乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったのに...さらに破滅フラグが舞い込んでしまった!? 作:オタクさん
俺、ニコル・アスカルトには妹がいるのだが...最近、妹の様子がどうも可笑しい。
空に浮かんでいる月を眺めていると泣き出してしまうことがある。俺がどうしたんだ?と尋ねても、ソフィアは「私にもわかりません。どうしようにもない悲しみが込み上げくるのです...」と、呟くだけだった。
ミラーが言う正式な主。
この話を聞いた時俺は正直に言って嬉しかった。カタリナが正式な主ではないのなら、やめることができると思ったからだ。けど...ソフィアは違った......。
突然泣き出してしまった。
本人さえも理解できていない悲しみ。正式な主とやらが、一体何を示しているのかはわからない。ただ......
とんでもないことが起きることだけは理解できた。
「ソフィア......」
今日もソフィアは月を眺めている。
あの話を聞いてから一週間、ソフィアは泣きながらも悲しみの原因を探るため、毎日欠かさず月を眺めるようになっていた。趣味のロマンス小説を読まなくなり、カタリナを喜ばすためのドレスも作らなくなった。
「ソフィア......。そんなに辛いのなら...頑張って思い出さなくてもいい。俺がミラーに話を聞...」
ガタン!!
ソフィアが勢いよく立ち上がり、静かな空間に椅子が倒れる音が鳴り響く。
「これは私が頑張って思い出さないといけないのです!どんなに辛くても逃げては駄目なのです!誰がなんと言おうと絶対...!絶対に...!私が...!!思い出さなければいけません!!」
大粒の涙を流し、顔を真っ赤に染め、声を荒らげるソフィア。
こんなソフィアを俺は産まれて初めて見た。普段から趣味のロマンス小説とかで大きい声を出すことがよくあるが、声を荒らげてまで反論をするのはありえないことだ。
「......!!お兄様...。お兄様ごめんなさい!お兄様は私のことを心配して下さったのに...楯突いて...本当にごめんなさい!...頭を冷やしたいので一人にしてもらえませんか...」
ソフィアはそう言って気まずそうに俯く。
俺は別に気にしていないのだが......。それを伝えたところで、今のソフィアは話を聞いてくれないだろう...。俺はソフィアの傍を離れたくはないが、本人が望んでいない行動を取るのはいけないと思い、俺はソフィアの部屋を出る。
「ソフィア...独りで抱え込むなよ...。俺や父様、母様...家族だけではない。カタリナ、メアリ、ジオルド、アラン、キース...みんながいる。だから...無理はするな」
俺は部屋を出る前に声をかけてみるが、ソフィアはずっと俯いたままだった。
「そうか...ソフィアはそんな酷い状態なのか...」
「はい、父様」
ソフィアの部屋を出た俺は自室に戻らず、ダン父様とラディア母様がいる部屋に行き、ソフィアの様子を報告する。報告を聞いた父様と母様は辛そうな表情を浮かべていた。
「ソフィアがそこまで悲しんでいるなんて可哀想に...ソフィアの悲しみを私が代われるものなら、代わってあげたいわ...」
「そうだね、僕も同じ気持ちだよ...。ところで...気になったことがあるのだが...」
「気になったところ...父様、それはどこですか?」
父様の疑問に俺は尋ねる。俺の質問に父様は難しそうな顔になる。
「その...なんと言うべきか......」
「何故、泣いているのかなと思ってね...」
「泣いていることがそんなに可笑しいのですか?今は泣きたい状況に決まっているからですわ」
父様の言葉に母様は少し不機嫌になる。不機嫌な母様に父様は苦笑いを浮かべる。
「そうだね、ラディアの言う通りなんだけど...僕が疑問に思っているところは少し違うんだ」
「少し違う?それはどういうことでしょう?」
「あのね...元々今の状況でも泣きたくなる状況だ。でも...ソフィアは泣かなかった。それどころか、楽しそうにクロウカード騒動に挑んでいた。こちらが理解できないほどにね...。そんなソフィアが泣いたということは、今の状況よりも酷くなることは理解できる。...けれども、僕からしてみれば、今の状況よりも酷くなるところを想像できない」
「ええ...これ以上酷い状況を想像できませんし、したくありませんわ」
「しかも...闇の魔力は人の命を犠牲にして手に入れるもの。闇の魔力を持ったクロウカードも、何か、とんでもないものを要求してくるのは明白だ」
「とんでもないものを要求......。一体何を要求してくるのでしょうか?」
「そこが問題なんだよね...。闇の魔力は人の命が必要となる。ならば...クロウカードは...色々なことができるから...でも...ケロちゃんが言うには...命は要求しないようだが.....要求しなくても、あの暴れ方では殺しそうな勢いなんだけど...」
「そうですわね...。こうして皆さんが生きているのも、奇跡に等しいですわ...」
父様と母様は互いにため息をつく。俺も同じ気持ちになっていた。
ソフィアの泣いている姿は見たくないし、泣かせている原因をすぐに取り除きたい。けれど、父様の意見と同じく、今になって泣いていることに疑問を感じている。この騒動の間泣くことはなく、逆にこちらが引くほど楽しんでいた。泣いたのは初めてのクロウカード騒動の後だけだ。ずっと泣いて過ごすことが当然だと思わない。寧ろ、泣いているぐらいなら楽しんでいる方が......いや...この状況を楽しむのも駄目だろう...。まあ...どんな理由で心変わりをしたとしても、これ以上状況を悪化させてはいけない。俺のやるべきことは決まっている。
「俺がミラーから話を聞き出してみせます。それで対策を...」
「そのことも大事だが...僕たちは...」
コンコン
父様の話を遮るように控えめなドアをノックする音が鳴る。
「どうぞ」
「失礼いたします」
父様の許可を頂いてからその人は入る。
ノックしてきた人は、主にソフィアのお世話をしてくれるメイドのローナだった。ソフィアの様子が可笑しくなったあの日から、毎日決まった時間に報告をするように父様が指示を出していた。
「ローナ、ソフィアの様子はどんな感じなのかい?」
父様の質問にローナの顔が悲しげに曇っていた。
「はい、ソフィアお嬢様はお休みの時間になられましたので、眠っておられます。ですが...時折...寝言でもうやめて!と叫んでおられたり、こんな結末は嫌!とうなされていたりして...泣きながら眠っております」
「そうか...ソフィアを早く癒さなくては...。報告ありがとう。引き続き頼む」
「はい、承知いたしました。失礼いたします」
報告を終えたローナは一礼をして部屋を出る。ローナが部屋を出ると、父様は先ほどの話に戻す。
「ニコル、何度も言っているが、お前もソフィアも、クロウカード騒動に立ち向かわないでほしい。二人がカタリナ様のことを愛し、守りたい気持ちはわかる。けれど、僕たちもまた、君たちと同じくらい二人を愛し、守りたいんだ。だから...この騒動が終わるまでの間、カタリナ様...クラエス家に近付かないでほしい。勿論、カタリナ様は、我がアスカルト家が全力を持ってサポートをする。それでは駄目なのか...?」
父様がいつもの説得を始める。クロウカード騒動が起きてから毎日ずっと行われていることだ。
父様と母様の心配する気持ちが痛くなるほど伝わってくる。だけど...それでも...俺は......ソフィアを笑顔にしてくれたカタリナを...俺達家族を幸せな者と認めてくれたカタリナを...放ってはおけないんだ!
「父様、母様、ごめんなさい...。俺はカタリナの傍から離れたくないです...。父様や母様、大人たちのことを信用してないわけではありません。ですが...あのような現状を知っておきながら、俺には...放っておくことはできません...。......ソフィアの様子が気になりますので、今日はもう、失礼させていただきます」
俺は毎日同じ言葉で言い訳をし、父様と母様の心配を無下してしまうのであった。
父様と母様のいる部屋から出た俺は、自分の部屋に戻る前にソフィアの様子を見に行く。
言い訳でもあったが、本当に心の底から気になっていたからだ。
廊下を進み、間取り角を曲がると、深刻な表情をしているソフィアが誰かを待ち構えるかのように立っていた。
「ソフィア......?寝ていたのではないのか...?まあいいか...。どうしたんだこんな夜更けに?何か話があるのか?」
ソフィアは思い詰めた顔をするだけで何も答えない。何かを伝えようとするソフィアの顔は歪んで、頭を抱え込んでいた。その様子は答えたくはないのではなく、答えられないようだ。諦めしまったソフィアは俺のことをじっと見つめていた。
「ソフィア...そんなに辛いのなら、思い出さなくてもいいじゃないのか?」
俺はまたソフィアを怒らせる言い方をしてしまう。
どうしたら俺は...ソフィアを怒らせずに声をかけることができるのだろうか?
だか俺の思いと裏腹に、ソフィアは俺の言葉に反応をせず、じっと見つめてくる。その顔は悲しそうであった。
「ソフィア......ソフィア!」
ソフィアの頬から一滴の涙が流れると、ソフィアは何も言わずに立ち去ってしまう。
俺は呆然とソフィアを見ていることしかできなかった。
「昨日...こんなことがあってな...」
「そうか...早く原因を探らないといけないな...」
昨日の出来事をみんなが集まっているクラエス家で語る。カタリナ、メアリ、ミラーはソフィアを囲んで話をし、ジオルド、アラン、キース、俺は少し離れた位置でソフィアたちの様子を眺めていた。
「一刻も早く原因がわかるといいですね。ところでニコル様。ソフィアは何をするために、夜中起きたのでしょうか?」
「それは...俺にもわからない...。俺もあの後、すぐに追いかけたのだが...俺がソフィアに追い付く頃には部屋に戻っていた。部屋に入るわけにもいかず、朝になって尋ねてみたら...ソフィアが覚えていないようで...」
「えっ!?本人が覚えていない!?」
キースの驚き共にソフィアの方に振り向く。
「ソフィア!このロマンス小説はどう?」
「ソフィア様、このロマンス小説もおすすめですわ!互いに婚約者がいる女の子同士が恋に落ちて...」
「このロマンス小説はどう...でしょうか...?」
カタリナ、メアリ、ミラーが必死に元気付けようとしていた。
というか...クロウカードもロマンス小説を読むんだな...。
彼女たちをずっと見ていても仕方ないので、俺はキースに話を振る。
「キース...お前は何か知らないのか?ケロちゃんやミラー...カタリナから何か聞いていないか?」
「いいえ、特に聞いておりません。僕も力になりたくて話を探ろうとしたのですが...義姉さんは覚えておらず、ミラーとケロちゃんは話をしてくれません。どうやら...その話に関しては、本来話をしてはいけないらしく、教えてくれませんでした...。ケロちゃんから言葉を濁して教えてもらっても、人が死んだり、地球が滅ぶことはないと言われても...」
「まあ...信用ないですよね。地球が滅ぶという規模の大きい話も置いておけないない話ですが、人が死んだりしないのは嘘ですね。全く...ケロちゃんまで何を言い出すのでしょうか...」
「ジオルドの言う通りだ。こんな話信じられるわけがない」
「ああ、全くだ。地球が滅びないにせよ、クロウカードが暴れるだけでその場所の被害は凄まじいからな」
俺たちは同時にため息を吐く。
この騒動...どうすればいいのやら......
「くよくよ考えていては意味がありません!今はわかっているところから探っていきましょう!ソフィアは月を見て泣いていた...それに...カタリナが鍵の封印を解いたりした時に現れる魔方陣にも月が描かれていた...。月が重要なのは明白...」
「月が重要なのはわかる。だが...月がどのように魔力に関わっているのがわからない。大体、魔力は火、水、風、土、光。そして......闇。だけど、月の魔力なんてどの文献にも書いてなかったからな...」
「そうですね...僕も自分なりに文献を読んで調べてみたのですが...やはり書いていなかったです...」
ジオルドがいち早く立ち直って考え始めたが、アランとキースに否定されてしまう。
「仕方ないでしょう。この騒動事態、前代未聞なものですから...」
二人の意見にジオルドは少しむっとする。
「ジオルド、アラン、キース、調べてくれてありがとう...。わからないことだらけだが...みんなが力を合わせれば、この騒動も無事に終わらせることができるのだろう」
俺の言葉にジオルド、アラン、キースは力強く頷いてくれるのであった。
あれから時間が経っても、ソフィアに笑顔が戻ることはなかった。いつもなら笑顔になっているはずなのに...。
落ち込んでいるソフィアを見てメアリは、「ソフィア様を笑顔にするには、カタリナ様の行動を見るのが一番ですわ!」と、メアリの発言の元、外に遊びに行くことになった。
「アラン様!あの丘まで競争しましょう!」
「いいだろう!お前の挑戦受けて立つ!」
アランとカタリナは早速競争を始める。
「もう義姉さんったら...」
「カタリナもアランも相変わらずですね」
「ああ...全くだ...」
「そこがカタリナ様の良いところですわ!」
令嬢らしからぬスカート振り乱すカタリナ。その後を楽しそうに追いかけるアラン。いつもの光景が目の前に広がる。
その様子を見たソフィアがくすくすと笑う。
「ソフィア...!今日やっと笑ってくれたな」
「あ...お兄様...」
俺の言葉にソフィアが照れて俯く。
ソフィアが笑顔になったと聞いてジオルド、キース、メアリ、競争をしていたカタリナ、アランがソフィアの元に集まる。
「ソフィア!元気になってくれたのね!本当によかったわ!」
「カタリナ様...お兄様...皆さん...。ご迷惑をかけて本当にごめんなさい」
お辞儀をしてみんなに謝るソフィア。そんなソフィアをカタリナは抱き付く。
「そんなこと気にしなくていいわよ!だって!ソフィアは大切なことを思い出そうとしたのでしょ!元気のないソフィアは見たくなかったけど...頑張ってくれたソフィアが謝ることはないわ!ソフィアが知識を持っているから、こうしてみんなで遊びに行けるわ!」
「そうですわ!カタリナ様の言う通り、ソフィア様の知識があってこそ、クロウカードを封印できるのですわ!」
「そうだな。どっかのアホ令嬢は、やりたいわりには全然覚えていないからな!」
「ほんとだよ、義姉さん。やりたいのならちゃんと覚えていないと駄目だよ」
ソフィアが笑顔になったことにより、元の明るい雰囲気に戻っていく。
アランとキースの言葉に耐えられなかったカタリナが話し出す。
「ソ、ソフィアが元気になったことだし!張り切って遊ぶわよ!」
「義姉さん、遊ぶと言っても何をして遊ぶの?」
「そうねえ...。冬と言っても...雪は降っていないから...雪遊びはできない。川も凍っていないからスケートもできない...。冬に虫はいないし...魚釣りでもする?」
「相変わらず...令嬢とは思えない発想ですね...」
カタリナの発言にジオルド、キース、俺は呆れ、アランは大爆笑をし、ソフィアとメアリはくすくすと笑っていた。
「義姉さん...遊ぶ方法が見付からないのなら...夕日が見えるあの丘はどう?」
キースの提案で、俺たちは少し歩いた先の丘にやって来た。空には雲一つもなく、これから夕日を見るのに最適な状況だった。
「クラエス家で色々なところで遊びましたが...このような場所は初めて来ましたわ...」
メアリが物珍しそうにキョロキョロとする。メアリ以外にもソフィアも、アランも、ジオルドも物珍しそうにしていた。
「この場所は僕が悪夢を見て落ち込んでいた時...義姉さんが教えてくれた場所なんです。ここは...義姉さんと僕だけの秘密の場所だったのですよ」
キースが自慢げに語る。自慢げに語るキースをむすっとした表情で睨むジオルドと明らかに嫉妬をしているメアリ。
俺は嫉妬よりも、ソフィアのために、秘密の場所を教えてくれたキースの心遣いを嬉しく感じた。
「この丘から見る夕日はとても綺麗でね~。嫌なことなんかすぐに忘れることができるわ」
「キース様...!カタリナ様...!本当にありがとうございます!......でも...今回ばかりは...忘れてはいけないことなのです......」
ソフィアが涙目になりながらカタリナに抱き付く。
泣いても、どんなに辛くても、頑張ろうとしているソフィアにカタリナは頭を優しく撫でる。
「ありがとうソフィア。でも...無理しないでね」
ソフィアは首をこくりと頷いて返事をする。
「...見て下さい!カタリナ様!ソフィア様!夕日がお見えになりましたわ!」
淡いオレンジ色の光が俺たちを照らす。
ソフィアは泣くのを止め、カタリナも前を向き、俺たちも見やすいように自然と横一列になる。
「とても綺麗な夕日ですね...。この場所を秘密にしたくなるのもわかります」
「ええ...。でも...私としては今みたく、みんなで見る方がいいですわ」
「えっ!?じゃあ...誰が秘密の場所にしようと言ったのですか?」
「キースが言ったのよ。珍しいわよね。キースがみんなに教えないのって...」
「キース...」
「キース様!」
カタリナの暴露に、ジオルドとメアリはキースをジト目で睨む。
「キース...独り占めはいけませんよ」
「そうですわ!家族を使った抜け駆けは禁止と...あれほど言いましたわよね?」
「それぐらい...別にいいじゃないですか!......アッ!空に何か飛んでいますよ!」
「......あっ!本当よ!空に何か飛んでいるわ!」
ジオルドとメアリに責められたキース。
苦し紛れに指を指したかと思いきや、カタリナが見付けたことにより、ジオルドとメアリは空の方に向く。俺、アラン、ソフィア、アン、ケロちゃんも空に浮かぶ物体を見付ける。空には丸い物が浮かんでいた。
「あれは...クロウカードや!」
「それも...浮(フロート)のカードだわ!」
ケロちゃんとカタリナが正体を見破る。
「空を飛んでいる...フライのカードを使って捕まえに行くのですか?」
「けどよ...今日...ミラーのカードを使っていただろ?魔力切れでもしたら...墜落するぞ!」
「そうですわね......。ですが...クロウカードを放っておくことはできませんし...」
「わいだけならともかく、カタリナを連れて飛ぶことはできへんで...」
みんなが諦め気味になってしまっている最中、ソフィアが堂々と胸を張って宣言をする。
「私にお任せ下さい!あのクロウカードを封印させてみせます!」
「本当にこの方法で行くのか!?」
「ええ、それしか方法はありませんわ。カタリナ様は鏡(ミラー)のカードで魔力を使われましたし...今のケロちゃんではカタリナ様を運ぶことはできません。...それに!抜(スルー)のカードの時に、カタリナ様とジオルド様を助けることができましたから大丈夫ですわ!」
自信満々に答えるソフィアに俺は不安を感じる。
そんな方法で大丈夫だろうか...。
方法はこうだ...。まず...キースが土の魔力でゴーレムを作って他のみんなが空に飛ばされないようにする。次に、カタリナが鍵の封印を解く。解き終えたら、ソフィアが言葉でクロウカードの効果を発動させて宙に浮かび...俺とソフィアが風の魔力を使ってカタリナと共に空を飛ぶ。空中でフロートのカードを捕まる。
こんな方法で大丈夫だろうか?はっきり言ってかなり怖い...。けれど...クロウカードを放っておくことはできない...。フロートのカードは厄介なことに...魔力がなくても言葉で発動するらしい...。本当に厄介だ...。
代わりの案が思い付かない俺はこの案に従うしか道はなかった。
カタリナがうわ言のように謝る声が響く中、キースも土の魔力でゴーレムを作り出す。作り出されたゴーレムは覆い被さり、みんなを守る盾となる。
「義姉さん...カードキャプターをやりたいのならもっと頑張ろうね。まあ...カードキャプター自体やめてほしいけど...」
「はい...ごめんなさい...。明日からもっと頑張ります...。闇の力を秘めし鍵よ。真の力を我の前に示せ。契約の元、カタリナが命じる。封印解除(レリーズ)!」
項垂れていたカタリナが気を取り直して呪文を唱える。足元には黄金色に輝く、月と太陽が描かれた魔方陣が現れる。
...月にはどういう意味があるのだろうか...?
俺が考えている間にも鍵は段々大きくなり、水色の杖に変わる。カタリナは得意気に杖を振り回していた。
カタリナの準備が終えると、カタリナを真ん中にして手を繋ぐ。手を繋いだ俺たちは互いに目配せをして最後の確認をする。確認を終えたソフィアは叫ぶ。
「私たちを天国まで連れて行って!」
「.........えっ!?もっとましな」
俺が文句を言い終える前に体が宙に浮く。
「さあ、お兄様!風の魔力で追いかけますわよ!」
「お...おう...」
俺はソフィアのテンションのついていけないまま、空に飛ばされるのであった。
体が枯れ葉のように飛ばされる。
宙に飛ばされた恐怖よりも、ソフィアとカタリナを守りたい想いが勝っていた。
カタリナは硬い表情になっており、ソフィアは嬉しそうに笑っている。
よくこんな状況で笑えるな?!笑ってほしいとは思っていたけど...もっとましな状況で笑ってくれ......。
少し空を飛ぶと、羽が生えた赤と紫色の丸いボールような物が見える。姿が見えた瞬間、カタリナとソフィアは杖を持っている腕を振り上げた。
「汝の在るべき姿に戻れ、クロウカード!」
甲高い音が鳴り響く。
杖の先に透明なカードが現れ、赤紫色の煙が透明なカードに吸い込まれていく。
完全に封印されると体が重くなって地面に落ちていく。
全力で風の魔力を強め、手を取り合って円になり、少しでも落ちるスピードを落とす。
「なんだか...今の私たちって...ロマンス小説の登場人物みたいですわ!」
絶体絶命にも関わらず、ソフィアは目を輝かせる。今日一番の笑顔であった。
ソフィア...笑顔になって嬉しいけど......
普通はこんな状況で笑わないぞ。