乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったのに...さらに破滅フラグが舞い込んでしまった!? 作:オタクさん
本当に時間はあっという間に過ぎていくわね~。この前まで夏だと思っていたらもう秋になっていたわ。
秋と言えば、読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋とか色々とあったね。読書の秋で思い出したのだけど、そう言えば...ロマンス小説を作ろという話いつの間にかなくなっていたわ。私個人で作ろうとしても良いのが思い付かなくて、ソフィアにアドバイス求めたら、なんだか顔を青ざめてぶつぶつと呟いていた。...あ!もしかして──
上手く作れなくて、話するのも嫌なほど嫌いになってしまった!?
作るのが嫌になるのは仕方がないとしても、ロマンス小説を語り合う人が減るのは嫌だな。そりゃあ、勿論、ソフィアがロマンス小説を嫌いになっても友達だよ。でもさ...ロマンス小説で繋がった仲だし、好きなことが共通できるのならできるだけ共通をしたい。これ以上嫌いにさせないためにも、この話題はもう出さないようにして、今まで通り楽しく会話しよう。うん!絶対そうしよう!苦手かあ...。苦手と言えば......
「主、主」
誰かが考え事をしている私の体を揺さぶる。隣をちらっと見て確認すると、私を揺さぶっていた人物は鏡(ミラー)だった。
「集中した方が良いですよ。美味しいお菓子を作るのには、かき混ぜ方一つでも大事になりますからね。それと主は...集中しないと力いっぱいにかき混ぜすぎて周りにクリームが飛び散りますから...」
「あ、うん、そうだね!気を付けてかき混ぜないと!」
鏡(ミラー)に注意された私は、もう一度気を引き締めてクリームをかき混ぜ始める。
鏡(ミラー)がお菓子作りに興味を持ったことや、ハロウィンに近いことから、今私たちはカップケーキを作っていた。...これが私には難しくて...鏡(ミラー)はできるのに...この差は一体なんだろうか?考えてもわからない。
そうこう考えている内にクリームをかき混ぜるのが終わり、後は事前に焼いておいたカップケーキに鏡(ミラー)がクリームでデコレーションをしていく。
鏡(ミラー)の真剣にやっている後ろ姿を眺めていたら、鏡(ミラー)から話しかけてきた。
「先程主は何を考えていたのですか?」
「先程って...いつのこと?」
「クリームをかき混ぜる時です」
「え...あ...あの時?あの時は確か...苦手...そう!ソフィアに苦手なものができたら嫌だなと思っていたのよ!」
「ソフィアさんに苦手なものができた...。それはどのようなものですか?」
「ロマンス小説作りよ」
「ロマンス小説作りですか...意外ですね。あれほど熱心に話をしていたり、読んでおりましたから、話を作るのも好きだと思っておりました...」
「そうよね。ソフィアがロマンス小説に関連することで苦手になるなんて...あ!苦手と言えば、ジオルド様も意外なものが苦手なのよ」
「へぇー...あのジオルドさんにも苦手なものがあるのですか?」
「ええ、そうよ!見付けた時は嬉しかったわ!これで...」
私は急いで口を閉じる。
いけない、いけない、鏡(ミラー)には破滅フラグ知られないようにしないと!鏡(ミラー)は『FORTUNE・LOVER』のキャラではないから関係ないし、裏切ることはないと思うけど、いつどこで聞かれるのかはわからないから知られない方が良いのよね。
「主はなんで...ジオルドさんの弱点を見付けて嬉しかったのですか?」
「え、えっと...それは...」
私の発言が気になった鏡(ミラー)は、手を止めて私の方へと振り向く。
なんと言えば良いのかわからず、黙り込んでいると鏡(ミラー)が何やら思い付いたようだ。
「あ...もしかして......」
「ロマンス小説でよくある、幼い少年が好きな少女に嫌がらせをして気を引く...あの行動ですか?」
なっ...!!ち、違うわよ!私はそんな小学生男子みたいな馬鹿なことをしないわ!私には破滅フラグ回避という大事な使命があって...!
とんでもない勘違いをした鏡(ミラー)の発言に私は取り乱してしまう。
「ち...違うわ!私は...!」
「別に恥ずかしがらなくても良いですよ主。婚約者同士ですから。ただ...イタズラよりも、素直に言葉で伝えた方が、ジオルドさんもお喜びになると思います」
きょどった口調、手を使って大袈裟に否定した私の姿は却って逆効果で、鏡(ミラー)は温かい眼差しで私のことを見詰めていた。
どうしよう...。下手に言い訳なんてできないし...これ以上言い訳しようとしたら不自然だしな...あ!そうだ!良いこと思い付いた!
「そうよ!イタズラこそが仲良くなる秘訣よ!だからハロウィンで、トリック・オア・トリートと言ってコミニュケーションを取るんだわ!」
「そ...そうなのですか...?」
「そうよ!これが一番のコミニュケーションよ!」
納得をした鏡(ミラー)は再びデコレーションに取りかかる。
我ながら上手い言い訳だわ!
いくら勉強をしているとはいえ、鏡(ミラー)はまだまだ知らないことは多い。丁度ハロウィン時期と被っているからそこを言い訳にすれば、なんとか納得させられると思う。それでもじっと考えられてしまったら、疑問を覚えられてしまうから、後はハロウィンで楽しい思い出で忘れてもらおう!
デコレーションが終わり、また何か言われる前に私は次の行動に急かす。
「さあ!できたら!元に戻る前にハロウィンの練習をするわよ!これを機会に色んな人と話をしましょう!」
「え、え、え...私があの台詞を言うのですか...」
「当たり前よ!この台詞がハロウィンで一番大事な台詞で、醍醐味なんだから!」
「で...でも...」
なんだか歯切れの悪い鏡(ミラー)。
どうしたの?そんなに嫌なことなの?ただトリック・オア・トリート、お菓子をくれないとイタズラするよ、と言うだけなのに...。...そっか!慣れていない人と話すのが怖いんだわ!相手が怖がっているかも知れないと思うと億劫だよね。だったら──
「キースを呼んでくるわ!キースなら言いやすいでしょ!」
「え、ええっと...そういう問題ではなく...」
あら?まだ自信がないようね。でも大丈夫!キースなら言っても問題ないわ!キースと楽しんだ後これを機に、色んな人に声をかけられるようになって仲良くなれたら良いな。そのためにも、ハロウィン絶対に成功させてみせるわ!
「義姉さん......。本当にミラに...この台詞を言わせるの?」
物凄い顔で呆れられてしまった。
部屋で本を読んでいたキースにちょっと来て、と言って連れ出し、調理場で待っている鏡(ミラー)の練習に付き合ってもらおうとしたのだが...何故かキースが怪訝な顔をしている。
どうしてそんな顔をしているの?...ハッ!まさか!キースは過去のトラウマで鏡(ミラー)のことが苦手!?そんな!できれば仲良くしてほしいわ!けど...キースの過去のことを考えると仕方のないことかもしれないけど...どうしたら仲良くなれるものか?...う~ん...。
「あのね、義姉さん。別にミラの練習に付き合いをしたくないわけではないよ。ただ...」
「そうなの!?だったらどうしてそんな顔をしているの!?」
「義姉さん......」
何か言いたそうにしているのにも関わらず、黙り込んでしまうキース。
重苦しく感じる時間が長く続く。この雰囲気を変えたくなった私は、キースに聞こうとするが、その前にキースが鏡(ミラー)を横目で見る。まるで確認をしているみたいだ。キースの視線に気が付いた鏡(ミラー)は頷いて了承をする。鏡(ミラー)が了承してからキースが私の方を見る。
「なんで...ミラが嫌われているのかわかっている?」
「ええ、騒ぎを起こしたからでしょ?でもそれは昔の話であって、今は騒ぎを起こしていないわ。それどころか、ミラがいなかったら剣(ソード)を安全に封印することはできなかったわ!」
あの時は本当に焦ったわ。
幻(イリュージョン)で動きを止めようと思っても、幻で映し出されるであろうお父様が止めても止められなかったし...。他のカードでも止められることができても傷付けてしまう可能性が高いからなあ...。あの時は本当に鏡(ミラー)がいてくれてありがたいと思ったし、今でも感謝してもしきれないわ!
「うん、そうだね。今は騒ぎを起こしていないし、義姉さんの助けにもなってくれている。だけどね......」
「人の心は早々変わらない。一度でも怖いと思われたら変わることはない。義姉さんではない限り...」
「私ではない限り...」
それってどういうことだろうか...?う~ん...考えても考えてもわからない。よし!こうなったら──
『これより、キースが何を伝えたいのか理解するための会議を開始します。では、何か良い案がある方はいらっしゃいますか?』
脳内の議長カタリナ・クラエスが開始を宣言するが、誰からも案が出なくて黙ってしまう。
『何か...良い案はありませんか?これでは会議にはなりませんぞ...』
『そんなことを言ったって案が出ないからしょうがないじゃない!』
『そうですよ...こんな難しい問題誰にもわかりませんわ...』
珍しく、強気なカタリナ・クラエスと弱気なカタリナ・クラエスの意見が合う。
『二人のカタリナ・クラエスさんが仰る通り、今回の件は中々難しいものであります。キースはこの屋敷では暴走をしておりませんし、事情を聞けば誰もが同情をするのでしょう。それに対して鏡(ミラー)は、周囲の人達に危ない目に遭わせていないものの、イタズラで他人に迷惑をかけております。ただでさえクロウカードは怖がられている存在、印象を良くすることは容易ではないでしょう』
さらに追い討ちと言わんばかりに、真面目なカタリナ・クラエスがお手上げだと宣言をする。
みんながうーん、うーんと唸って考え込んでいると、ハッピーなカタリナ・クラエスが手を上げて発言をする。
『あ、そうだ~。良いこと思い付いたわ~。印象を良くすれば良いんでしょう~?だったら、お手伝いするのはどうかしら~?前世でお母さんにどれだけ叱られた後でも、お手伝いをしたら凄く喜んでくれたよね~。クロウカードでみんなを助けたら笑顔になるんじゃない~』
ハッピーなカタリナ・クラエスの発言に雰囲気はパッと明るくなる。その意見に他のカタリナ・クラエス達は賛同していく。
『その案名案じゃない!』
『これなら...最初は怖がられていてもなんとかなりそうですわ...』
『むやみやたらに使うと言っても、悪いことに使うわけではないので、ケロちゃんからの許可を得る必要なんてありません。人のために使いながら同時に、魔力を上げる訓練にもなる...とても素晴らしい案だと思います』
みんなの意見がまとまったところで、議長カタリナ・クラエスが最後を締める。
『では皆様...クロウカードを使って人助けをして、イメージアップを図る...。この案でよろしいですね?』
『異議なし!』
「そうと決まったらミラ!練習を中止にして人助けをするわよ!大丈夫!私も一緒に手伝うから!」
「...はい!?どうしてそのような考えになったのですか!?」
無事に結論を出した私は、鏡(ミラー)の手を取って別の場所に連れていく。
キースの引き留める声が聞こえてくるが、一刻も早く鏡(ミラー)の印象を良くするために困っている人を探す。
絶対に楽しいハロウィンしてみせるわ!今はそのためにも人助けよ!
人助けをしようとしても、困っている人はいなかった。それどころか、要りません。お嬢様は落ち着いて下さい、とアンから思い切り否定されてしまい、しかも私が疲れて鏡(ミラー)を元の姿に戻してしまった。
疲れた私はその場に座り込む。
中々上手くいかないものね。どうすれば良いのかしら?座り込んでいると背後から気配を感じる。そこには──
「カタリナ」
静かに怒っているお母様が立っており、その後ろにキースが気まずそうにこちらを見ていた。
「お、お母様!?」
「キースから話は聞きましたよ。なんでもミラと一緒にハロウィンをしたいからといって、皆様に迷惑をかけているようね...。私が今までのその奇行を見逃していたのも、付き合って下さる他の方々が楽しんでいたから見逃していたのであって、迷惑をかけるようであれば......」
「ハロウィンは一生禁止です!ついでに...その人の話を聞かないところも直しましょうか。さあ、私の部屋にいらっしゃい!」
「そんな~!」
私はお母様によって無理やり部屋に連れて行かれてしまったのであった。
「今日は散々だわ。鏡(ミラー)に変な勘違いをされてしまうし、お母様には叱られるし...」
ジオルドたちが遊びに来てくれたから解放されたけど、もし来てくれなかったら...考えただけでもぞっとする...。
あ~あ、何か良いことないかな。...甘い匂い?なんで調理場から離れているのにここまで匂いが漂っているのだろうか?もしかして...いつも以上にお菓子を持ってきてくれた!?
なら落ち込んでいる場合ではないわ!早くジオルドたちのところに行かないと!
甘い匂いに誘われて、いつもは使われていない部屋に入る。なんとそこには──
壁、床、ドア、窓、ソファー、クッション、テーブル、本棚、花瓶、壁にかけられた絵画さえもお菓子でできた、お菓子好きなら一度は夢見る、お菓子の家ならぬお菓子の部屋になっていた!
壁や床はクッキーに、ドアやテーブル、本棚はチョコレート。ソファーの座る部分は柔らかいマシュマロになっており、花瓶やガラスなどの到底感のある物は飴に変わっていた。こんなことはできるのは勿論──
クロウカードの仕業に間違いないわ!このカードは甘(スイート)のカードね!そうとわかったら......
「美味しい~」
食べるに決まっているわ!アニメで観た時から、一度食べてみたいと思っていたのよね!
元クッション、大きな赤色のマカロンを口一杯に頬張る。ちゃんとマカロンになっていて外はさっくりとしており、甘いクリームが口の中に広がる。しかも色通りに苺味になっていた。凄い...!本当にお菓子になっているわ!これが元クッションだなんて信じられない!...うん?待てよ...このクロウカードなら人助けができるわ!お腹が空いて仕事ができないメイドさんたちに、甘(スイート)で作ったお菓子を渡して元気になってもらう。これなら上手くいくわよ!だって、お腹が空いている人に食べ物をあげるのはヒーローだもの!
あ~生き返るわ~。
今日は怒られてばっかりだったし、鏡(ミラー)を召還していたから魔力が少なくなっていたから丁度良かった。マカロンを食べたら次は......
「カタリナ...。お出迎えしてくれないと思ったらお菓子を食べていたのですか...」
待ちくたびれて探しに来てくれたであろう、ジオルドたちが私のことを見て呆れていた。
「カ、カタリナ様!?そ、それはクロウカードがお菓子に変えただけで...本来は食べ物ではないですよ!」
「なっ...!!お前!!変なものを食ってんじゃねぇよ!!!」
ソフィアの発言にみんな顔を青ざめる。特にアランは声が出る限り怒鳴り付けられてしまった。
......そんなに危ないものなのかな?食べてもなんともなかったけど...。
「カタリナ様!もうそのお菓子を食べないで下さい!お兄様!早くカタリナ様が違うものを食べてしまう前に、一緒にクロウカードを捕まえるのを手伝って下さい!甘(スイート)のカードは塩が苦手です!風の魔力を使って甘(スイート)に塩を当てて弱らせましょう!」
「わかった...。カタリナ、それはお菓子ではない。それを肝に銘じてくれ」
ソフィアとニコルは急いで部屋を出る。
キースは食べかけのマカロンを取り上げ、メアリは私の背中を押して部屋から追い出そうとした。名残惜しくて居残ろうとした私の手をジオルドが引っ張っていく。
せめてマカロンを最後まで食べたかったな...。
屋敷にいる人総出で実体化した甘(スイート)のカードを追い回す。
私も突っ立っているわけにもいかず、気配を感じ取って後を追う。追い付いた先には、塩をかけられてしょんぼりとした甘(スイート)がいて、その側で甘(スイート)が逃げないようにソフィアとニコルが見張っていてくれた。
「カタリナ様!封印を!」
「わかったわ!汝の在るべき姿に...」
ソフィアとニコルの頑張りを無駄にしないためにも、早速杖を振ろうとしたのだが......
ない!杖がない!そんなどこに!?今日は鏡(ミラー)を召還したから...どこに置いてきてしまったんだっけ!?すっかり忘れてしまったわ!今から杖を探すの!?その間に甘(スイート)が元気になって逃げてしまったらどうしよう!!
「お嬢様!お忘れですよ!」
困っているタイミングよくアンが杖を持ってきてくれた!
ありがとうアン!この恩は忘れないから!
「汝の在るべき姿に戻れ、クロウカード!」
疲れているせいでいつもよりも戻る時間がかかってしまったが、相手も弱っていたお陰でなんとかカードの形をした光の中に納めることができた。
「やったわ!封印完了よ!」
封印したカードを拾って、みんなと喜びも分かち合うのも束の間、クッションを食べてしまったことがバレてしまい、私はお母様に呼ばれてまた説教タイムになってしまう。しかもそのせいで一週間お菓子抜き、クロウカードを使うのも禁止になってしまった。
とほほ...私はただお菓子を食べただけなのに...。よーし、こうなったら...今度戻ってきたら甘(スイート)の美味しさを広めるわ!