【完結】お墓にお辞儀と悪戯を   作:トライアヌス円柱

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今回は割と短めです。

ずわいさま、誤字報告ありがとうございます!


幕間 秘密の部屋に関する告知

秘密の部屋に関する告知

 

 

その1

 

 ハロウィンの首謀者、スリザリンの継承者を名乗る不届き者の悪霊を退治して、得点ゲットキャンペーン

 

 嘲笑の悪霊  20点

 

 嫉妬の悪霊  10点

 

 執着の悪霊  5点

 

 

 ※最も簡単な衝撃呪文を当てるだけ、当てた回数だけ得点が貰えるぞ!

 

 

 

その2

 

「この城のどこかに秘密の部屋が隠されている」

「閉ざしたのは、校長先生か謎の悪霊だ」

「みごと継承者を見つけ出した生徒には、200点を与えよう」

「非常に怪しいのは、3階の女子トイレ(マートル在中)である」

「秘密の部屋について校長先生に質問すると50点減点」

「魔法史教師に質問するとどうなるかは、自分で考えること」

「得点めぐんでやるから探せや」

 

 

 

 

 

 「どこかで見たことあるような告知文だわ」

 

 「凄く、既視感を感じます」

 

 いつものように悪霊たちがたむろっている印刷室において。

 

 昨夜のハロウィンの夜の出来事に関する告知文章が、次々と印刷機から吐き出されていく。

 

 ちなみに、ハロウィン当日の誤魔化しは即興でマクゴナガル先生とスネイプ先生が行った。その辺りは阿吽の呼吸である。

 

 おかげでスクリュートばかりか、まだ子供とはいえアクロマンチュラまで送りつけられたグリフィンドール生徒には合掌。(ハリー達に至っては絶命日パーティーでマートルと戦った上に、寮に戻ったらこれである)

 

 何気にちゃっかり犯人探しのためにマクゴナガル先生本人は難を逃れている気がするが、そこはツッコんではいけない。決して彼女はクズではない。ホグワーツの副校長たるものが、まさかクズのはずはない。

 

 スクリュートなんて見るのも嫌だからという理由で、出来の良い監督生に対処を放り投げたりはしないのだ。

 

 

 

 

 「校長先生は今回の事件については“マンネリ化”を隠れ蓑にするつもりですね。上級生は昨年の顛末を忘れるはずがありませんし、新入生とてそれぞれの寮の先輩から悲劇について聞き知っているでしょう」

 

 特に、ハッフルパフのハンナ・アボットとジャスティン・フレッチリーの悲劇は有名だ。

 

 対悪霊戦線を率いるグレンジャー将軍らも忠告に駆け回るだろうし、流石に同じ轍を踏む生贄は出ないだろう。生徒達だって学習するのだ。 

 

 

 「もう一枚のほうの告知も、賢者の石が秘密の部屋に変わっただけで、ほとんど同じ内容だし」

 

 「石は無傷で、の部分と、4階廊下がマートルさんのトイレに変更されてるだけですわ」

 

 「別にどこでもよかったのですが、せっかくなので馴染みのある場所にしました。校長先生からの注文は、“生徒が近寄りそうもない場所”でしたので」

 

 今のホグワーツにおいて、生徒が近づきたがらない場所といえば、4階の廊下、マートルのトイレ、そして叫ばれない屋敷などである。

 

 1つ目はスクリュート繁殖工場であり、2つ目は言わずと知れたマートルさんの根城。

 

 そして3つ目に至っては“例のあの場所”、“名前を言ってはいけないあの場所”扱いされている。

 

 

 「でも、素直に騙されてくれる生徒ばっかりとも思えないわよ。特にウィーズリーの双子なんかは純粋に好奇心で探すかもしれないし、対悪霊戦線の面子も裏を読むくらいはするでしょ」

 

 「とっても頭の良い子達ですものね、セブ君たちの時代を思い出します」

 

 「そこはその通りですが、長く隠し通すつもりもありません。多少の撹乱になればそれで充分なので、取り敢えずは時間稼ぎとしてピーブズに血文字を追加させました」

 

 

 

 秘密の部屋は開かれたり、継承者の敵よ気をつけよ

 

 夜間学校の扉も開かれたり、スクリュートの継承者募集中

 

 この世にクズが三つあり、ダッハウ、マートル、メローピー

 

 

 

 「凄いわね、不気味な血文字の忠告文が訳の分からない謎の戯言と化してるわ」

 

 「最早見る影もないですね」

 

 校長先生の標語である、“アリアナの言う通りに”がないのはせめてもの救いだろうか。

 

 ついでながら、今更クズと言われたところで悪霊共は動じない。だってただの事実だから。

 

 

 「以前、印象に残る記憶のピークについて話しましたが、第一印象というのはやはり重要です。血文字という不気味なメッセージであっても、内容がこれでは恐怖のインパクトが薄れるのは致し方ないかと」

 

 「この上で、告知文章でアタシのトイレが怪しいとか、どう考えてもアンタの罠にしか見えないわよ」

 

 「完全にマッチポンプですものね」

 

 加えて、去年の“悪霊退治”の前例が重なる。

 

 これらを読んだ大半の生徒は、秘密の部屋とやらを見つけたら夜間学校の入り口でした、あたりがオチだと思うだろう。

 

 

 「それで、長く隠し通すつもりがないってのは?」

 

 「簡単なことです。去年の例を思い出させることで日常に紛れ込ませるというのは有効ですが、実際に死喰い人達の強襲があったという事実は消えておりません。ならば、今回もそうなのではと勘の良い生徒が察するのは時間の問題ということです」

 

 「ええと、完璧に前例通りなら、ダッハウ先生を使って死喰い人の襲撃を誤魔化してることに気付いちゃうってことですか」

 

 「そうです。だからこそこちらも、“お役所仕事の面倒な手続き”が終わるまでの間に生徒達が無用な探検に走らせなければそれでよいという方針のようです」

 

 言いつつ、ダンブルドア校長先生が秘密の部屋の探索担当の専門家として呼び寄せる予定の人物リストがひとりでに浮かんでくる。

 

 要するに、彼らの正式な赴任まで生徒達が夜にあちこち出歩かなければそれでよいのだろう。

 

 

 

 「ええと、メンバーは………これはまた、そりゃあ秘密の部屋探しには適任でしょうけど。ハリーの胃のことも少しは考えてあげてもいいんじゃない?」

 

 「毎日授業参観のようなものですね、これ」

 

 書かれていた人名については、お察しいただきたい。一人は闇祓いで、一人は魔法警察に勤めている人物だ。

 

 他にも幾人か呼び寄せるつもりのようだが、現状での“内定組”がこの二人らしい。

 

 

 「こっちの紙は正式な魔法省への依頼状で、ええと、ダッハウ先生、こちらの白紙のノートは?」

 

 「ああ、昨夜私が拾った遺失物です。生徒の落とし物だと思うのですが白紙では手がかりもないので事務用具として使用する予定です」

 

 「それって落とし物の横領じゃないの」

 

 「失敬な、不明物の有効活用というものです。新品ではなく小汚い量産品ですが、もしメローピーさんが使いたいのでしたら下賜いたしますよ。貴女も最近は私の道具、もとい、一端の事務員として役に立つようになってきましたので、記念品にどうぞ」

 

 「何様よアンタは」

 

 「裏側管理人です」

 

 話が脱線していくのはいつものこと。そして、生徒の落とし物を勝手に下賜品に変えるクズがここにいる。

 

 まあ、こんなことは日常茶飯事なのだが。

 

 

 「話を戻しますが、死喰い人の侵入に備えて闇祓いが定期的に駐在するというのは去年もマッド=アイ・ムーディが行っています。この秘密の部屋騒動が直接的な害意かは不明ですが、死喰い人が侵入や陽動を試みている可能性が高い以上、備えるのは当然のことでしょう」

 

 「それはそうでしょうけど、魔法省は簡単に認めるの? 今はまだただの落書きでしかないでしょこれ」

 

 「ホグワーツ内部はそうなのですが、どうやら外部からも死喰い人が侵入しようとした形跡があったのです。送り込まれたのもまさにという人物でしたから。ちなみにこの辺りの調査はマクゴナガル先生やスネイプ先生、フリットウィック先生らの仕事です」

 

 「どなたなのですか?」

 

 「ワルデン・マクネア氏。魔法省危険動物処理委員会の死刑執行人を務める人物で、元死喰い人。今は一応中立派ですが、今でも死喰い人の要人暗殺組や海外海賊組との繋がりはあるとされる人物です。ホグワーツとホグズミード村の境界あたりに、彼がいたことは間違いありません」

 

 名前がバレずにホグワーツに侵入するのは容易ではない。

 

 ならば、仮にそこにいたとしても言い訳や誤魔化しの効く人物を派遣するというのは、常道とも言えるだろう。

 

 

 「危険動物処理委員会ねえ、確かにここは危険動物の巣窟だし、スクリュートが魔法省の認可を受けてない危険生物なのはただの事実よね」

 

 「生徒達は確実に、マクネアさんを応援するでしょうね」

 

 「そしてアクロマンチュラに返り討ちにされました。流石にプロですので厄介と見て撤退していったようですが、救援に来たコーバン・ヤックスリーという名前が残ってしまったのは失点でしたね」

 

 ホグワーツのスクリュートは、アクロマンチュラと連携して襲ってくる。

 

 流石の危険動物処理委員会の死刑執行人と言えども、そんなのを相手にしたことはなかったらしい。ここにはさらにドラゴンやケルベロスがいるのだが。

 

 

 「ヤックスリーか、こっちは問答無用で死喰い人の幹部ね。それも相当の古株の」

 

 「エバン・ロジエールやアントニン・ドロホフらとほぼ同時期に加わった人物ですので、偶然ということはありえません。ただ、彼らが校舎内に侵入していれば処刑器具らも出陣していたはずなので、あくまで彼らは外部から侵入を試みただけです。どちらが本命なのかまでは図りかねますが」

 

 血文字を残した“内部の誰か”が本命で、そちらの陽動のために外から侵入を試みたのか。

 

 それとも、外部からの突入こそが本命で、そのための陽動に内部の誰かが血文字などで騒動を起こそうとしたのか。

 

 どちらもあり得ることであり、現段階では情報不足によりどちらとも言えない。

 

 

 「その辺りは、ダンブルドア校長先生が考え決めることです。分かっているのは、死喰い人の幹部の名前と、死喰い人に繋がりがあるとされる魔法省の役人が、ハロウィンの夜に校舎付近をうろついていたことだけ。そこを詰問したところで、職分を果たしていただけと白を切るでしょう」

 

 「そういう悪知恵は、スリザリン卒業生の得意分野だったわね」

 

 「ちなみに、今も子供がホグワーツに通っているスリザリンの純血名家からは、危険動物処理委員会にスクリュートの駆除が依頼されています」

 

 「前言撤回する。白を切るどころか、ただの仕事じゃないの。案外仕事熱心のいい奴だったりしない?」

 

 「あの、それってたまたまマクネアさんが害獣駆除のお仕事に来ていただけってこともあるのではないでしょうか」

 

 何しろ、デルフィーニ・スナイド嬢を始めとして、子供がスクリュートに噛まれているのは事実である。

 

 まして、授業中に生徒にけしかけるとんでもない最低教師もいるとか、誰とは言わない。言う必要もない。

 

 

 「更に加えて非常に都合よく、ハロウィンに前後してスクリュートが二匹変死しているという事件がありました。ダンブルドア先生はこれを逆用しその調査ということで闇祓いの派遣を正式に要請するつもりかと。何せ、スクリュートを倒せるほどの危険な何者かが潜んでいることになるので」

 

 「ちなみに、変死していた場所は?」

 

 「鶏小屋です。雄鶏が多数死んでました」

 

 「それって、ただ単に餌を奪い合って共食いしただけなんじゃ……」

 

 「メローピーさん、それ以上はいけません」

 

 このホグワーツには多くの秘密がある。知っていい秘密から知ってはいけない秘密。そして、死ぬほどどうでもいい秘密まで。

 

 彼女にとっても、スクリュートの死因なんてどうでもいいことなので、無益な追求はしない。したところで不毛でしかない。

 

 ちなみに、死んでいたスクリュートは今年生まれの小型のものだ。去年からの歴戦の大型種は連携して餌をとるので共食いはしない。

 

 

 「まあ、闇祓い派遣の建前上の名目はどうでもいいけど。結局のところ血文字事件の犯人は死喰い人なのかしら?」

 

 「さて、それもまた今の段階では何とも言えません。陽動撹乱の可能性もあれば、何らかの布石なのかもしれません。可能性を挙げればきりがないですし、安易に思い込むのもそれはそれで裏を取られる危険性が増します。血文字自体は生徒の悪戯の範疇ですから、親が生徒に“ハロウィンの悪戯に紛れて穢れた血にメッセージでも送ってやれ”とふくろう便を送るだけでも成立します」

 

 「難しいんですね」

 

 「兵法においても、主導権は常に攻撃側にあります。何時でも何処でも狙えるテロリストに対し、防衛側は全面を守ろうとすれば各々が薄くなる。だからこそ、敵の場所さえ掴めればこちらから攻め入るのが有効であり、去年に行ったようにあえて賢者の石を囮にするなど、攻撃箇所をこちらから誘導する戦法が有効なのです」

 

 死喰い人は攻撃側、教師陣は防衛側。

 

 その基本構図は去年も今年も変わらない。そして、賢者の石を狙った襲撃を二度繰り返すとは考えにくいので、相違点があるとすれば攻撃側の狙いが曖昧になっていることだろう。

 

 例の血文字を残したものは、何を意図しておこなったのか。あるいは、死喰い人に騙されただけのお調子者の犯行だったりするのか。

 

 現段階ではただの悪戯レベルに過ぎないからこそ、情報が少なくその意図が読みにくい。

 

 

 「可能性だけならば、死喰い人に縁のある子供に見せかけ、グリフィンドール生徒が便乗してハロウィンに悪戯をしただけかもしれません。マッド=アイ・ムーディはあらゆるものを疑えと言いましたが、まさに金言ですね。全てを疑ってかかるくらいで、足元を掬われるリスクも減るというものですから」

 

 「要するに、全方向に警戒だけはしておいて、細かい部分は成り行き任せってことね」

 

 「少し違います。“高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処する”、という表現が正しいかと。ステーキを食べる際の食器はナイフとあと何でしたか」

 

 人、それをいきあたりばったりと言う。

 

 

 

 「未来など、分からないからこそ面白い。さて、秘密の部屋にまつわる騒動、記録を残すに値するホグワーツの歴史になってくれることを願いましょう」

 

 例によって、悪霊自身は何もしない。

 

 ただひたすら傍観者に徹したまま、成り行き任せに臨機応変。

 

 いやもう本当に、死ねばいいのに。

 

 

 

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