乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったのに...さらに破滅フラグが舞い込んでしまった!?   作:オタクさん

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木が生えてきてしまった...

カタリナ様がクロウカードの封印を解いてしまってから夏、秋、冬が過ぎ、春が来てもう一年近く経とうとしていた。クロウカード騒動により、私たちの生活は大きく変わりました。

 

カタリナ様は魔力の鍛練で忙しくなり、ご趣味の畑仕事はできなくなりました。そんなカタリナ様の代わりに、庭師のトムさんが耕してくれることになりました。

...とても残念です。あの畑は私とカタリナ様と仲を深められた大切な思い出の場所でしたのに......。でも畑はクロウカード騒動が終わり次第、また再開すれば良いのです。今はそれよりも......

 

 

「メアリ、カタリナ様の容態はどうなっているの?」

 

長女のリリアお姉様の質問をどうにかして誤魔化せなければいけません。

私メアリ・ハントは、お姉様方に囲まれながらこれまでの経緯を振り替える......

 

 

 

クロウカード騒動で変わったことは畑仕事ができなくなっただけではありません。他の方を騒動に巻き込ませないように、クロウカードの詳細を隠すために、カタリナ様はお茶会に出られなくなりました。お茶会の欠席の理由として病気で寝込んでいることになっておりました。

 

クラエス公爵家は貴族の中でも強い力を持つ家。そんなカタリナ様が病気で寝込んでいるとなると、他の貴族の人たちが気にかけることは当然のことでした。私たちは誤魔化すため、カタリナ様の嘘の病気を考えなければいけなくなったのです。

後ろにいる次女のアメリアお姉様、三女のリディアお姉様がこちらをじっと見つめている。こうなることはわかりきっていることから、予め用意していた言葉で伝える。

 

「寝込んでいらっしゃる日もあれば、元気に過ごさられている日もあります。日によって体調が違うことから、お医者様にお茶会に出るにはまだまだ厳しい、と止められております」

 

「ふーん...。そうなの...。でも、メアリがお見舞いに行けるなら私たちもお見舞いに行けるのじゃないの?」

 

私が行けるからってお姉様方は行く気があるようですが...。正直に言って、仮病がバレてしまうとか、クロウカード騒動関係なく、お姉様方にはカタリナ様のお見舞いに来ないでほしい。

赤の他人であるお姉様方がいきなり来られてはカタリナ様が驚きますでしょうし...。そもそも、恩を売ろうとしているだけで本気で心配をしていない方には来てほしくありません!

 

私は苛つく気持ちを抑えて、これまた予め用意していた言葉を上っ面の笑みで答える。

 

「急に倒れてしまった時、カタリナ様は周りに迷惑をかけてしまったと、自分自身を責められて深く落ち込んでおられました。それでも私がクラエス公爵家に行けるのは、病気で寝込んでいるカタリナ様が不安でいっぱいだろうと、カタリナ様の父親である、ルイジ・クラエス様から許可をもらえているからです。なのでお見舞いは私が行って参りますので、お姉様方は安心して待っていて下さいませ」

 

「......ジオルド様は...ほぼ毎日お見舞いに来ていらっしゃるの?」

 

何故ここでジオルド様の話が出てくるのですか?意味がわかりませんですわ。でも...ずっと黙っていては話は終わりませんし...。

私は考え事を止めて直ぐ様話に戻る。

 

「はい。アメリアお姉様のお察しの通り、ジオルド様はほぼ毎日お見舞いに来ておりますわ」

 

「そう......」

 

少し不機嫌そうに一応納得するアメリアお姉様。

とりあえず納得して頂いたの幸いですが...。なんでアメリアお姉様はそんなに不機嫌なのですか?やけに突っかかって来ているような...。...?不機嫌そうなのはアメリアお姉様だけではない。リリアお姉様とリディアお姉様も不機嫌そうにしている...。今の説明で何か気に触ることを言ってしまったのでしょうか?

 

私が思い悩んでいると、リディアお姉様の口からとんでもない言葉が出てくる。

 

「お茶会に出ても碌に会話もせず、お菓子をばくばく食べていたあの娘が、病気で寝込んでいるなんて......仮病でも使っているんじゃないのかしら?」

 

「......えっ......?病気で寝込んでいる方に対してそのような言い方は酷すぎますわ!」

 

突然の悪口に私は理解できず呆けてしまいましたが、リディアお姉様の言い方に怒りを感じられずにはいられませんでした。

確かに、他の人とお話もせずにお菓子ばかり食べるのは可笑しいでしょう。お茶会ではお菓子よりも人と話すことが何よりも大事で、人によっては悪印象を持たれても仕方のないことでしょう。ですが......

 

 

他人の悪口ばかりで盛り上がる人達よりは遥かにましです!

私は思わずお姉様方を睨み付けてしまいましたが、そんなの関係ありません!カタリナ様のことを悪く言う貴女方が悪いのです!

 

お姉様方は怒っている私をちっとも気にとも止めることはなく、倍に返してくるかのように睨み付けてきます。睨み合うこと数十秒間、先に折れたのはお姉様方でした。

 

「メアリ......貴女、本当に変わったのね」

 

リリアお姉様が怒りを隠さずに嫌味たらしく言う。

ええ...そうですわね...。今までの私でしたら怯えて俯いて何もできませんでした。ですが、あの騒動に巻き込まれれば嫌でも変わりますわよ。これからのことを考えれば、お姉様方に疑われるような行動をしてはいけないのでしょう。でももう、はっきり言って、襲い掛かってくるクロウカードやカタリナ様を失うかもしれない恐怖に比べれば、お姉様方はちっとも怖くありません。だから、これまでの私ではいられません。

 

これ以上面倒なことが起きる前に、私はお辞儀をしてその場から離れる。

 

「ええ。私は変わりましたわ。それでは失礼致します」

 

私は一度も振り返ることもなく立ち去る。

それがいけなかったのでしょうか......

 

 

「卑しい赤毛の子が調子に乗っているじゃないわよ」

 

 

あんなことが起きてしまうなんて...この時の私には知るよしもありませんでした。

 

 

 

自室に戻ろうと思いましたが、お姉様方が待ち伏せしている可能性も捨てきれませんので、趣味で手入れしていたお庭を散歩して時間をずらして会わないようする。

...この庭園でカタリナ様と仲良くなる切っ掛けができましたのよね。懐かしいですわ...カタリナ様との出逢った日が遥か遠い日の出来事のように感じてしまいますわ。それほど時間が経っておりませんのに...。

 

あの日...道に迷ったカタリナ様が偶々この庭園を通り掛かって、休憩していた私に声を掛けて下さいました。戸惑っている私に質問を矢継ぎ早に投げ掛けるカタリナ様は興奮されておりました。うふふ...あの時のカタリナ様の瞳はキラキラと輝いて綺麗でしたわ。

そういえば...皆さんでこの庭園に集まったことは一度もありませんでしたわね...。

 

この庭園で花を見たのはカタリナ様とアラン様だけでした。キース様は...カタリナ様を探しに来た時なのでチラ見程度でしょう。ちゃんと見に来たとはいえません。

ソフィア様、キース様、ニコル様、ジオルド様がこの庭園を見たらなんとお応えしてくれるのでしょうか?

 

カタリナ様やアラン様と同じく褒めて下さるのでしょうか?いいえ...お褒めの言葉はいりませんわね。この庭園はあくまでも私の趣味の範囲、お褒めの言葉よりも、ただ綺麗だと思っていただければ充分ですわ。

皆様の様子を想像していたらなんだか......

 

 

温かな気持ちをなってきました。

カタリナ様とソフィア様は花を間近で見て褒めて下さり、アラン様は全体を見渡すように庭園をご覧になさるのでしょう。キース様とジオルド様とニコル様は少し離れて皆様の様子を見守りながら見て下さるのでしょうね。......ミラーとケロちゃんは......ミラーとケロちゃん?......私たちとあの方たちの関係って、一体、何なんでしょうか?

 

ミラーもケロちゃんも嫌いではありません。ただ...なんていえばいいのかはわからないのです。

ミラーは...同族のクロウカードのせいで恐怖を感じてしまう時があります。今はもう暴れておりませんし、彼女の暴れ方はまだマシな方であるのですけどね...それでも怖く感じてしまいますわ...。この問題に関しては付き合う時間を増やせばいいだけ。一番の問題は......ケロちゃん。

ケロちゃんのことは性格的には嫌いではありません。寧ろ、無邪気で明るくて話しやすく、性格面では好ましい方です。ですが...失敗が大きすぎて、どうしても好きになれません。多少の失敗でしたらすぐに気にしなくなるのですが...この失敗はね...。ケロちゃんも謝ってきましたし、頭の中では悪い仔ではないのはわかっております。けれど、どうしても...理性と感情がぶつかって...もやもやしてしまいます。

 

カタリナ様とソフィア様は私たちとケロちゃん、ミラー、クロウカードが仲良く過ごすことを望まれておりますけど......私たちはそれをできるのでしょうか?ケロちゃん自身も私たちに好まれていないことを自覚しているようで、用がある時以外はあまり近付いて来ません。

アラン様、ジオルド様、キース様、ニコル様はどのように考えているのかはわかりません。私でさえも好き...嫌い...なのか理解できておりませんから...。でも...だからこそ...きっと......

 

 

仲良くできると思います。

そもそも、本当に心の底から嫌いであるのでしたら、こんなにも悩むことなんてありませんからね。それに......

 

 

誰かを恨むよりも仲良くなりたいですわ。

悩んでいても仕方ありませんから、この問題は時間に任せることにしましょう。

そう結論を決めた私は歩き出しました。

 

 

 

あれだけ大きな事件が起きていても、薔薇は以前と変わらず咲き誇る。

よかった...。私もカタリナ様と同じく、クロウカード騒動が起きてからは庭園の手入れができなくなり、代わりに庭師の方にやってもらっていました。せっかくですから...私も久し振りに手入れをしようかな。

 

屈んだその時でした─

 

 

「えっ......?これは......クロウカード!?」

 

土の中に埋まっていた紙切れ。ゴミかと思って掘り出してみれば、タロットカードが埋もれていた。しかも、少し離れた場所にも埋まっておりました。

一枚目は道化師みたいな格好を少女。二枚目は葉っぱをストールのように巻いた長い髪の毛の女性。どちらのカードの文字は未知なるもので、この国ソルシエ王国の字ではない。このカードはやはり!クロウカードで間違いありません!

 

驚いて大きな声を出してしまった私は、慌てて周囲に他人がいないか確認をする。幸いにも誰かに聞かれるとはなかった。

私は急いで二枚のクロウカードを同じポケットにしまおうとした瞬間、ふと思い出す。カタリナ様とソフィア様のお話によりますと、レインとウッドというカードは二枚重ねてはいけないらしい。このカードがレインとウッドに該当しているのかは確認を取ってみないとわかりませんが、取り敢えず、二枚のクロウカードを同じポケットに入れるのは止めておいた方が良いですね。せっかくの知識が無駄になってしまいますから...。

 

私がクロウカードの保管方法に悩んでいてしまった時でした......

 

「見付けたわよメアリ、まだ話は終わっていないわよ」

 

お姉様方に見付かってしまった!

私は急いでクロウカードを背中に隠そうとしましたが、三対一の数の差で負けてしまい、いとも簡単に取られてしまう。

 

「返して!」

 

「...これってタロットカード?それにしては...随分と変わった模様ね。初めて見る柄だわ。それに...何なのよこれ、見たことのない文字ね。本当にこれは文字なの?」

 

リリアお姉様がじっとクロウカードを見つめる。アメリアお姉様とリディアお姉様も一緒になって覗き込む。珍しがっているのもほんの少しの間だけで、すぐに興味を失って私の方に視線を向ける。必死に手を伸ばす私を嘲笑うかのようにクロウカードを遠ざける。

私の抗議も空しく、お姉様方は意地悪な笑みを浮かべるだけでした。

 

「ふーん...そんなにこのタロットカードが大事なのね。返してほしければ...私たちの言いたいことがわかるわよね?」

 

「返して!そのカードはお姉様方が持っていい物ではありません!!」

 

アメリアお姉様の問いに答える余裕なんてなかった私はただ叫ぶ。その様子に気に食わなかったリディアお姉様が私の前に立ち塞がる。

 

「メアリ!口の利き方には気を付けなさい!貴女みたいな赤毛の卑しい身分の子が偉そうにしてはいけないのよ!そのことをちゃんと理解しなさい!前みたいに黙って...」

 

形振りかまっていられなかった私は、リディアお姉様の脇を通り抜けてリリアお姉様からカードを取りに行こうとする。

この行動が大分いけなかったようで......

 

 

「...ッ!こんなカード捨ててやるわ!」

 

二枚のクロウカードが投げ捨てられてしまいました!

 

「そ...そんなあ......」

 

ショックのあまりにへたり込んだ私をお姉様方は見下す。

 

「あーらら。メアリがちゃんと、私たちの言うことを聞かなかったのが悪いのよ。この件に反省したら...」

 

「お姉様方の馬鹿!!何が起きても知りませんわ!」

 

 

 

 

「......というわけでカタリナ様、ソフィア様、キース様、ニコル様。皆様のお力を貸して下さい。この度は...お姉様方がとんでもないことを仕出かしてしまい、申し訳ございませんでした!」

 

あの後私は、怒りで呆けてしまっているお姉様方を放っておいてその場を走り去りました。その後は助けを求めるために馬車に乗り、クラエス家とアスカルト家に行き、合流をした私たちは屋敷に向かっているのです。

お姉様方の愚かな行為、私の不甲斐なさ。事件の発端は百%お姉様方が悪いのですが、もし...私が昔の私で対応できていたら...こんなことにはならなかったなかなって思ってしまうと...申し訳ないですわ。

 

「メアリは何も悪くないわよ!」

 

「カタリナ様の言う通りですわ!メアリ様が気にすることは何一つありません!」

 

「せや!おまえさんは何も悪くないんやで!悪いのは全部姉達の方や!」

 

「そうだよメアリ。僕だって...君と同じ立場だったら同じことをするよ」

 

カタリナ様、ソフィア様、ケロちゃん、キース様が私を庇って下さる。

お礼を言わなければいけないのに...涙を堪えるのに必死だった私は何も言えずに俯くことしかできませんでした。

 

「...メアリは何も悪くはない。だが...一つ問題ができてしまったようだ」

 

「一つ問題ができてしまった...それは一体どういうことですか?ニコル様」

 

ニコル様の言葉により雰囲気が大きく変わる。

キース様が質問をされてもニコル様は黙っているままだった。黙っている様子は私たちは怖くなって見合わせていると、ニコル様と目が合う。ニコル様はじっと私の顔を見つめる。その様子はまるで私のことを気遣っているようでした。

 

意を決したニコル様が口を開く。

 

「何が起きても知らない...。つまり...それは...何かが起きるということを明言してしまっていることだ」

 

.........ああー!!なんてことを!いくら怒ってしまったからとはいえ、私はとんだ間違いをしてしまいましたの?!

頭を抱えて反省をする私にケロちゃんが優しく肩を叩く。

 

「ま、まあ!樹(ウッド)のカードは大人しいから悪さはせんし!雨(レイン)のカードは雨を降らせるだけだから大丈夫やで!おまえさん家にも緑がいっぱいあるやろ?木が生えるぐらいだから誤魔化せるから、そこまで心配することあらへんで!」

 

ケロちゃんが慰めにならない言葉で慰めようとする。

励まそうとしてくれるのはありがたいですが...結局!騒ぎが起きるのではありませんか!大体、クロウカードがどこに飛ばされたのわかりませんし、もし屋敷の方に飛ばされてしまったら...屋敷に木が生えてくるのではありませんか!それで屋敷が壊れてしまったらどうすればいいの!?カタリナ様とソフィア様の話を聞いている身としては不安要素しかありません!

 

私がさらに落ち込んでいると、ケロちゃんが焦ったのか別の話に変えました。

 

「な、なあ!お茶会ってなんや?普通に飲んだり食べたりする、いつものやつとは違うみたいやけどさ」

 

「貴族同士の集まりだよ。そこで情報を交換したり、交流を深めたりするんだ」

 

塞ぎ込んでいる私の代わりにキース様が答える。

 

「......その集まりでは飲み食いしてはいけないんか?」

 

「いや、普通に飲んだり食べたりしても平気だよ」

 

「だったらなんで、カタリナの食べる量に文句を言うんや?」

 

「......食べ過ぎだから......」

 

「キースにドン引きされるほどって...カタリナ!おまえさんどんだけ食っとるんや!?」

 

「仕方ないじゃない!お茶会に出される料理は全て美味しいのよ!しかもみんな食べないから余ってもったいないのよ!袋があったら持ち帰りたくなるほどよ。ケロちゃんも食べてみたら私の気持ちがわかるわ!」

 

「わいはそんなに卑しくないわ!」

 

カタリナ様とケロちゃんのやり取りが馬車の中で響く。

賑やかな声は私の落ち込んだ気持ちを消し去っていき、段々と楽しい気持ちにさせていく。クロウカードが暴れているかもしれないのに、つい可笑しくなって私は笑ってしまう。

 

カタリナ様がケロちゃんにお菓子の魅力を力強く語る。ケロちゃんが時折誘惑に負けそうになるものも、理性で抑えて反論をする。盛り上がった会話はニコル様の手を叩く音によって止まる。

 

「話はそこまでだ。今はどうやってクロウカードを封印するのかを考えるのが先だ」

 

「そうですねお兄様。クロウカードの方法自体には目処が立っております。ですが...問題は...メアリ様のお姉様方。彼女達は協力的ではないこと目に見えております。彼女達をどうやって現場に近付けさせないのかが鍵となります...」

 

ここでもお姉様の話...本当に嫌になってきますわ...。

 

「ですが!問題ありません!お兄様の魅力を持ってすれば、メアリ様のお姉様方を骨抜きにして言うことを聞かせることができますわ!」

 

ソフィア様が目を輝かせて言う。

確かに...ニコル様の笑みは魔性の笑みと言われており、耐性のある私でもどきっとしてしまう時がありますが...いつからニコル様の笑みは洗脳できるようになっておりますの!?

 

「キースだって凄いのよ!女性を虜にさせる色気があるんだから!」

 

カタリナ様も負けじとキース様のことを語る。

あの...お二方はなんで勝負をしておりますの!?

 

「女性を虜にさせる色気がある...?肝心の人に効かなければ意味ないじゃないか!」

 

「キース!?」

 

「キース様!?しっかりして下さい!」

 

「キース!?おまえさん...ほんま苦労してるんやな...」

 

「......」

 

私以上に落ち込むキース様。

カタリナ様とソフィア様は心配をし、ケロちゃんも心配ながら苦労を労り、ニコル様は完全に憐れんでおりました。カタリナ様とソフィア様の口論に驚いていた私は何も言えませんでした。

キース様...大変苦労をなさっているのですね。ライバルの力が効かないことは喜ばしいのですが...ここまで来ると...同情を越えて心が痛くなりますわ。

 

屋敷に辿り着くまでの間、私たちはキース様を宥めるのに精一杯でした。

 

 

 

決まった作戦は簡単なものでした。

まず、キース様とニコル様がお姉様方の相手をし、お姉様方の目が逸れた隙にカタリナ様、ソフィア様、ケロちゃん、私がクロウカードの元に向かうという二手に分かれることになりました。

 

お姉様方を見付けるの凄く簡単で、怒り狂ったお姉様方は玄関の方で私を待ち伏せしておりました。

私たちは壁に隠れて、キース様とニコル様はいつもの調子でお姉様方に話し掛けました。すると、呆気なく、お姉様方は私のことを気にせずにキース様とニコル様を連れてお部屋に向かいました。お姉様方が見えなくなった瞬間、私たいは急いでクロウカードを探しに行きました。

 

幸いなことに屋敷の方には異変はありませんでした。

...本当に良かった。家は壊れてはいなかった、と聞いてはいても、実際にどうなるのかはわからないもので...。これで少しは安心できます。

 

とはいえ、クロウカードは実体化していました。

根っこや木の枝が所々生えており、近付くにつれて数が増え、クロウカードが飛ばされたと思われた場所には立派な木が生えておりました。その場所は元から木々が生えていて、新しく木が生えても周りに違和感を覚えさせにくい場所でした。

 

ウッドのカードに辿り着くのと同時に、実体化したレインのカードが目の前に現れました。道化師の格好をした水色の彼女は、楽しそうに笑いながら雲の上に乗っていました。

カタリナ様はすかさず鍵を取り出す。

 

「闇の力を秘めし鍵よ。真の力を我の前に示せ。契約の元、カタリナが命じる。封印解除(レリーズ)!」

 

カタリナ様の呪文を唱えると月と太陽の魔方陣が表れ、かざした鍵は段々と大きくなって杖になる。

キャー!カタリナ様格好よくて素敵ですわ!...って前の自分でしたら何も考えずにそう思っていたのですが...今は複雑な気分ですわ...。ソフィア様の悲しんでいる様子を聞いて、感心をしている場合ではないと肝に銘じる。...月にはどのような意味があるのでしょうか?

 

私が考え事をしていると、レインがニコニコしながら私たちを濡らすため、雲から雨を降らして近付いてくる。

 

「クロウの作りしカードよ。我が鍵に力を貸せ。カードに宿りし魔力をこの鍵に写し、我に力を!水(ウォーティ)!!」

 

振り回した杖をカードに振りかざすと、レインが降らせていた雨が取られて渦を巻く。渦の中心にはウォーティの姿があった。

 

「水よ!戒めの楔となれ!」

 

取った雨はレインにぶつけて雨は球体の檻になる。

 

「ナイスですわ!カタリナ様!」

 

「よっしゃ!ええぞ、カタリナ!この調子や!」

 

「素敵ですわ!カタリナ様!」

 

ソフィア様とケロちゃんと私が称賛の声を上げる。

本当に...頼もしくて、力強くて、不安でいっぱいだった私の心を安心させてくれる。この勇姿はずっと見ていられますわ!

 

「汝の在るべき姿に戻れ、クロウカード!」

 

私達が見惚れている間にも進み、カーンと甲高い音が鳴り響く。カードの形をした光が現れ、レインは必死に抵抗するが雨ごと吸い込まれる。

レインのカードがカタリナ様の手に戻ると...変化が起こりました。

 

根っこや木の枝は縮みながら消えていき、大樹の代わりに葉っぱをストールのように巻いた緑色の長い髪の毛の女性がちょこんと座っておりました。

カタリナ様が手を差し伸べすと、自らの意思で元の姿に戻りました。

 

「カタリナ様、これを」

 

ソフィア様が持ってきたペンをカタリナ様に渡す。

 

「ありがとうソフィア。急いで来たものだから忘れちゃって...これでよしっと」

 

どうやら、カードに戻ってもペンで名前を書くまで終わらないようです。......良いなあ...私も書いてもらいたいですわ...。でも...お風呂に入ったら消えてしまいますし......ハッ!!今、私は何を考えているのですの!?

 

私は頭を左右に振って思い浮かべた考えを消す。

邪なことは考えてはいけませんわ!

 

「カタリナ様、ソフィア様、ケロちゃん。お姉様方に見付かる前に帰りましょう」

 

私がこれ以上変なことを考えてしまう前に帰ることにしました。

 

 

 

庭園が無事で良かったですわ!

帰り道、何気なく庭園の方に寄る。私は皆様に置いていかれているのにも関わらず、庭園の様子が気になってじっと見つめる。そんな時でした――

 

 

「この庭綺麗やな」

 

ケロちゃんが感嘆とした呟きがぽつりと耳に入る。

薔薇を中心に色とりどりの季節の花が咲き誇り、長すぎないように短すぎないようにバランスよくカットされた草木が生え揃う。昔の私が頑張って手入れをした庭園。自分で言うのもなんですが、私もまた思わず呟いてしまう。

 

「ええ、私は――」

 

 

「緑の手を持っておりますから」

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