【完結】お墓にお辞儀と悪戯を   作:トライアヌス円柱

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秘密の部屋編、後半に入ります。
ここから4話ほどが、起承転結での「転」になるかと。

キンジットさま、貧血さま、誤字報告ありがとうございます!


9話 許されざる呪文

『時計塔のオブジェクト記録』

 

 【許されざる呪文】

 

 魔法界には、許されざる呪文と呼ばれる禁忌がある。

 服従の呪文、磔の呪文、そして、死の呪い。

 

 魔法は多種多様であり、その中には巨大な爆発を起こすもの、全てを焼き尽くす炎などもある。

 ならばなぜ、その中でもこれらの魔法は禁忌とされるのか。

 

 一説に、それらの魔法が殺意を原動力とした忌々しい力であるためだという。

 納得できる話であり、実に説得力がある。

 我らの魔法とは心の力なのだから、敵を殺したい、苦しめたい、支配したいと願えば願うほど、力が強くなるということであろう。

 

 ただし、ならばこそ反作用というものも覚悟せねばなるまい。

 相手を支配する魔法を使い続ければ、常に鎖で互いを繋ぐようなもの。

 また、相手に凄まじい苦痛を与え続ければ、使用者の心はどれほど醜く歪んでいくことか。

 

 そして、死の呪いに至っては、殺せば殺すほどに強まるということ。

 死を与え、相手を殺し、強くなり、更に命を求める。これは最早、吸魂鬼の亜種とでも称すべき怪物に他ならない。

 人間を殺す最大の怪物は、同じ人間に他ならないとは、誰の言葉であったか。

 

 『忘れるなかれ、人を呪わば穴二つ』

 『禁忌とされる魔法には、やはりそうされるだけの理由があるのだ』

 『確実に言えるだろう。それらの魔法を使うほど、人から遠ざかっていく』

 『愛を忘れ、歪みきったその果てに、それは人ですらなくなってしまうのだ』

 

 

 

 

*----------*

 

 

 

 「まさか、お主がリーマスを後継者に迎えるとはの。なかなかに意外な展開じゃ」

 

 「純血主義の私が、ですかな」

 

 ホグワーツの中枢であり、その持ち主のあり方を象徴するように、不思議な魔法の品で満ち溢れた校長室。

 

 今そこに、長く校長を務める老人と、長く副校長を務め現在は理事長として在る老人が、向かい合って話している。

 

 

 「いいや、この際は主義主張ではない。純粋に、孫が可愛いのが祖父というものなのかと思ってのう」

 

 「何も世の老人が全て、貴方のように孫可愛さに暴走するわけではありません。まあ、貴方の場合は妹でもあるという他に例のない現象でしょうが」

 

 ブラック三男家の当主であるシグナス・ブラック。彼の主義からすれば、“元人狼”のリーマス・ルーピンを孫娘の夫して認めるとは、中々に考えがたいことではある。

 

 脱狼薬も日々進歩しており、ピーター・ペティグリューらの開発した最新式の薬ならば完全に理性を残すことはおろか、かなり人に近い姿を保てるとしても。

 

 例え孫娘が、“血を裏切った”次女アンドロメダの娘、ニンファドーラ・トンクスだとしても。

 

 

 「魔法の力は進歩を続けている。やがては人狼という“病”も駆逐されていくでしょう。その中で、過去の因習に縛られるは愚か者のすること、と、進歩主義者の者らならばそういうでしょうな」

 

 「ふむ、お主はそうは思わぬと」

 

 「知っておいでのはず。私は常に政治的中立であり、そして、悲観論者でもある。……腹を割って話すならば、ダンブルドア、貴方は純血の未来についてどう考える?」

 

 それは、あの時計塔の悪霊の存在を知って以来、常に彼が考えずにはいられなかったこと。

 

 そして多くの人間は知らぬが、エバン・ロジエールやアントニン・ドロホフといった死喰い人の幹部とも、密かに話し合ったことのある課題。

 

 

 「我々“純粋な魔法族”は果たして、幻想と成らずにいられるのか? 我々は何時まで、人で在れるのか? 他ならぬ貴方を見ていると、私は不安に思う」

 

 人は、何も使わずに空を飛ぶか?

 

 人は、何も使わずに手から炎を出すか?

 

 人は、何も使わずに透明になれるか?

 

 

 「我々は長く、魔法という力を行使してきた。しかしそれは常に、幻想の生き物の力を借りてのことだった。ドラゴンの心臓、ユニコーンの鬣、不死鳥の尾羽根。最も古き魔法は杖とは無関係のものだが、それ故に形なき効果しか発揮できず、マグル達の幻想を現実に具現するものではない」

 

 しかるに、今の魔法使いはどうか。

 

 他人になるという夢を叶えるポリジュース薬は、例え機械工場の量産品ではなくとも、ああして全生徒に配ることはできるほどになった。

 

 

 「飛翔術が開発されたのは何時のことだ? 箒は、一体何時からあれほどに速くなった? それはまるで、マグル達が空を飛ぶ鉄の翼を得て、これまでにない速度で大空を席巻し始めた時代と重なるのではないか?」

 

 競技用箒が、加速度的に進化を始めたのは何時からか。

 

 現実側にいるマグル達が、自動車やバイクという乗り物を使い、時速数百キロメートルで移動するとはどういうことかを、“誰もが感覚的に”分かるようになる。

 

 その結果として、我々魔法世界の“限界点”もまた拡大し続けているのでは。

 

 

 「物理世界と幻想世界の境界を、幻想の側から守ること。それが、ホグワーツが出来た頃より我々が脈々と受け継いできた役割だ。権力欲に狂い、貴き義務を放棄した愚か者は数限りなくいるものの、それでもなお、我々純血の家はその責務を完全に放棄することはなかった」

 

 だが、何時までそれを守れるのか? いやそもそも、境界線はどこにある?

 

 科学が魔法と区別がつかぬほどに進歩したならば、何がいったい“幻想の夢”となるのだ? 銀河間をワープすることが、魔法使いの領分となるのか?

 

 

 「故に問いたいのだ、アルバス・ダンブルドア。貴方は最も長くホグワーツにいる“人間”だ。既に幻想となった肖像画の校長達や、ゴーストたちとは違う。前の世紀に生まれた貴方は、今の魔法界に生きる子供たちを、その力と在り方の変容をどのように考える?」

 

 座視したままでは、いられない変化。

 

 それを憂いたからこそ、かのゲラート・グリンデルバルドは、血と暴力を用いてでも、魔法界の変革を試みた。

 

 大陸の覇者を止めた、イギリスの英雄よ。

 

 貴方は、その瞳で未来をどう見ているのだ?

 

 

 「それは買いかぶりというものじゃ、シグナスよ。儂は本当に大したことなど考えておらぬ。ただの孫ボケ爺じゃよ」

 

 「しかし」

 

 「まあ聞いて欲しい。若き日の儂は確かに自惚れており、ゲラートと共に何でもなせると考えた。その裏側には、産業革命を経て飛翔していくマグルの世界に比べ、なぜ我らの世界は灰色にくすんでいるのかと、そうした憤りがあったのも事実じゃ」

 

 だが、あの世界大戦の日々において、鉄の翼が空を闊歩し、毒の弾をロンドン全域にばらまいていくのを見て。

 

 アルバス・ダンブルドアは、同時に文明の末路の可能性というもの強くを感じた。

 

 今はああして雄々しく進んでいくマグル達も、遠からぬうちに停滞と自滅の隘路に迷い込むのではと。

 

 

 「進化というものは、本当に難しい。自分では長い道を進んでおるつもりであっても、気付けば同じところを回っているなどざらじゃ。そして今は、停滞の円環であろうとも、そこに愛があれば良いのではと思っておる」

 

 「……進歩も、変化も、そこに愛が残るのであれば、構わぬと?」

 

 「そうなるの。そして最も畏れるは、この世から愛が消えることじゃ。差別、憎しみ、迫害、そうしたものを強めていけば、どれほど強固で発展した社会に至ろうとも、“誰も幸せになれない未来”につながってしまうのではと。それをこそ儂は恐れる」

 

 誰も幸せになれなければ、そもそも愛も文明も全てが意味を失う。

 

 例え終わってしまうものであっても、綺麗な終わりというものがある。そして、そこに納得があるならば、きっと美しい何かが残り、次に繋がっていくと思うのだ。

 

 

 「儂がホグワーツに願うのは、本当にただそれだけじゃ。そして同時に、ヴォルデモートの在り方を決して許容できぬ理由でもある」

 

 自分が生き残り、存在し続ける。そのためには、如何なるものも犠牲にしようが構わない。

 

 歴史上、多くの為政者や権力者が至った渇望であろうが、それが幻想の王のものとなったとき、果たして境界線は無事でいられるだろうか。

 

 

 「“名前を言ってはいけないあの人”とは、言い得て妙じゃ。それはつまり、“名前を言えない人”、“名前のない人”、“誰でもない誰か”ということになるのではと、の」

 

 

 

 

*----------*

 

 

 

 

 「皆さんこんにちわ。例によって古代から創始者の時代に至るまで歴史を紐解いていくシリーズ。進んだり戻ったりを繰り返しながら色々と解説して来ましたが、今回は創始者達の時代の魔法、そして、許されざる呪文に至るまでを扱っていきましょう」

 

 クリスマス休暇が終わり、1月の新学期を迎えても平穏は変わらず、暦は進んでそろそろ2月に入ろうとしているホグワーツ。

 

 ハーマイオニーが悪霊教師に秘密の部屋について質問したあの日以来、悪霊はいつものノリに戻って人類の黒歴史を比較しながら解説し続けている。

 

 特に、アングロサクソン七王国の歴史などは、そうした例がいくらでもある。キリスト教の教会然り、異端審問から魔女裁判まで、悪霊が如何にも嘲笑いそうな題材で溢れているのだ。

 

 ダッハウの授業はその後も行ったり来たりを繰り返しつつ何度もマグルと魔法族の比較論が語られ、こうしてまた創始者の時代へ戻ってきた。

 

 

 「さて、許されざる呪文として知られるのは服従の呪文、磔の呪文、そして、死の呪いです。これらにも当然それ以前の形というものはあり、その原型を創始者の時代に見ることが出来ます。ここではまず、各寮の象徴と言える魔法のおさらいから、獅子、蛇、鷲、穴熊の四つの寮を特徴ある魔法にまとめるならば、剣の魔法、鎖の魔法、弓の魔法、盾の魔法となります」

 

 勇敢なるグリフィンドールが使いしは、剣の呪文。ゴブリン製の銀の剣を好んで用い、鉄で鍛えられしヴァイキングの剣に立ち向かった彼らの勇気がそのまま形になったような魔法。

 

 現代の魔法ようにある種の“ツール化”がされておらず、使う者の精神的傾向や想いの強さがそのまま表れるのが創始者達の時代。ならばこそ、彼らの勇気とそして“死”というものへの身近さは、一つの刃へと収斂していった。

 

 俊敏にして狡猾なスリザリンが用いしは、鎖の呪文。地下牢を領域とし、法の鎖を破るものを許さない鉄の団結を誇る集団。割拠志向の強かった純血の家を束ねる強固な鎖が必要とされたからこそ、蛇の一団は互いを縛る内へ向く。

 

 叡智を求めし賢者の集団、レイブンクローの用いは弓の呪文。元来戦うことを本分とせぬ学者の彼らが求めしは、安全な高みから敵を倒せる技術の進歩の具現である。蛮族には決して扱えぬ複雑な精巧な弓こそは、後の魔法の原型となった。

 

 そして、来る者拒まぬ亡命者の集団、ハッフルパフの盾の呪文。守りを第一とする彼らの在り方をそのまま表すように、盾の守りは原初の強みを今に伝え、多くの子供達を守り続けた。

 

 

 「このうち、最もそのままの形で現在に残るのは盾の呪文であり、派生系は数あれど基本形は昔と変わりありません。剣の呪文はどんな魔法生物に有効な唯一の呪文であり、敵を倒す殺傷能力においては他の追随を許さない。鎖の呪文は内の団結を高めるための手段であり、最も我の強い者が指導者となるに貢献しました。そして、今の魔法に最も影響を与えしは弓の呪文。失神、妨害、忘却など、遠距離の光線を含むもの全て弓からの発展型と言えます」

 

 四つの魔法が示すのは、ある種の象徴的なものだ。

 

 剣などの器物の持つ力と、それに付随するイメージ。魔法族の力は心の魔法なのだから、そうした印象は非常に大きな意味を持つ。

 

 

 「剣の呪文においては、荒野のグリフィンドールの戦士たちが使っていた魔法であり、ゴブリン銀の剣にかけられることが多かった。近接戦闘でしか使えず、相手を殺すための念を傷口から直接送り込むような、何とも原始的で荒々しく、しかしどんな防御も貫く絶対性を持つ致死の刃でありました。しかし同時に、自らを守る盾とは両立できぬ諸刃の剣の危うさを持つ」

 

 曰く、【剣の呪文は、盾の呪文と共存できない】。 

 

 基本概念として「剣と杖」をそれぞれの手に持つイメージで成り立つから、盾を合わせて持つことは出来ないのだ。

 

 故に、その後期型であるアバダケダブラに反対呪文は存在せず、“盾の呪文”で己を守りながら“死の呪い”は放てない。

 

 失神呪文や磔の呪いなどは、無言呪文で盾を張りながら打ち合うのがセオリーだが、“死の呪い”を放ち、相手に躱された時は、最大の弱点を晒すこととなる。

 

 “処刑の呪い”としては最適なアバダケダブラだが、戦士相手の決闘に使うには適さないと言える。

 

 

 「マグル側の歴史においても、剣とは、人間が同胞を殺すために鍛えし刃であり、それ故に常に王権の紋章、つまりは国のために最も多くの人間を殺す権力者の象徴となってきました。そして、勇猛果敢なグリフィンドールにおいては、たとえ訓練であろうとも、この剣の魔法で互いを打ち合っていたものです」

 

 標語にするならば、【訓練でも人は死ぬんだぜ】となるだろうか。

 

 命の価値は薄皮一枚と豪語し、非常に隙も多く危険だが相手を確実に殺せるこの魔法を、彼らグリフィンドールは振るいに振るった。

 

 何しろ当時は、接近戦でしか使えぬ魔法だったのだ。杖を直接突き刺しての、ゼロ距離魔法。

 

 まさしく、命知らずと同義の勇敢な者達だけが使える魔法である。より正確に言うならば、使い所がそういう局面しかないとも言えるが。

 

 

 「剣であることが重要というよりも、剣だけは純粋な人殺しの道具だからです。熊などの害獣と戦うならば槍を、野山の獣を狩るならば弓を、森林の樹木を伐採するならば斧を、料理や工芸に用いるならば短刀を、様々な刃物や武器はそれぞれに生活のための用途がありますが、剣というものだけは“人殺し”以外に有効な用途というものがない」

 

 使い手が人である以上、最も念じやすく、死をイメージできるのは“人殺し”である。それは幻想生物にも効く“殺しの呪文”として昇華していき、マグル殺しのために、マグルに対抗するために編み出された最も強固な魔法の一つとなった。

 

 その最大の使い手はゴドリック・グリフィンドールであり、彼こそはイングランド魔法史上最大のマグル殺しでもある。ただし、その殺しの中には虐殺も処刑もありはせず、ヴァイキングの戦士だけを相手に戦場での真っ向勝負で倒し続けたという。

 

 

 「余談になりますが、マグル側でも【人殺しの象徴】は進化を続けました。剣から銃へ、そして、機関銃へと。特に第一次世界大戦においては大量殺戮を可能にした新兵器が次々に登場しましたが、純粋な“殺戮兵器”は機関銃のみと言えます」

 

 戦闘機ならば、武器を外せばその技術は航空機として利用される。

 

 戦車もまた、大本のキャタピラーは農耕用のトラクターから始まっている。重機というものを開発するうえで同じ技術基盤があるのは間違いない。

 

 毒ガスという恐るべき兵器であってすら、使い道を間違えなければそれは農薬ともなる。サリンとて合成に必要な化学工場設備の有無は別として、その系列は農薬の近縁なのだ。

 

 しかし、機関銃というものは他に用途が存在しない。というよりも、自動車に載せれば戦闘車両となり、飛行機に載せれば戦闘機となり、ボートに載せれば駆逐艇が出来上がる。

 

 狩猟にも全く向いておらず、猟銃というジャンルは別にある。また、害虫駆除に機関銃を使う馬鹿はいない。

 

 つまるところ、機関銃が必要とされるのは軍隊や治安維持組織、あるいはマフィアやギャングだけであり、“人間の集団”へ向けて殺戮のためにぶっ放す以外の用途がない、サピエンスを殺すためだけに小さな弾をばら撒く殺戮機関ということだ。

 

 

 「鎖の呪文においては、マーシアの沼地の野伏たち、抵抗勢力であったスリザリン達の手で開発されました。始まりの“スリザリン”においては、殺し合って戦力の頭数を減らす訳にはいかないからこそ、鎖の呪文を互いにかけあうことで、どちらの心が強いか、どちらがどちらを支配するか、主人と従者がどちらかを競っていたのです」

 

 グリフィンドールの戦い方では、どちらが強いか分かるのは、どちらかが死んだ時になってしまう。

 

 無論、全ての決闘や訓練でそうなるわけではないが、地下に隠れ潜みながら抵抗を続けていたスリザリンにとっては、あまり有効な方法ではない。

 

 よって彼らは、主戦場を物理的な剣ではなく、精神の鎖に求めた。後の時代の服従の呪文もそうであるように、これらの魔法は発動すれば効果が終わるわけではなく、半永久的に支配権とその解放の鬩ぎ合いとなる。

 

 

 「鎖と言えば奴隷を想像する生徒も多いでしょうが、そもそも法というもの自体が鎖を象徴とするものです。敵を縛るよりも、“法の鎖”によって味方を束ね、背くもの、裏切り者を許さないという厳格さが現れている。また剣や弓は“殺す”、“撃つ”瞬間に殺意が集約されますが、盾は守り続けるものであり、鎖もまた縛り続けるもの。持続力に長けているのが特徴と言えましょう」

 

 磔の呪いもまた、原初の形は我慢比べ。どちらの精神が強いかの証明として当時は真っ向から打ち合っていたものだ。

 

 その光景はさながら、両手を組んでレスリングをする如くに、武器を持たずに競い合う姿であったろう。

 

 

 「ここで断っておきますが、マグルの思い描く架空の物語に出てくるような魔力判定Aランク、Bランクなどというものはありません。そうした数値的な考え方そのものがマグルの領分であり、もしそれらが形になったならば、魔法ではなく、“魔導力学”とでも呼ばれる存在になっているでしょう」

 

 魔法族における力の強さは、数値化して比較することなど出来ない。心とは割り切れぬものなのだから。

 

 ボクシングや柔道において、パンチ力やベンチプレスの数値がどうだからと一概にどちらが強いと断言できないように、魔法とは有り体言えばアナログ的なのだ。

 

 魔力数値や戦闘力といった概念。俗に「スカウター」を用いて数値化するのはマグルらしい発想だ。近年の情報学分野に則るならば、離散化、量子化とも言える。つまりは、アナログからデジタルへの変換だ。

 

 連続的なデータが離散化されるときは常にある程度の離散化誤差がある。離散化と量子化という用語はしばしば同じ意味を持つが、必ずしも同じ意味というわけではない。

 

 

 「創始者達が戦ったヴァイキングもそうでありましたが、この時代の人間にとっては食糧を集めることが第一であり、そして、“身長と体重”は力であった。何しろ、太っていられるのは権力者だけあり、戦士だけであった。数値化のできる力とは、肉体に由来するものだけだったわけですから」

 

 だからこそ、痩せていることが魅力的などありえない。

 

 なぜなら、親が息子や娘に満足に食わせてやれていない証。言い換えれば、親や家が貧しい証なのだから。

 

 誰もが飽食し、メタボリックが問題になる時代ならば、痩せていることが自制の効く証であり魅力ともなろう。しかし、誰もが飢え、腹を空かせてる場所や時代ならば、異なる美観になるのは当然のことだ。

 

 少なくとも、アフリカの難民キャンプで痩せていることが美徳と思われることはないだろう。

 

 

 「また、鎖の魔法が持続力に長けるとは、戦争状態が終結した後の平時においても適用が可能ということです。意外かもしれませんが、スリザリンこそが最も平時における統治に長けている。戦のない時においては、人は気が緩み、堕落していくもの。それを最も戒め、組織としての秩序を保つのに貢献したのがサラザール・スリザリンなのです」

 

 戦時ならば、圧倒的にグリフィンドール。

 

 ハッフルパフの温厚さは、“争いごとの調停”や、“戦時においても平静を保つこと”に一番力を発揮する。

 

 長き時を経た現代ではそれらは随分と変質してしまったが、それでもなお脈々と伝えられていくものはある。

 

 そうした意味でも、やはり死喰い人は“スリザリンらしくない”。どこまでいっても亜種であり、時代の徒花なのである。

 

 

 「盾の魔法は皆さんもよく知るように、原初の形で今なお用いられています。当然、最も得意としたのはヘルガ・ハッフルパフ。境界線の守り、物体への守り、城そのものへの守りと、およそホグワーツの守りの根源には彼女の祈りが込められています。子供達よ感謝なさい、私の凶行を押し止め、夜に跋扈する怪物たちが人を喰らうことがないよう常に守っているのは創始者の魔法に他ならない。ちなみに、私はヘルガ様には絶対に勝てません」

 

 その言葉を聞き、生徒達全員が目を見開いた。

 

 そして同時に納得する。スクリュートやアクロマンチュラが跋扈し、この悪霊共が徘徊していながら、なぜホグワーツの生徒の安全は常に保たれているのか。

 

 それは実に単純な理屈でもある。“より強い魔法が上から抑えつけている”のだ。

 

 温厚柔和なハッフルパフと呼ばれるが、彼女とてやはり創始者の一人。ゴドリックやサラザールとも真っ向からやりあえる女傑でもある。

 

 なお、この時期になると多くの二年生がヘルガ・ハッフルパフの肖像画を崇め奉る。あるいは、彼女の像を様々に彫る。祈りは当然、感謝と悪霊退散。

 

 聖女ヘルガが聖少女アリアナを抱きかかえている像などが、ここ数年のホグワーツ芸術大賞である。(贈呈は当然ダンブルドア校長)

 

 

 「そして、レイブンクローが誇るは弓の呪文。“弓”という道具に象徴されるのはすなわち知性の在り処。先に上げた三つの魔法、剣、鎖、盾についてはトロールが振り回しても一定の効果は得られましょう。しかし、弓はそうはいきません」

 

 トロールでも、剣を振り回すことはできる。それが鎖であっても、トロールの怪力で振り回されればそれだけで脅威だ。

 

 そして、トロールに身を守る知恵があるかは疑わしいが、少なくとも大盾をもたせればそれで殴るくらいはできる。

 

 しかし、トロール用に巨大な弓を渡したとて、彼らに矢をつがえて射ることなどできようか?

 

 

 「知恵を持つ生き物でなくば、そもそも武器として成立しない。それが弓というものであり、その効果はつまり他の魔法を遠距離から当てることにあります。失神呪文であろうと、忘却術であろうと、現代の魔法の大半はこの要素を持つのであり、組み合わせはおよそ無限大と言えましょう」

 

 最も魔法の開発に貢献し、後の時代の様々な魔法の基礎となったのは、ロウェナ・レイブンクロー。

 

 死の呪いアバダケダブラは、グリフィンドールの剣の魔法を基軸に、弓の遠距離を加えたもの。

 

 服従の呪文、磔の呪文にしても、スリザリンの鎖の魔法をベースに、それぞれ弓を加えて遠距離からも使えるよう改良された。

 

 この利便性が圧倒的であったため、後の時代の杖魔法の大半は基本要素の中に“弓の魔法”を持つようになる。

 

 逆に言えば、古い魔法は相手に直接触れていたりしなければ使えぬものか、あるいは、全く形のない祈りのようなものが大半だった。

 

 

 「組み分け帽子は歌いました、これほどの友ありうるや? 英雄と覇者、賢人と聖女。この四人の友情、崩れるはずなどありえぬと」

 

 しかし、何時しかぶつかる時は来る。

 

 ゴドリックは言うだろう、仲間を粛清するために、我らが剣はあるのではない。敵を討つためにこそ勇気はあると。

 

 そこにサラザールの反論が当然来る。いいや、大を守るためには小を切り捨てねばならぬ時もある。その役を常に、スリザリンだけに押し付けるつもりか。

 

 そうではない。そも、ヘルガ・ハッフルパフがそんなことを望んだか?

 

 彼女の高潔な理想、その慈愛の偉大さは認めよう。だが、それは彼女という要があればの話だ。ヘルガ亡き後のホグワーツが、今と同じ体勢で協力体制を維持できると思うか?

 

 

 「未来を思えばこそ白熱していく英雄と覇者の議論。それを時に仲裁しつつも、仲間を粛正するということについては賛同はできず、心情的にはゴドリック様に近いヘルガ様。あれはなかなかに壮観でしたが、あの議論に答えを示すことは、ダンブルドア校長であろうと到底無理でしょう」

 

 距離を保って冷静な目で同輩3人を観察しつつ、叡智の賢者は組み分け帽子に追加すべき統制機能、城の防衛機能について考えを巡らせていた。

 

 ロウェナ・レイブンクローの在り方は、賢者は感情論に“関わらない”である。そんな彼女を冷徹な魔女、実の娘すら城の道具にする残酷な女と非難する者もいたが、叡智の塔に揺るぎはない。

 

 彼女とて、時の終わりを覗き込んだ後は、その未来について娘と話し合ったことはある。だがそれでも、冷徹なるロウェナはその立ち位置を変えることはない。

 

 後に初代校長となる娘には助言を残した、“攻守の力はあの二人で十分。守りと抑えの機構はヘルガと私で創る。後はダッハウを上手く使え”と。

 

 生きていた頃のヘレナには意味の分からなかった母の助言の最後。彼女がそれを知るのは900年以上の時が過ぎてからのことになる。

 

 

 「我らが四人あるうちは、ホグワーツの結束は揺らぐまい。だが、我ら亡き後、ホグワーツはどうなる? その問いに答えられるものは存在せず、彼らはホグワーツ創建という偉業を成した偉人である故に、その存在は大きすぎました」

 

 その時代のことは、その時代に生きる子孫が選び、決断していくべき事柄。

 

 なるほど、正論であり、道理であろう。

 

 だが、本当にそれで良いのか?

 

 作り上げたホグワーツが、僅か数世代で離反し、灰燼に帰すのを座視するのか。

 

 お前たちも見たはずだ、知ったはずだ。

 

 時計塔が指し示した1000年の歴史の果てを。結束が崩れた時に我らが子孫が辿った結末を。

 

 ならば、例え子孫の行動、考えを縛ることになろうとも、数百年で揺らがぬほどの強固な仕組みを作るべきでは。

 

 法の鎖を、生贄を含めた防衛術を、呪いを刻むことになろうとも、ホグワーツに残すべきではないか。

 

 

 「特にサラザール・スリザリン。畏怖の象徴であった彼は、移ろいゆく人の心、安寧にあぐらをかき事なかれ主義に染まる衆愚というものを嫌いました。そんな霞の如き脆きものに、本当に我らが未来を託せるのかと」

 

 何よりも、ああ、我が友よ。

 

 お前達三人の理想が、愚かな子孫たちに穢されてよいものであろうか。

 

 断じて否である。

 

 

 「そうして時は過ぎ、魔法戦争においても許されざる呪文は使われました。それは無論、マグル迫害や同族への拷問、支配、殺害にも使われた。果たして、死喰い人らのその姿を見れば、サラザール・スリザリンはどう思うでしょうか」

 

 その答えは、秘密の部屋にあり。

 

 彼の生涯最後の遺産、そして、彼の夢が眠る場所。

 

 直系のもの、純血の継承者のみが、その部屋に認められ力を振るうことを許されるという。

 

 

 「では、本日の課題はこれら、原初の魔法に関してです。今はある種の便利ツールと化しつつある様々な魔法ですが、1000年前のそれらは比較にならぬほど不便なものであり、しかし同時に、現在の魔法が足元にも及ばぬほど強力でもあった。そこで考えてみましょう、現代において原初の魔法を使うならば、その用途はどのようになり、そして、職能として誰が用いるべきであるかを。ちなみに参考までに、闇祓いのマッド=アイ・ムーディは剣の魔法の達人です」

 

 だろうなと、誰もが納得する。

 

 至近距離でしか使えないが、ドラゴンのような強力な魔法生物すら殺しうる刃など、これほど彼に似合う魔法もあり得まい。

 

 まっとうな人間ならば、“弓の魔法”と絡めた結膜炎の呪いや、何らかの高速移動が可能な道具を使って逃げ回るなどの道を探るはずだから。

 

 なるほど、彼のような人間が、1000年前のグリフィンドールでは標準仕様だったのかと。

 

 

 

 

*----------*

 

 

 

 

 「しっかし、魔法の進歩か。なんたってあのポリジュース薬のインパクトが忘れられないな」

 

 「僕もだよ。ダッハウ先生の授業も大概だけどあれは今年の出来事でも極めつけじゃないか」

 

 「ホントに、なかなか忘れられないパーティーだったわね」

 

 対悪霊戦線にて悪戦苦闘を続ける彼ら三人。そろそろバレンタインも近づいてくる頃だが、それでもなお抜けないポリジュース・ショック。

 

 そこには、比較的にしても最近の悪霊の授業が“まだマシ”な感じであることも大きいだろう。

 

 いや、他の授業と比べれば相変わらず最底辺なのは間違いないのだが、創始者の歴史について語る際は、人類の黒歴史ではなく偉業や美点を語る形になるのだ。

 

 というか普通、歴史の授業と言えばそういう要素を語るものだ。人類の汚点や記すことすら憚られるような虐殺だの近親相姦だの、そんなのばかり選りすぐって語るのはあの悪霊くらいである。

 

 

 「クラッブのエキスなんて、二度と飲みたくないよ」

 

 「それを言うなら、ゴイルエキスを飲まされた僕だって一緒さ」

 

 「私が飲んだミリセント・ブルストロードのエキスも、酷い味だったわよ」

 

 恐らくだが、そもそもポリジュース薬自体が美味しいものではないのだろう。

 

 ただ、人間の記憶の都合上、嗅覚や味覚は原始的な感覚なので、後の視覚効果で印象がだいぶ変わってくる。

 

 糞不味い薬を飲まされた挙げ句、あまり良い感情を持っていない相手に変化していく自分の身体などを見れば、悪い印象になるのは当然だ。

 

 

 「今思い出しても、滅茶苦茶だったよなあのパーティーは」

 

 「少なくとも、再来年のトライ・ウィザード・トーナメントでアレをやっちゃいけないってことだけは確かだね。確実にホグワーツの恥晒しだよ」

 

 「対抗試合は魔法省も絡む公式イベントだから、流石にあんなのはないと信じたいけど……」

 

 中々信じ切ることは出来ない。何せ、この城にはダッハウがいるのだ。

 

 本来ならダンブルドア先生に抑止力を期待したいところだが、老校長のモットーは“アリアナの言う通りに”である。全然期待できない。

 

 

 「ネビルは確か、ジャスティンだったろ?」

 

 「それで、ジャスティンが僕になって、スミスがロンになったんだよ」

 

 「マルフォイがネビルになってたのは間違いないわ。それと、私になってたのはダフネね。基本的には同学年の別の寮生に変身する形で配られたみたいだから」

 

 そんなこんなで、パーティー会場はまさに阿鼻叫喚。

 

 事前に誰になるか分かっていればまだ違ったろうが、全員が互いに見えない状態で一斉にポリジュース薬を飲み、さあ開幕といった具合である。

 

 ハリーとロンも、もはや素面でなどいられなかったのか、クラッブとゴイルの姿でペアを組んでヤケクソ気味に踊った。ああもう、踊るしかなかったろうさ。

 

 他の生徒も大半は同じ気分だったか、意中の異性に踊りを申し込むよりも同性同士のヤケクソ乱舞が目立っていた。ロマンや恋の欠片もありゃしない。

 

 

 「謎といえば、フレッドとジョージは互いに入れ替わっていたんだよな。アレには逆に驚いた」

 

 「凄いよね、あそこだけは何一つ変わってなかったよ。本人たち曰く大違いらしいけど」

 

 「私はむしろ、ハリーのお父さまがほんとにそっくりだったほうが驚いたわ」

 

 このポリジュース・ダンスパーティ、生徒は互いに入れ替わりシャッフルするように姿を変えたが、先生方や現在常駐している警察、闇祓い関連の人物は“学生時代の姿”に変身するという趣向であった。

 

 ミネルバ・マクゴナガル然り、フィリウス・フリットウィック然り、ポモーナ・スプラウトも、クィリナス・クィレルも。

 

 そして当然、ジェームズ、シリウス、セブルス、リーマス、リリーもだ。(ピーターはちゃっかり逃れた、伏兵役を自ら志願した上手さである)

 

 

 「リリーさんの若い頃の姿は写真で見たことあったけど、ああして見たら圧巻だったな。ポリジュース薬のどさくさに紛れてあちこちから愛の告白されてたぜ」

 

 「よしてくれロン。若い母さんが僕の姿をした同学年から告白されてるのを見るのは、頭がおかしくなりそうだったんだから」

 

 「色々な意味で、ありえないシチュエーションだったわね」

 

 ポリジュース薬が大量に配布される都合上、プリンス魔法製薬所のリリーと、聖マンゴ魔法疾患病院のピーターも、“万が一”に備えてやってきていた。当然、学生時代の姿で。これにて幼馴染全員集合である。

 

 ただし、不死鳥の騎士団の一員でもある彼女らが、どのような“万が一”に備えていたかを知る生徒は少ない。が、関係者の多い“探索組”の生徒達は口にせずとも察する部分はあったろう。

 

 

 「ジニーはデルフィーニになったらしいんだが、そのデルフィーニは誰になったんだっけ?」

 

 「ルーナだよ。ていうか、“ルーナの姿をした誰か”に、“ジニーの姿をした誰か”が、デルちゃんって話しかけてたのを見たんだ」

 

 「それって確実にジニーになったルーナよね。でも、何で彼女は見ただけで分かったのかしら?」

 

 誰もが入れ替わっているのだから、自分の姿をした“誰か”がいるのは当然だ。

 

 しかし、自分自身の姿を見たとて、“誰が化けているか”を話しかける前から看破することなど普通に考えてできるはずがない。

 

 

 「そこはまあ、ルーナだからなあ」

 

 「多分、僕達とは見えているものが違うんじゃないかな。母さんにも割りとそういうところあるけど」

 

 「そういえば、貴方とジェームズさんは私らから見ても遠目には区別つかないくらいだったけど、リリーさんは絶対間違わなかったのも不思議っていうか」

 

 本当に、それは何とも表現が難しく。

 

 それも魔法と言われれば、何となく信じていまいそうな不思議さが、リリー・エバンズやルーナ・ラブグッドにはあった。

 

 

 「あと、僕は全然分からなかったけど、ダンブルドアも若い姿でいたのかな?」

 

 「うーん、ウッドやアンジェリーナ達にも聞いてみたけど、誰も校長先生は見なかったって」

 

 「シグナス理事長らしき人もいなかったし、やっぱり死喰い人の警戒にあたっていたんじゃないかしら?」

 

 ポリジュース騒動の真っ只中にあり、到底冷静ではいられなかった当日はともかく。

 

 こうして、ある程度の時間が経過した今ならば、子供達にもあのパーティーの裏の狙いが徐々に見えてくる。特に、聡明なハーマイオニー・グレンジャーが気付かぬはずがない。

 

 

 「でも、結局はほとんど何もなかったんだよな。外から侵入しようとした死喰い人連中は小競り合い程度で逃げてったらしいし」

 

 「逃げた後は影も形も尻尾もなかったって。ホグワーツ場内は犬に化けたシリウスが徹底的に探ったけど、死喰い人らしい気配も匂いもなかったらしいよ」

 

 「そもそも、ダッハウ先生たちが“忍びの地図”の原板を見ていたはずだから。去年の賢者の石のときと同じで、見つからずに入るのは無理だと思うのよね」

 

 骨折り損のくたびれ儲けとは言うまいが、結局は空振り同然に終わった訳だ。一応、ギボンという一人をピーターが捕まえはしたが、大した情報すら持っていなかったらしい。ありていに言って切り捨てられたのかもしれない。

 

 しかし、あれだけの混乱という好機にありながら、血文字を書き残した校内の潜入者が積極的に動かなかった理由とは何か。

 

 あるいは、動けなかった理由か。

 

 

 「敵に動きがないのはまあ別にいいけどさ、こっちに被害もないし。秘密の部屋のほうも、もうすぐ見つかりそうなんだろう」

 

 「父さん達が言うには、マートルのトイレに入り口らしきものがあったらしいけど、開く手段が蛇語だったから苦労したって」

 

 「ハリーがいたら一発だったでしょうね」

 

 入り口はよほど強固な魔法で隠され、そして守られており、正規の手段以外では壊して入ろうにもなかなか穴すら開けられない。

 

 悪戯仕掛け人達は四苦八苦と悪戦苦闘の末、蛇語の声真似という方法で何とか入り口らしきものを見つけるところまでは漕ぎ着けた。(後になってハリーを連れてこればよかったと後悔した)

 

 

 「その先は危なそうだから、ダンブルドア先生と一緒に時間をかけて調べていくって」

 

 「まあ、そうよね。死喰い人に全然動きがないなら、今すぐ焦って飛び込まなきゃいけない理由はないわけだし」 

 

 「そういう判断が出来るってのも、例のパーティをやった唯一の成果なのかもな」

 

 かくして、割と順調に探索は進み、驚くほど拍子抜けに秘密の部屋への入り口は発見された。

 

 仮にも、現役の闇祓いが二人と魔法警察が常駐しているにもかかわらず、生徒達が拍子抜けしてしまうほどに何事も起こっていない。

 

 むしろ、ハリーの親たちが任務にかこつけてニンファドーラを巻き込んでホグワーツに遊び来たと言われた方が納得してしまうくらいに。

 

 世は事もなく、ホグワーツは平和であった。(ポリジュース・ダンスパーティからは目を逸らしつつ)

 

 

 

 

 

 

*----------*

 

 

 

とある生徒の部屋の記録情報

 

 

『馬鹿な! どうして正体がバレるんだ!』

 

『ありえないだろう、錯乱の呪文をかけたわけでもないのに』

 

『いや、違うのか。この自分を構築する術式自体が軋んでいるのか?』

 

『そんなはずは、だがしかし、他に理由があるだろうか』

 

『おかしい、意識が途切れる。私はいつから私でなくなった?』

 

『ジニー、あの娘を手放したのが間違いだったか』

 

『うん? いいや、違ったか? そもそも日記は誰の手に』

 

『分からない、分からない。この私はいったい――』

 

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