乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったのに...さらに破滅フラグが舞い込んでしまった!?   作:オタクさん

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改修工事で大変なことになりました...

私が住んでいる屋敷は今、剣(ソード)で斬られた箇所を直すため改修工事をしている。

お母様が斬ったのはあの部屋の扉や壁だけではなく、お母様の部屋の扉、廊下の壁、廊下に置いてあった花瓶や壺も斬られていた。

...怪我人が出なくてほんと良かったわ...。多分私が...剣(ソード)を振り落とせば洗脳を解くことができると、そのことを他の人たちが覚えていて止めようとしてくれたから、こんなことになったと思う。まあ...でも...取り敢えず...本当に怪我人が出なくて良かったわ!怪我人いなければ全て良し!物は直せば良いことなんだから!

 

「ほんと...怪我人が出なくて良かったな」

 

ニコルの話し声で私は考え事を止める。

 

「ええ、本当にそうですわ!しかし...工事の途中でありながら、クラエス邸に遊びに行くの間違っているのでしょうか...」

 

「いいや、間違っていないな。...ほっといていたら、このアホ令嬢は何仕出かすかわからん。俺たちで見張るのが丁度良い。大体...こんな危険なことになるとわかっておきながら、クロウカードは危険な存在ではないと主調をし!あまつさえソードに向かって挑発をするほどの馬鹿だから!!俺たちで見張っていないとどうしようもない」

 

アラン...あの時は状況的に仕方なかったのよ!そこまで力強く言う必要なくない!?

 

「しかも、義姉さんが封印したから...あんな危険なカードを勢いだけで振ることになるのが...物凄く怖いんだけど...」

 

「ま、まあ...僕達でカタリナの剣の稽古をすればなんとか......」

 

「いくら、カタリナが望んだものしか斬れへんといえども...あの勢いで振られるのは滅茶苦茶怖いな」

 

キース、ジオルド、ケロちゃんも私に対して哀れみの視線を向ける。

みんな...私に対してどう思っているの!?なんか酷くない!?ちゃんと先生から勢いだけは褒められていたのよ!だから筋はあるのよ!それに...!剣(ソード)は斬りたいものしか斬れないから!そこまで心配される必要はないわ!

 

「みんなに心配されなくても!私だってちゃんと先生から褒められて大丈夫よ!練習すれば...」

 

「カタリナ様...私は剣のことをよくわかりませんが、カタリナ様の動きを見ていると...なんだか...とても怖いです...。ここは素直に認めた方がよろしいと思いますわ...」

 

「カタリナ様、誰だってはじめはできません。恥ずかしがることはないのです。それに、お兄様が優しく教えて下さりますから、遠慮なんて必要ないですわ!」

 

メアリからは控えめに否定され、ソフィアからは熱く兄に教わるように勧められる。

...私って...そんなに...頼りないの!?この空気居たたまれないわ...なんとかして変えないと!

 

「あ、あのね!剣の話は一先ず置いておいて...」

 

「義姉さん。この話はとても大事なことなんだよ。いくら聞きたくなくなっても、誰かを怪我させてしまう前に、自分が怪我してしまう前に、行動を改めないといけないんだ。だから、どんなに耳が痛くなってもちゃんと聞こうね」

 

キースに言い返されてしまい逃げられなくなる。

私にとっていつもの楽しいお茶会が、長く苦しい時間になってしまった。

 

 

 

「うぅ...」

 

あれから、どれくらい時間が経ったのかわからないけど、長い説教をやっと聞き終えた私の口から呻き声が勝手に溢れた。

もうこの話は嫌だ...。せめて剣の話は稽古中だけにして...。

 

話を終わらせるため、何も案が思い付かないまま、勢いだけで椅子から立ち上がったその瞬間──

 

 

「うっ...うわわわーーー!!」

 

男性の野太い叫び声が木霊する。

私以外のみんなもその声に驚いて椅子から立ち上がる。

 

「な、何が起きましたの!?」

 

「まさか...クロウカードの仕業か!?カタリナ!お前最近クロウカードの気配をわかるようになってきただろ!?この騒ぎは...!?おい!待て!どこに行くんだよ!」

 

「お嬢様!?」

 

「待たんか!このアホ!お前さんが一人で行ったところで...って!話聞かんかい!」

 

「カタリナ様!どのカードかわからないのに動いたら危険です!待って下さい!」

 

「そうです!一人で先に行かないで下さい!」

 

「義姉さん待って!」

 

叫び声が気になっていた私にはみんなの制止を無視して、肩にケロちゃんが引っ付いていたことに気に止める余裕もなく、ただ叫び声が聞こえてきた方向に走り出していた。

 

 

 

「うぅ...」

 

先程の叫び声を発したと思わしき男性が蹲って呻き声を上げていた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「カタリナ危ない!」

 

後ろからジオルドの声が聞こえてくる。

危ない?それってどういう...

 

私がぼーっとしていると倒れている男性と共に、つむじ風によって私と男性は優しく巻き上げられる。状況をきちんと理解する前に腐った木の台が目の前に落ちてくる。

 

「なっ...!?」

 

間一髪のところだった。

ソフィアとニコルがいなければ大怪我するところだったわ!二人にはいくら感謝しても仕切れない。後でソフィアとニコルにお礼を言わなくちゃっ!...うん?風に身を任せていると、緑色のもやが見えてくる。あれは...!

 

「ク...!」

 

「カタリナ様!本当にご無事で何よりですわ!」

 

私と男性はみんながいる近くの場所に下ろされる。騒ぎの原因に気が付いた私が叫ぼうとするが、メアリが私の言葉を遮るように抱き付く。

 

「...駄目ですカタリナ様。この場には他の方もいらっしゃいます。私たちは何も知らない体でいなければなりません」

 

耳元でこそっと小声でメアリから注意される。メアリの指摘に気が付いた私は急いで口を閉じる。

周りをよく見てみると、アンが倒れている男性を介抱しているだけではなく、ジオルドがテキパキと指示を出し、アランは魔法を発動しているソフィアとニコルを傍で守るように見守り、キースが「義姉さんが大切にしている人形が落ちている...」と言いながら動けなくなったケロちゃんをポケットに入れていた。

 

「カタリナ様。ここは危険です。後は大人たちに任せて、私達は部屋に戻りましょう」

 

「そうだよ義姉さん。僕達がここにいても邪魔になるから、後は大人の人たちに任せて屋敷に戻ろう」

 

「ニコル様、ソフィア様。我らが不甲斐ないばかりに、お手数をお掛けしまい、申し訳ございません。そんな我らにご協力していただき、誠にありがとうございます。後は我々に任せて下さい」

 

メアリとキースが帰ろうと提案をし、風の魔力でつむじ風を作り上げていたソフィアとニコルの代わりになろうと護衛の人達が二人に頭を下げる。

後の事は任せて私達は屋敷に戻ることにした。

 

......というのは見せ掛けで、屋敷に戻る振りをして茂みに隠れる。

 

「この現象はやはり...クロウカードなのですね。なんのカードですか?」

 

「このカードは...霧(ミスト)ですわ」

 

ジオルドとソフィアが確認し合う。私も気が付いていたのだが、みんなから静かにするように、と言われて必要な時以外喋れなくなってしまった。

...何故だ?私はそんなにうるさいの?音量を気を付けて話しているつもりなんだけどなあ...。とりあえず、このカード霧(ミスト)について振り返ってみる。

 

霧(ミスト)は原作にはないカードで、アニメオリジナルのカードだ。

霧(ミスト)はアニメ第十四話で登場し、触れた物を腐食させる緑色の霧のせいで、さくらちゃんの兄である桃矢の劇を目茶苦茶してしまったのだ。影(シャドウ)のカードがあれば封印は簡単なのだが......

 

「対策はある。けど問題は...事情を知られてはいけない人たちがいることだ...」

 

「だよな。なんせあの魔方陣の光は目立つし、杖を振り下ろした時の音は結構大きいからな」

 

「音なら誤魔化せるけど...」

 

「光は火で誤魔化すことはできませんよね...」

 

「影(シャドウ)のカードも、どの属性にも当てはまりませんわ...」

 

一番の問題は言い訳が浮かばないこと。

『カードキャプターさくら』の世界は一般的に魔法がないから、クロウカード騒動に巻き込まれても気のせいと言い張れば考えてくれなくなるけど、『FORTUNE・LOVER』の世界は魔法があるから誤魔化せられない。う~ん...どうすれば良いものなかなあ...。

 

「皆様お持たせ致しました。対策はきちんとこちらで用意しております」

 

みんなでこれからのことを考えていると、一段落終えたのであろう護衛の人の一人が、いつの間にか私達に後ろで跪いていた。驚いている私達の前に手を差してだしており、その掌の中には薄い水色のハンカチのような物があった。

 

「このハンカチが...一体どうかしたのですか?」

 

「このハンカチは一見普通のハンカチに見えますが、このハンカチれっきとした魔法道具でございます」

 

へぇー...普通のハンカチに見えても魔法道具なんだ。やっぱり魔法のある世界は面白いね。

私がまじまじとハンカチを見詰めている間にも説明は続いた。

 

「このハンカチ、魔法道具名プレドロムは、鼻と口を覆うことによりどんな強力な睡眠薬でも効かなくなりますが...」

 

一瞬言いづらそうになる護衛の人。

不審に思った誰かが訊ねる前に話は再開する。

 

「まだ開発されたばかりの物であり、凄く貴重な代物であるため、皆様の分の物は用意できておりません。この中でお渡しできるのはカタリナ様とソフィア様だけとなります。しかもカタリナ様には、口を塞ぎながら呪文を唱えることになります」

 

みんなの分が用意できていないと知り場に動揺が走る。

てっきり、こういう時は王族優先だと思っていたんだけど...そんなにこの魔法道具を作るのが大変なのかしら?まあ、ジオルドもアランも、クロウカード騒動に付き合ってくれるほど優しいから大丈夫でしょ。

 

二人の顔を見てみると意外なことに悩んでいた。

あれ...?すぐに良いよと承諾してくれると思ったけどなあ...意外な反応...もしかして...。王族独自の教育をされていてそれで警戒心が高くなっているのかな?

 

「義姉さんは人のことを気にしている場合ではないよ。義姉さんは口を塞ぎながら呪文を唱えることができるの?」

 

二人を見ていたらキースに叱られてしまった。

キースの発言がみんなに聞こえていたようで、視線が一斉に私の方に集まる。

 

う~ん...。湖に落ちた時にできていたから大丈夫だと思う...。とはいえ、自信はないけど。

 

「大丈夫...一応できるはずだから...」

 

私の自信のない態度にみんなは不安そうになっているが、それでもやるしかなかった。

 

 

風の魔法で睡眠薬を飛ばしてみんなを眠らせた後呪文を唱える。

 

「闇の力を秘めし鍵よ。真の力を我の前に示せ。契約の元、カタリナが命じる。封印解除(レリーズ)!」

 

うん...口を塞ぎながら呪文を唱えるのは息苦しい。空気を吸いたくなるまでに早めに終わらせないと...。

 

「影よ。全ての霧をその中に包み込め!影(シャドウ)!」

 

振り下ろした瞬間、影(シャドウ)のカードは大きな影となりあっという間に霧を包み込む。

 

「汝の在るべき姿に戻れ、クロウカード!」

 

影は段々と小さくなってカードの形となる。

安堵した私はハンカチを押さえていた手を緩めてしまい、睡眠薬を吸い込んでしまうのであった。

因みに...後日目覚めた後にお父様から聞いた話によると、緑色の霧の件は魔法省が調査するということで納得してもらい、怪我人もたん瘤や痣ができるくらいで済んでいた。騒ぎは大きくなったけど、重傷者が出なくて本当に良かった!

 

 

 

 

おまけ

~クロウカードとの日常~

 

私の誕生日会の日から鏡(ミラー)は色々と積極的になっていた。本を読んで独学で勉強をするだけではなく、お母様のところに行ってマナーを学んだり、私と一緒に剣の稽古を受けたり、最近ではお菓子作りを始めていた。お母様に認められたことが相当嬉しかったみたい。

 

好きなキャラクターが動いている姿は見ていて楽しいし、鏡(ミラー)が嬉しそうな表情を見ればこっちも嬉しくなる。

最近そんな鏡(ミラー)を見て思うのは──

 

 

鏡(ミラー)ってチートすぎない!?

人間のような肌触り、魔法なのにお茶を飲み、教えられたことはすぐに覚えて、令嬢らしく礼儀正しく行動をし、あの疲れるお菓子の泡立てにも疲れずにずっと回し続ける。私の魔力が続く限り色々なことができるのよ!あれは正しくチートよ!

 

手は握ったことはあるけど...他の部位はどうなんだろう?

興味を惹かれた私は部屋の隅にいる鏡(ミラー)に近寄り、鏡(ミラー)から許可をもらう前に勝手に頬を触る。いきなり私に頬を触られたもんだから鏡(ミラー)は驚いて本を落とす。

 

「あの...主...いきなり私の顔を触って...どうかしたのですか?」

 

困惑しながらも私の行動を止めない鏡(ミラー)。

...こういった反応も人間っぽい。相変わらず凄い魔法だわ...。

 

「どうもしていないわ!ミラの顔はとても柔らかいなって思っただけよ!」

 

「そ、そうですか...。主の頬っぺたも柔らかいです」

 

鏡(ミラー)もお返しとばかりに私の頬を触る。

私の頬っぺたが柔らかいか...。悪役令嬢カタリナ・クラエスに転生してからは、貴族の令嬢らしくお肌の手入れは欠かせていないから前世よりももちもちしていると思う。

 

「義姉さん...ミラ...。二人は一体...何しているの...?」

 

私が騒いでいるうちに、いつの間にやらキースが部屋に入ってきていた。

キース...そんな呆れた顔をしないで。そりゃあ、端から見れば可笑しな行動はしているけど...あ!そうだ!

 

「キース!私とミラの頬っぺた触って比べてみてよ!」

 

キースも触ってみれば私の考えはわかるはずだわ!

けれども私の提案は虚しく、キースは顔を真っ赤にして拒否をし、鏡(ミラー)に全力で止められてしまった。

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