思いますがね。本質はむしろ、闇の帝王の滅びとなる要因は、闇の帝王自身の手によって選ばれる。ではないかと思われます」

 

 「アタシは占い学は全然わかんないんだけど、何か根拠はあるのかしら?」

 

 およそ、魔法界の学問の中でも、系統だって教えるのが最も難しい分野の一つが、占い学というもの。

 

 にもかかわらず、現代に至っても主要な教科として残り続けているということは、それほどに“占星術”など占いの歴史が、魔法使いという存在と切っても切れない関係にあったことを意味している。

 

 

 「私もまた、占い学そのものに詳しいわけではありません。予測は出来ても予言などまったくの畑違いというものですから」

 

 「頼りにならないわね、クズ」

 

 「まったくですね、ゲス」

 

 ここぞとばかりに貶す悪霊女二人組、何だかんだで日頃から恨みつらみは溜まっているらしい。

 

 

 「ですがまあ、専門外故に見えてくるものもあるというもの。簡単に言えば、オイディプス王の伝説などにもありますが、魔法史の中にも“予言”というのものは度々登場し、その中にも法則性らしきものはあるということです」

 

 罵倒はスルー。この悪霊教師、普段から罵倒しまくっているからか、受け流すことにも長けている。

 

 

 「ふむふむ、オイディプス王、ね。そう言えばギリシア神話にはデルフォイの神託が何度も出てきたわね」

 

 「ヘラクレスとかオリオンとか、有名所な英雄は皆何らかの破滅の予言をされてるものですし」

 

 「この際ですから、“闇の帝王”をイギリス魔法史に登場する魔法戦争の片方の陣営の首魁として定義します。そのように“マグル史的な当たり前の歴史の人物”として見た場合、果たして例の予言が成立する余地はあるや否や?」

 

 「そりゃ無理に決まってるでしょ、何歳差あると思ってんのよ」

 

 「闇の帝王さんの正確な年齢は知りませんけど、マートルさんたちと同年代くらいなんですよね?」

 

 「スリザリンの卒業生組からの情報を見る限り、そうらしいですね。確実に言えることは、ノーグレイブ・ダッハウが魔法史教師となった後の生徒ではありません。そこは私が責任を持って断言できます」

 

 となれば、闇の帝王の年齢は最低でも50歳は越えているわけで。

 

 そして、帝王を倒す者と予言された子は、“生まれようとしている”というのだから、ハリー・ポッターであれネビル・ロングボトムであれ、1980年生まれ。

 

 

 「ではここで次の質問といきましょう。一体彼らは何歳になれば、闇の帝王を滅ぼせるようになるでしょうか?」

 

 「真っ当に考えれば、どんなに優秀でも成人の17歳は必要よね」

 

 「となると、ええと……1997年頃ですか?」

 

 「まあその辺りが妥当でしょう。では、さらにもう一つ、この魔法戦争があと17年間も続くと思いますか?」

 

 1980年の今の段階でも、既に10年近くも続いてしまっている長期戦争。

 

 初期の頃は武力行使を伴わなかった政治紛争に近かったとはいえ、本格化してからでさえ5年はゆうに経過している。

 

 マグルの世界大戦は言うに及ばず、ベトナム戦争のような一国を舞台に超大国がそれぞれ支援するような形であっても、本格的な武力闘争は7年程度が限界値だ。

 

 兵士たちの厭戦気分や、国費を使い続けることへの非難。そもそも、“何のために戦争をしているのか?”という疑問など、様々な問題が湧き上がってくる。

 

 この魔法戦争とて例外ではなく、魔法族の全てが戦争に倦み疲れ果ててしまえば、なし崩し的な停戦、休戦に雪崩込むのは止めようもない。

 

 

 「ありえないわね。最近は随分と激化しているけど、流れはこう、最終局面へ一直線って感じよ」

 

 「てゆーか、ここから17年間もダラダラ決着つかずに長引いたら、闇の帝王さんのありがたみが薄れちゃいますね」

 

 「良い着眼点です、メローピーさん。そう、闇の帝王を軍隊の総司令官と捉えるならば、予言の子と真っ当に戦うということは、17年間も戦局を変えることが出来なかった無能司令官の証明になってしまいます」

 

 「そんな奴は予言云々以前に求心力を失うでしょうね」

 

 「ただの自滅じゃないですか」

 

 「ただし、ハンニバル将軍のことを悪く言うのは許しません」

 

 「いや、誰よそいつ」

 

 「聞いたことありません」

 

 ハンニバル・バルカ。マグルの世界においてBC219からBC202まで、17年間ローマと戦い続けたカルタゴの将軍である。

 

 軍事関連の人ならば、現代の士官学校ですら題材とされる戦術の天才だが、女性ゴースト2人が知らないのも無理はない。 

 

 

 「まあそれはさておき、戦争を仕掛ける側の難しさは時間にあります。魔法省陣営は“体制維持派”ですから、立場的には勃発した武力闘争を鎮圧する側です。例えなし崩し的な停戦合意であろうとも、取り敢えず今の体制を続けることに新たな大義は必要ありません。ですが、革命戦争を起こした側はそういうわけにもいきません」

 

 例えその主張が、はるか昔のマグル生まれを要職につけなかった時代への回帰を掲げたものだったとしても。

 

 厳然たる現実として、“マグル生まれが魔法省にも登用されている現在”が存在している以上、それは革新を求める改革運動ということになる。

 

 しかし、その改革運動が頓挫し、膠着状態に陥ったままダラダラ17年間も続くというのであれば、変えることの意味とは何なのかという非難は当然出てくる。

 

 戦争の間にも、マグル避けなどの様々な部署や行政機関は、秩序の維持のために動き続けなければならないのだから。

 

 

 「とまあ、粗を探せばもっともっと出てきてしまう訳ですが、同時に意味のない仮定でもあります。魔法界はあくまで魔法界であって、現実的なマグル界ではないのですから」

 

 「それはそうよね。マグルの世界にアタシらはいないし」

 

 「ええと、つまり、どういうことですか?」

 

 「少し説明が遠回りになりましたが、要するに言いたいことは、“闇の帝王”は現実的な司令官というよりも、お伽噺的な“悪い闇の魔法使い”の側面を持つということです。あちら側で有名な童話、オズの魔法使いなど然り、“悪い闇の魔法使い”というのは、少年少女にあっさりやられる結末が多いのですよ」

 

 「なるほど、アンタはこう言いたい訳ね。魔法戦争が純粋に現実的な戦いなら、こんな童話めいた予言で総司令官がやられるなんてあり得ない。でも、幻想が跋扈する魔法の戦いだから、ものすっごく童話的で荒唐無稽なやられ方をするって」

 

 「ええぇ、それって、すっごく格好悪くありません?」

 

 メローピーさんの感想ももっともである。10年近くも戦争の主軸となってきた魔法使いが、童話めいた展開で滅びるというのは、なんかこう、うん、あんまりだ。

 

 

 「ですがしかし、物語の魔法とはそういうものです。一種の共同幻想、共有魔術とも呼べますが、“例のあの人”、“名前を言ってはいけないあの人”、“闇の帝王”と己を呼ばせることそのものが、物語に則った魔術式として成立してしまっていますから」

 

 「以前話した、マートルさん謹製の嫉妬マスクの“曰く”にも通じるものがあるわね。ヴォルデモートが本当に闇の帝王に相応しい力を持っているかじゃなくて、皆が彼を闇の帝王と信じてしまうことで、本当に彼の力がどんどん大きくなってしまうってことかしら?」

 

 「恐らく、彼の狙いはそういうものでしょう。単独で戦ってはアルバス・ダンブルドアに勝てないと認識しているからこそ、他の手段を用いて力の底上げを図るという方針そのものは理に適っております。ただし、何事にもプラス面あれば、マイナス面ありというものです」

 

 予言とは、それを恐れて逃れれば逃れようとするほど、追いつかれてしまうものとされるように。

 

 重ね重ねた宿業が、最後の最後に跳ね返り、本人に死を与えるというお伽噺は古今東西に存在している。

 

 

 「自分を“闇の帝王”と呼ばせれば呼ばせるほど、その名に相応しく不死で強大な存在になろうと闇の魔術を極めれば極めるほど、“普通に考えればあり得ない流れであっさり消えてしまう”という弱点を孕む。予言の意味するところとは、つまりはそういうものではないかと」

 

 「確かに、赤子にやられてあっさり滅びるなんて、その“あり得ないこと”の典型例よね」

 

 「でも、なるほど、魔法界の皆さんが彼を“闇の帝王”だと思っているからこそ、そういう荒唐無稽なお話を信じちゃうってことでもあるんですね」

 

 「だとすれば、イギリス魔法界18000人の総勢で、一つの戯曲を演じているようなものですね。タイトルはさしずめ、“闇の帝王の勃興と没落”といったところでしょうか」

 

 このホグワーツが、現実と幻想の境界線として、常に“魔法の城”という劇を演じているも同然ならば。

 

 此度の魔法戦争とは、イギリス魔法界を舞台に、ホグワーツのOB達が“闇の帝王の勃興と没落”を演じているようなものか。

 

 だとすれば、演者のアドリブによる脚本変更はどこまで許される?

 

 物語を俯瞰して観測している、脚本家は果たしているのか?

 

 それとも、どこまでもただの現実でしかなく、ただ人間たちの決断の結果として歴史は回るのか。

 

 

 「こうなってみると、色々なものが意図的にも見えてきます。闇の帝王を恐れて予言の子を隠すという行為そのものが、闇の帝王の神秘性を高めるとも取れますし。闇の帝王自身にしても、己を滅ぼすという予言を気にして追えば追うほど、予言の信憑性を高めるというドツボに嵌る可能性もあります」

 

 「他ならぬ帝王自身の行動が、“闇の帝王らしすぎる”ほど、約束された予言は成就して、帝王らしく破滅するわけね」

 

 「じゃあ、帝王っぽく行動しないほうが、破滅フラグは回避できるってことですか?」

 

 「断言は難しいですが、そういうものであると私は思っていますよ。そしてならばこそ、マグルの帝王切開技術で出産日をずらすなどという“全く予言の子らしくない”行動こそが、予言の歯車を狂わせる一石になることもある」

 

 「少なくとも、物語性は皆無よね」

 

 「いきなりすっごく、壮大な予言から等身大の話になっちゃった感はあります」

 

 アルバス・ダンブルドアがあえて狙ったというならば、その一点に尽きるだろう。

 

 予言を恐れて、回避するために行動することそのものが予言を成就させる。

 

 それは闇の帝王のみならず、対立陣営である不死鳥の騎士団にも当てはまるのではないか。

 

 ならばむじろ、忠誠の術のような古く強固な“らしい魔法”で守るよりも、マグルの帝王切開という“まったくらしくない”手段のほうが、予言の裏を取れるのでは?

 

 【予言をあえて無視して、ただの戦争として行動する】ならば、それはどのような運命へと帰結するのか。

 

 

 「本来、先のことが確定しているなどありえないことです。予言を無視し、破棄してしまうとは、何も定かではない未知の領域を歩むことと同義ですが。それはつまり、ただの現実を選択するということです」

 

 「言われてみれば、予言で未来が定まっている、っていう前提自体が、すっごく魔法っぽいのね」

 

 「占いを無視したかったら。勇気を持ってひたすら突き進めばいいって感じでしょうか?」

 

 「そこはまさに、勇猛果敢なグリフィンドールの得意とするやり方ですね。やはり、アルバス・ダンブルドア校長はグリフィンドール的な果断即決こそが元来合っているのだと思いますよ」

 

 「不死鳥の騎士団の優先事項でしょうし、まあ、校長先生が決断したわけか。地味だけど効果ありそうね」

 

 「ちなみに、発案者はアリアナちゃんです。許可したのは当然、ダンブルドア校長ですが」

 

 「え?」

 

 

 

 

某日、校長室にて

 

 

 「じいじー、どうしたの?」

 

 「ううむ、アリアナよ。実はとーても難しい悩み事があってのう」

 

 「どんなのー?」

 

 「全容を言うわけにはいかないのじゃが、つまり、来月に末に生まれる予定の子達が二人おっての。その子らを危険から守るにはどうすればよいのかと頭を悩ませていてのう」

 

 「赤ちゃんが、月末に生まれるの? その子達が危ないの?」

 

 「そう、そういう予言なのじゃ」

 

 「じゃあ。ちょっと早く生まれちゃえばいいんだよ」

 

 「―――ッ!? それじゃ! やはりアリアナは天才じゃ、魔法界一じゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 「アリアナちゃん曰く、という感じで決まったそうです。流石はダンブルドア校長です」

 

 「感心して損しました」

 

 「大丈夫あの校長? そろそろ本気で耄碌してきてない?」

 

 「お忘れですか? 今のホグワーツ運営の基本方針は、“より大きな善のために”ではなく、“アリアナの言うとおりに”です」

 

 「あ、もう手遅れだった」

 

 「ホグワーツ滅亡の日も近そうですね」

 

 あえてフォローするならば、アリアナちゃんの発言はあくまで“きっかけ”であって、様々な要因を校長先生が考え、悩み、その果てに導き出した答えであるはずだ。

 

 多分、きっと、うん、ほら、だってほら。

 

 

 

 

 

 

 

*----------*

 

 

 

 

 

 1981年10月31日   日刊予言者新聞号外

 

 

 【ゴドリックの谷の決闘再び! イギリスの英雄が闇の帝王を打ち破る!】

 

 『闇の帝王敗れる! やはり最強はアルバス・ダンブルドア!』

 

 

 10月30日の深夜、かつてイギリスの英雄がヨーロッパ魔法大戦を引き起こした闇の魔法使い、ゲラート・グリンデルバルドを打ち破った“伝説の決闘”の舞台ともなったゴドリックの谷にて。

 

 ホグワーツの創始者の一人、ゴドリック・グリフィンドールの縁の地でもあるそこに、魔法戦争における死喰い人陣営の首魁、ヴォルデモート卿が姿を現した。

 

 その目的は、半年前の魔法省強襲事件において、死喰い人陣営の多くを迎え撃った若き英雄達の一角、ジェームズ・ポッターとその妻、リリー・ポッターの夫妻の命を狙ってのものであったと情報が入っている。

 

 しかし、不死鳥の騎士団の迎撃体制は万全であり、団長であるアルバス・ダンブルドアを始め、アラスター・ムーディ、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピンらが即座に救援に駆けつけ、死喰い人陣営との壮絶な集団決闘となった。

 

 死喰い人もまた、闇の帝王の召し出しに応じて主戦力が増援に到着、エバン・ロジエール、アントニン・ドロホフ、ベラトリックス・レストレンジ、ロドルファス・レストレンジ、ラバスタン・レストレンジという武闘派幹部勢揃いという顔ぶれだった。

 

 空前絶後の総力戦となった決闘だが、決め手となったのはやはりそれぞれの中核人物の一騎打ちであり、アルバス・ダンブルドアとヴォルデモート卿の戦いこそが、帰趨を決定づけるものとなった。

 

 結果として、ヴォルデモート卿は壮絶な決闘の末に打ち破られ、最後にはその肉体そのものを悪霊の火へと変えて道連れを図るも、アルバス・ダンブルドアとリリー・ポッターの張った盾の呪文に阻まれ、僅か一歳の赤子一人すらも殺すことは出来なかったという。

 

 

 10年にも渡り魔法戦争で武闘派を率い、オライオン・ブラック亡き後の中核となっていたヴォルデモート卿が倒されたというのは、イギリス魔法界にとって実に喜ばしいことである。

 

 バーテミウス・クラウチ魔法大臣はこれを機に、残る敵の城塞、要塞に総攻撃を行うことを即刻閣議決定。既に布告は発せられ、魔法戦争はいよいよ終焉の時を迎えつつあるのは間違いない。

 

 唯一、気になる情報があるとすれば、ヴォルデモート卿が打ち破られたゴドリックの谷の戦場から、主要な死喰い人たちが全員逃げ散ったという事実であろう。

 

 一説には、ヴォルデモート卿は既に肉体を失っても再生させるための手段を編み出しており、己の肉体を悪霊の火に変えての悪足掻きとも取れる自爆は、あくまで復活を前提にしての逃走手段であったとも。

 

 実に、有り得る話である。己の復活のための魔道具を配下に持たせ、確実に戦場を離脱するためにあえて自らを囮にしたとすれば、あの闇の帝王への忠義には厚いと言われるレストレンジらが、脇目も振らずに逃走を選んだということにも納得がいく。

 

 

 アルバス・ダンブルドア氏からはまだ声明は発せられていないものの、闇祓い局長、アラスター・ムーディ氏よりコメントがある

 

 「奴は打ち破られ、肉体を失った。この局面において我々が勝ったのは事実だ。だが、油断大敵! 奴はまだ死んではおらん。死喰い人共への追撃と捕縛を完遂できるかどうかこそが、勝敗の分かれ目となる。決して、闇への警戒を怠るな!」

 

 戦争の終わりが近いのは事実。だがそれは、新たな闇との戦いの始まりに過ぎないのかもしれない。

 

 ただまあ、今はひとまずの勝利と共に、ヴォルデモート卿が打ち破られたという朗報に乾杯を捧げよう。

 

 この戦争で死んでいった勇士たちへ

 

 今もなお戦い続け、総攻撃へ向けて準備を進める戦士たちへ

 

 そして何よりも、恐るべき闇の帝王を打ち破りし不死鳥の騎士団の英雄たちへ

 

 

 我らがイギリスの英雄、アルバス・ダンブルドアへ乾杯!

 

 

 

 

 

 

 

 「流石はダンブルドア校長先生、信じておりました。 校長先生万歳!」

 

 「アタシは最初から何も心配なんてしてなかったけどね。 校長先生万歳!」

 

 「ホグワーツは永遠に不滅ですね。 校長先生万歳!」

 

 サラリと掌を返すドクズゴースト三人衆。

 

 勝者に対しておもねることに定評のあるクズの鑑だった。

 

 いやもう、お前らホント死ねよ。あ、いや死んでた、ゴーストだった。

 

 

 

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